熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

第118回日産自動車定時株主総会

2017年06月27日 | 経営・ビジネス
   日産の株主総会も、実に大人しく事務的になってきた感じで、これが潮流だとしても、株式会社にとって最も重要なコーポレート・マネジメントなりガバナンスの機関として、これで良いのかどうか、疑問に感じた。

   今年は、都合がつかず、株主総会に出かけたのは、この日産自動車の株主総会だけ。
   朝10時の開会では、会場が東京では多少苦痛であり、鎌倉からだと、精々、パシフィコ横浜の総会くらいが、適当なのである。

   さて、私が気になった点は、2点。
   カルロス・ゴーンの報酬と日産がルノーの子会社かどうかと言う点である。

   まず、ゴーンの報酬についてだが、これは、毎回、問題になっており、目新しいトピックスでもないのだが、問題にしたいのは、相変わらず、毎年懲りずにオウム返しに繰り返しているゴーンの役員報酬決定手法である。
   日進月歩の業界の熾烈なグローバル競争に打ち勝つためには、有能な人材を糾合することが必須であり、そのために、専門コンサルタント会社のウイリス・タワーズワトソン社の徹底的な報酬解析調査を参考にして、日産に匹敵する利益を上げている多様性豊かなグローバル展開企業に見劣りしない報酬額を設定しなければならない。と言う。
   自身の16年度の報酬は、10.98億円(990万ドル)だが、同上調査のCEO平均報酬額は1770万ドル、最高額は2950万ドル、中央値は1600万ドルであったと言及し、暗に、これよりはるかに低いと言わんばかりの意味深な発言をしており、10年ほど前に設定した役員報酬額の上限29.9億円に対しても支払い実施額は19.5億円で、35%低いと、これも、控えめにしていると言った調子で、トーンダウンさせている。

   問題は、日産に匹敵する同業他社やグローバル展開の多国籍企業との役員報酬額を参考にして、業績と貢献度を勘案して、役員報酬を決めることが正しい手法なのかと言うことである。
   経営学上のイロハから言えば、業界などの報酬水準は、一つの参考指標にはなったとしても、本来は、会社の経営の根幹に触れるトレンドや経営戦略、サステイナビリティへの対応など多くの経営指標を考量して決定すべき筈であろう。

   それよりももっと重要なことは、カルロス・ゴーンが、あのピーター・ドラッカーでさえ、逝く寸前に甚く慨嘆していた役員報酬のgreedyとも言うべき異常な高さが、問題であり、そのもの自体が、所得格差の拡大を行きつくところまで行きつかせて、現代資本主義を窮地に追い詰めていると言う現実をどう考えているのかと言う問題である。
   他が高いのであるから、匹敵する有能な人材を確保するためには、引き下げるわけには行かないと言うゴーンの声が聞こえて来そうであるが、本質的な問題を直視して対決できないであろう、このあたりが、ゴーンの経営者としての資質の限界であろうと思う。

   更に、昨年、フランス2のスタッフが、ゴーンは、ルノーからも日産からも高報酬を取っているのが問題だと言っていたが、アライアンスと言う美名のもとに、両社から、フルタイム相当のCEO報酬を受け取っている。
   マネジメントをどう見るかと言う問題だが、日本の経営感覚から言えば、社外役員の報酬などは両取りの可能性はあっても、このような資本関係にある会社の役員報酬については、何らかの形で、一部減額するとか、戻入するとか、配慮してしかるべきだと思うのだがどうであろうか。

   もう一つは、従業員株主の質問で、日産は、ルノーの完全子会社の状態にある、マクロンが大統領になって、更に、この状態が進みそうだがどう思うかと言う問題である。
   この質問に対して、ゴーンは、かなり、神経質になって対応し、日産の18年の歴史を見て、どういった事実を根拠にして、そのように言うのか、一つでも根拠はない。日産がルノーの子会社であったら、全従業員がほかの会社のために働いたとしたなら、このような好業績と発展はなく、99年に230万台であったのが今や590万から600万台への躍進はなかった筈。
   この18年間、ルノーも日産も、パートナーのアイデンティティを尊重すると言う方針を貫いており、これこそが、アライアンスを成功させた要因である。と答えていた。

   その前に、ルノーは、日産の株式を、43.4%保有しており、資本関係から言っても、ルノーの子会社と言ってもおかしいとは思えないし、また、外人株主の保有率が、68.20%に達しているので、最早、所有関係から考えても、日産は、日本の会社ではなくなっている。と言う事実を認識しておかなくてはならない。
   生産、販売、従業員、その他、関係するステイクホールダーの殆どは、マルチナショナル・・・ゴーンが説くごとく、典型的なグローバルに展開する多国籍企業であり、最早、日本の日産では、なくなってしまっている。
   そのあたりの感覚のずれを、自らの従業員に、指摘されたゴーンの苦渋は察して余りある。

   いずれにしろ、このことについては、私など、日産がルノーの子会社だとは、それほど思っていなかったので、日産社員の指摘なので、現実に、やはり、そう言う風土なり経営傾向があったのかと、一寸驚きであった。
   フランス政府が、雇用の拡大など、ルノーを通じて日産を利用しようと言う意図なり風潮があったことは、以前に、フランス政府は、国内産業や雇用保護を目的として、2014年に通称「フロランジュ法」を制定して、これを適用する狙いで、筆頭株主であるルノー株を買い増したり、マーチなどの日産車のフランス工場での生産増加要請などで現実味を帯びたことがあった。
   しかし、実情はよく分からないが、フランス政府の意図を排除して、ルノーを通じての日産の経営への介入は、実質的には起こっておらず、ゴーンの指摘するように、お互いに経営に介入せずにアライアンスが成功している。
   これらは、レバノン、ブラジル、フランスと言った多彩な異文化異文明のバックグラウンドを持ち、アメリカで経営の試練を受け日本で日産を窮地から救い出して一気に成長企業へ育て上げた、恐らく、世界屈指のマルチカルチュアー、マルチタレントの卓越した経営者カルロス・ゴーンあっての、離れ業のなせる偉業だと思っている。
   いずれにしろ、日産が、現在、厳然と優良企業として輝いていることは事実であり、この今日ある日産をここまで、起死回生を図れたのは、フランスやルノーの力と言うのではなく、あくまで、私は、カルロス・ゴーンの偉業あってのことだと思っている。
   
(注記)メモから書いているので、ゴーンの発言など正確ではないかも知れないが、ご容赦頂きたい。
   
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