熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

原始林破壊の元凶は欧米先進国?

2019年08月23日 | 地球温暖化・環境問題
   先に、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の大火災に伴う、宇宙船地球号の危機について書いた。
   アマゾンの自然環境や原住民の保護を後退させて、経済成長を策するボルソナロ大統領は、正に、人類の命運を左右する暴政を行っている。と非難した。
   しかし、もう少し、歴史の時間軸を伸ばして考えてみれば、人類の科学技術の急激な発展で、人類の営みが、自然環境を破壊するまでに至った現時点では、この大自然の破壊は、忌々しき問題だが、ほんの百年前、いやもっと直近に至る段階まで、自然環境を破壊してでも、経済開発は、善であって、望ましい経済政策であった。
   日本でも、田中角栄首相の日本列島改造論が、持て囃されていて、私なども、経済学部の学生であった頃、卒論などテーマとして勉強したのは、経済成長論であった。

   しかし、ローマクラブが資源と地球の有限性を問題にして、デニス・メドウズたちが、1972年に出版した、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘ならしたレポート「成長の限界」を読んで、衝撃を受けた。
   その前にも、ガルブレイスの「ゆたかな社会」などの著作を読んで資本主義の暴走や、ぼつぼつ、出版されていた公害の発生など外部不経済を問題提起した経済学書から、経済成長は必ずしも総て善ではないと、その片鱗には気づいていたが、その年からアメリカの大学院に留学したので、勉強する機会を得た。
   田中首相の日本列島改造論が出たのもこの年だと言うから面白いのだが、私の経済成長論が、多少方向を変えて動き出したのも、この時からである。

   さて、一気に、表題の「原始林破壊の元凶は欧米先進国?」に話が飛ぶのだが、結論から先に言うと、問題の核心は、同じ地球であるから、ヨーロッパやアメリカにも、アマゾン級とは行かないとしても、広大な原始林・原生林が、繁茂していた筈だったが、今では、破壊と言うか開発されてしまって、その片鱗さえも殆ど残っていないと言う現実である。

   本来、ヨーロッパの森の概念は、森は生活の場から乖離されたいわば海の様なもので、一度入り込むと下界に戻れない極めて危険な所であった。
   しかし、肉食を旨とするヨーロッパは、牧畜の為に、この人を寄せ付けなかった原始の森を完全に破壊しつくしてしまったのである。
   CULTUREと言うのは、CULTIVATE、即ち、耕すと言うことであるが、文化とは、原始林を破壊して畑を耕すことだったと言う、笑うに笑えない皮肉。

   シェイクスピアの描く森は、優しくて美しい、暗い雰囲気は全くなく、時には夢のような雰囲気を醸し出す豊潤な物語の世界である。
   このように、イングランドは、何処を走っても、絵のように美しい田園風景が展開する。   
   全く原始林が残っておらず、徹底的に破壊されて、美しい田園地帯に変えられてしまって居て、コンスタブルやターナーの描く牧歌的で、しみじみと田園生活の幸せを感じさせてくれるような、そんな優しくて美しい田園地帯が延々と続く。
   山がなくて起伏が緩やかなので、いっそう、野山の風景は美しさを増す。
   私は、5年間イギリスに住んでいて、コツワルドや湖水地方は勿論、あっちこっちを車で走ったので良く知っている。
   しかし、世界への雄飛と言えば聞こえが良いが、世界を制覇する為、軍船を建造する為に、木を切り倒して、原始林を破壊し、自然を囲い込んで森や林を破壊して羊や家畜の牧場にしてしまった。
   美しいが、英国人好みに改造され訓化された人工美の国土なのである。

   パリ協定でも問題になったのは、先進国と開発途上国の問題。
   ”開発途上国からすれば、今日の地球温暖化を招いた主な原因は、産業革命以後、化石燃料を大量に消費しながら経済発展を遂げてきた先進国にあり、先進国がより多くの責任を負うべきとの考えが根強い。他方、先進国から見れば、過去の経緯はともかくとして、現在、そして将来においてより多くの排出が見込まれるのは新興国・開発途上国であり、それらが排出抑制に強く取り組まない限り、温暖化抑制は不可能である。”と言うもの。

   ここでは触れられてはいないが、環境破壊のもっと源初の問題に戻って、
   ブラジルのような発展途上国が、遅ればせながら、欧米先進国がやったように、自分たちも、国家発展のため、国民の生活向上のために、自国のの原始林・原生林を切り開いて、CULTIVATEして、何が悪い。と言う議論が、現時点で暴言であったとしても、成り立つかも知れないと感じている。

   従って、先進国が、権力を傘に着て、発展途上国に、地球温暖化対策を強要するのではなく、まず、これまでに、先取りした、環境破壊と言うタダ乗りで得た利益を還元して、発展途上国に相当の対価を支払うべく、積極的にサポートする姿勢を示さない限り、前に進めないと思う。
   アマゾンの自然環境を保存したいと考えるのなら、ブラジルへ、開発を阻止する見返りに、その権利を買い取るなり、代替すべき対価を払うべきだと思っている。
   トランプような大統領が続けば、お先真っ暗だが、ヨーロッパなり先進国に哲人政治家が登場することを願っている。
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