熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立劇場・・・神々の残照-伝統と創造のあわいに舞う-

2019年05月26日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   ジャンル等の垣根を越えて広く舞踊(ダンス)の魅力を見せるプログラムだと言う。
   今回の「神々の残照」では、「神」をキーワードに、日本舞踊、インド舞踊、トルコ舞踊、コンテンポラリーダンス(新作)を上演すると言うことで、プログラムは次の通り。

【日本舞踊】
長唄 翁千歳三番叟(おきなせんざいさんばそう)
翁   尾上墨雪
千歳  花柳寿楽
三番叟 若柳吉蔵
【インド古典舞踊】
オディッシー
マンガラチャラン/バットゥ/パッラヴィ/パシャティ・ディシ・ディシ/モクシャ
小野雅子
シルシャ・ダッシュ
ラシュミー・バット
アビシェーク・クマール
【トルコ舞踊】
メヴラーナ旋回舞踊〈セマー〉
トルコ共和国文化観光省所属 コンヤ・メヴラーナ楽団
【コンテンポラリーダンス】
構成・振付・演出=笠井叡 衣裳=萩野緑
マーラー作曲〈交響曲第五番〉と群読による
古事記祝典舞踊
いのちの海の声が聴こえる (新作初演)
テキスト=古事記~大八島国の生成と冥界降り~
 近藤良平・酒井はな・黒田育世・笠井叡/
 浅見裕子・上村なおか・笠井瑞丈/
 岡本優・小暮香帆・四戸由香・水越朋/
 〔群舞〕ペルセパッサ・オイリュトミー団/
 〔群読〕天使館朗唱団

   若い頃に、ロイヤル・バレエやニューヨーク・シティ・バレエなどで、チャイコフスキーの「白鳥の湖」などを観に結構劇場に通ったり、家族が好きであったので、クラシック・バレエの舞台を観ており、海外の劇場で、古典劇や古典舞踊、民族ダンスなどを見てはいるのだが、いずれにしても、舞踊と言う分野の観劇経験も希薄だし、感心も薄い。
   従って、今回の舞台でも、インドとトルコの舞台では、バックの民族音楽的な楽団演奏の方に興味を持って楽しませてもらった。

   【インド古典舞踊】オディッシーは、バックのどこか神秘的で哀調を帯びたサウンドに乗って踊り続ける優雅な舞踊は、やはり、素晴らしかった。
   この日は、やや上手よりの最前列で鑑賞していたのだが、小野雅子はじめ奇麗な民象衣装に着飾ったダンサーたちの、目や手や腰の微妙にモノ言う表情豊かな動きを、感動して観ていた。
   シタールのもの悲しい優雅な流れるようなサウンドに呼応して、女性歌手の祈るような朗詠、マルダラが単調なリズムを軽快に刻む・・・そんなエキゾチックな音楽が、魅力を倍加する。
   私は、タイとインドネシアの民象舞踊しか観ていないのだが、何となく雰囲気が似ていた。

   【トルコ舞踊】のメヴラーナ旋回舞踊〈セマー〉は、これも、独特なサウンドの民族楽器と歌い手が奏する素晴らしい古典音楽に乗って、5人の男性舞踊手が、くるくる、時計回りと逆方向に舞い続ける群舞で、楽団員は黒衣、舞踏手は白衣、
   羊毛の粗衣(スーフ)を身にまとって、アラーへの絶対的な服従を実践する修道士が起源となったスーフィー教団の踊りだと言うことで、音楽や身体的表現によって神を祈念し、白い布の裾を翻して旋回する。
   この典礼音楽で、最も重要な楽器は葦笛のネイで、神が創った人間が、別離の悲哀・苦痛に咽び泣くような葦笛のサウンドに、世界観を象徴させているのだと言う。
   宗教色の色濃い旋回舞踊なのだが、優雅で哀調を帯びた一心不乱の舞と音楽が胸を打つ。

   さて、冒頭は、能「翁」を、基礎にして生まれた【日本舞踊】長唄 翁千歳三番叟。
   遅刻常習犯である私は、1時間鎌倉を出るのを遅れて、開演に間に合わず、劇場に入った時には、翁の舞に入っていた。
   能なら、翁が退場して三番叟の舞が始まるまで、見所への入場は禁止だが、入場OKで、後方立ち見を許してくれた。
   能の「翁」と、この舞台と、どのように差があるのか、微妙なところは分からないのだが、見られなかった前半は、能と殆ど変わらないのであろう、
   三番叟の「鈴ノ段」の後,千歳が舞い、その後、千歳と三番叟が相舞いが続いた。
   舞も唄も三味線も囃子も、最高峰の舞台だと思うのだが、私には、もう、10回以上も観て、頭にしっかりと入り込んでいる能「翁」の印象が強くて、一寸、別バージョンの優雅な舞台を観ているような気持であった。

   【コンテンポラリーダンス】の、古事記祝典舞踊 いのちの海の声が聴こえる (新作初演)は、今回の最大の話題作であったのであろう。
   テキストが、古事記~大八島国の生成と冥界降り~構成・振付・演出=笠井叡 衣裳=萩野緑で、
マーラー作曲〈交響曲第五番〉をバック音楽として、群読によるストーリー・テラーが加わって、舞台狭しと、神々のソロダンサーを中心に華麗な群舞が展開されて、古事記の冒頭の国造りから、天岩戸伝説までが、繰り広げられる。
   月初に、能「絵馬」で、天岩戸隠れした天照大神が、天鈿女命の裸踊りで岩戸から出てきて光が戻ったと言う舞台を観たところなので、興味深く観ていた。
   チャイコフスキーの古典バレエしか、楽しんで見たことのない私には、コンテンポラリーダンスは、ちょっと無理で、聞き慣れたマーラー、特に、ラストのアダージョなどの美しいサウンドに乗った素晴らしいソロダンサーの踊りや群舞に見とれていたが、ストーリーとバレエの関わりや群読には、十分には付いて行けなかったのが、一寸、残念ではあった。
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