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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

偶発的な衝突への夢遊病 Sleepwalking Toward Accidental Conflict

2023年03月14日 | 政治・経済・社会時事評論
   プロジェクト・シンジケートのスティーブン・S・ローチの「偶発的な衝突への夢遊病 Sleepwalking Toward Accidental Conflict」が興味深い。
   大国間の戦争のリスクを最小限に抑えるという議論、つまり今日のグローバル化され相互接続された世界は、大地震の崩壊の危険を冒すにはあまりにも多くの危険にさらされているという議論、これは、グローバリゼーションの第一波がピークに達した 20 世紀初頭になされたのと同じ議論である。
   あまりにも多くのオブザーバーは、第一次世界大戦の重要な教訓の 1 つを見失っている。第一次世界大戦は、ヨーロッパ列強間で長くくすぶっていた深刻な対立を背景に、1914 年 6 月のオーストリア大公フランツ ・フェルディナントの暗殺によって引き起こされた。 紛争の激化と政治的火花との間のこの相互作用は、今日、特別な反響を呼んでおりながら、ただ、導火線に火がついていないだけだ。と言うのである。

   ウクライナで戦争が激化して、冷戦心理が米国と中国を支配しているので、歴史的な類似性には誤解の余地はない。世界は対立と恨みで煮えたぎっていて、 欠けているのは、トリガーとなるイベントだけで、台湾、南シナ海、ウクライナで緊張が高まっており、憂慮すべき火花が飛び散っている。
   台湾問題が一番深刻で、習近平が意識的に再統一のタイムラインを短縮したという米国の見解を受け入れない場合でも、米国政府や主要政治家達の最近の行動を勘案すれば、彼の手を強制することになる可能性が多分にある。
   米国は、1972 年の上海コミュニケに盛り込まれた 1 つの中国の原則を擁護するために身もだえしているが、台湾が独立した地位を維持するための米国の政治的支援については、もはや疑いの余地はない。 これは中国にとっては危険なレッドラインであり、他のすべてにとっても地政学的な引火点である。

   ウクライナでの火花についても同様に心配である。 この恐ろしく、かつては考えられなかった紛争の 1 年後、プーチンは、中国巻き込みという春の攻勢に新たな不吉なひねりを加えた。 米国は、ロシアに対する中国の支援が非致死的支援 (ロシアのエネルギー製品の購入など) から致死的支援 (武器、弾薬、兵站兵器供給能力) へとエスカレートすることを警告している。
   中国がロシアの戦争遂行に致命的な援助を提供すれば、中国に深刻な結果をもたらすというバイデン政権の漠然とした脅しは、ロシアに対する前例のない制裁の発動に先立つ同様の米国の警告を思い起こさせる。 米国の政治家の目には、中国はロシアへの協力によって有罪となり、非常に高額な代償を払わされることになる。 台湾が中国のレッドラインであるように、ワシントンも、ロシアの戦争キャンペーンに対する中国の軍事支援についても同じだと信じている。

   スパークの可能性を評価するには、コンテキストが重要である。 専制政治と民主主義の闘いを政治的に主張する米国は、過去 6 か月間、台湾に対する熱を強める攻撃者であったことは明らかである。 同様に、中国の監視気球事件は、冷戦の脅威を米国民に身近なものにした。 そして、ブリンケンと王毅 -の会談は、古典的な冷戦戦士の役割を引き受け、 最近のミュンヘン安全保障会議での彼らの好戦的なレトリックは、ほぼ 2 年前のアンカレッジでの最初の会合のそれを反映していた。

   第一次世界大戦前と同様に、大規模な紛争のリスクを最小限に抑えたいという誘惑にかられているが、今日のグローバル化され相互接続された世界は、大地震の崩壊のリスクを冒すにはあまりにも多くの危険にさらされている。 この議論は、前述したように、グローバリゼーションの第一波がピークに達した20世紀初頭に作られたものと同じものである。

   2023 年との歴史的比較は、冷戦紛争の壮大な戦略を反映するように更新する必要がある。 ソ連との冷戦における決定的な転換点は、1972 年にニクソン大統領が中国に行き、最終的に毛沢東と協力してソ連に対する三角測量戦略を成功させたときであった。
   しかし、今日、米国は新たな冷戦の三角関係に突入し、中国が、米国の覇権を狙い撃ちする「無制限の」パートナーシップでロシアに加わった。 この極めて重要な変化は、1914 年の教訓をますます明確な焦点へと導いている。
   緊張の各ポイントは、深く対立する関係への付随的な影響を認識せずに、報復反応のカスケードの流れを引き起こすことである。
   アメリカ、中国、ロシアの 3 つの大国はすべて、深い歴史記憶喪失の感覚に悩まされている。 どの国も、簡単に発火する可能性のある高オクタン価燃料を運んで、集団で紛争エスカレーションの道を夢遊病状態で、1914年のように歩いている。

   以上ローチの論点は、米国と中ロが既に冷戦状態に突入しており、今日の国際情勢は、ヨーロッパ列強が火花を散らして覇権を争っていた一触即発の1914年と全く酷似しており、何かの導火線に火がつけば、一気に国際紛争に突入する。第一次世界大戦の貴重な教訓を忘れて、何時爆発してもおかしくない偶発的な衝突に向かって、夢遊病状態で突き進んで奈落の底への道を突っ走っている。と言うことであろう。
   アメリカは、あいまい戦略を既に放棄して台湾を死守すべく中国に対峙しており、中国もこれに対して、台湾統一を武力を行使してでも早急に実現しようと画策している。台湾問題は、米中直接戦争を引き起こす最も危険な徴候であり、代理戦争であるウクライナ戦争の比ではない。中国の対ロ政策は、この一事の帰趨に掛かっており、ロシアをどこまで惹きつけておいて、アメリカに対処するのか、中国の外交軍事戦略如何による。

   私自身は、いくら科学技術が進化発展した今日でも、台湾戦争が勃発すれば、戦場直近に位置する中国の心臓部が戦禍を受けて、中国社会の崩壊の危機を惹起するという地政学上の中国不利は、拭い言えないので、賢い中国が愚かな暴挙を犯すとは思っていない。国土や国民の10%が毀損すれば、国家機能が停止して崩壊するという。
   アメリカも、同様で、民主主義の旗頭と雖も、一瞬にして吹っ飛んでしまう。
   トップに立つリーダーが常軌を逸した人物でない限り、ギリギリの瀬戸際までは行くであろうが、ケネディとフルシチョフが直面したキューバ危機のような解決に向かって終熄するような気がしている。
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