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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

NHK:自然にも“権利”を 法律は地球を救えるか

2022年11月20日 | 地球温暖化・環境問題
   NHK BS1で、「自然にも“権利”を 法律は地球を救えるか」を観た。
  「自然」を法人として扱い、川や森、野生動物の代理人として、企業や政府と司法の場で闘うという新たな発想に注目する。こうした環境保護の戦略は希望をもたらすのか…。と言う、非常に興味深い番組で、ポーランドの原始林保護や、エクアドルのガラパゴスのサメ、ニュージーランドのファンガマイ川やフランスのロワール川の法人化を題材にして、自然保護の現状を語っている。NGOの活動だけでは、埓が開かないので、自然も人間と同じ権利を持つべきで、法律で地球を救おうという試みである。

   NHKの概要説明を、そのまま引用すると、
環境保護活動の新たな手法として注目を集め始めているのが「自然」を法人として扱い、川や森、野生動物の代理人として、自然を壊す企業や自然を守る義務を果たさない政府と、立法や司法の場で闘うという発想だ。先住民が崇拝する川に法人格を認める法案が可決されたり、欧州司法裁判所が森林伐採の中止を命じたりした事例を取材し、新たな自然保護の戦略の未来を探る。 原題:Green Justice(フランス 2021年)

   殆ど死滅したと思っていた原生林が、まだ、ヨーロッパに残っていると知って驚いた。
   それは、ポーランドとベラルーシの国境にあるヨーロッパのAmazonと呼ばれているビャウォヴィエジャの森である。
   ポーランドの環境大臣が、害虫拡散防止と称して森を大々的に伐採したので、世界各地から集まった環境保護団体やNGOが積極的に抗議活動を行って阻止したが埓が開かず、EU委員会に提訴して勝訴して、法律違反でEUがポーランド政府に伐採停止命令を発した。しかし、伐採された森を回復するために100年掛かるという。

   もっと進んでいるのはエクアドルで、2008年に、憲法を改正して、自然にも権利があると定めたのである。
   新任のコレア大統領が環境保護団体の意見を採り上げて先住民も加わって、憲法に、自然の生存権を盛り込んだ。
   この法案での最初の原告は、ガラパゴス近海のサメで、中国船の常軌を逸したサメ乱獲に対してであった。
   ガラパゴスには、多くの絶滅危惧種が生息していて保護区への立ち入りが厳しく禁止されているのだが、2017年に、漁船の立ち入り禁止の海洋保護区に、中国の冷凍船が侵入したので拿捕して調べてみると、船内には膨大なサメの死骸、頭と鰭を切り落とされたサメの胴体を調べてみると、全数6226匹。
   大々的なデモや抗議活動が巻き起こり、船長以下乗組員に3年の実刑判決と600万ドルの罰金判決が下されて、世界中に横行する密漁禁止への一里塚となった。
   また、同国のロス・セドロス生物保護区では、280匹に激減して絶滅を危惧されているクモザルを保護するため、法に訴えて鉱山会社の破壊を阻止したという。自然の法人格を憲法で規定したエクアドルだから出来た快挙である。
   私は、ブラジル駐在の時に一度だけキトーを訪れたことがあるが、非常に貧しい最貧国であったが、リーダーが英明であれば、どんな国でも素晴しい指針になる査証で感激している。

   川の権利が認められたのニュージーランドのファンガヌイ川、
   マオリ人達が神聖な川として守り続けてきた川が、往来が激しくなり発電など開発で流れを変えられたりしたので訴えたところ、議会は、川も命ある実在物であると法人格を認めた。それ以降、マオリの代表者会議がこの川の権利を一切継承して保護することになった。

   このニュージーランドの例に倣って、立ち上がったのはフランスの唯一自然の流れを残しているロワール川。
   法学者が中心となって、ロワール川にも法人的な人格を持たせて保護しようとロワール議会を立ち上げて活動している。
   自然環境保護に対して裁判を起して、政府に勝利したフランスであるから、企業の利益至上主義と政府の怠慢故に、ドンドン、自然環境を破壊して、宇宙船地球号を危機に追い詰めている悲しい人間の性を、押しとどめてくれるであろう。
   このロワール川だが、流域に美しい古城が建ち並んでいて、車でハシゴすると人類の遺産の凄さを感じて感激の限りだが、レオナルド・ダ・ヴィンチの終焉の地に立ったときには、感動してしばらく動けなかった。
   このロワール川が原発事故で汚染されていると言うのだが、とうとうと流れるロワール河畔に広がるワインの葡萄畑を見ていると、そんな悲劇など分からないほど、牧歌的で美しい。

   もうこれだけで、蛇足は避けるが、
   自然に恵まれた日本は、自然に人格を認め得るであろうか。

   日本には、プレイもしない人格もないはずのゴルフに法人会員権を認めて、会員権を売りまくって、日本中の美しい国土を、あばただらけの哀れな姿に変えてしまった。
   私もジェントルマンクラブRACのメンバーであったが、イギリスのクラブは、選ばれた資格のあるメンバーのみの会員で構成されてており、入会は簡単ではない。普通2名の会員の推薦を受けて入会申請して、書類審査を受けて、長い間待って、厳しい面接試験をパスしてジェントルマン(?)と認められてメンバーとなれる。
   クラブのメンバーになるのは非常に難しくて何年も待たなければならないので、嘘か本当か、男子が生まれると、すぐに入会申請を出すという話もあるほどである。
   RACは、当然、ゴルフコースを持っているので、ゴルフ会員権は付属しているのだが、私はゴルフをしないので活用しなかった。
   私がヨーロッパに居た頃には、Japan as No.1の時代であったので、お金さえ払えば会員権を取得できて、自由にプレイできる日本から沢山のゴルフ中毒の日本人ビジネスマンが、ヨーロッパのゴルフ場に押しかけたのだが、メンバーではないし、出来たとしても、派手なコンペなどジェントルマンらしからぬ行為で風紀を乱したと言うことで顰蹙を買い、ゴルフ場から排斥されていたことがあった。
   勿論、カネにあかせて、日本の業者が進出して、新しいゴルフ場を作ったのだが、どうなったことか。   

   このような法人格を融通無碍に解釈する法治国家の日本だが、残念ながら、自然に対する法人格認定に関しては、何でもイチャモンを付けて妨害する団体が多いので、望み薄だと思っている。
   

   
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