ダニ・ロドリックの「Don’t Let Geopolitics Kill the World Economy」が、米中貿易の深刻さを語っていて興味深い。
グローバル化された世界において、自国の利益を追求しようとして、大国は、貿易と技術の政策を慎重に調整し、競争相手の発展成長の可能性を弱体化させようという明確な目的を持って設計された措置を取るべきではない。中国に対する最近のアメリカの動きは、これに反して危険である。と言うのである。
バイデン大統領は、「中国に対する本格的な経済戦争」を開始して、米国は中国企業への高度な技術の販売に関する膨大な数の新しい制限を発表し、ファーウェイなどの個々の企業を標的にしたトランプよりもはるかに先を行き、新しい措置は、ハイテク大国としての中国の台頭を阻止することを目的としており、その野心は驚くべきものである。
米国はすでに、高度なチップの研究や設計などの「チョークポイント」を含む、世界の半導体サプライ チェーンの最も重要なノードのいくつかを管理している。この新しい措置は、難所の管理を維持するだけでなく、中国の技術産業の大部分を積極的に絞殺するという新しい米国の政策を開始するための、前例のない程強烈な政府の介入を伴っている。
バイデンの戦略には相互に関連する 4 つの部分があり、サプライ チェーンのすべてのレベルを対象としている。目標は、中国の人工知能産業によるハイエンド チップへのアクセスを拒否すること、米国のチップ設計ソフトウェアと米国製の半導体製造装置へのアクセスを制限することにより、中国が国内で AI チップを設計および製造することを阻止すること、米国製部品の供給を禁止することで、中国による独自の半導体製造装置の生産を阻止する。
このアプローチは、中国が米国にとって重大な脅威となっているという幅広い超党派の合意があり、バイデン政権の見解を動機付けている。
いずれにしろ、科学技術強国を目指しているものの、中国の高度な工業製品の内、40%近くが西側諸国の部品を使用していると言うから、中国には、アメリカに対抗できる能力は十分に備わっていない。
しかし、何に対する脅威なのか?
中国が脅威であるのは、米国の基本的な安全保障上の利益を損なうからではなく、より豊かになり、より強力になるにつれて、世界の政治的および経済的秩序のルールに影響力を行使したいと考えているからである。
米国は、責任を持って両国間の競争を管理することに引き続き取り組んでいるとしており、これは、米国が技術、サイバーセキュリティ、貿易、および経済における世界的なルールを形作る上で、揺るぎない力であり続けたいと望んでいることを意味する。
こうした対応によって、バイデン政権は、ポストユニポーラ世界の現実に対応するのではなく、米国の優位性を倍増させている。この新しい輸出規制は、米国において、中国軍を直接支援する技術 (したがって、米国の同盟国に脅威を与える可能性がある) と商用技術 (中国だけでなく他の国に経済的利益をもたらす可能性がある) を区別することをあきらめ、軍事用途と商用用途を切り離すことは不可能であると主張する勢力が勝利を収めたことを明確に示している。
米国は今や、一線を越えてしまった。中国の商業部門と軍事部門の絡み合った性質によって部分的に正当化できるとしても、このような大雑把なアプローチは、それ自体が重大な危険を引き起こす。米国の新たな規制を、積極的なエスカレーションだと捉えれば、中国は、報復の方法を見つけ、緊張を高め、相互の恐怖をさらに高めるであろう。
大国 (そして実際にはすべての国) は、必要に応じて他の大国に対して対抗措置を講じて、自国の利益に気を配り、国家の安全を守る。安全で繁栄し、安定した世界秩序には、これらの対応が適切に調整されている必要がある。相手側のポリシーによって与えられた明確な損害に関連付け、それらのポリシーの悪影響を軽減することのみを意図する必要があり、競争相手を罰したり、長期的に弱体化させるという明確な目的のために、対応を追求すべきではない。ハイテクに関するバイデンの輸出規制は、この基準からは程遠く、失格である。
中国に対する米国の新しいアプローチは、他の盲点も生み出している。国家安全保障戦略には、気候変動や世界の公衆衛生など、中国との協力が重要となる「共通の課題」も重要である。しかし、中国に対する経済戦争を追求することが、信頼を損ない、他の分野での協力の見通しを損なうことを認めていない。それはまた、より価値のある目標よりも中国を打ち負かすという目標レベルを引き上げて、国内経済の課題を歪めている。米国の産業政策が現在焦点を当てている、非常に資本集約的でスキル集約的な半導体サプライ チェーンへの投資は、米国経済で雇用を最も必要としている人々のために良い仕事を生み出すための最も費用のかかる方法である。
ハイパーグローバリゼーションの問題点は、大手銀行や国際企業に世界経済のルールを書かせたことであったが、それが我々の社会構造にどれほどのダメージを与えたかを考えると、脱グローバル化で、今そのアプローチが弱体化していることは良いことである。より良いグローバル化を形作る機会が我々にあるのだが、残念ながら、現実には、米中対立がその典型であるが、大国は別のさらに悪い道を選んだようで、現在、世界経済の鍵を国家安全保障機構に手渡して、世界の平和と繁栄の両方を危険にさらしている。
さて、「グローバリゼーション・パラドクス」の著者で国際貿易の権威とも言うべきダニ・ロドリックだが、このブログでも何度も取り上げているのだが、ロドリックの選択する道は、ハイパーグローバリゼーションを犠牲にして、民主政治の中心の場として国民国家を維持し、ブレトンウッズ体制を再構築することで、グローバル化を適度に調整して適切なグローバルなルールに基づいた体制を作り上げ、国民国家を維持しながら、より水準の高い国民民主主義を築き上げるべきだと言うことで、中庸を得た穏健な考え方である。
この論文では、ロドリックは、貿易においては商業部門と軍事部門と区別して規制せよと言うことだが、ウクライナ戦争で証明されているように、現実には民生用製品が軍用に転用されており、民軍の振り分けなど無理である。
また、ロドリックは、中国経済については、
先月の全人代で、習近平による独裁体制が完全に確立された。共産主義の中国は決して民主主義ではなかったが、毛沢東後の指導者たちは耳を傾け、下からの声に注意を払い、悲惨な事態になる前に失敗した政策を覆すことができた。しかし、習近平による権力の集中化は、これまでとは異なるアプローチを表しており、タンキング経済、費用のかかるゼロ COVID 政策、人権侵害の拡大、政治的弾圧など増大する深刻な問題にどのように対処するかについては、良い前兆でははない。と先行きを悲観している。
タンキング経済(tanking economy)とは、経済が落ち込み、人々が景気後退を恐れていることを意味と言うことらしいが、中国経済は、不況局面に突入しつつあると言うことであろうか。
いずれにしろ、これまで紹介したように、西側の学者や識者のあいだでは、習近平中国の経済の先行きに期待する見解は皆無であったのが興味深い。
米中首脳会談が行われたが、何の進展のもなかったものの、一触即発の危機は避けたので、まず、安心という所であろうか。
グローバル化された世界において、自国の利益を追求しようとして、大国は、貿易と技術の政策を慎重に調整し、競争相手の発展成長の可能性を弱体化させようという明確な目的を持って設計された措置を取るべきではない。中国に対する最近のアメリカの動きは、これに反して危険である。と言うのである。
バイデン大統領は、「中国に対する本格的な経済戦争」を開始して、米国は中国企業への高度な技術の販売に関する膨大な数の新しい制限を発表し、ファーウェイなどの個々の企業を標的にしたトランプよりもはるかに先を行き、新しい措置は、ハイテク大国としての中国の台頭を阻止することを目的としており、その野心は驚くべきものである。
米国はすでに、高度なチップの研究や設計などの「チョークポイント」を含む、世界の半導体サプライ チェーンの最も重要なノードのいくつかを管理している。この新しい措置は、難所の管理を維持するだけでなく、中国の技術産業の大部分を積極的に絞殺するという新しい米国の政策を開始するための、前例のない程強烈な政府の介入を伴っている。
バイデンの戦略には相互に関連する 4 つの部分があり、サプライ チェーンのすべてのレベルを対象としている。目標は、中国の人工知能産業によるハイエンド チップへのアクセスを拒否すること、米国のチップ設計ソフトウェアと米国製の半導体製造装置へのアクセスを制限することにより、中国が国内で AI チップを設計および製造することを阻止すること、米国製部品の供給を禁止することで、中国による独自の半導体製造装置の生産を阻止する。
このアプローチは、中国が米国にとって重大な脅威となっているという幅広い超党派の合意があり、バイデン政権の見解を動機付けている。
いずれにしろ、科学技術強国を目指しているものの、中国の高度な工業製品の内、40%近くが西側諸国の部品を使用していると言うから、中国には、アメリカに対抗できる能力は十分に備わっていない。
しかし、何に対する脅威なのか?
中国が脅威であるのは、米国の基本的な安全保障上の利益を損なうからではなく、より豊かになり、より強力になるにつれて、世界の政治的および経済的秩序のルールに影響力を行使したいと考えているからである。
米国は、責任を持って両国間の競争を管理することに引き続き取り組んでいるとしており、これは、米国が技術、サイバーセキュリティ、貿易、および経済における世界的なルールを形作る上で、揺るぎない力であり続けたいと望んでいることを意味する。
こうした対応によって、バイデン政権は、ポストユニポーラ世界の現実に対応するのではなく、米国の優位性を倍増させている。この新しい輸出規制は、米国において、中国軍を直接支援する技術 (したがって、米国の同盟国に脅威を与える可能性がある) と商用技術 (中国だけでなく他の国に経済的利益をもたらす可能性がある) を区別することをあきらめ、軍事用途と商用用途を切り離すことは不可能であると主張する勢力が勝利を収めたことを明確に示している。
米国は今や、一線を越えてしまった。中国の商業部門と軍事部門の絡み合った性質によって部分的に正当化できるとしても、このような大雑把なアプローチは、それ自体が重大な危険を引き起こす。米国の新たな規制を、積極的なエスカレーションだと捉えれば、中国は、報復の方法を見つけ、緊張を高め、相互の恐怖をさらに高めるであろう。
大国 (そして実際にはすべての国) は、必要に応じて他の大国に対して対抗措置を講じて、自国の利益に気を配り、国家の安全を守る。安全で繁栄し、安定した世界秩序には、これらの対応が適切に調整されている必要がある。相手側のポリシーによって与えられた明確な損害に関連付け、それらのポリシーの悪影響を軽減することのみを意図する必要があり、競争相手を罰したり、長期的に弱体化させるという明確な目的のために、対応を追求すべきではない。ハイテクに関するバイデンの輸出規制は、この基準からは程遠く、失格である。
中国に対する米国の新しいアプローチは、他の盲点も生み出している。国家安全保障戦略には、気候変動や世界の公衆衛生など、中国との協力が重要となる「共通の課題」も重要である。しかし、中国に対する経済戦争を追求することが、信頼を損ない、他の分野での協力の見通しを損なうことを認めていない。それはまた、より価値のある目標よりも中国を打ち負かすという目標レベルを引き上げて、国内経済の課題を歪めている。米国の産業政策が現在焦点を当てている、非常に資本集約的でスキル集約的な半導体サプライ チェーンへの投資は、米国経済で雇用を最も必要としている人々のために良い仕事を生み出すための最も費用のかかる方法である。
ハイパーグローバリゼーションの問題点は、大手銀行や国際企業に世界経済のルールを書かせたことであったが、それが我々の社会構造にどれほどのダメージを与えたかを考えると、脱グローバル化で、今そのアプローチが弱体化していることは良いことである。より良いグローバル化を形作る機会が我々にあるのだが、残念ながら、現実には、米中対立がその典型であるが、大国は別のさらに悪い道を選んだようで、現在、世界経済の鍵を国家安全保障機構に手渡して、世界の平和と繁栄の両方を危険にさらしている。
さて、「グローバリゼーション・パラドクス」の著者で国際貿易の権威とも言うべきダニ・ロドリックだが、このブログでも何度も取り上げているのだが、ロドリックの選択する道は、ハイパーグローバリゼーションを犠牲にして、民主政治の中心の場として国民国家を維持し、ブレトンウッズ体制を再構築することで、グローバル化を適度に調整して適切なグローバルなルールに基づいた体制を作り上げ、国民国家を維持しながら、より水準の高い国民民主主義を築き上げるべきだと言うことで、中庸を得た穏健な考え方である。
この論文では、ロドリックは、貿易においては商業部門と軍事部門と区別して規制せよと言うことだが、ウクライナ戦争で証明されているように、現実には民生用製品が軍用に転用されており、民軍の振り分けなど無理である。
また、ロドリックは、中国経済については、
先月の全人代で、習近平による独裁体制が完全に確立された。共産主義の中国は決して民主主義ではなかったが、毛沢東後の指導者たちは耳を傾け、下からの声に注意を払い、悲惨な事態になる前に失敗した政策を覆すことができた。しかし、習近平による権力の集中化は、これまでとは異なるアプローチを表しており、タンキング経済、費用のかかるゼロ COVID 政策、人権侵害の拡大、政治的弾圧など増大する深刻な問題にどのように対処するかについては、良い前兆でははない。と先行きを悲観している。
タンキング経済(tanking economy)とは、経済が落ち込み、人々が景気後退を恐れていることを意味と言うことらしいが、中国経済は、不況局面に突入しつつあると言うことであろうか。
いずれにしろ、これまで紹介したように、西側の学者や識者のあいだでは、習近平中国の経済の先行きに期待する見解は皆無であったのが興味深い。
米中首脳会談が行われたが、何の進展のもなかったものの、一触即発の危機は避けたので、まず、安心という所であろうか。