熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ロイヤル・オペラ・・・「椿姫 ラ・トラヴィアータ」

2020年05月15日 | クラシック音楽・オペラ
   ロイヤル・オペラが、YouTubeで、2009年の舞台「椿姫」を放映した。
   La traviata will Premiere for FREE on our Facebook and YouTube channels at 7pm BST tonight(8日), and will be available to watch for 14 days. である。
   ロイヤル・オペラとMETは、ネットでチケットを購入して会員登録しているので、定期的にメールを送ってくれるので、その連絡を受けての視聴である。
   その前に、タイトルロールを歌ったルネ・フレミングが抱負を語っていたのだが、METライブビューイングのナビゲーターよろしく、聡明な語り口は流石である。

   ルネ・フレミングは、たった一度だけ、このブログ欧州紀行(文化三昧ミラノ・ロンドン旅)でも書いているが、ロイヤル・オペラで、ヴェルディの「オテロ」のデズデモーナを観ており、終演後、劇場2階のフローラル・ルームで、自伝「The Inner Voice」とプログラムにサインを貰って、二言三言喋った思い出がある。
   私が、アメリカやヨーロッパに居た頃は、フレミングの名前は知っていたが、まだ、駆け出しで、その後、何度か、ニューヨークやロンドンに行ってオペラを観ているが、その機会に恵まれず、METライブビューイングで、「椿姫」「エウゲニー・オネーギン」「メリー・ウィドー」を観て、感激していた。
   

   フレミングは、1991年3月に「フィガロの結婚」の伯爵夫人でMETにデビューし、ドミンゴの「オテロ」でデズデモーナ、「ばらの騎士」のマルシャリン、とにかく、METの至宝とも言うべき看板ソプラノであるのだが、「椿姫」については1998年にヴィオレッタの話があった時に、一度キャンセルして2003年まで延期している。
   自伝によると、ヴィオレッタは異常に要求の厳しい複雑な役柄で、これまでに多くの卓越した歌い手が解釈し尽くしており、ヴィオレッタ歌いに3種の違った声リリック・コロラトゥーラ、リリコ・スピント、リリック・ソプラノを要求するとかで、歌うからには、人生の最も難しい時期に失敗したくないので全身全霊で打ち込みたかったからだと言う。
   従って、このロイヤル・オペラの2009年版は、会心の決定版と言うことであろうか。
   前にも感じたのだが、鶯が囀るようなフレミングの一幕のアリア「ああ、そは彼の人か」が天国からの歌声のように響いて、感動の連続であった。
   それよりも、何よりも、オペラ歌手でありながら、役者としての芸の資質は抜群で、とにかく感情移入の凄さに加えて、全身全霊を打ち込んでの演技は、特筆ものであり、シェイクスピアの国イギリス人観客を熱狂させるのも当然であろう。

   ところで、フレミングがしっかりと握りしめてアルフレードに手渡した椿だが、安達瞳子さんによると、アルバ・フィレ、乙女椿だというのだが、フランスの田舎でも紅乙女が植えられているらしいが、今回の舞台は、真っ白な千重咲き椿で、フランス白であろうか。
   椿が登場したのは、この一幕だけであった。
   

   La traviata(ラ・トラヴィアータ)とは、「道を踏み外した女、堕落した女」を意味するようだが、決して、あだ花ではなく、文化文明が爛熟した花のパリの、ある意味では象徴のような存在であったように思う。
   「マノン・レスコー」もよく似た悲劇のオペラだが、愛するが故に道を踏み外す滅びの美学が胸に迫る。
         
   1983~4年頃、パリの街角の映画館で、テレサ・ストラータスとプラシド・ドミンゴ主演のゼフィレッリの素晴らしい絵巻のように美しい映画「椿姫」を観て感激して、その後、何度、オペラ劇場に通ったであろうか。
   ジュゼッペ・ヴェルディの音楽が、徹頭徹尾感動を呼ぶ。

   今回の放映オペラのキャストは、次の通り、
   指揮 アントニオ・パパーノ
   ビオレッタ ルネ・フレミング
   アルフレード ジョセフ・カレヤ
   ジェルモン トーマス・ハンプソン

   パパーノとハンプソンは、何度か観て聴いておりお馴染みだが、 ジョセフ・カレヤは、初めてであった。
   以前に、ミラノ・スカラ座の「リゴレット」で、ヨーロッパ公演が立て込んでいて、直前キャンセルで、聞く機会を失したのだが、スカラ座を蹴る傍若無人ぶり。
   マルタ島のアッタルドで1978年1月22日に生まれ、1998年にはミラノでのカルーゾ・コンクールで優勝、1999年にプラシド・ドミンゴ・オペラリアで優勝、
   2003年にマントヴァ公爵を歌ってロイヤル・オペラにデビュー
   2009年にメトロポリタン歌劇場で「ホフマン物語」のホフマンを、2010年にロイヤル・オペラで「シモン・ボッカネグラ」のアドルノをそれぞれ初めて歌い、大成功を収めたという。

   演出は、リチャード・エアー、美術は、ジョン・クローリー、
   見慣れたフランコ・ゼフィレッリとは違うが、クラシックでシックな舞台が素晴らしい。
   さて、この「椿姫」の放映は、まだ、数日続くと思っているが、素晴らしい記録映像である。
   映像の一部を借用して掲載させて頂くと、
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
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