今日の日経の3面トップに、”訪日需要眠る 「夜遊び経済」”というタイトルの記事が掲載された。
ミュージカルに、音楽ライブやダンス、欧米では、大人が深夜まで楽しめるクラブ文化が根付いていて、ナイトタイムエコノミー、すなわち、夜遊び経済が定着しているのだが、日本では、そのような環境が整っておらず、訪日外国人の要望もあり、年間4000億円と言う市場を生み出そうと言うのである。
これについては、ブラジルを含めてだが、欧米、すなわち、西洋文明下で、14年間生活してきた自分自身の経験を踏まえた私論を展開して見たいと思う。
尤も、個人的な経験なので、非常に偏った一面的な説であるかも知れないのを断わっておく。
まず、ヨーロッパの場合には、長くて寒い陰鬱な冬季の夜長をどう過ごすか、そのあたりから、ナイトライフを楽しむ知恵や文化が生まれてきたような気がしている。
もう、夕方3時近くになると、暗くなるので、その後寝るまで、どのような生活を送るかが、人生の質を形成する。
ロンドンにいた時には、キューガーデン王立植物園の傍に住んでいたのだが、隣のアーキテクト夫妻は、パーティやレセプション、知人友人たちのプライベートディナーや茶話会に招いたり招かれたり、オペラやシェイクスピア等の観劇など、どこでどう過ごしていたのか、毎夜のように出かけていて、ナイトタイムを満喫していた。
このケースなどは一例で、私の場合も、日本法人の代表であったので、パーティやレセプションや会食、それに、オペラ鑑賞などの社交で、夜に出かけることが結構大かった。
この記事に関係のありそうな、私の経験した最も典型的なオペラ鑑賞について、ロンドンでは、どのような社交上のナイトライフがあったのか、これだけに絞って、書いてみたい。
ロンドンの場合は、当然、コベントガーデンのロイヤル・オペラで、週一休みで、盛夏を除いて、一年中毎夜、バレエを含めて、公演が行われている。
ワーグナーの楽劇など、長いオペラは別として、夜の7時から、殆ど、10時過ぎ、時には、深夜近くまで上演されている。
社交の場合には、当然、ディナーの会食が入るので、時間的には、もっと長くなる。
日本の様に、7時の開演前に会食を済ますことは少なく、その場合は、多少時間を見て、プレシアターメニューで済ますことがあるが、
普通は、オペラハウスにかなり近いサボイ・ホテル(The Savoy(ザ サボイ))で、シアターメニューなり正式のディナーを選んで、会食を始めて、途中で時間を見て劇場に出かけて、終演後、ホテルに帰ってきて、続きの食事を楽しむと言うコースを取ることも珍しくなかった。
今では、ロイヤルオペラハウスに接続して、広大なパブリックスペースとエンターテインメントスペースが増築されて、素晴らしいレストランやバーなど、至れり尽くせりのアミューズメント施設が整っており、どんなディナーでも楽しむことが出来る。
しかし、その前は、小さなバーカウンター併設のレストランが、中二階の張り出しに一か所あっただけなので、予約など難しく、
信じられないかも知れないが、一階のサークル状の狭い円形ロビー(廊下?)に、テーブルを並べて俄かレストランが設営されて、開演前と休憩時間の度毎に会食を続けるのである。
普通でも狭いロビーなので、客をかき分けて、ウエイターが器用に会食者にサーブする様子は、さながら、サーカスである。
勿論、衆人環視下での食事なので、気楽ではないが、招待してくれた英人ビジネスウーメンは、気にせず、会話と会食を楽しんでいたので、これが、文化であろうと、私も日本文化などを語りながら一時を過ごしたのだが、良い経験をしたと思っている。
随分、オペラハウスの写真を撮ったが、ネガが倉庫で探せず、インターネットの写真を借用すると次の通り。左手の建物が増設建物。


オペラが長引けば、いくら、ロンドンでも、高級レストランは、11時くらいで、オーブンの火を落とすので、正式なディナーは難しくなるのだが、10時くらいの終演なら、十分に楽しめるので、大体、こうして、深夜頃まで会食をしながら夜長を過ごすことが多かった。
当時、ロンドン唯一のミシュランの三ツ星レストラン・ガブローシェに、遅れて行った時には、ホットのディナーは諦めざるを得なかったが、普通は、十分に楽しむことが出来た。
家族や気の置けない日本人の方たちとの観劇の夕べでは、劇場近くに沢山あるレストランを選んで、プレシアターメニューで済ますことが多かった。
ミュージカルやシェイクスピアの観劇の時も、殆ど同じような形式で済ませており、観劇や会食が終わった後は、大概は、劇場近くの駐車場に止めてあった自分の車を運転して、キューガーデンの自宅に帰った。
大体、夜遅くなると、ロンドンでも交通が少なくなって、30分くらいで帰宅できたので、比較的楽であった。
今は、東京での観劇の後は、急いで、メトロや東横線、JR、バスを乗り継いで鎌倉に帰っているのだが、終演が、10時近くになると、一寸苦痛になる。
ディナーは、当然、劇場のレストランやプレシアターで、軽く済ませることが多くて、ロンドンにいた時の様に、会話と美食を楽しむと言う余裕などは、殆どない。
話が横道にそれてしまったが、ここで強調しておきたいのは、ロンドンには、オペラ劇場のみならず、多くのミュージカル劇場やシェイクスピア劇場やコンサートホールがあり、カジノや歓楽ゾーン、パブやホテルや飲食街、等々、アミューズメント業界を育む巨大な裾野が広がっており、システムとして、「夜遊び経済」を醸成する土壌が息づいている。
ロンドンのシティの金融センターと同じで、一朝一夕に構築するなど無理な話である。ということである。
飲むと言う方には、興味がなかったので、ロンドンの歓楽街は殆ど知らないが、女王陛下が総裁のジェントルマンクラブ・ロイヤルオートモビルクラブのメンバーであったので、夜には、会食するなどよく訪れたが、イギリスでは、プレスティージアスなジェントルマンクラブでの社交は、英国紳士たちの誇りの様なものでもあって興味深い。
さて、日本の場合にも、私がロンドンでしていたような観劇を楽しむ方法が、いくらでもあるのであろうが、若い頃はともかく、最近ではそんなことがなくなってしまって、一寸、寂しいが、歳の所為でもあろうか、短くて終わる簡便な観劇が多くなっており、終わったら電車で家に帰る、ということで、まずまず、満足している。
ところで、日本の場合、日本の古典芸能である、歌舞伎や文楽、能・狂言、日本舞踊、落語・漫才などが、外国人をアトラクト出来るのかということだが、日本人自身が、それ程、興味を持って熱心に劇場に通って行くと言う傾向になく、集客に困っていると言う現状をどう考えるかということである。
私自身、これらの古典芸能の鑑賞にかなりの年月を費やしてきたが、今でも、勉強で非常に難しい状態であるから、訪日外国人は、昔、私が、パリで、コメディーフランセーズを観て、全く分からなくて面白くも何ともなかったのと同じ気持ちを持つのではないかと思う。
したがって、日本文化の粋であり日本の誇りである色々な芸術文化を組み込んで、「夜遊び経済」を立ち上げることは、非常に難しいことではないかと思っている。
そうなれば、できるのは、ユニバーサル・アーツと言うか、汎用性の利く欧米文化主体のエンターテインメントをアレンジした国籍不明の「夜遊び経済」が生まれてくるような気がするのだが、どうであろうか。
ミュージカルに、音楽ライブやダンス、欧米では、大人が深夜まで楽しめるクラブ文化が根付いていて、ナイトタイムエコノミー、すなわち、夜遊び経済が定着しているのだが、日本では、そのような環境が整っておらず、訪日外国人の要望もあり、年間4000億円と言う市場を生み出そうと言うのである。
これについては、ブラジルを含めてだが、欧米、すなわち、西洋文明下で、14年間生活してきた自分自身の経験を踏まえた私論を展開して見たいと思う。
尤も、個人的な経験なので、非常に偏った一面的な説であるかも知れないのを断わっておく。
まず、ヨーロッパの場合には、長くて寒い陰鬱な冬季の夜長をどう過ごすか、そのあたりから、ナイトライフを楽しむ知恵や文化が生まれてきたような気がしている。
もう、夕方3時近くになると、暗くなるので、その後寝るまで、どのような生活を送るかが、人生の質を形成する。
ロンドンにいた時には、キューガーデン王立植物園の傍に住んでいたのだが、隣のアーキテクト夫妻は、パーティやレセプション、知人友人たちのプライベートディナーや茶話会に招いたり招かれたり、オペラやシェイクスピア等の観劇など、どこでどう過ごしていたのか、毎夜のように出かけていて、ナイトタイムを満喫していた。
このケースなどは一例で、私の場合も、日本法人の代表であったので、パーティやレセプションや会食、それに、オペラ鑑賞などの社交で、夜に出かけることが結構大かった。
この記事に関係のありそうな、私の経験した最も典型的なオペラ鑑賞について、ロンドンでは、どのような社交上のナイトライフがあったのか、これだけに絞って、書いてみたい。
ロンドンの場合は、当然、コベントガーデンのロイヤル・オペラで、週一休みで、盛夏を除いて、一年中毎夜、バレエを含めて、公演が行われている。
ワーグナーの楽劇など、長いオペラは別として、夜の7時から、殆ど、10時過ぎ、時には、深夜近くまで上演されている。
社交の場合には、当然、ディナーの会食が入るので、時間的には、もっと長くなる。
日本の様に、7時の開演前に会食を済ますことは少なく、その場合は、多少時間を見て、プレシアターメニューで済ますことがあるが、
普通は、オペラハウスにかなり近いサボイ・ホテル(The Savoy(ザ サボイ))で、シアターメニューなり正式のディナーを選んで、会食を始めて、途中で時間を見て劇場に出かけて、終演後、ホテルに帰ってきて、続きの食事を楽しむと言うコースを取ることも珍しくなかった。
今では、ロイヤルオペラハウスに接続して、広大なパブリックスペースとエンターテインメントスペースが増築されて、素晴らしいレストランやバーなど、至れり尽くせりのアミューズメント施設が整っており、どんなディナーでも楽しむことが出来る。
しかし、その前は、小さなバーカウンター併設のレストランが、中二階の張り出しに一か所あっただけなので、予約など難しく、
信じられないかも知れないが、一階のサークル状の狭い円形ロビー(廊下?)に、テーブルを並べて俄かレストランが設営されて、開演前と休憩時間の度毎に会食を続けるのである。
普通でも狭いロビーなので、客をかき分けて、ウエイターが器用に会食者にサーブする様子は、さながら、サーカスである。
勿論、衆人環視下での食事なので、気楽ではないが、招待してくれた英人ビジネスウーメンは、気にせず、会話と会食を楽しんでいたので、これが、文化であろうと、私も日本文化などを語りながら一時を過ごしたのだが、良い経験をしたと思っている。
随分、オペラハウスの写真を撮ったが、ネガが倉庫で探せず、インターネットの写真を借用すると次の通り。左手の建物が増設建物。


オペラが長引けば、いくら、ロンドンでも、高級レストランは、11時くらいで、オーブンの火を落とすので、正式なディナーは難しくなるのだが、10時くらいの終演なら、十分に楽しめるので、大体、こうして、深夜頃まで会食をしながら夜長を過ごすことが多かった。
当時、ロンドン唯一のミシュランの三ツ星レストラン・ガブローシェに、遅れて行った時には、ホットのディナーは諦めざるを得なかったが、普通は、十分に楽しむことが出来た。
家族や気の置けない日本人の方たちとの観劇の夕べでは、劇場近くに沢山あるレストランを選んで、プレシアターメニューで済ますことが多かった。
ミュージカルやシェイクスピアの観劇の時も、殆ど同じような形式で済ませており、観劇や会食が終わった後は、大概は、劇場近くの駐車場に止めてあった自分の車を運転して、キューガーデンの自宅に帰った。
大体、夜遅くなると、ロンドンでも交通が少なくなって、30分くらいで帰宅できたので、比較的楽であった。
今は、東京での観劇の後は、急いで、メトロや東横線、JR、バスを乗り継いで鎌倉に帰っているのだが、終演が、10時近くになると、一寸苦痛になる。
ディナーは、当然、劇場のレストランやプレシアターで、軽く済ませることが多くて、ロンドンにいた時の様に、会話と美食を楽しむと言う余裕などは、殆どない。
話が横道にそれてしまったが、ここで強調しておきたいのは、ロンドンには、オペラ劇場のみならず、多くのミュージカル劇場やシェイクスピア劇場やコンサートホールがあり、カジノや歓楽ゾーン、パブやホテルや飲食街、等々、アミューズメント業界を育む巨大な裾野が広がっており、システムとして、「夜遊び経済」を醸成する土壌が息づいている。
ロンドンのシティの金融センターと同じで、一朝一夕に構築するなど無理な話である。ということである。
飲むと言う方には、興味がなかったので、ロンドンの歓楽街は殆ど知らないが、女王陛下が総裁のジェントルマンクラブ・ロイヤルオートモビルクラブのメンバーであったので、夜には、会食するなどよく訪れたが、イギリスでは、プレスティージアスなジェントルマンクラブでの社交は、英国紳士たちの誇りの様なものでもあって興味深い。
さて、日本の場合にも、私がロンドンでしていたような観劇を楽しむ方法が、いくらでもあるのであろうが、若い頃はともかく、最近ではそんなことがなくなってしまって、一寸、寂しいが、歳の所為でもあろうか、短くて終わる簡便な観劇が多くなっており、終わったら電車で家に帰る、ということで、まずまず、満足している。
ところで、日本の場合、日本の古典芸能である、歌舞伎や文楽、能・狂言、日本舞踊、落語・漫才などが、外国人をアトラクト出来るのかということだが、日本人自身が、それ程、興味を持って熱心に劇場に通って行くと言う傾向になく、集客に困っていると言う現状をどう考えるかということである。
私自身、これらの古典芸能の鑑賞にかなりの年月を費やしてきたが、今でも、勉強で非常に難しい状態であるから、訪日外国人は、昔、私が、パリで、コメディーフランセーズを観て、全く分からなくて面白くも何ともなかったのと同じ気持ちを持つのではないかと思う。
したがって、日本文化の粋であり日本の誇りである色々な芸術文化を組み込んで、「夜遊び経済」を立ち上げることは、非常に難しいことではないかと思っている。
そうなれば、できるのは、ユニバーサル・アーツと言うか、汎用性の利く欧米文化主体のエンターテインメントをアレンジした国籍不明の「夜遊び経済」が生まれてくるような気がするのだが、どうであろうか。
