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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ソチとリオデジャネイロのオリンピック

2013年10月21日 | 政治・経済・社会
   今朝のBS1 ワールドWaveで、近づくソチとリオデジャネイロのオリンピックについて、現状報告をしていた。
   BRIC'sの台頭で、ロシアやブラジルが脚光を浴びていた時期でもあり、世界中の期待が高まっていた時点での決定であったので、当然の帰結であったのであろうが、リーマンショック以降の長引く世界的な経済不況の影響で、BRIC'sなど新興国の経済状況が悪化して、オリンピックの準備が間に合うのかと、危ぶまれている。
   そのような状況下で2020年のオリンピック会場決定選挙が行われたので、それが幸いして、福島問題以外に、何の心配もない安全確実な東京が選ばれたのであるから、良かれとしよう。


   オリンピック協会から2000億円程度の補助金が出るようだが、最近の夏期オリンピックの開催費用総額一覧だが、下表のとおり、北京以降、一気にコストが増大している。
   北京の場合には、北京そのものでの競技会場などが未整備であった上に、劣悪なインフラ状態であったので、空港や道路など膨大な付帯設備を伴うインフラ投資のために膨れ上がり、ロンドンの場合にも、ドックランド以東のヒンターランドの開発を意図した都市計画実施を伴ったので、一挙にコストが拡大した。
   

   
   
   さて、4か月後に迫ったロシアのソチ・オリンピックだが、あまりにもコストの増大と遅れに痺れを切らしたプーチンが、自ら、会場に乗り込んでハッパを賭けているのだが、突貫工事の連続にも拘わらず、会場周辺は工事の真っ最中。
   問題は、当初予算の4倍の5兆円と言う杜撰ぶりだが、賄賂にも多くが消えたと言う。
   問題は、会場が、チェチェンなど紛争地帯に近く、遅れたインフラ整備と治安維持のための膨大な整備等を見越した会場建設のために、コストが膨大化したと言う要因もある。
   
   


   ブラジルのリオでの夏期オリンピック会場の準備状況だが、これも、経済的な問題もあって、異常に遅れていると言う。
   天然資源は豊かで、世界屈指の農業国で食糧問題は一切問題なく、南米隋一の工業を誇る産業国家で、3拍子も4拍子も揃った恵まれたブラジルが、オリンピック会場を整備する費用にこと欠くなどとは考えられない筈なのだが、そこは、ラテン気質の濃厚な政治腐敗と国家統治の貧困さ故に、世界経済が悪化すると、一気にしわ寄せがきて、政治も経済も暗礁に乗り上げる。
   サッカー王国のブラジルで、ワールド・カップの会場建設にさえ反発して、デモなど考えられないような国民性でありながら、全土に、激しい暴動が展開されたブラジルであるから、オリンピック開催までには、かなりの紆余曲折があるであろう。
   


   リオ・オリンピックで、もっと、心配なのは、治安問題の深刻さであろう。
   リオに近づくと、眼下に、コルコバードの丘に立つ巨大なキリスト像が聳え、その背後の真っ青な海に、こんもりと盛り上がった巨亀が伸びあがったような小島ポン・デ・アスーカが現れて、その後方に、高層ビルが林立したリオの町並を背負った白砂のコパカバーナやイパネマの海岸線が広がり、世界一美しい海岸風景が展開され、もう、これだけで、神様は、ブラジル人であるに違いないと思ってしまう程感激する。
   しかし、この美しいリオの町並の背後の小高い山の斜面には、巨大な貧民窟ファベーラが張り付いている。
   私がブラジルにいた35年くらい前とは大分違って、ビル化しているが、実態は、少しも変わっていないと言うことである。
   


   今朝のHNK BSニュースは、アメリカABCの「PARADISE LOST」と言うタイトルの「リオデジャネイロ 麻薬蔓延の実態」を放映して、このファベーラの路上で、麻薬が堂々と売られている様子や子供が麻薬を吸引する姿、傍若無人の麻薬ギャング団のボスや情け容赦のない、しかし、賄賂に弱いリオの麻薬取締武装隊の実態などを語っていたが、いくら、BRIC'sの雄として脚光を浴びているブラジルも、いまだに、暗黒世界は健在なのである。
   
     

   
   以前に、このブログで、アンドレス・オッペンハイマー著「米州救出」をブックレビューして、
   リオのファベーラなどでは、学校にも行かない数万人の若者たちが居て、多くが8歳から10歳で麻薬を初めて、犯罪者となっても不思議ではなく、両親に会うこともなく、教会やスポーツクラブなどどんな組織にも属さず、路上で生活し、麻薬を消費する犯罪労働者になっている。と言った世界で最も暴力的な地域は、南米だと言うレポートについて書いたことがる。
   中東やアフリカ、アジアの各地では、あっちこっちの紛争地帯で、険悪な暴動や内戦が勃発しているのだが、表面だっては、そんな紛争の起こっていない筈のラテン・アメリカが、実は、最も深刻な政治経済社会の根底に根差した暴力的な病巣を内在した地域であると言う指摘であって、肝に銘じておくべきだと思っている。


   さて、大分話が、あっちこっちに飛んでしまったが、要は、成長著しい筈の新興国は、成熟した先進諸国とは違って、インフラの整備の遅れのみならず、経済情勢を確保するための基本ともなるべき政治制度が未成熟故に、たとえ、それが一過性のスポーツの祭典であるオリンピックを成功裏に実現する為にも、多くのハードルをクリアしなければならないと言うことである。
   BRIC's、BRIC'sと、成長局面のオモテばかりを見て、浮かれていてはならないと言うことでもあろうか。
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