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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

民主党鳩山代表の外交論~ニューヨーク・タイムズ論文

2009年09月01日 | 政治・経済・社会
   30日の衆議院総選挙は、民主党のランドスライド的な大勝利で終わった。
   世界のメディアは、ドラスティックな政権交代劇を一斉に報道したが、半世紀も続いてきた比較的穏健なアメリカ型(?)自民党政治は変わると言われても、世界中の人々は、民主党とは如何なる党なのか馴染みがないので、日本がどのような国になって行くのか、全く分からない。
   ところが、選挙前の8月27日のニューヨーク・タイムズが、鳩山由紀夫代表の「新しい日本の道 A New Path for Japan」と言うタイトルの論文を掲載しており、この論文が世界を駆け回った。

   PHPのVOICEに掲載された『祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印』と言うオリジナルの論文を、ニューヨーク・タイムズが抜粋して掲載したので、どうしても舌足らずとなり、鳩山代表の意図するニュアンスが、正確に伝わっていない。
   その上、クーデンホフ・カレルギーの高邁な思想FRATERNITE(鳩山一郎は友愛と訳した)をベースに、日本人魂を加味した独自の政治哲学を展開しており、能書きだけを提示しているようなものであるから、そっくりそのまま、欧米人、特に、思想的背景の全く違うアメリカ人に理解される筈がない。

   日経が、『鳩山論文、米国内で批判の声 「グローバル化に否定的」』という記事で、米国主導の経済のグローバリゼーションへの否定的な論評に反発、オバマ大統領との初首脳会談が友好的にならない可能性、「アジア共通通貨」創設構想が米国の世界経済のブロック化阻止と対照的などとネガティブな報道をしたのであるから、のっけから、鳩山対米外交が躓いたような印象を与えている。

   私は、遅ればせながら、両方の論文を読んだが、日本の次期首相鳩山由紀夫の論文であるから物議をかもすのかも知れないが、オリジナルの論文など、あのオバマが選挙中持ち歩いたと言うファリード・ザカリアの「アメリカ後の世界 POST-AMERICAN WORLD」や中谷巌の「資本主義はなぜ自壊したのか」と言った書物と殆ど同列の理論展開であり、むしろ、哲学性と理想性が強い分、感激的でさえある。

   尤も、
   冷戦後の日本は、アメリカ発のグローバリズムという名の市場原理主義に翻弄され続け、グローバルエコノミーが国民経済を破壊し、市場至上主義が社会を破壊した結果、このような惨憺たる状態に変貌してしまったと断じ、
   アメリカの金融危機やイラク戦争の失敗などが、アメリカ一極時代の終焉を予感させ、ドル機軸通過体制の永続性への危惧を抱かせるなど、アメリカの時代は既に終わってしまっており、世界は多極化して行くと一刀両断に切り捨てているのであるから、分かっていても、アメリカ人には面白い筈がない。
   (日本人の私でさえ、日本の経済社会の悪化は、アメリカ資本主義のためと言うだけではなく、それに乗って踊っていた日本の方にも、深刻な欠陥があったと思っている。)
   
   更に、アメリカとの関係については、友愛が導くもう一つの目標は、「アジア共同体」の創造であろう。と言った後で、
   「もちろん、日米安保体制」は、今後も日本外交の基軸でありつづけるし、それは紛れもなく重要な日本外交の柱である。」と付け加えただけで、如何に、アジアにおける日本外交が重要であるかを畳み掛けて説いていて、日本がこれまで享受してきたアメリカとの友好関係による成果などについては一切言及していない。
   この部分の翻訳だが、「Of course, the Japan-U.S.security pact will continue to be tha cornerstone of Japanese diplomatic policy.」となっており、日本語の重さと言うか重要なニュアンスが伝わっていない。
   
   果たして、普通のアメリカ人なら、殆ど、日米関係など分かっていないはずなので、
   アメリカの市場原理主義的グローバリズムが、日本のみならず、世界の経済社会をズタズタにしてしまったばかりか、自身の国力も昔日の面影もなく疲弊してしまって覇権国の地位を喪失するであろうから、日本は、今度は、外交をアジアに軸足を置くこととして、アジア共同体を創設してアジア共通通貨を作りたい、アメリカよさようなら、と言っていると言うニュアンスで、受け取るであろうから、頭に来たとしても不思議ではない。

   誤解を避けるために言及しておくが、鳩山代表の見解は、私自身納得行く部分が多いと感じているし、正確に伝われば、オバマ大統領のリベラルな政治哲学や思想と共通点が結構ある筈で、実りあるコラボレーションが可能だと思っている。
   ただし、政治や外交は、極めて現実的であらねばならない筈であるし、現在、世界中が危機的状態にあり、人類社会と地球の将来が岐路に立つ極めて重要な時期に、不用意な言説は切に慎むべきだと思っている。
   ケント・E・カルダーが「日米同盟の静かなる危機」(2008.12.20論評)で指摘しているように、両国のトップや賢人たちの太いパイプや交流がなくなり関係が希薄化してしまった今日こそ、特に、そうであろう。

   多言を避けるが、アメリカと対等の立場に立って、本当の付き合いをするつもりなら、日本をもっとしっかりした国にして、日本人も誇り高き一等国民としての気概を持たなければならない。
   まず、マッカーサーに、道徳と日本歴史と日本地理の教育を禁止されて日本魂を骨抜きにされてしまった悲しい過去を清算し、本当の日本を日本人に叩き込む教育改革から始めなければならない。

   それから、大前研一氏が、「最強国家ニッポンの設計図」で、アメリカは、まだまだ恐ろしい超大国であり、最早従う国や好きな国は殆どなくなったが、こちらから分かれ話を切り出したり反旗を翻すと徹底的に痛めつけてくるので、現在、日米関係は無風状態であるのだから、熱愛ではなくても添い寝はした方が良いと書いている。
   たとえ離婚話を切り出さなくても、日米関係は否応なく変わって行くのが世界の潮流で、日本はその流れに身を任せて居れば良いと言うことである。

   ファイナンシャル・タイムズも論評しているが、小沢一郎の陸軍空軍は不要で第7艦隊だけあれば良いとか、藤井裕久の日米地位協定の見直し論などは先方も先刻承知で、波風が立つのは必然と言うことだろうが、力も準備もない時こそ、大人の対応が求められるのである。
   
コメント
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