熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:チャーリー・ウイルソンズ・ウォー

2008年05月28日 | 映画
   タリバンとの戦いでいまだに民主化の進んでいないアフガニスタン問題に、アメリカが如何に介入してしまったのか、信じられないような実話を基に展開されているのが、この映画で、テキサス選出のチャーリー・ウイルソンズ下院議員(トム・ハンクス)が、テキサス6番目の富豪で美人セレブのジョアン(ジュリア・ロバーツ)に、アフガンの人々の為にアフガニスタンを救って欲しいのと言われて対ソ戦争の為にアメリカを巻き込む話である。
   2時間の映画なので、話が単純化されていて非常にシンプルだが、丁度冷戦時代で、アメリカが前面に出るわけには行かずCIAの極秘作戦として、パキスタンやエジプトやイスラエルを巻き込んで武器を調達し、反政府武装組織であるムジャーヒディーンに軍事的サポートをして、ソ連を撃退する過程を、ペシャワルの難民キャンプやアフガンでの戦闘場面を展開しながら娯楽映画として纏めていて面白い。

   アメリカを介入させて、ソ連を撃退したのが良かったのかどうかは疑問としても、終戦後、アメリカが完全にアフガンから手を引いてしまって、100万ドルの学校援助資金さえ出し渋った議会でのやり取りを映し出して、チャーリーが、「最後に失敗してしまった」とナレーションが入り、民間人として最高の栄誉を受けて表彰されるシーンとダブらせているのが面白い。
   その後、タリバン勢力がアフガニスタンを支配し、ムジャーヒディーンの一人であるオサマ・ビン・ラディンがアルカイーダとしてアメリカに楯突くなど、アフガニスタン戦争と世界的なテロを引き起こし、大変な世界的な危機の引き金を引くこととなる。
   ソ連がアフガニスタンに介入したのは1978年で、その後、チャーリー達の肝いりで米ソの代理戦争となり、ソ連の撤退まで10年かかったが、その後、アフガン戦争を経るも、まだ、アフガニスタンに平和と平安が訪れていない。

   その意味では、この映画は、テキサス選出ウイリアムズ議員が、下院の国防歳出委員会を説得して、500万ドルの援助資金を10億ドルまで引き上げて、アフガンの悲劇を救う為にアメリカを立ち上がらせたと言うエポックメイキングな事件を扱ったものだが、それが本当なら、当初は、アメリカは、冷戦の最前線であったアフガニスタンに、殆ど興味も関心も抱いていなかったということになる。
   結局、ソ連は、レーガンの仕掛けたスター・ウォーズ競争とアフガン侵攻により国力を消耗して、アフガン撤退2年後の1991年に崩壊してしまうのだが、
   同時に、アフガン戦争が、アサマ・ビン・ラディン率いるアルカイダを目覚めさせ、イスラム原理主義による国際テロが、イラク戦争の引き金を引いて、アメリカ経済を疲弊させて、更にサブプライム問題で窮地に落しいれている。
   そう思ってみると、この映画は、気の良いヤンキーの脳天気な娯楽映画のように思えてくるのが不思議である。

   ウイリアムズ議員が、フロリダの美人富豪の甘事に乗ってパキスタンのハク大統領に会ってソ連の脅威を知り、パキスタンのアフガン難民キャンプのすさまじさを見て発奮して、CIAのはみだし者ガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)を使って、極秘裏に、利害の錯綜するパキスタン、エジプト、イスラエルを巻き込んで、アフガンの武装組織ムジャーヒディーンを奮起させて、ソ連軍を撤退させる。
   しかし、この男は、資金集めのパーティに出ては、麻薬を吸い、ストリッパーと混浴する無類の遊び好きで、議員スタッフはチャーリーズ・エンジェルと呼ばれる美人女性ばかりで、大変なアフガン介入援助を画策している最中に、麻薬吸引容疑で逮捕されるかどうかの瀬戸際である。
   まともに見ておれば、当時、大統領や国務省、或いは、国防省などが、どう動いて、どのような反応をしたのか等と気になるのだが、そんなことはそっちのけで、アフガンの惨劇とソ連の脅威に触発されたチャーリーの破天荒な手柄話だけが突っ走る。
   
   とにかく、トム・ハンクスのチャーリー議員は、出色の出来で流石に素晴らしい映画俳優だけあって、国会議員だと言ってもストリッパーに笑い飛ばされて信用されないハチャメチャな桁外れの議員から、外国や国会内を精力的に走り回ってアフガン救済の為にアメリカを巻き込む活躍ぶりや風格さえ見せる下院議員の仕事振りまで堂にいっていて、楽しませてくれる。
   いかれCIAガストを演じるフイリップ・シーモア・ホフマンが実に良い味を出していて、これに、妖艶な魅力を振りまくジュリア・ロバーツが加わり、中々魅力的な議員助手を務めるエイミー・アダムス、老練な国防歳出委員会のドク・ロング委員長のネッド・ビーティなど助演陣の活躍で、楽しい映画となっている。

   たった一人で世界を変えた本当にウソみたいな話・・・と言うのが、日本語のプロモーション文句だが、ほんとにそうなら、世界史には必然など、全くないと言うことかも知れない。
   あの時、一寸針が横に振れた為に、世の中はこんなに変わってしまった、そんなことの積み重ね。地球温暖化も、針が振れて、宇宙船地球号を救って欲しいと思う。
コメント
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