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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イノベーションと経営(2)・・・シュンペーターの新結合

2006年01月08日 | イノベーションと経営
   イノベーションを技術革新と翻訳したことによって、日本人のイノベーションに対する考え方が、新技術の発明、開発、導入と言った技術中心に捕らえられることが多い。
   もっとも、欧米の専門書においても、技術革新に焦点を絞って描かれている本も多いので、仕方がないとしても、やはり、時にはシュンペーターの意図したイノベーションに戻って、考えてみることも有用であろう。

   シュンペーターは、大著「経済発展の理論」で、イノベーションを、非連続的で急激な変化としてとらえ、「この変化は、経済体系の内部から生ずるもので、新しい均衡点は、古い均衡点から微分的な歩みによっては到達し得ないようなもの」だとして、駅馬車から鉄道の変化を例に挙げている。

   我々が学生の頃は、イノベーションを「新結合」と言う訳語で理解していたが、シュンペーターは、イノベーションとして次の5つを挙げている。
   (1)新しい財貨の生産
   (2)新しい生産方式の導入
   (3)新しい販路の開拓
   (4)原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
   (5)新しい組織の実現


   このようなイノベーションによって、古い体系が創造的に破壊されて経済発展が起こるわけであるが、事業の場合は、アンテルプルヌール企業家が、リスクを冒してこのイノベーションを導入して、成功すれば創業者利潤を得ることとなる。
   この時、資金的にサポートするのが金融機関であり、経済発展を支える重要な役割を果たす。

   ドラッカーの経営学は、この広い意味での新結合をイノベーションと捉えて展開されているのでその活用は多岐にわたっているのだが、狭い意味での技術革新として理解されている為に混乱を招いているケースが結構ある。

   さて、何故シュンペーターを持ち出したかと言うの、先日のブルーオーシャン理論での「バリュー・イノベーション」を展開するには、シュンペーター流の新結合の考え方を取る方が分かり易いと思ったのである。

   自動車工業でのブルーオーシャン展開について、著者は、フォードのT型車やGMの多品種多機能車種の展開、日本の小型車、クライスラーのミニバン、SUVがブルーオーシャンを開いたとしている。
   実際に、多くの例を検証するまでもなく、この自動車産業のように、技術革新そのものによってではなく、買い手が重んじる諸要因と技術を結びつけることによってブルーオーシャンが生み出されていることが多いのである。
   言い換えれば、技術のみならず、シュンペーターの言う新結合による変化が企業にビジネスチャンスを与えて、新市場の展開を助長していると言えないこともないのである。

   バリュー・イノベーションは、イノベーションとバリューを両方を考慮して、均衡を保たなければならないと言う。
   ブルーオーシャンの根幹は、買い手にとっての価値を押し上げることであるが、イノベーションを伴わずに価値だけを高めようとしても無理であり、価値を重視せずにイノベーションだけ実現しても顧客に受け入れらない。
   イノベーションをビジネスチャンスとして活用できるかどうか、生かすも殺すもマネジメントの能力であろうか。
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