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ぽかぽか春庭アーカイブ「(こ)幸田文『えぞ松の更新』」

2018-11-01 00:00:01 | エッセイ、コラム
20181101
ぽかぽか春庭アーカイブ>(こ)幸田文『えぞ松の更新』

at 2003 10/04 06:41 編集
春庭千日千冊 今日の一冊No.9(こ)幸田文『えぞ松の更新』初出「學燈」『木』所収 

 山中に倒れた松の朽ちた幹から、新しい芽が生い立ち、幹の形そのままに新木の列ができる。これを倒木更新という。私は幸田文のエッセイでこの倒木更新という現象を知った。
 死すべき生物の運命を享受し、いのちの輪廻を納得するために、何度でも読み返す一文。幸田文のすばらしい日本語文体を堪能し、倒れ伏した老木が若木の栄養となって、新しい命を育てる永遠のめぐりを味わえる。
 読んでないけれど、たぶん『葉っぱのフレディ』も主題は同じじゃないかしら。フレディも勿論、いい本だろうが、幸田文の日本語は、「言文一致」以後の言語表現のひとつの到達点。

at 2003 10/04 06:41 編集 ラグナグ国とえぞ松の更新
 中願寺雄吉さん逝去の報と同じ日の夕刊(2003/09/29付)に掲載された富岡多恵子のエッセイ「ラグナグ国」について。
 ラグナグ国は『ガリヴァー旅行記』に出てくる架空の国。その国では稀に「不死の人」が生まれる。不死の運命を持つが、不老ではないため、200歳300歳ともなると、記憶も失い「ただ生きているだけ」の状態になる。
 「作者スウィフトは不死人間の凄惨さをくわしく書いてゆく」と富岡の記述。
 私は、おおかたの人と同じく、子ども向けの「ガリバー」しか読んだことがなく、巨人と小人の国くらいしか覚えていなかった。ラグナグ国を知ったのは阿刀田高の『貴方の知らないガリバー旅行記』による。

 富岡多恵子のエッセイのラスト
 『高齢の人に、「いつまでもお達者で、、、」などと何気なくいったあとで、「いつまでも」の残酷に慄然とすることがあるが、ここはラグナグ国ではないので、怒るひとはいない

 伯母がいろいろ忘れていっても、それでも楽しく生きて欲しいと願うのは、周囲の者のわがままだろうか。本人は失われていく記憶におびえ、自分が自分でなくなっていく過程におののいているのだろうか。天の采配によってお迎えがくるその日まで、命のかぎり生き抜いてほしいと願うのみ。
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2010/01/18
 母の姉、あや伯母は、2005年の夏に90歳で大往生を遂げた。88歳からの2年間は、姪たちの顔も名前もわからなくなっていた。惚けてよかったと思えるのは、最愛の姪が54歳で伯母より先に亡くなったことがわからなかったこと。我が子のようにかわいがり、母代わりに育てた姪(私の姉)が、あや伯母より先に死ぬなんて誰も思っていなかったけれど、伯母にも信じられないことだったろう。でも、姉が先に亡くなったことを伯母は理解できなかったようだった。

 伯母が亡くなった1週間後に、妹モモの次女が出産し、まさに「えぞ松の更新」を実感した。だれかが死に、だれかが生まれる。命はこうして続いていく。
 私の姪たち。2009年にモモの次女は二人目の男の子を出産。モモはふたりの孫のおばあちゃんになりました。モモの長女は、保育園の保母さんとして働きながらバンド活動を続けています。姉の長女がシングルマザーで育てている4人の子豚たちも中学3年生から小学5年生の末っ子まで、元気に成長しています。姉が亡くなったとき、おばあちゃん子だった末っ子がどう生い立つのか不安でしたが、兄妹の中で一番背が高くなりミニバスケットの選手になりました。車椅子の青年と結婚した夫の姪も1歳になった息子との家族写真を2010年の年賀状にしてくれました。えぞ松は更新されています。

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2018/11/01
 我が一族の倒木更新。姉の孫たち4人。看護師をしている一番上の孫娘は、8月に結婚相手を連れて妹一家と姉の長女一家合同のキャンプに参加。まもなく姉のひ孫の顔も見ることができるだろうと思います。
 妹の次女一家の孫たち3人、2005年に伯母が亡くなった一週間後に生まれたという一番上の男の子は、もう中学生。妹長女の息子も3歳になるし、妹は孫の世話を頼まれては「ああ、疲れた」と言っています。
 母は、ひとりの孫も見ることなく早世しましたが、私の父は、6人の孫、ひ孫2人を見ることができました。ひ孫は、8人に増えています。
 これだけ一族が「再生産」に貢献したのですから、我が家の娘息子が「非生産」組として病を抱えて生きていくのも、どうぞご寛恕を。直接社会の生産にかかわらない者も、人として尊重され、心豊かに生きていける世の中でありますように。

<つづく>


(「け」の項なし)
コメント (2)
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