春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「2021年11月目次」

2021-11-30 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211130
ぽかぽか春庭「2021年11月目次」

1102 ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2021秋映画(1)キネマの神様
1104 2021秋映画(2)ブラックバード家族が家族であるうちに
1106 2021秋映画(3)ノマドランド
1107 2021秋映画(4)くれなずめ

1109 2021アート散歩夏(9)故郷の風景 in 平山郁夫シルクロード美術館
1111 2021アート散歩夏(10)再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋- in 文化学園服飾博物館
1111 2021アート散歩夏(11)包む-日本の伝統パッケージ in 目黒美術館
1113 2021アート散歩秋(12)デミタスカップの愉しみ in 松濤美術館
1114 2021アート散歩夏(13)しかけ絵本展 in 八王子夢美術館
1116 2021アート散歩夏(14)岩合1光明の猫写真展 in 富士美術館
1118 2021アート散歩夏(15)十王図 in 神奈川歴史博物館
1120 2021アート散歩夏(16)新東京の版画 in 神奈川県立歴史博物館
1121 2021アート散歩夏(17)相撲錦絵&大江戸の華・武家の儀礼と商家の祭 in 江戸東京博物館
1123 2021アート散歩夏(18)ざわつく日本美術展  in サントリー美術館
1125 2021アート散歩夏(19)相撲錦絵&大江戸の華・武家の儀礼と商家の祭 in 江戸東京博物館 

1127 ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩秋(1)川瀬巴水展 in 大田区立郷土博物館
1128 2021アート散歩秋(2)イスラーム王朝とムスリムの世界」展 IN 東京国立博物館東洋館
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「イスラーム王朝とムスリムの世界 IN 東京国立博物館東洋館」

2021-11-28 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211128
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩秋(2)「イスラーム王朝とムスリムの世界」展 IN 東京国立博物館東洋館

 9月20日敬老の日、東京国立博物館は、「常設展だれでも無料」でした。本館、東洋館、法隆寺館、考古学室、庭園、通常1000円のところ、まるまる無料。春庭は、70歳以上ですからもともと常設展は無料なんですけれど、私の前にチケットを購入しようとしていた学生二人組は「えぇ~、タダだって。らっき~!」と喜んでいました。

 私は、本館の国宝室の展示が変わるたびに常設展に来るようにしています。在籍している留学生には「次の無料公開日は文化の日、11月3日だから、みんな見に行くように」と、宣伝したのですが、だれも見にいかなかったみたい。まだ国宝だの文化財だのを喜ぶより、ショッピングや行楽地へでかけるほうが楽しい年ごろだろうから、文化の日に博物館なんてのは年寄り趣味に思えるのでしょう。

 20代のころ、金沢兼六園で「お庭が好きなので、見にきたんです」と地元の人と話したとき、「え~!若いのに珍しいね」と言われて、え、そんな珍しがられる存在なのかと、びっくりしたことがありましたが、確かに庭園巡りの20代ってのは、シブかったかも。
 今回は、東博のお庭は歩きませんでした。最初に東洋館へ。

 東洋館。中国や朝鮮、アラブ世界古代エジプト、など、地下1階から5階まで、アジアのお宝が並んでいます。3階屋外のテラスから東熊の表慶館を眺める「ぼうっとしている」時間も好き。ただし、今はコロナ終わるまではテラスに入れないのが残念。

 会期:2021年7月6日(火) ~2022年2月20日(日)

東洋館の口上
 このたびイスラーム関連の豊富なコレクションを有するマレーシア・イスラーム美術館の全面協力を得ることで、特定の国家や地域によらない、世界規模のイスラーム美術の展示が実現しました。
 イスラーム教は、7世紀にアラブ人のムハンマドが預言者として唯一神に対する信仰を説き、創始した宗教です。その後、イスラーム教は西アジアのみならずヨーロッパ、北アフリカ、中央アジア、東南アジア、そして東アジアへと広がり、キリスト教に次いで世界で2番目に信者の多い宗教にまで発展しました。イスラーム教を受容した世界各地では、多くのイスラーム王朝が交替しましたが、いずれも各地の文化を融合させた独自のイスラーム文化を展開してきました。
 この特別企画では、こうしたイスラーム文化の多様性を知り、イスラーム世界への理解を深める手がかりとなるような美術工芸品や歴史資料などを紹介します。

 東洋館地下1階は、通常は東南アジアやインドの美術品が並べられていますが、マレーシア博物館の展示品を中心に、イスラム世界の歴史的な流れに沿って、多様な品々を見ることができました。

・第1章 はじめに・ムスリム世界の歴史と文化
・第2章 初期イスラム王朝
・第3章 モスクの美術
・第4章 北アフリカおよびスペイン
・第5章 セルジューク朝
・第6章 マルムーク朝
・第7章 イルハーン朝とティムール朝
・第8章 サファヴィー朝とカージャール朝
・第9章 武器と外交
・第11章 イスラーム書道芸術
・第12章 ムガル朝
・第14章 オスマン朝

 と、こまかく章立てが分かれて、歴史と地域別に展示されていました。章立てのなか、10と13が抜けているのはなぜなんでしょう。日本の病院に4階や4号室が抜けているようなものなのか、よくわかりません。

 イスラム世界についてほとんど知らないので、歴史の教科書でオスマン朝だのセルジューク朝だの見た気がするものの、カージャール朝とかサファヴィー朝とかまったくはじめて目にするものだったし、イスラムの歴史も地理的な広がりも、よくわかっていなかったなあと実感します。
 こうしてイスラム美術の全体を見渡す展示をはじめてみました。
 解説も懇切丁寧なもので、私のようにイスラム文化にうとい者にも、時代や地域がよくわかりました。

 ミフラーブ・パネル
 中央アジアまたはイラン(ティムール朝)14~15世紀 


 博物館の解説
 
ミフラーブ・パネルはアーチ形のタイルで、中央部分とその縁飾りで構成されています。ターコイズ・ブルーの濃淡で施釉(せゆう)され、様式の異なる文字文(もじもん)で装飾されています。モスクの礼拝する場所に設置され、イランや中央アジアの建築によく見られます。 

  ミフラーブ・パネルの左上の星型は、ラスター彩藍釉鳥文タイル イラン13-14世紀


 人物文タイル イラン・サファヴィー朝 17-18世紀


 釉下彩人物天文板 イラン・カージャール朝 19世紀


 エナメル彩人物文鉢 イラン 13世紀

 ラスター彩水差し スペイン
 

 ケンタウルス文タイル イラン・サファヴィー朝 17世紀


 陶製文字文鉢イラン ニーシャ―プール10世紀
 陶製多彩釉刻花文皿 イラン10世紀
 陶製鳥文鉢 イラン ニーシャ―プール10世紀 
 

 真鍮水差し スマトラ19世紀

 インド細密画 シャージャハーンと息子アウラングゼーブ  ムガール張750頃

 皇帝アウラングゼーブ騎馬像 17世紀

白釉藍彩花卉文大皿 トルコ イズニーク


 インドムガル朝のアクセサリー。イスラム女性には不動産所有が許されていなかったので、女性たちは華麗な金製品をできるかぎりたくさん身に着けて財産にしていました。

 インドの細密画をはじめ、多彩な文物の数々。マレーシア・イスラーム美術館の宝物をじっくり見る機会になりました。
 海外渡航がなかなかできない昨今。マレーシアにも出かけられないときに、貴重な展示、ありがたかったです。
 よい敬老の日でした。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「川瀬巴水展 in 大田区立郷土博物館展」

2021-11-27 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211127
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩秋(1)川瀬巴水展 in  大田区立郷土博物館

 町田市立版画美術館で歌川広重小林清親川瀬巴水の版画を並べて見る企画があり、これまであまりまとめて見る機会がなかった川瀬巴水の版画を楽しむことができました。
  それからちょうど2ヶ月たって、大田区立郷土博物館でも、川瀬巴水の展覧会があり、町田の版画美術館よりも大規模に巴水の版画を見ることができました。

大田区立郷土博物館特別展「川瀬巴水ー生誕130年記念ー」
会期:7月17日=9月20日(前期後期の展示替えあり)

 ↓の版画は前期展示だったらしく、私が見た作品中にはありませんでした。


 私と娘は後期の9月11日に観覧。大田区立郷土博物館は、全会期「だれでも無料」での公開でした。無料だったので、絵ハガキのほか、図録も買いました。

 絵ハガキと図録。おまけのトートバック


 巴水が長く大田区に居住したご縁により、遺族が巴水のスケッチブックなどを地元に寄贈しており、「スケッチブックの下絵と完成した版画を並べてみる」という鑑賞ができました。
 巴水は、写生に徹することを肝に銘じていたので、写生した下絵をほぼそのままに版画原画にしていることがよくわかりました。

 川瀬巴水「男鹿半嶋 嵩雀窟」1926(大正15)年 


 写生帖と版画のセット展示


 一室で記録ビデオの上映がありました。
 川瀬巴水自身がナレーションを担当し、写生散歩に出て、こどもたちに囲まれて楽しそうに写生。写生帖を彫師に渡し、克明に何枚かの下版に掘り起こす。下版を摺り師が丁寧に色合わせをして一枚の版画が出来上がるようすが上映されていて、とても参考になりました。

 しかしながら、私も娘も強く感じたこと。フィルム撮影された古い記録をそのままDVDに焼き直したものらしく、音声処理がひどかったです。BGMの音が大きくて、小さな声の川瀬巴水のナレーションがほとんど聞き取れませんでした。最初私の耳が遠いので聞こえないのかと思っていたら、地獄耳の娘にもほとんど聞き取れなかったというのです。古いフィルムのはじっこに音声記録がついているはずで、音声を別処理すればBGM[とナレーションが分けられると思うのだけれど、太田区立郷土博物館は技術的にできなかったのか面倒だったのか、ナレーション聞こえない上映になっていました。
 でも、彫師と刷り師のワザがよくわかってよかった、と娘と帰り道で感想を言い合いました。

 大田区馬込文士村に住んだ巴水ですから、太田美術館の一押しは「馬込の月


 展示は、川瀬巴水の初期のころの絵、写生帖、伊藤深水ら版画画家の集まりの写真など、遺族から寄付された絵や遺品など多岐にわたり、目をみはるものでした。

 東京12景はじめ、日本全国をくまなく写生して歩いた巴水。美しい日本の風景を楽しめました。



 

 

 最近立て続けに川瀬巴水の版画を見ることができ、彼が全国をくまなく写生して歩き、写生の絵を彫師や刷り師との共同作業によって版画を生み出す過程も知ることができました。無料公開、大田区は東京の南のはじっこ。あまり縁のない区でしたが、これを機会に馬込文士村など歩いてみようかと言う気になりました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「相撲絵 &大江戸の華・武家の儀礼と商家の祭 in 江戸東京博物館」

2021-11-25 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211125
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(16)相撲錦絵&大江戸の華・武家の儀礼と商家の祭 in 江戸東京博物館

 8月9日(祝日山の日)、江戸東京博物館を観覧。常設展と特別展を見ました。
 5階常設展示内の企画展示は「相撲絵」でした。
 会期:7月17日-9月5日


 博物館の口上
 江戸時代、相撲観戦は庶民の娯楽としてひろまり、プロ力士集団の活躍により18世紀末頃に隆盛を極めます。この頃、時を同じくして黄金期を迎えたのが、多色摺たしょくずりの木版画「錦絵」です。役者絵や美人画の発展にともない、それまでの画一的で素朴な相撲版画から、力士ごとに異なる体形や顔の特徴を捉えた相撲錦絵が登場します。力士の姿や相撲観戦の賑わいを臨場感たっぷりに伝える相撲錦絵は、興行の熱狂を支えた立役者であり、スター力士が人気を誇るためにもなくてはならないものでした。
 本展では、相撲博物館と国立劇場の協力を得て、相撲錦絵を中心に、江戸の相撲の多様な魅力を紹介します。

 今でもスポーツ選手は子供から大人までを魅了する人気者です。しかし、江戸時代の相撲力士の人気たるや、現代の比ではありません。野球サッカーラグビーゴルフテニス、憧れのスポーツ選手ひしめく現代と異なり、江戸の人々の遊楽といえば、第一は吉原、歌舞伎。そしてスポーツは相撲。相撲力士の姿絵や取り組みの錦絵は、江戸土産としても大人気でした。

 展示は、3章で構成されていました。
第1章 黄金期の幕開け
第2章 力士と絵師の協奏
第3章 都市・江戸と相撲

 相撲錦絵


 ほとんどは江戸東京博物館の所蔵品ですが、相撲博物館からの借り入れ展示も。なかには、個人所蔵の江戸の大横綱谷風(1694-1736 )の横綱と木綿足袋の展示もありました。いったいどなたが貴重な品を元禄時代から伝えて保存しておいたものなのか。大きな足袋に見入りました。

 谷風が身に着けた綱


 ほんとにこんなに大きかったのかしらと見上げる横綱パネル


 1階の特別展では、「大江戸の華・武家の儀礼と商家の祭」を開催していました。特別展なので、こちらはシルバー料金で入場。

 江戸東京博物館の口上
 「大江戸」 この言葉は、世界有数の大都市であった江戸の活発かつ明るい印象を想起させます。18世紀初頭、江戸は推定で100万人もの人口を擁する都市でした。東京都江戸東京博物館は、この夏、特別展「大江戸の華」を開催し、都市江戸の活発で明るい一面に迫ります。 本展では、江戸の武家や商家の儀礼、祭りなどの年中行事をとりあげ、江戸の人びとの暮らしや人生における“ハレ”の場面や舞台を描いていきます。江戸東京博物館が所蔵するコレクションからよりすぐりの品々はもちろん、国内各所から優品を集めるとともに、イギリス・アメリカからも二領の鎧が日本に里帰りします。これらの品々は、江戸に生きた人々の明日への活力を私たちに伝えてくれることでしょう。 “ハレ”という場面や舞台が明日への活力に通じる。このことは江戸時代に限ることではなく、現代のわれわれにも通じることではないでしょうか。本展覧会がコロナ禍に見舞われたこの時代にあって、明日への活力を考える場になれば幸いです。

会期:2021年7月10日(土)〜9月20日(月)

 「大江戸の華ー武家の儀礼と商家の祭」という展示、プロローグは、イギリスの王立武具博物館から里帰り展示の「色々威胴丸具足」。岩井与左衛門の手になる立派な鎧兜です。



 徳川秀忠肖像


第1章 式正-武器と儀礼
 戦乱がおさまった江戸時代中期になると、武器である鎧も兜も鉄砲すらも、武器としては使用することもなくなり、大名家の権威を示すものとして飾られたり、お殿様が家臣に下賜したり、華麗な儀礼用の品になってきました。

 ずらりと並ぶ武家の儀礼用甲冑
 



・第2章 年中行事 お稲荷様と雛祭り
 富裕な商家では、自邸内の稲荷社を近隣の信仰のために公開したり、町内祭礼用に獅子頭やのぼり旗を豪華にしつらえたりして、自家の繁栄を誇りました。


・第3章憧憬-彩の道具と装い
 花嫁衣装をはじめ、婚礼調度品は華やかに家中を彩りました。蒔絵の鏡も女籠も、打掛の華やかな縫い取りも、家の豊かさを存分に示して、花嫁をより一層美しく引き立てたことでしょう。





 山の日のお休み、山とはかかわりない江戸東京博物館の一日となりましたが、興味深い展示をいろいろ見ることができました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「ざわつく日本美術展 in サントリー美術館」

2021-11-23 00:00:01 | エッセイ、コラム


2021121
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(16)ざわつく日本美術展 in サントリー美術館

 夏のアート巡り。サントリー美術館。年間パスで「ざわつく日本美術展」を見ました。サントリー美術館開館60年記念展の所蔵展のひとつ。会期が終わる直前8月28日土曜日に観覧しました。

会期:7月14日(水)--8月29日(日)

 美術館の口上
 ある作品を見た時、「えっ?」「おっ!」「うわぁ…」などと感じたことはないでしょうか?本展では、こうした言葉にならない「心のざわめき」を、作品をよく見るための、大切なきっかけと捉えてみます。というのも、「いったい私は、この作品のどこにざわついたのだろう?」と考えることで、目の前の作品により一層興味を覚えるからです。
 そこで今回は、思わず「心がざわつく」ような展示方法や作品を通して、目や頭、心をほぐし、「作品を見たい!」という気持ちを高めていきます。サントリー美術館の名品から珍品、秘宝まで、作品を「見る」という行為を意識して愉しみながら、日本美術のエッセンスを気軽に味わっていただける展覧会です。
 作品との出会いによって沸き起こる、自分自身の「心のざわめき」に耳を傾けると、日本美術の魅力にぐっと近づけるような、意外な発見があるかもしれません。

 展示の構成は。
 うらうらする ざわざわする じろじろする ばらばらする ちょきちょきする はこはこする、などのキーワードによって並べられ、たとえば「うらうらする」では、通常の展示では覗けないような裏側を見せて展示されています。
 何度か訪れているサントリーなので、↓の作品ほか、何度も見ているものもありましたが、裏側のおもしろさを生かした並べ方でした。
 何度めかに見た南蛮船が描かれた高坏も、鏡で裏を丁寧に見せてくれたので、裏側には南蛮の子供が描かれていたことにようやく気付きました。
 
 


 「ちょきちょきする」のコーナーでは、こんな展示の方法。
 江戸時代に作られた薩摩切子「紅色被筆筒」。もし、これだけ展示されていたら、ああ、筆入れを薩摩切子のガラスで作ったんだな、色合いも見事、と思うだけだったでしょう。もちろん、それで通り過ぎていいのですけれど。しかし、同じ薩摩切子の「紅色被栓付瓶」と並べてみると、ふた部分が破損してしまった瓶の上半分を切り取って(ちょきちょきして)筆入れを作ったのだろうと言う工夫がわかります。

 2階階段から見る展示室


 いつもは絵だけ眺めて通り過ぎる絵巻物。文字の解説を「じろじろ」してじっく読んでみれば、、、、、
 女主人は、「今宵は胸が痛むから早く寝たい」と、召使をさがらせたのですが、その寝所に好色な法師が忍び込んでくる一場面。
 女主人は、一夜を法師とともにし、翌朝法師を袋に中に入れて隠します。すると、となりの女性にみつかって、袋を貸すことに。隣の女人は袋に入りこんで法師とねんごろに、、、って、流麗な絵巻物の詞書、読めやしないから、さぞかし優美なことがかかれているのかと思って眺めていたんですが、そんな濡れ場が露骨な文章で書かれていたなんて。
 
 


 
 下の絵は、「放屁合戦絵巻」。
 室町時代1449(文安6)年に模写されたもの。おならをプープーと出し合って競ったという僧たちのイベントを絵巻にしています。
 このイベントは平安時代からお寺で人気の合戦だったそうです。

 日本美術も、格調たかく美しくってばかりじゃなく、愉快であったり露骨であったり。じろじろざわざわと見れば、おもしろい発見がいろいろありました。


 会期終了間際の駆け込み観覧でしたが、サントリーの年間パスポート、4月にコロナ休館していた分が延長になったので、まだあと一か月使える。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「 新東京の版画 in 神奈川県立歴史博物館」

2021-11-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20211121
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(15)新東京の版画 in 神奈川県立歴史博物館

 神奈川県立博物館で「十王図」を見た後、通常展示の明治以後の版画による新東京の風景が描かれた版画を見ました。所蔵版画を少しずつ通常展示していく方法のようで、展示点数は少なかったですが、面白かったです。

 江戸の浮世絵に描かれたのとはまた違う興味で新しく生まれ変わった東京の町が描写されています。

 以下、1871(明治4)昇斎一景が描いた新東京名所四十一景より(丹波コレクションより)

 小網丁箱崎橋よりみなと橋遠景 (現在の日本橋小網町箱崎)
 日本橋に荷揚げする船の行きかうようす、桜が花盛りなところを見ると、春の光景なのでしょう。


 赤羽橋より僧上寺五重塔を望む


 飯倉四つ辻(現在の港区飯倉交差点)七夕の光景は江戸と変わりないですが、行きかう人々の服装には、犬の散歩に出た外国人も描かれています。

 外国人らしき人物が芝口橋から新東京を眺める。


 外さくら田
(桜田堀の外をそぞろ歩く人々の中に混じって、馬車で乗り付けた外国人の姿も。外国人を描くことも、明治初めの版画には人気の絵柄だったのでしょう。)


 つくだ島


 目黒不動の滝
 
 関口目白不動

 江戸の昔から見ると当然のこと、明治の東京から見てもすっかり変わってしまった東京。関口目白不動も、戦災で寺が焼けたあとは再建されず、不動尊だけは他の寺へ。現在は江戸川橋公園になっているあたりらしい。

 京橋

 
 今や大賑わいの東京京橋も、1971(明治4)年には牛が行きかっている。

 2021年から150年昔の東京の姿を楽しみました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「十王図 in 神奈川歴史博物館」

2021-11-20 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211120
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(14)十王図 in 神奈川歴史博物館

 日本語学校の2021年夏休み。教職員の休みは、8月10日から13日までの4日間でしたが、8月7日土曜日から8月15日日曜日まで山の日9日の祝日を含めると9日間の連続休みになりました。大学では学生の夏休み期間と同じ休みをとっていましたが、春庭勤務の日本語学校はまだ学校法人資格を持たない私企業ですから、休みは経営者が決めたとおりに。夏もせっせと働きました。

 9日間の連続休暇と言っても、まだ緊急事態宣言中ですから、他県への宿泊旅行など控えねばなりません。せっかくの夏休み、何したらいいんでしょ?一番安心安全な場所は、今まで通り博物館美術館です。

 同じ東京都内といっても、勤務先へは、電車で3路線乗り換えて片道110分かかります。学校へは毎日通勤しているのはOKで、隣の県は県境超えるからダメ、という決まりに「異議ア~り!」です。
 多摩川またぐけど、電車で30分の横浜なら許可する、と自分ルールを決めました。勝手に。
 夏休み4日目。8月11日は、神奈川県立歴史博物館へひとりで出かけました。だネ?横浜は東京都内、ということに決めました。ゆりこさん、横浜は東京です。

 神奈川県立歴史博物館の「十王図」という展示、娘が「仏教美術はわからんからパス」と言うのでひとりで見にいきました。ぐるっとパスが使えるうちは、使い倒そうという「モトとらなきゃ」精神です。

 長期間の修復期間を終えて、久しぶりの博物館での展示だそうで、修復済んだ十王図のほか関連仏教美術品も展示。
 博物館の中、人も少ないのでじっくり見ることができましたが、私も「仏教美術、ようわからん」、でした。

 閻魔王、五官王、五道転輪王などの王は、人が亡くなったあと、審判を下す冥界の裁判官だそうです。中国唐代から十王信仰がはじまり、日本には12世紀後半13世紀前半に日本でも盛んに信仰されました。私は閻魔さま以外知らなかった。子どものころ、嘘つくとエンマさまに舌抜かれるぞと脅されて育った年代です。

 せっかく修復されたありがたい絵なので、館内照明とっても暗くして、よく見えないのです。よくわからん十王でしたが、地獄の審判というと、なんだかムツカシソーなので、ご利益あるのかないのかわからないまま「コロナ退散」を十王さまにお祈りしてきました。10月に急速に東京のコロナ罹患患者数が減少したのは、十王への私のお祈りがきいたのだと思います。イワシの頭も信心シンジン。

 博物館の口上
 当館が所蔵する「十王図」(10 幅)は南宋時代の 作として国の重要文化財に指定されています。このた び五カ年にわたる修理事業が完了したことをうけて、 全幅を修理後初めて公開いたします。  十王とは、人の死後に亡者の罪の軽重をただすと考 えられた十人の判官を指し、唐時代中後期成立の経 典に説かれ信仰が盛んとなってから、断続的に絵画化 されました。日本においては大陸制作の請来仏画を範 として写本が多数制作されましたが、たとえ同一系統 の転写本であっても、細部の図像にはそれぞれ違いが 見て取れます。絵画制作にあたり、何を写すか、どん な要素を追加あるいは省略するか、という選択の背後に は、冥界をいかに見るか、見たいか、あるいは見せた いかという、絵画制作者や享受者の心性が見て取れる といえるでしょう。見えないはずの冥界を可視化し、そ の画像の前で自らの死後の安楽を願い、また近親者 の冥福を祈る、そして大切な一具の十王図をときに修 理しながら守り伝える。図像転写の具体相や解体修理 で判明した過去の修理の痕跡を確認しながら、十王 図を作り、いまに伝えた人々の思想を考えます。

 暗いので、どの王が何なのやら、ぜんぜんわからんかった。


 十王は本地垂迹して如来や菩薩になる、ということは解説にかいてあったのですが、どうも信心が足らぬようで、解説があっても、どれがどれやら、でした。
 十王様すみません。こんな不信心者ですが、どうぞコロナからお守りください、とお祈りして、どうやら第5波はのりきったよう。ありがたや。第6波はどうなるのやら。

 2021年8月11日の東京都内、神奈川県立歴史博物館。


<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「岩合光明の猫写真展 in 富士美術館」

2021-11-18 00:00:01 | エッセイ、コラム



20211118
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(13)岩合光明の猫写真展 in 富士美術館

 ぐるっとパスで回る美術館博物館。2か月という有効期間に、できる限りあちこちを見て回りたいという「モトとらなきゃ」精神の貧民根性。娘は「大人料金」のチケットなので、2館か3館利用すれば、2500円の「ぐるっとパス」のモトはとれる、というのですが、私はどこもたいていシルバー割引料金だから、娘よりも多くの美術館をめぐらないとモトとった気になれない。

 娘は、八王子の東京富士美術館は遠すぎて行きたくない、というので、ひとりで行きました。たしかに、今住んでいるところからは八王子まで地下鉄JR乗り継ぎ、八王子からバスに乗る。なかなかの距離です。

 創価大学に隣接して1983年に設立された富士美術館。メーヨカイチョー先生が創設者であるところの美術館だから、収蔵品は充実しています。学会員だったら無料で見ることができるのかもしれないが、私はぐるっとパスで入館。今回の展示は「岩合光明の猫写真展」 

 岩合さんの動物写真は、40年前から見てきました。
 私は、1980年にケニアから戻ったあと、岩合光昭ファンになる前に、岩合日出子『アフリカポレポレ-親と子のセレンゲティ・ライフ』を読みました。ああ、私も絶対にアフリカでポレポレライフをおくるぞ、と思って以来の岩合夫妻ファン。

 結婚する前は「10年ごとに、ケニアでのんびり1年ぐらい暮らしたい」なんて言っていたことなんぞ、とっくに反故で、40年間アフリカのアの字もケニアのケの字もなかった。タカ氏は勝手にケニアに出かけ、私は仕事で中国やミャンマーに単身赴任しただけ。

 最近訪れた岩合動物写真展覧会は「ネコライオン」
 猫とライオンの同じようなポーズの写真を並べて、なるほど両方ともネコ科だわい、と思う写真でした。
 今回のNHK「岩合光昭の世界ネコ歩き」で取材した猫の写真集、テレビで見たなつかしい猫もいて、楽しかったです。
 今回はじめて見た猫写真も、私にはとってもほっこりにっこりの猫たちです。



 豚に挨拶


 パリの光景と白い猫


 岩合さんの猫写真、どれもこれもとってもかわいくて、猫と猫が暮らす各国の風景もとてもすてきで、絵ハガキ買いました。チラシにもなっている「門からのぞく猫」のポスター、ほしい人にプレゼントしていたので、ポスターもらって帰りました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「とびだす絵本展 in 八王子夢美術館」

2021-11-16 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211116
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(14)しかけ絵本展 in 八王子夢美術館

 八王子の富士美術館からの帰りのバスで、「そうだ、次のバス停の近くに夢美術館がある」と、思い出しバスをおりました。
 八王子夢美術館で開催されていた「とびだす絵本展」を観覧。

会期:2021年7月10日(土)〜2021年9月5日(日)

 美術館の口上
 ページを開くと絵がとび出たり、つまみをひっぱると絵が動いたりするしかけのある絵本。こうした絵本は、立体的な絵が一瞬で立ち上がる際の驚き、動くしくみの面白さや不思議さ、展開される立体の繊細さなど、技術的な要素を伴って生み出される点が通常の絵本では見られない特徴といえます。

 また、どちらかといえば絵本でありながら、玩具に近い要素もたくさん持つため、絵と文で綴られるストーリー中心の絵本に比べてもその印象は大きく異なります。これらの絵本は国内外を問わず現在も数多く出版され、中でも絵がとび出す楽しいしかけのポップアップ型絵本は私たちの身近な絵本の一つといえるでしょう。

 こうした絵本は、18世紀後半にイギリスで出版された絵本に始まりますが、当時はまだ挿絵にかぶせたフタをめくり、景色や場面の変化を楽しむフラップ型の単純なしくみでした。19世紀後半に入るとドイツではのぞきからくり(ピープショー)や一つのタブの引っぱりで複数のしかけが動くプルタブ型で知られるロタール・メッゲンドルファー、イギリスでは円盤型のしかけで有名なアーネスト・ニスターが登場し、しかけの幅が広がります。1930年代には、アメリカでキャラクターやおとぎ話を使ったポップアップ型絵本が大ヒット、その影響はヨーロッパにも及び、1950~70年代のチェコではヴォイチェフ・クバシュタが盛んにポップアップ型絵本を制作し、外貨獲得のため様々な言語に訳され輸出されます。現代では、アメリカの巨匠ロバート・サブタやマシュー・ラインハートなどペーパー・エンジニアと呼ばれる新しい作家たちが、これまでのしかけの構造をより進化させ、複雑かつ高度な技巧を凝らした絵本を生み出すなど、しかけ絵本の世界は新たな展開を見せています。

 本展では近年特に注目されている現代のポップアップ型絵本を中心に、めくるタイプのフラップ型、360度の展開が見事なドールハウス型なども合わせて約200点を超える作品を展示します。また、ポップアップ型絵本のペーパー・エンジニアとして現在活躍するさくらいひろし氏の作品コーナーも特別に設け展示、この他にも見るだけでなく実際に体験できる作品も交え国内外のこうした絵本の数々を紹介します。美しいイラストと緻密に計算された技から生まれるとび出す絵本の世界をお楽しみください。

 立体のしかけとトランプが飛び出す不思議の国のアリス
         
 



 使い捨て手袋をはめて飛び出す絵本をめくるコーナーもあり、立体絵本の設計図展示もあり、200点もの飛び出す絵本の展示、大人も楽しめるしかけ絵本でした。

 夏の終わりとはいえ、まだまだ暑かった8月下旬、猫と絵本で楽しい一日になりました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「デミタスカップの愉しみ in 松濤美術館」

2021-11-14 00:00:01 | エッセイ、コラム


20211114
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩秋(11)デミタスカップの愉しみ in 松濤美術館

 松濤美術館で展示されていたデミタスカップコレクションを見てきました。雨もよいの一日でしたが、小規模な美術館での小さなコーヒーカップの展示。  
 私は眺めているだけで充分満足だけれど、いにしえの貴族や大富豪の館では、これらのカップにコーヒーや紅茶を注ぎ、優雅にお茶会などが開かれていたのだろうなあと想像しました。
 
 美術館の口上
 濃い目のコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ「デミタス」。19世紀のヨーロッパにコーヒー文化が浸透すると、デミタスにも多彩なデザインが誕生した。
 本展では2000点以上のデミタスを所蔵する村上和美コレクションから、ジャポニスムや、アール・ヌーヴォー、アール・デコのデザインを中心に、厳選した約380点を紹介。当時の流行を反映したもの、“超絶技巧”ともいえる繊細な装飾が施されたもの、様々な意匠を凝らしたものなど、小さな世界に凝縮された美しさを楽しめる展覧会。

 実際にはどれほど「実用品」だったのでしょうか。美しく愛らしいカップなので、コーヒーや紅茶を入れてしまうのももったいないくらいの美しさ。私にはただうっとり眺めているだけで、とても毎日の実用には使えそうもない。
 たしかに、見た目に「飲むには不便そう」なカップもあったけれど、これらカップを2000点も集めるとは、どれほどの情熱を傾けて収集したのだろうか。コレクター魂炸裂を感じました。いや、炸裂させて割れてしまうのもたいへんだから、コレクター魂はそっと包んでてのひらに載せて鑑賞したい。

 



 展示コーナー



 雨の一日。歩くのにも疲れたので、文化村通りに出てガレットの店で一休みしました。前と同じように、店員のサービス精神低め。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「包む in 目黒美術館」

2021-11-13 00:00:01 | エッセイ、コラム

2021111
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(10)包む-日本の伝統パッケージ  in 目黒美術館

 雨の中、目黒美術館に出かけ、「包む-日本の伝統パッケージ展」を観覧。まったく期待せずに出かけたのですが、とても有意義な展覧会でした。

会期:2021年7月13日(火)~2021年9月5日(日)
 展示会場




 目黒美術館の口上
 日本のデザイン黎明期に、わが国の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともに大きな足跡を残したデザイナー、岡 秀行(1905ー1995)。木・竹・藁・土・紙―自然素材のパッケージに向けた岡の眼差しから見えてくる、「包む」ことに日本人が込めた想いや手わざの美を、当館所蔵の岡のコレクションによりご紹介します。
  岡は、戦前からアー トディレクターとして活躍する一方で、木、竹、藁など自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、 収集・研究を始め、藁の苞(つと)の素朴な美しさや、すし桶、菓子箱の職人技による伝統美に、日本人な らではの「美意識」と「心」を見いだし、「伝統パッケージ」と呼称を与え、書籍の出版や展覧会を通じて、 高度経済成長期の日本において消えつつある技術や美があることの啓蒙につとめました。 

 第1室と第2室は、素材別の展示。
 「岡秀行旧蔵〈包む〉コレクション」の分類
A: 木  B: 竹   C: その他自然素材   D: 土   E: 藁  F: 紙  G: 布   H: その他
 
 過去から現代までの職人たちが、手わざを駆使して作り上げた実用品でありかつ美しい造形美を持つパッケージ、素材別に並べられたパッケージ、見事なものでした。

 藁を使って包む


 藁を使って卵を包む(卵つと)


 木や竹、筍皮など、自然から得られるさまざまな素材が「包む」ために使われています。
 竹や筍皮を使って

 紙を使って


 第3室と4室は、「伝統と生活の中の美」をピックアップ。第4室には岡さんの年譜が展示されていました。伝統パッケージになんの興味も持たず見たのですが、岡が集めたさまざまな「つつむ」技とデザイン、大変美しく機能美を見せていました。
 日常生活で目にしてきたパッケージも数多く展示されていましたが、普段はパッケージよりも中身にばかり目がいくほうなので、あらためてパッケージのさまざまな美しさにふれると、中身もいいが外身にも注意していかなきゃ、と、日ごろの粗雑な日常生活を反省しました。

 岡秀行の事跡を紹介している一室。


 この部屋で「つつむ」をテーマにした映像作品が上映されていましたので、縄文古墳時代の包む文化から現代まで、日本の生活の美の歴史を知ることができました。

 岡秀行が1988年にコレクションを目黒美術館に寄贈。何度か小規模なコレクション展示はあったのだろうと思いますが、私のアンテナに引っかかっていませんでした。デザインの中でも、服飾デザインやテキスタイルデザインには興味を持っていましたが、パッケージデザインに深く触れることがなかったのです。

 8月15日。よい展示を見て、よい一日になりました。
 戦後日本がひたすら利便性や功利性を追求してきた中で見失い置き忘れてきて、ものをこうして再発見できることがうれしいです。
 もちろん、現代生活において、たとえば納豆を大量生産大量販売するためには発泡スチロールパッケージであるほうが簡便であることは承知しています。藁苞の納豆は「高級品」なので、私には毎日食べることができません。しかし、納豆を藁でつつみ、発酵保存を行ってきた伝統の食文化は、伝えていきたいです。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋- in 文化学園服飾博物館」

2021-11-11 00:00:01 | エッセイ、コラム

20211025
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(9)再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋- in 文化学園服飾博物館

 新宿南口にある文化服飾学園。多くの世界的なファッションデザイナーを輩出した学校です。キャンパスに服飾博物館が設立されています。 
 私がこの服飾博物館を訪れたのは、2011年の「民族衣装」の展示を見た時2013年の「織りの服、染めの服」 という展示をみたとき。今回は娘の希望で観覧しました。娘は絵よりも工芸が好きで、織物染め物にも興味があるのです。

 8月18日に文化学園服飾博物館で開催されていた「再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋」を見ました。

 再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋- 
 会期:2021年7月15日(木)~9月28日(火)
美術館の口上
 平安遷都以降、貴族や武家、そして裕福な町人の華やかで贅沢な衣生活を支えたのが、都の職人たちでした。応仁の乱で京が一時灰燼に帰すことがあっても、職人たちはこうした苦難を乗り越え、新たな染織技術を次々に生み出して現代に至っています。しかしその間、京都の染織が一時期低迷することもありました。昭和6年(1931年)、京都の染織業の振興を図るために行われたのが京都染織祭でした。本展覧会では、当時の京都の染織技術を結集して復元された、古墳時代から明治時代に至る女性の衣服を展示して日本の女性の服装の1500年をたどるとともに、当館所蔵の江戸時代後期から昭和時代初期の優品を通して京都の染織技術の真髄を感じていただきたいと思います。
主催/公益社団法人京都染織文化協会、文化学園服飾博物館
後援/京鹿の子絞振興協同組合、京都刺繍協同組合

 第一部は、日本の古代からの女性の服装を再現した展示です。娘は「古代の衣裳がよくわかったからいいけれど、室町以後の服は、再現ものじゃなくて本物が東京国立博物館で見られるから、ちょっと再現だと希少価値が落ちる」という評価でした。
 本物じゃなくて復元だとしても、1500年の服飾の歴史がずらりと時代ごとに見られるところがいいところ。

 復元された古代衣裳の展示室


 以下の画像は、京都染織文化協会が1931年に再現した、古墳時代、飛鳥奈良時代、鎌倉時代、室町時代、江戸時代。
 古墳時代の再現、色合いが華やかすぎるような気もしますが、卑弥呼のおつきの若い巫女が着ていたのだと思うことにします。

 古墳時代  飛鳥奈良時代
鎌倉時代の旅装束   室町時代
江戸時代 打掛姿


 第2部は、京都の染め物や刺繍の組合が後援している展示。

 さまざまな染織の技術を生み出し工夫した職人・工人たちのひとつひとつのワザに感服でした。これらのワザを受け継ぐ職人の育成も大事なことだろうと思います。

 第2部の展示コーナー


 機械で布を織り、化学染料で染めた大量生産品にもよいものは生まれると思います。現代の私たちが安くさまざまな布地による衣服を着ることができるのも、織物や染色が手仕事から機械文明になったおかげと承知しています。
 
 文化服飾博物館エントランス。あまりにセンスのないおばさんスタイルでこのエントランスにはふさわしくないのはわかっていますが、記念にパチリ。


 世界のさまざまな地域で伝統技が消えていく時代です。伝統のワザが消えることなくが受け継がれていくように願って、文化服装学園をあとにしました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「故郷の風景 in 平山」郁夫シルクロード美術館」

2021-11-09 00:00:01 | エッセイ、コラム

 月華厳島

20211009
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩夏(8)故郷の風景 in 平山郁夫シルクロード美術館

 女子校クラスメートやっちゃんは、東山魁夷が好きなので、東山の美術展には何度か出かけたけれど、平山郁夫(1930-2009)は、今までまとまった展示は見たことがない、という。
 やっちゃんと清里に出かけたこの夏。甲斐小泉駅前の平山郁夫シルクロード美術館を紹介しました。やっちゃん運転の車で美術館へ。

 これまで私は、清里観光の最後にこの美術館へ行くことにしていました。行きは妹の車に同乗し、帰りはこの美術館に立ち寄ったあと甲斐小泉駅から中央線で帰ることにしていたのです。

 今回はじめて「故郷の光景」という企画展を見ました。平山のふるさとは広島県瀬戸田町(現・尾道市 。

 平山郁夫シルクロード美術館の口上
 (平山は)1990年代の平成時代に入ると、改めて日本の素晴らしさに気付き、画題をわが国へと求めていきます。
本展は、そうした日本を題材とする作品の中から、平山の原点である「広島」に焦点を当て、瀬戸内海の島々などを描いた《天かける白い橋 瀬戸内しまなみ海道》(2000年)をはじめ、故郷の生口島の素描作品を中心に紹介します。また、広島の世界文化遺産である厳島神社を描いた大作《月華厳島》(朝日生命保険相互会社蔵)を展示します。

会期:会期:2021年6月26日(土)~12月27日(月) 

 天かける白い橋 瀬戸内しまなみ海道 2000 平山70歳

 燦・瀬戸内 輝く瀬戸内海

 平山郁夫シルクロード美術館では、館内展示の写真撮影は禁止です。上に提示した作品は、たとえば「燦・瀬戸内 輝く瀬戸内海」の画像はカレンダーからのコピーです。写真撮影OKにしたら、これらのカレンダーが売れなくなるかもしれないし、私が何枚か買った絵ハガキも売れない。だから禁止もわかるのですが、、、、

 この夏の美術関係ニュースで面白かった話題の一つが偽物版画の売上高。売り上げ上位は、東山魁夷と平山郁夫。
 偽物版画の画材選択としてすごくよくわかる。「わかりやすく、だれにもすんなり受け入れられる光景・どんな部屋に飾ってもOK」「独特のタッチなどはなく、平易な筆遣い」「版画にしても、元の絵の雰囲気と同じになる」

 偽物版画を本物の版画として売りさばいた画商は、著作権違反だと承知で売りさばいたのでしょうが、デパートの頒布会で堂々と売られていたというので、なるほど、買う人は老舗のデパートで売っているなら、オリジナル版画なんだろうと信じて買ったのでしょう。偽物版画を売りさばいて大儲けした画商も悪いが、本物偽物の区別もつかなかったデパート美術売り場責任者もワキが甘かった。一部の識者には、売られてきた版画が大量すぎることをいぶかしみ、偽物ではないかという噂は以前から出ていたのだと。

 現代の「高性能精密コピー機」が、本物とほとんど見分けつかないくらいの性能をもつことは、東博などに展示されている国宝のコピーでも思いました。国宝、たまにしか展示されないけれど、3Dで彫刻でも工芸品でもコピーが作れる。

 ロダンなどの彫刻はもともと鋳型から3体とか5体とかの「本物」を鋳造する。この場合5体作ったのなら5体とも本物。100体鋳造すれば100体本物。
 版画も、浮世絵などでは初刷りと100刷り目では色合いが変わってくるが、高性能コピー機なら、理論的には何万枚でも「本物」が印刷できる。

 サザビーなどの美術品オークションでも偽物には目を光らせているけれど、本人が信じて眺めていれば、偽物も本物と同じ価値がある。
 東山魁夷や平山郁夫、偽物でも十分鑑賞に堪えると思います。私は絵ハガキでも十分満足。本物でなければ美術鑑賞したことにならない、ということもない。その絵や彫刻から見た人が何を受け取ったのか、何を感じたのか、それがその人自身の「アート鑑賞」なのだと思います。

 中国のある村では、村の産業として「有名絵画のコピー油絵」を制作しているのだそう。「モナリザ」の模写を本物と信じて買う人はいないだろうけれど、モネやルノアールのタッチで描かれたスイレンやアネモネの絵を「本物」と信じてネットオークションで買う人は少なくないのだとか。
 
 私?絵を見るのは好きですが、偽物本物見分ける目なんぞもとより持ち合わせていない。たとえ、平山郁夫美術館で見た絵が偽物だったと言われても、8月3日にやっちゃんといっしょに「いいね、この絵」と眺めた気持ちには変化がないと思います。

 <つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「くれなずめ」

2021-11-07 00:00:01 | エッセイ、コラム

20211019
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2021秋映画(4)くれなずめ

 「キネマの神様」と2本だてでしたから「くれなずめ」も見ました。ついでだから。

 作品紹介
 松居大悟監督が、自身の体験を基に描いたオリジナルの舞台劇を映画化。高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まった。恥ずかしい余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返る。自分たちは今も友だちで、これからもずっとその関係は変わらないと信じる彼らだったが……。

成田凌;吉尾和希、主人公。高校時代は清掃係
高良健吾;藤田欽一、舞台演出家
若葉竜也;明石哲也、欽一の劇団に所属する舞台俳優
浜野謙太;曽川拓、清掃係後輩。唯一の家庭持ちサラリーマン
藤原季節;田島大成、清掃係後輩、会社員
目次立樹;水島勇作、地元のネジ工場で働く。

 以下ネタバレ含みます

 高校時代から集まっては青春をともにしてきた仲間たち。「じゃまた」とわかれて、次にまた会う。
 そのひとりが若死にして、仲間に「じゃまた」と言えなくなっても、仲間たちは心のなかでいないことを納得できていない。皆同じ思いで、いないはずの吉尾をこころのなかで生かしている。彼がもういないことを納得しなければいけないと、承知していながら。
 ラストシーンは、壮大な脳内ファンタジーで吉尾を見送ります。

 松居監督の実体験をもとにした脚本だということですが、展開についていけない人も多かったのではないかと思います。高校生時代、5年前、2年前の時空が交差するのですが、ぼんやり見ていると、2年前と5年前の違いがわからなくなる。高校生時代はさすがにわかりますが。

 私は、前田敦子の、威勢の良い高校清掃委員、そして「私は今幸福だ」と叫ぶシングルマザーもよかったから、それだけで他の減点を相殺。現実にシングルマザーになって頑張って子育てしている姿がかぶってしまうので。


 さて、この映画で1番私の興味をひいたのは、俳優でもなく監督の采配でもなく、タイトルでした。

 監督の造語だという「くれなずめ」。
 聞いたことないでしょ、くれなずめ。「くれなずむ」という動詞は知っているけれど。

 無生物主語の動詞も、擬人的に命令形が作れます。
 川よ流れよ!とか。しかし、気象のような自然現象を表す動詞は命令形をつくりにくい。

 とくに主語的な語がついている語たとえば、「夕暮れる」のような自然現象。擬人的に夕暮れろ、とか夕暮れよという命令形は使いにくい。夕暮れるはまだ「夕暮れないうちに帰らないと」、などと無理矢理否定のナイ形にできるが「くれなずむ」は「くれなずまない」というナイ形にもならない。

 動詞連用形は名詞として用いることができますが、「くれなずむ」は「くれなずみ」を名詞として使うことも難しい。

 「くれなずむ」のように、命令形も連用名詞形も否定形も作れない動詞を脳内リサーチしたのですが、私の脳は粗雑だから見つけることができませんでした。

 元・再帰動詞論の論者だった春庭、久しぶりに語彙形態論を考察する時間を持って、通勤電車での暇つぶしができました。言語学も、論文締め切りに追われることなく暇つぶしとして楽しむなら、よい娯楽。

 松居監督、造語タイトルを世間に出してくれてありがとう。
 次の作品は、タイトルではなく内容で興味を惹かれる映画に出会いたい。

<おわり>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「ノマドランド」

2021-11-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20211106
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2021秋映画(3)ノマドランド

 原作はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』である。プロデューサーのFマクド―マンドとクロエ・ジャオ監督は、映画化にあたり、大きな賭けに出た。ノンフィクション性を生かすため、主役ふたりはプロの俳優であるけれど、主人公ファーンが出会うノマド=漂流民たちは、すべてファーン演じるフランシス・マクド―マンドが実際にキャンピングカーでアメリカ中を季節労働者となって移動する最中に会話を交わした素人(ノマド=季節労働者)なのである。
 私はクレジットをみて、リンダメイを演じているのがリンダメイであるのを見るまで、彼らが素人だとは気づかなかった。それほど自然にファーンはノマドたちに溶け込み、彼らと本心で語り合っていた。

キャスト
・ファーン: フランシス・マクドーマンド
・デイブ: デヴィッド・ストラザーン
・リンダ: リンダ・メイ
・スワンキー: シャーリーン・スワンキー
・ボブ: ボブ・ウェルズ
・ピーター: ピーター・スピアーズ

 本作のプロデューサーは主役ファーンを演じたフランシス・マクド―マンド。原作を読み、クロエ・ジャオ監督起用を決意。
 第93回アカデミー賞では、計6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞した。ジャオは有色人種の女性として初めて監督賞を受賞し、マクドーマンドは同一作品で製作者として作品賞を受賞、出演者として主演女優賞を受賞した。史上初の快挙。

 圧倒的な存在感、Fマクドーマン


 冒頭、広大な荒れ野で、ファーンが「野原で花摘み」をするシーンからはじまります。トイレのない場所でズボンをおろし、尻をだしておしっこをする様がぴったり絵になり人間味を出せる女優、マクドーマンのほかにいない、とおもうところから、すでに映画の中に引き込まれてしまっている。

 腹を下したファーンがキャンピングカーの中の狭いトイレで、下痢のおなかをさするシーンも、とてもいい。
 広大なアメリカの光景が美しいのは当然だが、腹を下すシーンがかくもリアリティありながら人間を映し出しているのはすごい。

 ファーンは、リーマンショックの影響で職を失った大勢のアメリカ人のひとり。夫と社宅に住み、それなりに中間層として暮らしてきた人生が、夫の死、そして会社の倒産によって、一気にすべてを失ってしまう。ファーンはわずかな思い出の品をキャンピングカーに積み込み、臨時の仕事を探してアメリカ各地を渡り歩く。

 自然公園の清掃員だったり、ハンバーガーチェーンの工員だったり、さまざまな職を転々とし、途中知り合ったノマドとブツブツ交換をして助け合い、語り合う。最後に思い出の地アラスカへ旅たちたいと語るノマド、家族とは音信不通だが、家族のもとに戻ろうとは思わないと語るノマド。さまざまな事情で、彼らは家を失い職を失って漂流している。
 ノマドたちの助け合いは、ひりひりした痛みを伴いながら真摯である。
 マクドーマンドは実際に車上生活を送ると共に、Amazonの物流拠点での梱包作業など日雇いの仕事にも従事した のだという。

 デイブは、息子との軋轢から自宅に帰ることをあきらめていたが、息子が迎えにくると一転、孫の世話に生き甲斐を見出す。ファーンに「ここでいっしょに暮らそう」と申し出るが、ファーンはふたたび放浪生活に戻ることを選ぶ。

 うつくしい荒野の光景は、ひとりで立つ広大な荒野である。


 飯田橋ギンレイで2本立てを見たあと、出口に向かうとき、二人連れの小母さまの会話が耳に入った。
 「2本とも家族を題材にしていたわね。いい話だった」「家族が一番大切だってことよね」
 ひぇ~!
 映画は、見た人がどのように受け取ろうと見た人の勝手です。でも、「ノマドランド」を見て「家族が大事」と受け取った人、デイブが最後に息子の家族に受け入れられることをもってハッピーエンドと思ったのだろう。なんのこっちゃ。

 「もののけ姫」を見た後「環境破壊は悪いことなので、環境を破壊せずに自然と調和していくことを映画から学びました」という感想を寄せた人に、宮崎駿は「そんなことを感じさせるために映画を作ったんじゃない」と、激怒し落胆した、ということですが、もののけを見てそう感じた人もいるのなら、それはそれで人の感受性の問題。
しかし、ノマドランドを見て「家族が一番大切」と思った人がいたと知ったら、フランシス・マクド―マンドはさぞかし落胆するだろう。

 ファーンはデイブが提供しようとしている「あたたかくなごやかな家庭」などを蹴飛ばし、ひとり荒野へ戻っていくのです。
 彼女の孤高と自尊心、他のノマドたちとのひとときの交流。その思いをくみ取らない映画鑑賞もあるのだと、思い知りました。どのように見るのも自由ですからいいんですけれど。

 アメリカ流の幸福。家族数プラスゲストルームの寝室とそれぞれにバスルーム。広いリビングルームとキッチン、ダイニング。広い庭。できればテニスコートとプールがついているほうがいい。やさしいパートナーと愛らしい子供たち。ペットなんぞも血統書付きがいい。年収は1千万以上で昇進は目前。

 そんな幸福が今もなお「豊かで幸福な人生」であるアメリカ社会で、荒野でおしっこするノマド暮らしをあざやかに描いたフランシス・マクド―マンドとクロエ・ジャオ監督をたたえたい。

 演出するジャオ監督

<つづく>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする