春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

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ぽかぽか春庭「2017年1月目次」

2017-01-31 00:00:01 | エッセイ、コラム


ぽかぽか春庭2017年1月

0101 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記1月(1)謹賀新年
0103 2017十七音日記1月(2)応援
0105 2017十七音日記1月(3)日記タイトル
0107 2017十七音日記1月(4)薺粥
0108 2017十七音日記1月(5)食べる
0110 2017十七音日記1月(6)仲間と食べる・朝日のようにさわやかに
0112 2017十七音日記1月(7)家族と食べる・笑う門には福来たる

0114 ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(1)やっこくなぐれる
0115 やっこい脳のための新語旧語(2)ほぼほぼ神ってる
0118 やっこい脳のための新語旧語(4)私は生き残るI will survive
0119 やっこい脳のための新語旧語(3)ラストベルトの錆は落ちるか
0120 やっこい脳のための新語旧語(4)按司と三別抄
0122 やっこい脳のための新語旧語(5)武則天のつまみかんざし
0124 やっこい脳のための新語旧語(6)シンギュラリティ技術的特異点

0126 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>季節のことば冬(1)雪のことば、なごり雪
0128 季節のことば冬(2)消える季語、紙衣インバネス
0129 季節のことば冬(3)雪しまき
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ぽかぽか春庭「雪しまき」

2017-01-29 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170129
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>季節のことば冬(3)雪しまき

 消えてゆく季語についてしばし惜しみつつ、いくつかのことばにお別れの送辞でも述べようかと思っていたのだけれど、「死語辞典」など「死語」や「絶滅危惧語」にはアンテナ張っていたつもりの私、不明にして『絶滅寸前季語辞典』が夏井いつきによって2001年に出されていること知りませんでした。ウェブ友ほうせんさんに教えていただきました。
 夏井いつきはテレビバラエティで芸能人の作る俳句の添削を行って人気を博している俳人です。

 本があるなら、それを読んで中身を確認してからでないと、もしも同じようなことを書いてしまったら、たいへんです。誰かの論のまねっこを自分の論のように書いてしまうことは、ワタシとしては厳罰事項です。先行研究先行言論を、引用元を明らかにした上で引用することは差し支えないですが、人の論と似たようなことを持論として書いたらその時点でアウト。学生には、ウィキペディアからコピペしたレポートを出したら不可と口をすっぱくして注意しているのに。

 「シンギュラリティ」など、すでに多くの解説が出回っていますから、私自身がこのことばを知ったときに抱いた感想を書いておこうとしたのですが、どうしても、既存のいいまわしの後追いのようになってしまいました。流行言葉は、世間に出回る前に書いてしまうか、はやりが落ち着いてすたれるか定着してからかでないと、自分自身の感想が中途半端になると思います。自分のためにメモですから、自分なりの感想を書き込んで、「いつこの語を知ったのか」ということがわかればそれでいいのですけれど。

 『絶滅寸前季語辞典』は、図書館にリクエストしました。中央図書館の図書は貸し出し中だったので、他館からのお取り寄せになり、本が届き次第連絡してくれるとのこと。それまでこの話題は封印です。

 ひとつだけ、(1)の「雪のことば」に出さなかった「私の知らなかった雪のことば」を書いておきましょう。忘れないように、メモメモ。

 知らなかったのは「雪しまき」
 「しまき」とは、風が激しく吹き、巻き込むように荒れること。また、その風。「し」は、古語で「風」のことです。
 「しまき」は、手持ちの古語辞典には出ていますが、私が常用している国語辞典にはありませんでした。
 「雪しまき」は、強風が巻き込むように吹き荒れ、風と共に雪が渦巻きながら降る様子。

海に日の落ちて華やぐしまき雲(角川源義)
・一陣のしまきトランプ舞い上がる(春庭)
 トランプのキング、周囲を巻き込んで吹き、大荒れです。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「消える季語、紙衣インバネス」

2017-01-28 01:21:45 | エッセイ、コラム
20170128
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>季節のことば冬(2)消える季語、紙衣インバネス

 伊勢正三の造語「なごり雪」が1974年にリリースされてから、2013年に「気象庁季節のことば」に採用されるまで40年もかかりました。一方、中村草田男の造語「万緑」は、1939(昭和14)年に「万緑の中や吾子の歯生え初むる」が発表されて以後、比較的早いうちに季語として認められたように思います。草田男が俳句雑誌「万緑」を主宰発行して俳句界に認知されたこともあるでしょうが、「流行歌の中の造語」と、伝統ある俳句のなかの造語、の違いで認知度が異なったような気もします。ボブ・ディランの歌詞を文学と認めるような先見の明のある人は、国語界にはいなかったとみえる。

 ともあれ、松尾芭蕉が語ったこととして『去来抄』に書かれていることばに、「先師曰、季節のひとつも探し出したらんは、後世によき賜となり」であるからして、四季折々の己の感じ方をひとこと書き残しておき、「後世の賜」になるなら、ことばを商売道具として生きている者にとって、これほどうれしいことはないでしょう。

 また、消えていくことばを惜しむのも、ひとつの道程。
 歳時記の中に、自分が知らないことば、ことばとして知っていても、実際に見聞きしたことはない語などを見つけると、明け方に薄らいでゆく星の光のように、なにやら惜しい気にもなってきます。
 歳時記冬の部から、消えゆく語をさらってみます。

・荒星(あらぼし)
冬の冴えた夜空に、いっそう寒さが増すように鋭く光る星。寒星(かんせい)ともいうが、荒星というと、その光はキーンと張り詰めるように天に輝く。

・インバネス
旅番組が好きでよく見ます。先日スコットランドを巡る旅番組の中にインバネスという町(ハイランド地方の中心都市)が出てきて、ああ、そうだ、インバネスコートはこの町で作られたということだったなあと思い出しました。
 インバネスは、シャーロック・ホームズ愛用の衣装としてドイル小説の挿絵になり、世界に広まりました。日本では男性用和装コートとして明治から昭和前期に流行しましたが、太平洋戦争後はもうすたれた服と見なされていました。私も舞台や映画の中で見かけただけで、実際に自分の目でインバネスコートを見たことはありません。

 ・鎌鼬(かまいたち)
 冬、突然皮膚が裂けたように切れ目ができ出血するが、痛みはない。これは、妖怪鎌鼬のしわざと見なされました。
 冬の冷えた空気の中、皮膚表面が気化熱によって急激に冷やされるために、組織が変性して裂ける生理学的現象(あかぎれ)ということのようです。
 現代の子どもには、水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」の中に登場する妖怪のひとつ。娘の知っているゲームの中には、両手が鎌になっているイタチが出てきて、けっこうかわいらしい姿なのだそうです。
 どうやら鎌鼬は消えていく語ではなく、妖怪ブームの今の世には主役級のひとつらしい。

・紙衣(かみこ)
 木綿衣料が出回るようになった江戸期以前、冬の衣料として紙衣は大事な防寒着でした。紙に柿渋を塗って天日に干し、よく揉んで柔らかくして着物に仕立てました。近世以降は、絹も木綿も買えない貧乏人の衣装、と見なされるようになりました。
 今では柿渋を塗った衣料など来ている人はないと思いますが、紙の博物館の展示に、紙を衣料として新しい繊維製品を開発されている、という紹介がありました。
 高浜虚子の句に
繕うて古き紙衣を愛すかな
 というのが歳時記の例句にありますが、明治の虚子のころでさえ、紙衣はもはや新しいものは作られぬ時代であったでしょう。

・消炭(けしずみ)
 私が育った家の風呂は、薪を焚く五右衛門風呂でした。長女の姉は、母の手伝いをして料理が得意になりましたが、私は薪割りと風呂焚きが受け持ちの仕事。薪割りは得意の仕事でした。
 もうひとつ風呂焚きの大事な仕事は、消炭作りです。薪がほどよく炭になったところで、火消し壺に入れておく。料理用に七輪に炭をおこすときは、消し炭をのせて新聞を少し燃やせば、すぐ消し炭は赤くおきてくる。そこに堅炭をのせる。
 七輪は今も愛用者がいて、ネット販売でも売られているようですが、消し炭はさすがに売り物にはならないでしょう。
 毎日風呂焚きをしては消し炭を作るのを「お手伝い」にしていた日々。日常生活から消えていくモノのひとつが消し炭ですが、あの頃のぬくもりの思い出は消したくないです。

<つづく>
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ぽかぽか春庭ことば「雪のことば、なごり雪」

2017-01-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170126
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>季節のことば冬(1)雪のことば、なごり雪

 日本海側の大雪のニュースが続いています。太平洋側ではこの1週間晴れ間が続いているので、申し訳ないような。
 東京に雪が降ると、私などつい浮かれて写真撮ったり、雪兎など作りたくなったり。「これで子どもの頃の雪のようにきれいなら、ガラスの器にこんもり盛ってお砂糖かけて食べたいけれど、東京の雪だから、空の汚れがいっぱい入っているだろうなあと思ったり。

 雪の多い地方の人にとっては、屋根の雪下ろしや道路の凍結など、死びとまで出ているのですから、雪が好きな人ばかりではないでしょうが、年に2、3度雪を見るだけの土地に住んでいると、雪はやはりロマンであこがれです。

 地方によって雪の呼び名もいろいろと思います。
 私は新沼謙治歌唱の「津軽恋女」に出てくる雪の名前、すきです。
♫ 降りつもる雪 雪 雪 また雪よ 津軽には七つの 雪が降るとか
こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪 みず雪 かた雪 春待つ氷雪

 さて、今日の話題は「なごり雪」です。
 伊勢正三が造語した「なごり雪」、ながい間「辞書にも歳時記にも載っていない雪の名前を勝手に歌にして」と、非難されてきたそうです。「名残の雪」は古くからあることばですが、「なごり雪」という複合語は無かったのです。

 歳時記にも気象用語にもうとい春庭、「なごり雪」にすっかりなじんでしまっていたので、辞書にはないことばだということさえ気づかずに歌っていました。

 辞書にもないことばとして「日本語を乱すな」とまで言われたという「なごり雪」でしたが、ついに2013年、「正当な日本語」として認知を得ました。気象庁は「新しい季節のことば」を選定発表し、伝統の二十四節季のほかに、季節を感じることばを37集めたのですが、3月の季節を表すことばに「なごり雪」を選んだのです。

「季節のことば36選」
1月初詣、寒稽古、雪おろし
2月節分、バレンタインデー、春一番
3月ひな祭り、なごり雪、おぼろ月
4月入学式、花吹雪、春眠
5月風薫る、鯉のぼり、卯の花
6月あじさい、梅雨、蛍舞う
7月蝉しぐれ、ひまわり、入道雲、夏休み
8月原爆忌(広島と長崎)、流れ星、朝顔
9月いわし雲、虫の声、お月見
10月紅葉(もみじ)前線、秋祭り、冬支度
11月木枯らし1号、七五三、時雨
12月冬将軍、クリスマス、除夜の鐘

 気象用語の中で雪が出てくるもの。
・雪 雪が降る。雪が積もる。雪が解ける。(雨が)雪に変わる。雪の日。雪の天気。
・みぞれ 雨まじりに降る雪。または、解けかかって降る雪。
・あられ 雲から落下する白色不透明・半透明または透明な氷の粒で、直径が5mm未満のもの。直径5mm以上は「ひょう」
・ダイヤモンドダスト 大気中の水蒸気が昇華し、ゆっくりと降下する微細な氷の結晶。
・氷霧 微細な氷の結晶が大気中に浮遊して視程が1km未満となっている状態。
・ふぶき 「やや強い風」程度以上の風が雪を伴って吹く状態。降雪がある場合と、降雪はないが積もった雪が風に舞上げられる場合(地ふぶき)とがある。
・しぐれ 大陸からの寒気が日本海や東シナ海の海面で暖められて発生した対流雲が次々に通るために晴れや曇りが繰り返し、断続的に雨や雪の降る状態。後者の意味で用いられる。
・着雪 ・落雪 ・融雪
・湿り雪
・なだれ ・暴風雪
・豪雪 ・大雪 ・小雪 ・にわか雪

以上は、気象用語に出てくる雪の一部。

次は、歳時記に出てくる雪。

・雪もよい ・新雪 ・初雪
。・雪 ・小雪 ・根雪 ・粉雪 ・綿雪 ・牡丹雪 ・小米雪 ・細雪 ・飛雪 ・大雪 ・深雪 ・吹雪 ・雪明かり ・雪の声 ・朝の雪 ・夜の雪 ・暮雪 ・根雪 ・風花
・地吹雪 ・雪煙 ・雪波 ・雪しまき ・雪起こし ・雪煙 ・
・雪晴 ・深雪晴

・雪の宿 ・雪国 ・雪野

・雪女郎 ・雪女 ・雪坊主 ・雪婆

・雪あそび ・雪合戦 ・雪だるま ・雪うさぎ ・雪つぶて ・雪投げ 
・雪まろげ ・雪見 ・雪見酒 ・雪眼 ・雪眼鏡 ・雪盲 ・雪焼け ・  
・雪折れ ・雪下ろし ・雪掻き ・雪囲い ・雪構え ・雪踏み
・雪合羽 ・雪ぐつ ・  
・雪安居 ・雪籠もり ・雪つり ・雪よけ

 「なごり雪」、古い歳時記には載っていませんが、気象庁の「季節のことば」に選ばれたのですから、若い人が編んだ季語集にはもう登載されているかも知れませんね。

・掌に消ゆる東京の朝の雪(春庭)
・大雪を伝える居酒屋のテレビ(春庭) 

<つづく>
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ぽかぽか春庭「シンギュラリティ技術的特異点」

2017-01-24 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170124
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(5)シンギュラリティ技術的特異点

 去年2016年、これまで身についていなかったさまざまな語を知りました。
 おおかたの年配者には不評のカタカナ語で一番印象が強かったのは、「(テクノロジカル))シンギュラリティ」です。翻訳すれば「技術的特異点」。
 カタカナ語嫌いの方には「なぜ技術的特異点ではいけないのか。どうしてシンギュラリティなんぞというカタカナ語を使うのだ」と、ご不満でしょう。

 カタカナ語が使われるのは、和語や漢語ではそのニュアンスが伝えきれないときが多いです。テクノロジカルシンギュラリティを直訳した「技術的特異点」では、肝心なことが伝えきれないと思われたとき、カタカナ語シンギュラリティが登場しました。
 2045年の技術的特異点とは、これまでの技術とはまったく異なります。人工知能が人間の脳を凌駕するのです。これまでの「技術的」とは規模が異なり意味が異なっているゆえ、「技術的特異点」という漢語ではそのニュアンスが伝えきれない、と感じた人がシンギュラリティというカタカナ語の方を採用したのでしょう。

 (2045年の)シンギュラリティ(Singularity)とは。
 人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事をいう。テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうとこと。

 「より高度な技術が人間の分野を凌駕する」というのは、過去にもありました。人が荷車で物品を運んだ時代に蒸気機関車が出現し、より安い値段で大量に物資を運べることがわかれば、荷車運搬業者は、仕事がなくなりました。カメラが出現すれば、肖像画家の多くは仕事を失いました。
 しかし、今回のAIシンギュラリティは、人間の脳よりも賢いAIが、人間存在を変えてしまうということです。

 AI(アーティフィシャル・インテリジェンス=人工知能)の知力が人間を超えるのは、2045年と予想されています。
 AIは、人間より早く正確に考え、仕事をする。

 すでに、実験が行われている所もあります。人間相手の仕事でも、たとえば現在、長崎ハウステンボスのホテルでは、フロント受付係や部屋まで荷物を運ぶポーターは、ロボットが仕事をしています。実験中ではありますが、人件費は四分の一に縮小できたそうです。

 昨年、AIの話題で一番の衝撃をもたらしたのは、マスター(名人)というハンドル名を持つ囲碁棋士の登場でした。その正体は、人工知能アルファ碁の進化形。
 チェスではとっくに人工知能は人間に勝っていましたが、より複雑な将棋や囲碁ではまだまだ人間のほうが包括的に判断でき、AIに負けるのはずっと先のこと、と思われてきました。しかし、2016年、ついに人間に勝てるAI、マスターが出現したのです。マスターは、世界のトッププロ相手に60連勝しているそうです。

 2045年、AIが人間の思考能力を超える。これまで人間が思考力を使ってきた分野でも、AIが仕事をするようになるでしょう。日本でも、大方の事務職は失業すると言われています。
 従来、コンピュータは人間がプログラミングして命令したことを実行してきました。
 AIをこわいと思うのは、人間のプログラミング以上に、自律的に学習して進化できること。はたして、人間はAIを制御できるのでしょうか。SFで語られていたことが、まもなく実現するのです。

 これまで、すぐれた知能は人間のみが持つとされてきました。2045年以後、ほとんどの人間は、AIに知能の面で負ける。 
 2045年以後、さらに、ロボットやAIの仕事分野は拡大すると予想され、予想よりずっと早い段階で、人間の仕事は人工知能が請け負うようになるでしょう。

 私の仕事はどうか。教育は人と人とのふれあいが大きな意味を持つ分野です。しかし語学教育のある部分は、コンピューターによる学習がすでに行われており、AIのコミュニケーション能力がもっと発達すれば、ヘタな教師よりずっと上手に語学教育を行えるし、第一に日常会話程度の翻訳ならアイフォンが「ドラえもんの翻訳こんにゃく」を実現しているのだから、語学教育がどこまで必要なのか、私にはわかりません。

 私に理解が及ぶのは、世界に多様に存在するそれぞれの文化を互いに知り合い、理解し合うために、語学教育は有効だ、ということ。私は初歩の日本語教育においても、日本文化と多文化の比較をしつつ、相互の理解を深めようとしてきました。ごく単純な例でいえば、お箸(チョップスティックス)という語を紹介するとき、日本ではお箸は、自分の前に水平に置くけれど、中国や韓国朝鮮では自分に対して垂直に置く。食文化はそれぞれ違うけれど、それぞれの料理はどれもおいしい、なんて紹介する。でも、こんなことくらいだと、AIもできるでしょうなあ。

 現在日本の教育現場で行われている英語教育で身につく程度の英語なら、アイフォンの翻訳のほうがずっと役に立つ。
 外交やビジネスの場で英語母語話者と仕事をするなら、さらなる能力が必要になるでしょう。
 もっとも、トランプさんはほとんど本を読まない人だそうです。読むのは聖書と自著のビジネス自慢話。得意のツイッターで彼がつぶやく語彙分析でも、ごく初歩的な英語だそうなので、あと4年は、初歩英語だけでも大丈夫。

 そして迎える2045年、幸か不幸か、私はそのころもう死んでいるか、生きていてもよぼよぼで仕事どころではありません。私程度の能力の教師なら、AIのほうがずっとすぐれた教育をするに違いない。そして、私は、おそらく介護ロボットにおむつなどとりかえてもらっているか。
 23日に格安店で白髪染めをしたら、シャンプーは「自動シャンプー台」でした。さらにヘアブローは客が自分でやるシステム。スーパーでレジ計算と支払いも自動が導入されている店があるし、そのうち、サービス全体に自動システムが増えていくのでしょうね。

 さて、シンギュラリティは、新し語が好きな三省堂国語辞書にいつ登載されるのか。すくなくとも、2045年まで、「シンギュラリティ」という語がニュースで伝えられる頻度も多くなるでしょうから、日本語母語話者には言いにくく覚えにくい語ですけれど、語学教師の仕事用として、脳に仕入れておくことにします。ああ、すでにAIには負けているであろう私の脳ですが。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「武則天のつまみかんざし」

2017-01-22 00:00:01 | エッセイ、コラム

中国歴史ドラマ「武則天」

20170122
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(6)武則天のつまみかんざし

 教科書で学ぼうとすると無味乾燥になりがちな歴史ですが、ドラマ仕立てで見て史実とつきあわせると、かなり荒唐無稽な脚色のドラマでも楽しめます。
 昨今の日本のテレビで、歴史ドラマ考証の厳しさは、ほんとうにきっちりしています。

 2014年は、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」を見ていました。
 一向宗と織田方との戦いが描かれ、顕如が座っている石山本願寺の場面でのこと。
 浄土真宗では仏像は阿弥陀仏であるはずなのに、仏間には釈迦如来像がおかれていました。歴史考証はしっかりしていたはずですが、考証者も仏像の間違いは見逃してしまったのでしょう。むろん、テレビ見ていた私も、ぼうっとその場面をみただけ。仏像が画面にうつったのは、ほんの一瞬でしたから。
 しかし、テレビを見ていた3人の人から放映後、即座に「仏像が違う」という指摘があり、NHKは、公式ホームページで間違いを認めました。再放送や総集編では、仏像がうつらない画面に編集し直したのだとか。

 歴史ドラマが好きなのでNHK大河ドラマのほか、2015~2016年は韓国ドラマ「奇皇后」を見ていました。歴史的事実とは異なる、という前書きが出ています。実在の人物であるけれど、描かれていることは事実とは異なる、ということを、ドラマの最初に断っていました。
 
 元朝の最後の皇帝(順帝トゴン・テムル)の皇后になった奇氏(粛良台・完者忽郡オルジェイ・クトゥク、北元初代皇帝アユルシリダラの母)は、朝貢国高麗から献上された貢女(こんにょ)から成り上がった女性で、奴隷に等しい貢女から、皇后になるまでが、ほぼ史実を無視して描かれていました。

 昨年後半から中国歴史ドラマ「武則天」を見ています。宮廷の女達の争い、毒殺やら撲殺やら、すごいです。(日本の史書では、武則天自身が、皇帝としてではなく、3代皇帝高宗の皇后として墓に入ることを望んだことから、則天武后の名で知られています)

 こちらも、中国史上唯一の女帝となった武則天が主人公ですから、宮廷の争いにおいては、主人公補正があり、のちの武則天、武媚娘(ウーメイニャン)は、心根のきっぱりとしたよい人に描かれています。

 14歳で唐朝2代皇帝太宗李世明の後宮に入宮してから18年かけて3代皇帝高祖李治の皇后になるまで、そりゃあすさまじい争いに勝ち残ってきたのですから、実際の武媚娘は、頭がよくて気が強い、そして腹黒い女性だったろうと思います。もし「よい人」であったなら、宮廷の争いのなかでは、真っ先に脱落し始末されてしまったことでしょう。

 高麗からの貢女(献上された奴隷)なので前半生があいまいな奇皇后とはことなり、皇宮内のできごと、特に皇帝に関する出来事は事細かな記録が残されている中国史書の皇室記録ですから、史実は史実として残されていますが、脚本は、ひたすら武則天を「よい人」に描きます。

 2代皇帝太宗李世民の后妃たちの描き方、長孫氏文徳皇后は、主人公武媚娘が入宮したときにはすでに亡くなっているので悪くは描かれていませんが、4人の妃は、それぞれ宮廷内の権力争いにおいて性悪に描かれています。

 史実をみれば、4人ともまともな妃です。
 ドラマでは、韋貴妃は、子を持てなかったコンプレックスから陰謀をめぐらして武媚娘を追い落とそうと画策し、それが露見して牢獄で自殺に見せかけて殺されるという脚本です。実際は一男一女を産み育て、夫の皇帝李世民の死から15年後まで生き残っています。

 ドラマでは、4人の妃がそれぞれ権力を失ってからは、武媚娘と同時に入宮した徐恵が悪役になります。これまた史実では、徐恵は能筆能文の人であり、静かに皇帝に仕えました。皇帝亡きのち病気になり、後を追うように24歳で亡くなったという人ですが、ドラマでは武媚娘を裏切る敵役。

 2代皇帝太宗李世民が北伐に出軍すると、武媚娘が男装して従軍します。これも、アリエネーできごとですが、ドラマですからま、いいかと見ています。史実では、李世民は、武媚娘の権力好きを見抜いて寵愛は薄かったと思いますが、主人公ですから、皇帝にも皇太子李治にも深く愛される武媚娘です。

 中国赴任中に、夜、宿舎の娯楽は何もないので、読書のほかは、中国ドラマをテレビで見て過ごしました。「鑑真」が主人公のドラマなどを見たのですが、中国にいたころの鑑真について知らなかったことが詳しくわかりましたが、それが史実通りだとは思いません。鑑真が日本に着いてからの歴史考証時代考証はテキトーで、奈良の都や朝廷の描き方、間違いだらけでした。
 現在の中国のドラマでは、時代考証、風俗考証は、ほとんど無きに等しい。

 中国のほとんどの歴史ドラマで、歴史考証、風俗考証がテキトーであるのは、みな知って楽しんでいるのでしょう。
 日本でも、私が子どもの頃の時代劇など、元禄風俗も化政期も幕末もごちゃまぜの衣装髪型で、考証などされていませんでした。

 武則天の画面で気になったこと。
 唐時代の髪型や衣装は、絵や陶器などに女性の風俗が描かれているので、ドラマの女性達の髪型や衣装も、唐時代の女性絵のイメージに近い姿にまあまあなっていると思いましたが、細かいところでは宋時代も元時代もごちゃ混ぜかと思います。

 武媚娘の髪飾りに違和感がありました。
 2代皇帝の後宮女性たち、みな、華麗な衣装を着て、じゃらじゃらと髪飾りの豪華さ絢爛さを競っています。その中で、武媚娘の髪飾りはとても可憐な「つまみかんざし細工」なのです。
 あれれ、つまみ簪は日本で江戸時代後半に作られたのではなかったか。
 
 中国と韓国では「日本に広まっているよい文化は、すべて中国と朝鮮から運ばれたもの」と、一般大衆は信じています。日本の剣道は「韓国の剣術(コムド)が伝わったものである」「日本の巻き寿司は、韓国のキムパプ(Gimbap,김밥が起源である」と、信じられています。韓国で海苔巻きが食べられるようになったのは、19世紀以後である、などと史実として起源論を実証しても、民間伝承として「よいものは全部中国起源、朝鮮発祥」そう信じられているので、論破は難しい。

 だから、つまみ簪が江戸時代の細工物であることを指摘したところで、「それは、唐の時代に中国で作られていた簪が伝わったのだ」と、一蹴されておわり。
 第一、ドラマ制作側の中には、つまみかんざしが江戸時代のものであるか、唐時代のものであるかなど、関心を持つ者はいない。

 だれもつまみかんざしに関心を持たないと、思ったら、ネットの中にはいました。ご同類。やはり、武媚娘のつまみかんざしヘアスタイルに違和感を感じた人がいたのです。投稿の質疑応答の結論は、「中国ドラマに歴史考証、風俗考証を期待してはいけない」でしたけれど。

 現在日本で売られている浴衣ほかの和服、つまみ簪ほかの髪飾り、お手頃の価格品は、ほとんどが中国製、東南アジア製なのですって。伝統本物の江戸つまみ簪などは、よほどのお金もちでなければ、買えない。成人式にも七五三にもレンタルした中国製つまみかんざしを飾るくらいがせいぜい。

 若き武則天が江戸つまみかんざしを髪に飾っているのも、「史実無視」なんて野暮なことは言わないでドラマを楽しむことにしましょう。



<つづく>
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ぽかぽか春庭「按司と三別抄」

2017-01-20 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170122
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(4)按司と三別抄

 レキジョ(歴史好きな女子)が話題になったのも、ずいぶん前のことになります。
 私は歴史好きとはいっても、せいぜいテレビドラマを見て楽しむ程度のことなので、レキジョの範疇には入らないと思いますが、もう少しは歴史に詳しくなりたいと思っています。
 
2017年1月実施のセンター試験、試験問題と解答が新聞に出ていたので、日本史Bをぱらぱらと眺めて見ました。
 「何か私の知らないことばがあるかなあ」と、問題を読んで見ると。
 日本史B。昔々に私が習った時代には教わったことのない語句がありました。

 問題文「(済州島は)高麗王朝がモンゴルに服属したあとも、抵抗を続けた(イ)の拠点となった島です。」
 設問:(イ)に入る語を選択 選択肢(按司・三別抄)

 按司(あじ、または、あんじ)は、琉球諸島に存在した琉球王国の称号および位階の一つ。
 三別抄)さんべつしょう 삼별초)は、高麗王朝の軍事組織

 按司も三別抄どちらも、私が習った昔々の教科書で見た覚えのない用語です。現在の日本史は、琉球や朝鮮半島との関わりを昔よりくわしく学ぶようになったのだなあと、思いました。

 高校生が習う程度の日本史なら全部できるだろうと思いやってみました。おおよそ解答できましたが、私の日本史知識はこまかい年号などは暗記しない、だいたいの流れをつかんでいただけなので、「古い時代順に並べよ」という問題で誤答しました。

Ⅰ 元に建長寺船が派遣された
Ⅱ 雑訴決断所が設置された
Ⅲ 北畠親房が『神皇正統記』を執筆した

 私は、建長寺船を派遣したのは北条高時だから鎌倉末期であろう、神皇正統記は南朝劣勢の中、書かれたのだったなあと思いましたが、建武政権の訴訟機関の名「雑訴決断所」を知らなかった(教わったのに忘れていたのかも知れないが、習った覚えがない)ので、歴史順を答えられませんでした。Ⅰ、Ⅲ、Ⅱと答えましたが、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲが正解でした。

 雑訴決断所とは、建武新政権の所領関係の訴訟を扱う機関。鎌倉幕府の引付を受け継いだもの。1333年以後に設立されたが、1335(建武2)年11月の足利尊氏の挙兵によって2年ほどで、その役目を終えた。

 この程度の勉強をしても、2045年になれば、歴史の知識においても、AIのほうがはるかに多くの歴史事項をきっちり覚えているでしょう。年代を暗記するって今の受験生に必要なのかしら。

 人間は、歴史上の出来事から、未来のためにすべきこと、やるべきではないことを判断していきます。AIは、人間以上に適切な判断ができるのでしょうか。
 
 この国では、原発事故という歴史的事実があっても原発を再稼働させるし、戦争の惨禍をどれほど知ろうと、「戦争は必要」という人もあとをたちません。
 ほんとうに人間は歴史から学んでいるのかどうか。

 まあ、これから老い先短い中で、「雑訴決断所」という語を覚えたことで何かひとつでもよいことが起こるとは思いませんが、「日本の歴史や文化」を扱うこともある教師として、「よろず言の葉袋」に入れておきます。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ラストベルトの錆は落ちるか」

2017-01-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170119
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(3)ラストベルトの錆は落ちるか

 2015年にはあまり聞かなかったのに、2016年に盛んに耳にした語のひとつ。「ラストベルト」
 日本語母語話者の耳には、「L」と「R」の音は同じに聞こえるので、「lightとright」はどちらもライト。「liceとrice」は同じくライス。当然「last とrust」はどちらも「ラスト」だから、「ラストベルト」と聞いたときは「最後の工業地帯=終わりを迎えた寂れた工業地帯」と、思いました。

 rustは名詞「錆、さび色」。自動詞「錆びる、腐食する」他動詞「錆びさせる、腐食させる(思考力などを)鈍らせる」
 米語でrust beltと言う場合のrustは、中西部のかっての大工業地帯で、工場が閉鎖され使われなくなった機械など諸設備がさび付くほどの衰退を示す様子を表しています。

 なぜこのrust beltという語がニュースで盛んに使われたかというと、中西部の衰退した工業地帯で失職したり、「我が子に自分自身の子ども時代よりもいい教育を与え、より豊かな暮らしをさせてやれるというアメリカンドリーム」から落ちこぼれて、将来への希望を失った、「中程度教育終了後工場などに働きに出た白人男性労働者層とその家族」の支持を集めたのがトランプ大統領出現の原因になった、と喧伝されたからです。
 ほんとうにそうなのかの分析は、アメリカ社会学研究者にでもおまかせします。

 2017年1月12日に行われたトランプ次期大統領の就任前記者会見での発言を聞くかぎりでは、これまで私が聞いたどの「次期大統領スピーチ」よりも中身のない演説であり質疑応答でした。
 トランプ氏は中国や日本の貿易においてアメリカが劣勢であることで、中国と日本を非難しました。また、「フォードがメキシコに移転しようとしていた工場をアメリカ内にとどめることに成功し、700人の雇用を守った」と自画自賛しました。この自画自賛はいつまで続くでしょうか。失職から救われることになった700人にはご同慶の至りですが、他の数百万人数千万人の「現状に不満を持つ人」は、これからどうなるのでしょうか。

 中西部の自動車製造、鉄鋼業などでの失業者は、増え続けています。
 鉄鋼業でいえば、2015年から2016年の1年間に失業した労働者は、300万人に上っています。(ニッセイ基礎研究所の統計から)
 中西部の鉄鋼業や自動車産業の製造部門で働いていた労働者のこれまでの給与水準は、他業種よりも高く設定されていたため、レイオフ、リストラされた労働者が小売業、運輸業などの他業種に転職しようとすれば、どうしてもこれまでの生活水準から低落します。その不満がトランプ大統領の出現につながったと見なされています。「俺たちの生活を変えてくれ、もう一度強いアメリカにしてくれ」と、彼らは金満家の押しの強い男に希望を託しました。

 それらの人々は、差別発言を繰り返そうと、言動が下品であろうと、起死回生の希望を見いだして投票したのだと思います。が、就任前演説でわかったことは、彼は大統領になっても差別をやめる気は無く、自分に反対するメディアに弾圧を加えるだろうということ。側近や重要閣僚の座にその能力をうんぬんするよりも、自分に都合よく存在する人々のみを据えること。プーチンと仲良くやろうとして手玉にとられそうだ、ということ。

 トランプさんの「アメリカでの商売には高い関税をかけるぞ」と、中国や日本に言ってさえいれば、アメリカの雇用は守られる、というかのごとき発言では、先が思いやられます。就任前記者会見では、「オバマが決めた健康保険制度をぶっつぶす」ということのほか、具体的な政策は述べられていませんでした。

 新大統領、アメリカ国内のアンケート調査で、「新大統領を歓迎しない。期待しない」と答えた人が、史上もっとも多くなりました。不支持率が過半数51%を超えたそうです。いろいろな記録を作りそうな新大統領ですが、まず第一の記録は「歓迎されない度歴代大統領ナンバーワン」の記録。

 トランプ新大統領は、就任式の演説で「強いアメリカを取り戻そう」と繰り返すでしょうが、不支持51%という「分断された国家」をまとめ上げるために、何をするのやら。

 プーチンは、民主党候補の選挙活動を妨害せんとしてハッキングをしたけれど、ほかの国だってやっていることだし、プーチンと仲良しなのは「財産」だ、と、強調しています。ウクライナ領土のクリミアをロシアが武力で併合したことにともなう制裁措置は解除し、ロシアがシリアのアサド政権に武器を供給することにも目をつぶるようです。
 ロシアに弱みを握られているというのは「まったくのデマ」だと、トランプさんは主張していますが、あまりのロシア優遇策に、どんだけプーチンを喜ばせたいのやらと、仲良しぶりに目を見張っています。ロシアには経済上で恩を売るとして、国内の経済政策はどうなるのでしょう。

 ラストベルトの赤錆は、果たして落ちるのやら。

 20日の大統領宣誓式に、多数の要人が欠席し、パーティで歌う歌手多数が「出演拒否」だったそうです。51%にのぼる「新大統領不支持」の層は、宣誓式に合わせて反対デモを企画しているとのニュース。
 よその国のことではありますが、51番目の属州プエルトリコ自治区に次ぐ52番目の属州、と評されている邦ですから、やはり、アメリカがくしゃみしたら、我が方が風邪引くらしく、よそごととは思えず、宣誓式ニュースなどウォッチングしようと、ま、面白がっているだけですけれど。
 
 古代、地中海世界を掌握したローマ帝国も滅びました。大航海をやり遂げ、世界の半分を植民地にしたと豪語したスペイン王国も衰退しました。20世紀を産業力軍事力で席巻し、21世紀初頭の世界を情報力でぬきんでたアメリカ帝国も、やがては傾きます。
 私には、この金メッキのような「切り札」さんは、「終わりの始まり」の象徴のような気がします。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「私は生き残る I will survive」

2017-01-17 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170118
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(4)私は生き残るI will survive

 私が所属しているジャズダンスサークル。振り付けの踊り練習に入る前に、30分くらいストレッチやヨガの動きで体をほぐし、体幹をととのえます。
 いろいろな準備運動があるのですが、私が一番好きなのは、「孤立運動(個別運動)アイソレーション」という手、首、肩、胴など、ひとつひとつの体の部位を順番にほぐしていく準備運動です。

 私がアイソレーションで体を動かすのが好きなのは、サークルが使用しているアイソレーション用の曲の一番最初に出てくる曲が、「私は生き残るI will survive(日本語のタイトルは、恋のサバイバル)」だからと思います。私のジャズダンスサークルは、長年変えることなく、アイソレーションに「恋のサバイバルI will survive」を使用してきました。

 1979年夏にケニアに行ったとき、ナイロビのディスコでいちばん流行っていた曲がこの「I will survive」だったのです。耳になじんだ曲でした。お酒も飲まずダンスも嫌いなタカ氏は、私が「恋のサバイバル」でノッて踊るのを見て「タコ踊り」と言っていましたが。
今の私の踊りを見ると、たこ踊りじゃなくて、なまこの干物くらいかも。

グロリア・ゲイナー「I will survive恋のサバイバル」
いろいろなバージョンがありますが、歌詞が出るバージョンで。
https://www.youtube.com/watch?v=PNDl41HfvxI

 この曲が、次期大統領」誕生を前に、アメリカで再び話題になりました。

 ハリウッドの俳優たちが、「I will survive」の歌詞を朗読したり、鼻歌のように歌ったり、「私は生き残る」と、叫んだり。表現方法はさまざまですが、歌が主でないということは、歌詞に共感してのパフォーマンスだろうと思います。エマ・ストーン、ナタリー・ポートマン、エイミー・アダムス、マシュー・マコノヒーほか20名がパフォーマンスしています。
 2017/01/11に公開され、私が視聴した15日時点で、youtubeの再生回数は180万回を超えていました。

https://www.youtube.com/watch?v=bTYidWBC8-4

 なぜ、この歌が今の時期に話題になったのか。
 1978年にリリースして以来、差別に苦しんできた人々が「私は生き残る」という希望を込めて歌い続けてきたからです。差別を受けてきた女性やLGBTの人々にとって、どんなひどい扱いを受けても「私は生き残る」という意志を込めて歌う歌になっていたのです。

 私は、トランプ氏が差別発言を繰り返したり、粗暴で下品な言動をとるのは、選挙用の派手なパフォーマンスだと思っていました。大統領宣誓をする日までにはちゃんと「寛容とさまざまな人々の融和」という、この国の礎の精神を示すようになるのだろうと。
 しかし、1月12日の就任前記者会見では、彼の態度は前にもましてひどくなり、彼に不利な記事を書いたメディアの発言を封じ、独裁者のようでした。

 ハリウッドスターたちの「I'll survive」を表現したパフォーマンスは、「オレ様を批判するようなヤツは弾圧するぞ」と言いそうな新大統領へのプロテストソングだろう、ということです。どんな差別主義者がトップになろうとも、私たちはうちひしがれてしまうことなんかない。どんなことがあっても生き抜こうという人がいて、それを表現できるところに、まだまだ希望はあると思います。

「I will survive」 春庭拙訳。
 こなれた日本語の歌詞で歌いたい人は、布施明の歌う日本語歌詞をどうぞ。
 
1)
At first I was afraid I was petrified
はじめは、こわくて自分を失ってた
Kept thinking I could never live without you by my side
あなたがそばにいないと、生きていけないと思っていた
But then I spent so many nights
でも、幾夜もすごしてから
Thinking how you did me wrong
あなたがどうやって私をねじ曲げたのか考えた
And I grew strong
そして、私は強くなった
And I learned how to get along
私はどうやって生きていくか知った
2)
And now you're back from outer space 
今、あなたは遠くのどこかから戻ってきてる
I just walked in to find you here with that sad look upon your face
私がちょうど家に入ろうとしたとき、あなたが悲しそうな顔してそこにいるのをみつけた
I should have changed that stupid lock
私は、このいまいましい鍵を取り替えるべきだった。
I should have made you leave your key
あなたに合い鍵を返してもらうべきだった
If I had known for just one second
もし私が一瞬でも知っていたら
you'd be back to bother me
あなたが私を悩ましに戻ってくるってことを
3)
Go on now, go walk out the door
今すぐ出て行って。ドアの外へ
Just turn around now
回れ右して、今すぐに
'Cause you're not welcome anymore
だって、あなたは誰からも迎えられてない
Weren't you the one who tried to hurt me with goodbye
私を傷つけてさよならしたのは、あなたじゃないの
Do you think I'd crumble
私がぼろぼろになるとでも思った?
Did you think I'd lay down and die?
私が横たわって死んでいるって思った?
4)
Oh no, not I. I will survive
そんなことない、私は生きている
Oh as long as I know how to love
私がどんなふうに人を愛するか知っている限り
I know I'll stay alive
私は生き残っていく
I've got all my life to live
生きていくいのちのすべてを私は持っている
I've got all my love to give
私は人に与えるための愛のすべてを持っている
and I'll survive
そう、私は生き残る
I will survive,
私は生き残る
I will survive! Hey, Hey
私は生きて行く、ヘイヘイ
5)
It took all strength
強さのかぎりをぜんぶつかった
I had not to fall apart
私がちぎれて落っこちないように
Kept trying' hard to mend the pieces of my broken heart
傷ついた心のかけらを癒やすのにどんなこともやってみた
And I spent oh so many nights
ああ、幾晩もわたしはすごした
Just feeling sorry for myself,
我が身を嘆くばかりだった
I used to cry
ただ、泣いていた
But now I hold my head up high
でも今、私は頭を高く持ち上げる
6)
And you see me, somebody new
今の私を見て。新しい別の人だもの
I'm not that chained up little girl who's still in love with you
あなたにまだ恋してつなぎ止められていたちっちゃな子じゃない
And so you felt like dropping in 
あなた、ちょっと立ち寄って見たんでしょ
And just expect me to be free
私がひとりでいると期待して
Now I'm saving all my lovin' for someone who's loving me
私は私を愛してくれるだれかのために、愛のすべてをセーブしているところ

3)繰り返し
4)繰り返し
7)
Go on now, go walk out the door
今すぐ出て行って。ドアの外へ
Just turn around now
さっさと回れ右して
'Cause you're not welcome anymore
だれもあなたを歓迎してない
Weren't you the one who tried to crush me with
私をつぶしたのは、あなただった
Do you think I'd crumble
私がぺしゃんこになると思った?
Did you think I'd lay down and die?
横たわって死んでしまうとでも
~~~~~~~~~

 生き残りましょう。どんな困難があろうとも。 

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ほぼほぼ神ってる」

2017-01-15 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170115
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(2)ほぼほぼ神ってる

 年末に発表された「ユーキャン流行語大賞」では、「神ってる」が大賞に選ばれました。私は2016年に一番世の中に影響を与えた流行語は「保育園落ちた日本シネ」だったと思ったけれどね。「一億総活躍」という、まやかし標語を見事に撃沈させたと思ったので。
 
 流行語は、その年に流行して世相を反映するけれど、短期流行が終われば忘れ去れることが多い。
 私が毎年の新語で注目しているのは、「辞書の三省堂」が選ぶ「今年の新語」です。公募投票によって選ばれた中から選考委員が決定して発表されます。

 新語をいち早く辞書に登載することで知られる三省堂国語辞書。流行語とは異なり、「今後辞書に載って行くであろう語」を選ぶので、すぐに忘れ去られることもなく定着し、辞書に載っていきそうな語が集められています。

 2016年の「辞書の三省堂新語」で入選したのは、
1位、ほぼほぼ 2位エモい 3位ゲスい 4位レガシー 5位ヘイト 6位スカーチョ 7位VR 8位食レポ 9位エゴサ 10位パリピ

 「ほぼほぼ」は、100%じゃないけれど「ほぼ」よりは多めの割合に使う。完璧ではないが、全体的に妥当と見なされる場合などに使う。
 「エモい」英語のエモーションから。接する人の心に、強く訴えかける働きを備えている様子。

 「ゲスい」。源氏物語には、身分の高い人を表す「上衆じょうず」の対語として「下衆(げす)」が出てきます。「(女二宮が降嫁して)下衆になりたり(蜻蛉)」
 同じく源氏物語に、「下衆下衆し」と、形容詞も出ています。時代くだって江戸時代には、「下衆下衆し」の短縮形「ゲスい」が使われるようになったようです。2016年には「ゲス不倫」が流行語大賞入賞するなど、「ゲス」という語をテレビで聞かない日はなかった。

 「レガシー」。英語legacyから。英語直訳では「遺産」「遺物」なので、年配者の中に必ず「遺産と言えばよいものを、どうしてわざわざレガシーなんぞとカタカナ語で言うのだ」と、お腹立ちの方もいるのではないかと思います。
 わざわざカタカナ語にするのは、「遺産」とは異なるニュアンスの語だから。

 法隆寺も東京タワーも西洋美術館も、「遺産」でいいです。でも、レガシーというとき、そこに現実世界に蠢く利権がからんだ「お金」の匂いがプンプンとしてきます。
 2016年に盛んに使われた「レガシー」とは。あるイベントのためにつくった施設が、のちのちまで再利用できること。また、その施設。「五輪後のレガシーになれるかを議論する」

 五輪のために建てられた建物が、のちのち維持費ばかりかさんで赤字になる「負の遺産」になるかもしれぬ、だれがその負債をおうのか、そして負債含みの「レガシー」建物を、だれが費用負担し、だれが利権を得るのか。そういうもろもろを含んだ「遺産」がレガシーなのであって、「遺産」という語とは異なる意味を持つゆえのカタカナ語です。

 5位のヘイト。これも英語hate(にくしみ)からの語ですが、単に「にくむ」だけなら、カタカナ語はいらない。「ヘイト」は、相手を心理的物理的に追い詰めるまで、憎悪表現を拡大していくところに特徴があります。ヘイトスピーチとは、特に民族差別を表している、特殊な憎しみと言えましょう。
 昨年5月に「ヘイトスピーチ対策法」が成立しました。しかし、民族差別人種差別宗教差別ジェンダー差別を肯定する発言を繰り返すトップをいただく大国も出現したのですから、対策法で対策になっていくのかどうか、定かではありません。

 6位スカーチョ。春庭は、年中お下がりのボロを着ていて、ファッションにうといので、スカーチョとは何か知りませんでした。スカートとガウチョパンツの合成語。スカートのように見える幅広のゆったりサイズの衣装。

 私は結婚以来、スカートを履くことがなくなり、仕事で出るときも家でもパンツスタイルです。服はほとんど買ったことがなく、姉、妹、伯母、姑、友人のお下がり服で間に合わせてきました。今年は、娘の断捨離がどっさり来ました。娘は、長年「私に無断で縮んでしまった服」を、「いつかやせたら着られるかも」と、とっておきました。床上収納でした。

 それを、「今着られない服は捨てる」と、着られない服を自分の部屋から母の部屋に移動しました。「母が着るならとっておいて。着ないなら捨てて」と。娘が大学時代高校時代に着ていたふくなんぞもあります。
 その服を今度は私が捨てられずに「もうちょっとやせたら着られるかも」と、捨てるのをためらっているうちに、娘の部屋の床が見えるようになったかわりに、私の部屋の床上収納が山になって積み重なっています。
 スカーチョは最近の流行だから、娘の古着の中にはありません。せいぜいキュロットパンツ、パンタロン。古いね。

 7位VR=バーチャルリアリティ。コンピュータにより視覚的聴覚的に映し出された映像が、実在するかのように感じられる技術とその受容。仮想現実。人工現実感。

 14日土曜に、娘息子が「スイッチ」というニンテンドーの宣伝番組を見ていたので、お茶碗洗いながら横目で見ていました。グラスに氷を入れる感覚を自分の触覚で感じられる、というのです。「チャリン」という氷がグラスに当たる音だけではなく、氷がグラスに触れた触感もリアルに感じられる、と伝えていました。
 味覚と嗅覚はまだVRにはなっていないようですが、口の中にドロップひとつ入れてなめていると、カレーライスでもパクチーサラダでも、なんでもVRで味覚が楽しめるという時代もまもなくやってくるみたい。私はVRでどれほどのごちそうが味わえるとしても、焼き芋一つでもほんとうに食べた方がいいけれどね。

 8位食レポ。食べ物紹介番組で、タレントなどが味や食感などを伝える発言。昨今のテレビバラエティ界では、これができないと仕事がこない。
 私の食レポも、「うまい、とてもうまい、ものすごくうまい」の3種類しかことばがなくて、うまいことレポートするタレント、すごいなあと思います。

 9位エゴサ。エゴサーチの略。自分自身(ego)の名をインターネットでサーチ(検索)すること。自分自身に付与されている評判や、隠されていた悪口なども露見する。

 「春庭」サーチすると。2003年にブログ開設したときは、我がサイトと「本居春庭」舞楽の曲名「春庭花」しか出てこなかったのに、14年後の今は、マンガのタイトルもあるし、花屋の屋号もあり、税理士さんの名もあります。

 10位パリピ。party peopleをパーリーピーポーと英語っぽく発音した上での省略語。「パーティーのような、はなやかで盛り上がることのできる場を好むひとびと。また、そのような場に集う陽気で社交的なひとびと」
 
 10位などは、すぐにすたれそうですが、1位の「ほぼほぼ」などは、数年後の改訂版三省堂国語辞書には載っている気がします。

 金田一京助の孫、春彦の息子である金田一秀穂がテレビバラエティ番組に出たとき、「日本語の神様」「国語の神様」とキャッチコピーをつけられていました。それを知った日本語教育担当の講師室センセー方一同、みなさま、そうそうたる日本語学・国語学の論文を執筆なさっている方々だったので、「あの程度がカミといわれるなら、日本語学業界もなめられたもんだね」と言っていました。京助、春彦の大きな業績に比べると、傑出した日本語学論文もない秀穂を「カミ」と呼ぶテレビ業界の軽薄さに憤激していたのです。

 私はクイズ番組大好きで、「Qさま」というクイズ番組などに登場しては、お笑いミスアンサーを繰り返し、めげずに繰り返し番組に出演する秀穂さんを面白がっていました。私程度でも答えられるクイズにちょくちょく誤答しても、「祖父やら父親の栄光を踏んづけても堂々としていられる彼」を、見上げたもんだと思いました。テレビ業界においては、面白いこととかわいいことは正義です。
 彼を、日本語業界における「ほぼほぼカミってる」人だと認定しましょう。

 こういうのを、「リスペクトにみせかけてディスってる」というのですが、カタカナ語に弱いので、私にもよく意味がわかりません。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「やっこくなぐれる」

2017-01-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170114
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(1)やっこくなぐれる

 「ヤッコイって、方言なの?」と、娘が聞いてきました。料理番組を見ていたとき、料理人が「これ、ヤッコクなるまで煮てください」と言ったら、まわりの人から「ヤッコクってなんですか」という質問が出たのだそうです。

 娘は「私は普通に使っていたけれど、意味がわからない人がいるってことは、方言なんだろうと思った」と、言うのですが、私もごくあたりまえに使っていた語なので、方言という意識を持っていませんでした。群馬県では日常語と思います。娘は、弟が生まれた5歳のとき1ヶ月間と、母が中国に出稼ぎに行った9歳のとき半年間、群馬県で過ごしたので、だいぶ群馬弁が身についています。

 「やっこい」は柔らかい、「ひゃっこい」はひんやりしている。東北から北関東地方にかけての方言のようです。群馬ではさらにヤッケー、ヒャッケーになるときも。
 料理用語などは、日常茶飯語ですから、母から子に伝わることが多いのでしょうが、私は「ヤッコイ」を娘に伝えた覚えがないのです。たぶん、群馬にいる間におじいちゃんなどが使っていて耳に残っていたのでしょう。

 すみともさんのサイトで「なぐれる」を知りました。私の持っている古語辞典にはちゃんと載っていました。ラ行下二段活用の動詞。手持ちの国語事典では、3種類チェックしたけれど、登載されていなかった。
 すみともさんの説明「なぐれる、とは、横の方へそれる。落ちぶれる。身を持ち崩す。売れ残る。仕事にあぶれる」
 すみともさんの母上は、さしみなどがだめにならないうちに食べようとするとき「なぐれないうちに食べる」と表現なさったよし。
 すみとも母上は、もっぱら刺身の食べ方に関して「なぐれる」を使ったということですが、母から子へ、料理や食べ物についてのことばが台所や居間で伝わっていくこと、うれしくなります。

 今まで知らなかったことばを教えてもらうと、なんだか自分のことば袋が膨らんで、得した気になります。お金は少しも貯まらないけれど、ことばを貯めていると思うと、まずしい暮らしもちょっぴり豊かな気分でいられます。

 今夜も一汁二菜。豚角煮+大根。圧力釜で炊いたので、大根がやっこい、というよりぐずぐずになったけれど。これって、大根がなぐれた?こんぶとレンコンの炒め煮(生協市販品)、わかめとネギと大根の味噌汁。餅バター焼き。
 料理しながら、娘息子に伝えることばがあったか。う~ん、黙って作り、テレビ見ながら食べました。3月には仕事にあぶれる予定の、なぐれている息子。30すぎても売れ残っているなぐれた娘。落ちぶれてなぐれっぱなしの母。総勢なぐれている家族の食卓でした。

 体も脳も、年取るほど硬直してきて心のやわらかさも失われてきます。もっともっとやっこい脳と心でいるために、去る語を惜しみつつ来る語を拒まず、ことば袋に入れていきます。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「家族と食べる・笑う門には福来たる」

2017-01-12 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170110
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記1月(7)家族と食べる・笑う門には福来たる

・眉毛までかぶせて歩く毛糸帽(春庭)

 1月8日に、姑の家に行き「毎年のおばあちゃん家年始」を、今年もやりました。年賀を受ける姑はもういませんが、居間ででわいわい家族が食べていたら、舅姑も安心かと。
 もっとも、姑は「死後の世界」などはいっさい信じない合理主義者でしたけれど。

 姑は、現時点で科学的に証明されたことは信じるけれど、そうでないことは信じなかった。私は今はまだ証明されていないことでも、将来明らかにされるようになるかもしれない、ということもたくさんあるだろうと思っています。
 たとえば、「笑う門には福来たる」ということわざは、理由はわからなくても、昔からみなそう信じてきたことです。近年。医学的に免疫力の測定値が出されて、実験的にもこのことわざの正しさが立証されました。笑った後で測定すると、免疫力を示す数値が高くなり、病気に打ち勝つ力も生まれるのです。

 「家族がいっしょにご飯食べているようすを見たら、姑も安心するだろう」と、思うのは、私の心の安心のためであり、姑は、形式的な法事など必要ない、という人でした。一周忌とか三回忌などは、そういう名目で生きている者たちが集まっていっしょに食事を共にして故人をしのべばいいだけで、お坊さんにお経をあげてもらわずともよい、という考え方を、夫も受け継いでいます。
 昨年12月、姑の命日前日に「おばあちゃんが好きだった中華を食べる」ということで家族一緒に食事しました。

 今回の正月会食メインイベントは、息子が父親にプレゼントしたデジカメをセットし、タカ氏が使えるようにレクチャーすること。
 デジタル機器に弱いタカ氏、ビデオ録画も覚えなかったし、ケータイも使わない。カメラも、フィルム一眼レフにこだわっていました。

 しかし、フィルム販売中止が相次ぎ、よほどのプロでもなければ、フィルムカメラなど扱わない時代。まず、息子がデジタルカメラを教えて、使えるようになったらデジタル一眼レフを買うということになりました。
 デジタルカメラの「手ぶれ防止も露出補正もついていて、だれでもシャッターさえ押せば写せる」というのが、タカ氏には不満です。昔の「シャッタースピードと露出補正とカメラアングルが腕の見せ所」というカメラ技術を発揮できないでは「写真を撮る」という実感がわかないようでした。時代に合わないアナログジーさんです。

 2016年、艱難辛苦の出来事が続きました。2017年は、できるだけほがらかに明るく楽しく暮らしていようと思っています。笑っていれば、きっと招運来福悪霊退散、免疫力もアップする。
 
<おわり>
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ぽかぽか春庭「仲間と食べる・朝日のようにさわやかに」

2017-01-10 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170110
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記1月(6)仲間と食べる・朝日のようにさわやかに

 春庭は、頭と顔だけじゃなくて性格も悪いので、人間の友達が少ないです。
 仕事をお休みしている間、人付き合いがますます減って、家族以外と話す機会は、毎週金曜日のジャズダンス仲間だけ。ダンス練習終わっての帰り道、歩きながら10分ほど話すのが、唯一の声を出して話す機会です。練習場所の文化センターから数分のところにミサイルママの家があるので、ミサイルママの集合住宅へ曲がる角で、しばし立ち話して別れます。

 年に3回、メンバー全員で会食します。納涼食事会、ダンス発表会後の打ち上げ会、新年会。
 新年会は、今年の活動方針を決めるミーティング後に行います。
 2017年のミーティングは、駅前の「男女参画センターミーティングスペース(無料)で。会長、会計、発表会係などを決めます。ミサイルママは会計係。私は発表会係。会長は、去年にひきつづきCozさん。

 ミーティング後、スパゲティ屋でピザとスパゲティを食べながら、本年度活動の細かいことをあれこれ話しました。発表会をどのようなやり方で行うか。踊る曲は、新しく練習する曲のほか、前に発表した曲のなかから、どれを選ぶか。

 あらかたの方針が決まると、それぞれの「私の去年1年の総ざらえ&今年の抱負」を話しました。
 くにちゃんからは「このジャズダンスグループのほか、フォークダンスグループにも入っていたのだけれど、フォークダンスの練習曜日が毎週金曜日に変わってしまい、どちらも練習を続けたいので、練習参加を半々ずつにしたい」という報告がありました。

 ご主人の介護を続けているTTさんからは「介護はどんどん難しくなっていくので、練習に出られない日があると思うけれど、練習して体を動かすことが自分自身のリフレッシュになるので、できる限り参加します」という。

 ミサイルママ、昨年10月から「ホテルレストラン業務」を学ぶ学校に入って、「3月に卒業したら、できればレストランに就職したいけれど、年が年だからどうなるか」と、これから2ヶ月ほどは、卒業研修やら就活やらで忙しいようす。
 65歳をすぎて新しい世界にチャレンジし、就活するというミサイルママ、ほんとうにすてきな女性です。背筋をぴんととおし、心もはつらつとしている美人さんを大切にしてくれる人、いたらいいなあ。

 2015年2016年、私は発表会に出られませんでした。今年は出られるかなあ。ちゃんとスタイル整えて、衣装が着られるといいのですが。
 ミサイルママと踊ったのも、2014年が最後。スタイルいい彼女のとなりだと私の太さが目立つのですが、振り付けをきっちり覚えているミサイルママの後ろにいると、彼女の振りをマネしながら踊れるので、私が振り付け覚えていなくても安心していられます。

2013年の発表会。左ミサイルママ。右e-Na


 スパゲティ屋でのおしゃべり。私が家族の問題などを、打ち明けたあと、去年から仲間になったミィさんが、「実は、私も、いろいろ問題を抱えていて」と、打ち明け話を始めました。ご主人は離婚後に亡くなったそうで、ミィさんも、ミサイルママやcozさんと同じくシングルママとして働いてきたのです。去年、仕事先を変え、正社員に迎えられた職場で「70歳までは働いて家族を支えていく」と言っていました。互いに楽ではない生活環境を打ち明け合い、そうやって打ち明け合う仲間がいることで励まされました。

 よい感じでお開きになりそうなところ、Cozさんが、「私も金曜日に別のところで活動したい。サークルをやめたい。今の会費で月に先生の指導が2回だけで、あとは自習、というやり方なら、保留金を全部使い切って、先生の指導を月3回にして、自習はなしにして、会費が尽きたら解散したい」と、言い出しました。会員が6名に減少してしまい。サークルが維持できなくなっていることはここ数年ずっと課題ではあったのですが、先生の指導回数を減らし、講師謝金を減額することでやりくりしてきました。

 Cozさんの意見で、急遽もとに戻って会の規約見直しとなり、練習時間を30分繰り上げる、会費を500円値上げして、1ヶ月5000円にする。先生に月3回指導を受け、サークル自習は無しにする。自主練習したい人は、各自で会場を予約して会場費を折半負担する。ということになりました。

 私にとっても、心身解放できるジャズダンス練習は、大事な場です。今年も踊り続けていけますように。
 ことしの発表会、新曲は「朝日のようにさわやかにSoftly, as in a Morning Sunrise」です。「朝日のようにそっとやさしく」という訳のほうがいいように思うけれど。失恋を歌っている歌詞なのに、「さわやかに」では、失恋がさわやかみたいだもの

 2016年3月。ミャンマー国バガンの仏教遺跡で見た朝日。部分日食がくっきりと見えました。


・縁欠ける朝日それでもさわやかに(春庭)


Softly as in an evening sunset
夕日が沈むようにそっとやさしく

The light that gave you glory will take it all away..
輝きをくれた光は、その輝きをすべて取り去って行くでしょう...

 だいじょうぶ、ミサイルママ、きっと明日は明日の日が昇る。だいじょうぶ、ミィさん。しっかり働く母親でいましょう。

So not ends the story
物語には終わりがない

<つづく>
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ぽかぽか春庭「食べる」

2017-01-08 00:00:01 | エッセイ、コラム

20170108
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記1月(5)食べる

・福鍋を底までつついて福はなし(春庭)

・読みぞめは西江雅之『食べる』なり(春庭)

 正月二日。夫が「この本、まだ読んでいなかったら、あげる」と、西江雅之の『食べる』を持ってきたので、もらいました。
 おかえしに宮本常一『アジアアフリカを歩く』をあげました。ブックオフ百円本で見つけたとき「この本、読んだ気がする。家にあるだろうな」と思いながら買ったら、やっぱり家にありました。西江雅之とか辺見庸、石牟礼道子須賀敦子など、一番のお気に入り作家だと、同じタイトルの本、単行本と文庫本2冊、なんて持っていることもあるのだけれど、宮本常一、好きだけど、2冊持っていなくてもいいかな、と思って夫におすそわけ。

 西江先生。2015年になくなりました。1979年に私とタカ氏がケニアで過ごしたときはすれ違いで会えませんでしたが、私が奨学金目当てで入学した大学で、学部1年間、修士課程で謦咳に接することができました。学部で西江さんの授業を受けている間に、夫もいっしょに講義を聞いたことがあります。二人が共通して好きな著者のうちのひとりです。

 『食べる』に書かれているエッセイ、私と夫が聞いた講義で語られていた「文化と食物」や「昆虫を食べる」という話もあったし、授業では聞いたことのない「ナッツ」「匂いと食べ物」などもありました。

 夫は、20年ほど続けてきたタイ語の学習を、昨年からビルマ語に変えて語学講座に通っています。やたらにビルマ文字の話をしたがるので、娘息子には「ミャンマーでは、ミンガラバーとチェズーバーだけ言えれば生きていける」と、煙たがられています。

 西江先生の本『食べる』
 世界のことばで「たべる」 と書かれています。一番上の右側がビルマ文字です。



<つづく>
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ぽかぽか春庭「なずな粥」

2017-01-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170107
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記1月(4)薺粥


(静岡上空の富士20160131)

・西空に小さくとがる七日富士(春庭)

・人日や鏡の中の老婆、誰(春庭)
 あらまあ、この老け顔、わたしだよ。しばらく鏡見ることもしないでいたら、いつのまに。

・貧の日々母娘寄り添う薺粥(春庭)

 「子どもの貧困」が話題になることも多くなりました。
 我が家、日本中がバブル景気で浮かれている頃、親子で食うや食わずの生活をおくりました。娘にはそれがトラウマとなっていて、今も、冷蔵庫にぎっしり食品がつまっていないと不安に感じるという。湊かなえ原作のドラマ『Nのために』を見たとき、主人公の女性がやはり冷蔵庫に食べ物をぎっしり詰めておかないと不安になるようすを見て「あ、おんなじ」と、言っていました。

 娘と食べていくために、奨学金をもらうことを思いついて、娘が2歳のとき、近所の大学に入学しました。貧乏ゆえ授業料は免除になり、奨学金で生き伸びました。
 その奨学金、半分くらいようよう返したけれど、余裕がないままずっと返せないでいたら、利子ばかり増えました。無利子の育英奨学金だったのに、育英会は奨学金返済事業を金融会社に丸投げしたため、金融会社の設定した「延滞金」がふくれあがり、なかなか完済とならなかったのです。育英会に借りた金額を育英会に返済するのは仕方ないと思うけれど、金融会社に借金証書を売り飛ばしたりするとは思いませんでした。

 2016年12月。学部と修士課程で6年間借りた育英奨学金をようやく返済しました。夫が肩代わり返済したのです。金融会社から、これ以上払わないなら、裁判所からの呼び出しが来て差し押さえになるぞ、という脅し電話がきたので、夫に「借りたもん返せよ、ゆーてきとる」と話しました。そもそも母と子の生活費に使った奨学金だもの、今まで、スズメの涙からすこしずつ返済してきた私も、さすがに「子ども達の生活費で借りたんだから、あんたも、ちょっとは返済せーや」という気になりました。ひとりでがんばるの、もう疲れた。

 26年目の完済です。「完済証明書」というのが送られてきました。無利子のはずで借りた額を育英会に返済するのは納得できるけれど、借りた額よりも、育英会から返済業務請け負った金融会社に支払った延滞金のほうが多い気がする。
  
 今後、貸し付けではなく返済義務のない給与の奨学金制度が始まるのだとか。学ぶ意欲のある人が学ぶ機会をえられますように。
 子どもがちゃんとご飯が食べられるように、「こども食堂」などの制度が、今のように人々の善意によってかつかつ運営されるのではなく、きちんと補助金も出るような制度をととのえてほしい。
 
 高齢者とは75歳から、という方針が出されました。いよいよ、年金支給年齢を遅らせていく準備にとりかかったみたいです。
 私は国民年金じゃ食べていけないから働くけれど、18歳から50年間も働き続けて、まだ働くのかと思うと、しんどいしんどい。と、またしても新年早々の貧乏話で辛気くさいことでした。
 
 ちょっとは景気のいい句でおひらきにしましょう。

・鷽替えて宝の山にめぐり逢う(春庭)

 夫が買ってきた宝くじ、「7億円当たっても、僕いらないから、全部独り占めしていいよ」とワタされたのだけれど、10枚のうち末等300円あたりました。独り占めします。あれま、やっぱり景気よくならないな。

・七草を食べて明日を信じけり(春庭)

<つづく>
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