20230115
かぽか春庭ことばの知恵の輪>ことば倉庫(2)2003年-2005年のつぶやき31文字
年末、掃除もせずにぼうっと座り続けていました。
よしなしごとが去来するなか、時間の浪費には変わりないのに、「フジ子ヘミングショパンの島を訪れる」なんていうドキュメンタリーを横目で見ながら過去ログザッピングしてことばを集めました。
OCNカフェがつぶれて今のgooに移転するとき、私がパソコンわからんちんのため、消えてしまったログもあったのですが、ブログを始める2003年より前のものを書き留めておいた部分はのこっていました。
<1998年3月>
(新聞日曜版にオギノ博士の事績記事ありて)
・我が排卵も命なきまま、命無き無精卵焼くサニーサイドアップに
・たったふたつ命となりぬ我が卵子受胎奇蹟の命なりしを
(RPGゲームをする子)
・幾たびも死んで幾たび生き返るRPGのみ好める子
・「シマネキ(死招き?)」とう毒草に触れ勇者果て淡々リセット押す子の背中
(先の代の地久節という日に)
・生きながらもがりの宮に坐すごとき国母と呼ばれし女の一生
(深夜のコンビニで)
・コピー機の閃光コンビニ午前2時深夜の孤独を写しとらむか
<1998年3月>
(テレビの自然番組をみて)
・アイアイもベローシファカも滅びゆくマダガスカルの森の荒廃
・否(いな)否と吠えるましらよ虚虚虚虚と啼く鳥熱帯雨林の滅亡
<1998年8月>
(新宿にて)
・唇(くち)赤き老い街娼(たちんぼ)の口ほどの日輪沈みぬ二丁目の角
(吉本ばななの感想を娘と語り合う)
・「ばなな」読み、娘と交わす感想が、バナナシェイクにふるふる溶けてく
・子音母音子音母音と重なりて開音節にてもの言う我ら
(母と私と娘と)
・我娘(あこ)の歌と亡母(はは)の残せし歌並べ旧盆の夜はひとり歌よむ
・娘(こ)の詠みし歌とわたしの腰折れを母の形見の句集にはさみぬ
・ただ一度全国版に載りし母の一首をかたみに三十年生く
(旧盆前後)
・受身形(パッシブフォームPassive form)のパッシブ(passive)受苦形と訳したり殺され焼かれ屠らるる夏
(日本語教室)
・午後クラスに満つる使役形「せる・させる」日本語覚えさせるが、わが職(なりわい)なり
・「意向形」立とう進もう愛し合おうFormはかくもたやすきものを
(文法を教えながら)
・「抱かれれば、愛されれば」と仮定形しかない受動態(パッシブボイス)の一日(ひとひ)よ
・「たい」「たけれ」会いたい見たい愛したい、動詞になれぬ希望の助動詞
(ひらがなを教えながら)
・「あ」「い」愛は日本語のLOVE愛されぬ妻なりし我が教えるひらがな
・「こ」を九十度まわすと「い」だよ、留学生笑いつ手習い恋来い四月
(エイトマン主題歌をきく)
・殺人を犯せし歌手のうたう歌に低く唱和す我も罪びと
(原宿界隈)
・「ブラームスの小径」とう路地すりぬけてキラー通りへ向かう殺意か
(夏の死角)
・三角函数わからないまま塾やめて、さよなら三角またきて死角
・詞(ことば)喰らう玻璃ハリ破離と詩歌食う飢えし心が食っても食っても
・午後の曳航東京ベイにひかれゆく少年の刃先よ空を切り裂け
(夏の葬列)
・亡き叔父はとび頭(かしら)なり葬列は木遣りうたいつ静かに歩む
・炎天に黒列細く上りたり我がいえの墓は山中の墓
・夏の葬列。くるくるくると黒き日傘を回していたり墓につくまで
(銀河鉄道)
・ジョバンニよ私も切符ないままで銀河鉄道廃線めぐる
(夏の通勤)
・顕微鏡の精虫遡行さながらに地下鉄階段群流くだりぬ
<2000年2月>
(チョコレート革命)
・チョコムースのような歌詠む歌人いて「革命?」なんとも甘すぎるんです
(2月の居酒屋)
・のんだくれ女がコップあおりつつ「カクメイが希望のことばだったよ」
・コリコリと軟骨噛めば我が大腿四頭筋へと罅いる味す
(路地の店)
・元皇民朴の書きたるカナクギの「レイメンありマス」アリラン亭前
<2002年4月>
(最終章の春・ホスピスの姉)
・静心なく花の散るホスピスの窓よりながむる最終章春
・枝えだに宿り木やどし けやき樹は若葉を萌やして大地母のごと
・緩和ケア病棟の庭七本の桜の若木すこやかに立つ
・ホスピスの窓にふりしく花追いて最期の春を瞳(め)に写しとる
・プリンペランとう点滴薬を身のうちにポロンパランと注ぎて寝る姉
・ホスピスの庭に光(ライト)をあふれさせ旅立つ人へのカーテンコール
(姉よ)
・春の光浴び舞う花よ来年は私はいないがまた咲け花よ
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<2003年>
(カフェ日記を書き始めたころの31文字)
09/27 宇宙(コスモス)へ旅立つ人へ一輪の秋桜たむけてグラスほす夜(春庭)
2003年10月
haruniwa 紅葉する前に剪られし街路樹の梢の枝の打ち震えたり
2004年1月
(自衛隊先遣隊の出発に際して春庭のよめる)
・女正月雄々しき女達集い「殺すな」という声を揃えて
2004年4月
haruniwa 花の色もうつりにけりな春庭のわがみ片脱ぎ丁半壺ふり
2004年7月
・夏色に命輝く思い出の麦わら帽子トマト向日葵(春庭)
2004年8月
・スプラッシュ!雫のひとつぶひとつぶが 水かく手足のメダイヨンだね(春庭)
2004年4/07/29朝 (ボランティア日本語教室)
・ジャンボ!ハバリ?サバンナの風つれてくる「ンジョキ」はいつも青いバンダナ
・「ありがとうテリマカシ」と、はにかんで インドネシアのレラ笑う朝
・黒き手に赤道の響きダンたたタン ンゴンベ太鼓が教室にダン
・コリアンのハルモニ、アリラン低く唄う 日本語サークル午後のつどいに
・ボランティア地球の仲間コスモス会おひさまサークルにほんご教室
・あかさたな ひとつひとつの音節に文字あることばを今日も習いつ
・アイウエオあいは最初に覚えてね 誰かにあいを語る日のため
・愛されたい愛したいけど愛、曖、哀、「たい」どこまでも希望の助動詞
04/07/29 夕(I can fly!)
・トフスランとビフスランとが遊ぶ谷ゆうらんゆすらんひがなフラココ
・黒きものブンブンと飛ぶ目の中に「飛蚊症だって」ブンブンぶぶぶん
・9階の窓よりダイブのんちゃんのカレ、夕焼けへGo! I can フラァイ!
・9階の窓より飛べないワタクシは さよなら三角夕焼け子!焼け
04/07/29 夜 (空の巣症候群)
・ほたほたと卵(ラン)生(ア)れる日よ生れ出でて またも下水の奥にスッぽ~ン
・エストロゲン、プロゲステロンもなくなれば わたしは青い管のみの肉
・産み終えれば我が卵巣はかじかんで、ゴナドトロビンに反応せずあり
・月ごとの血の祭り果て空子宮 祭りの後はかくまでからっぽ
・ジャンクフードを腹いっぱいに詰め込んで今宵も脂肪の滾る満月
2004年12月
・大波の呑みこむ木々も船家も巨人倭人も流されて消ゆ(春庭)
2005年3月
・春驟雨 しゅうしゅうと落つ 窓を打つ うつウツ欝撃つ 啾々(しゅうしゅう)と落つ<春庭>
・思春期の子の親なれば吹き荒れる春嵐にも萌える芽を待つ<春庭>
・白木蓮の白き翳りは秘めしまま三十路乙女も花嫁となる<春庭>
・姉妹(あねいもと)たわいなきことメールにてかわしつ春のひと日を過ごす<春庭>
・一房の卵(ラン)とし生きた日も遠く 黙(もだ)して食す朝のオムレツ<春庭>
2005年4月
・欅若葉の道を過ぎゆく親子連れ恐竜展のカタログかかえて(春庭)
・散り果てて冷雨の宵の川縁(かわべり)に 一葉桜の細き枝揺れる(春庭)
・光るビル散るちるミチル舞う桜 空にわたしに青い鳥にも(春庭)
・レインボウ・ブリッジ望む浜離宮 江戸の春日(はるひ)を海に降らせる(春庭)
・一葉も見し上野山の糸桜 明日質入れの帯締めて見る (春庭)
・初恋の蒼き翳りを染め出して群青と藍と勿忘草色(春庭)
(隅田川べり)
・散り果てて冷雨の宵の川縁(かわべり)に 一葉桜の細き枝揺れる(春庭)
2005年10月
・ラ・トラヴィアータ乾杯の歌を口ずさみ秋の黴雨(ついり)を飲み干してみる(春庭)
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2013年正月
・芋も好き餅も好きなり今朝の春体重計を新調せむとて(虚子の本歌取り春庭)
・年立つや自転車でいくシャッター街大売り出しはまだ先のこと(春庭)
・正月の番組に笑う声のして団地の窓は同じ形ぞ(春庭)
・元旦の厚き新聞広げては、電子ブックの広告を見る(春庭)
・街歩きの果てジュピターの輝ける1月の空希望はあるか(春庭)
・蓬髪のままに迎えし新年よ今年は彗星めぐる年とふ(春庭)
・初風は団地広場に凧をあげベランダに立つ蓬髪に吹く(春庭)
・初日記未知のページの白(ブランク)の希望という名の行間数える(春庭)
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<2013年3月>
・三月の春今生れなんとし佐保姫あなたも産みを苦しむか 春庭
・佐保姫の糸染め縫うて山肌の薄緑にぞけむりし明け方 春庭
<2013年4月>
(大村益次郎像前で歌舞音曲をきく、かっぽれと阿波踊りを見ました)
・散りてこそ咲かめと散った若人よ二度と我が子を散らせはしません(春庭)
千鳥ヶ淵
・花筏散り敷くひとひらひとひらの命かがやく水面の白かも(春庭2013)
<2013年4月>
近代美術館前(皇居一周マラソンが盛んな日)
・しだれ桜垂れてお堀に枝うつす平河門まえランナーとび去る(2013)
近代美術館(中村彝の作品前で)
・ニッポンの桜をいかに刻みしかエロシェンコ像目つぶりしまま(2013)
新宿二丁目(チーママにかわりて詠める)
・老いてなお夜桜に寄す秘め心あの人はいまあの人は今(2013)
つぶやき全部を拾い集めたわけじゃないけれど。そのときどきのつぶやきは、それも私の一部。
<おわり>