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ぽかぽか春庭「2018年1月目次」

2018-01-30 00:00:01 | エッセイ、コラム


ぽかぽか春庭2018年1月目次

0101 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記(1)謹賀新年
0102 2018十八番日記1月(2)人生フルーツ
0104 2018十八番日記1月(3)陸王
0106 2018十八番日記1月(4)雅楽 in 東京都写真美術館
0107 2018十八番日記1月(5)闘うガングリオンと踊る米寿
0109 2018十八番日記1月(6)エアー御年始
0111 2018十八番日記1月(7)自分にお年玉、電動アシストデビュー

0113 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>十八番ことばの知恵袋(1)ことば収集車(電動アシストつき)
0114 十八番ことばの知恵袋(2)歌会始の尊敬語
0116 十八番ことばの知恵袋(3)ゲーム実況者

0118 ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>質問に答えます(1)発音・音声教育
0120 質問に答えます(2)よろしかったでしょうか。はい、よろしかったです
0121 質問に答えます(3)日本語教師光と影

0123 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記寒の内(1)ムーミン問題やってみた
0125 2018十八番日記寒の内(2)東京雪景色と水道パッキン修理
0127 2018十八番日記寒の内(3)自転車散歩巣鴨とげぬき地蔵通りほか
0128 2018十八番日記寒の内(4)ロシア正教ポドヴォリエほか、自転車散歩本駒込
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ぽかぽか春庭「ロシア正教ポドヴォリエほか、自転車散歩本駒込」

2018-01-28 00:00:01 | エッセイ、コラム

ロシア正教会ポドヴォリエ

20180128
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記寒の内(4)ロシア正教ポドヴォリエほか、自転車散歩本駒込

 自転車散歩。電動アシスト自転車は快調です。
 地図を見ながら本駒込をぐるぐると。
 本駒込のあたりは、静かな住宅街です。地図の「大和郷」とあるあたりが、品川の島津山とか田園調布と並ぶ高級住宅地なのだそうですが、「高級」には縁がないので、これまで近寄ったこともなし。

 目的の建物は、ロシア正教会ポドヴォリエ(ロシア語: подворье旅籠屋という意味 英語podvorie)ポドヴォリエは、ロシア正教会の出張所ということだそうです。

 東京にはお茶の水にロシア正教のニコライ堂があります。正教会まで来ることができない人が近所でお祈りするための出張所ということで、「モスクワ総主教庁駐日ポドヴォリエ」が本駒込と下目黒にあります。

 在日のロシア正教信徒のために、教会スラヴ語を用いて奉神礼の大半を行っているというポドヴォリエなのですが、地番に出ている本駒込2丁目12番のあたりをぐるぐる回っても、わかりませんでした。正教会なら屋根の上に十字架くらいありそうなのに、と思ってそれらしい建物をさがしたのですが、まったくわかりません。地番は文京区本駒込2-12-17。

 でも、やはりこの辺だ、と思って3度目のぐるぐる回遊でようやくわかりました。ちょっともの悲しく寂れた建物でした。信徒の寄付が少ないのか、もうすぐ移転でもするのか、あまり教会っぽくない建物に思えました。もともとは「旧ソ連民間人クラブ」だった建物がソ連崩壊後に教会出張所になったみたいです。建物の建築年も、戦前の築造というくらいしかわかっておらず、そのうち取り壊されるのかもしれません。



 かろうじて、正面玄関の上に聖人の絵(生神女)、玄関上に十字架。駒込では平日の奉神礼のみを行うということなので、日曜日には信徒の出入りもなく、寂れた印象のたたずまいでした。

玄関上の十字架


ドア上のプレート


 ロシア正教は、敗戦後GHQ派閥とソ連派閥に別れて主導権争いを行った、といういきさつがあり、駒込ポドヴォリエは、モスクワ派の拠点だったそう。
 できれば、教会が開いている日に来て、中を覗いてみたかったです。

 2016年ニコライ堂は何度か訪れて、そのうちの一回は「日本でいちばんえらい正教会のお坊さんのミサ」に列席しました。信者でもないのに、ただの好奇心のみの参列で、申し訳ないことでしたが、肝心のお坊さんの所作は、祭壇のドアを締め切る形で行われ、一般席からは見ることが出来なかったです。このミサのようす、2016年のブログ休載中のできごとで、ブログメモが残されていません。

 次の建物、日本アイソトープ研究所はすぐにわかりましたが、あいにくと工事中。建物の姿はわかりませんでした。
 次に「駒込名主屋敷」をめざしたのですが、まったくわからず、駒込病院のわきの細い路地を行ったりきたり。天祖神社のまわりぐるぐる。
 交番おまわりさんにたずねましたが、おまわりさんも知らない、ということで、天祖神社に戻りました。3度くらい同じところをぐるぐる回って、ようやく見つけましたが、「入り口は左です」と、門に書いてあるのに、その「左」がどこかわからず、あきらめました。



 建物ポタリングがあまりパッとしなかったので、東洋文庫に立ち寄りました。入館料800円。展示は南太平洋の島々についてでしたが、それほど興味をひかれないテーマだったので、ささっと見て、モリソン書庫の前の椅子でいねむりをして、帰りました。モリソン文庫の本の壁を見ていると、本の迫力に圧倒されます。図書館や本屋にも本はたくさん並んでいますが、それとは違う本のオーラがあります。この重厚な本の壁を目の前にすると、もうちょっと本を読むまで生きていようという気分になるのです。居眠りをしただけで、読んだわけでもないのに、本からエネルギーを注入された気になる。



 東洋文庫隣の本屋「青いカバ」で古書3000円ほど購入。
 前回2017年3月娘といっしょに東洋文庫にきたときに、本屋がオープンしたことに気づいたけれど、染井温泉に行く用事があったので、本屋の中に入って買ったのは、今回はじめてです。古本と新刊を両方とも売っています。新刊の須賀敦子書簡集があったので、買いたかったけれど、すでに古本10冊買った後なので、がまん。

 ブックオフなどと違って、志ありそうな本屋さんでうれしい。2017年1月9日オープンで、今は開店1周年。別段セールをやっている訳じゃなかったけれど、丁寧にブックカバーをかけて、青いカバのロゴはんこをおしてくれました。
 店主さんは小国貴司さん。池袋リブロの海外小説担当だったけれど、リブロが潰れて三省堂になったため、独立したみたい。
 ブックス青いカバ 文京区本駒込2-28-24 谷口ビル1階 03-6883-4507 

 建物ポタリングはちょっとしょぼいことになったけれど、最後に青いカバは楽しかったので、よい散歩になりました。
 古本、「明治の西洋館Ⅰ、Ⅱ」青木保『文化の翻訳』など。エビフライランチ、東洋文庫入館料などで、一日の散歩費用、計7000円。「無料で楽しむ」コンセプトから見るとちょっと散財。ま、たまにはいいか。9月から後期半年間、せっせと働いたご褒美です。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「自転車散歩巣鴨とげぬき地蔵など

2018-01-27 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180127

ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記寒の内(3)自転車散歩巣鴨とげぬき地蔵ほか

 今期の最後の授業も終了しました。24日最後の出講日は成績付けがたいへんだけれど、21日日曜日は、「来週授業の準備はしなくていい」と思うと、のんびりしたい気分。
 新しい電動アシスト自転車でポタリング(pottering)したくなりました。

 putter (potter)aroundは、目的もなくゆっくりうろつく、だらだらする、という意味の英語だそうです。米語ではputter,英語ではpotter。
「のんびりする」とか「ぶらつく」というpotterにingがついて、自転車で気ままにあちこちにぶらつくという意味で使われているのは、和製英語、日本で作られたカタカナ語です。サイクリングが一般の辞書にも載っているカタカナ語であるのに比べると和製英語ポタリングはいまひとつ普及しませんでした。

 21日日曜日。目的もなくぶらぶらするのがポタリングですが、本日の目的地は本駒込。あらかじめ本駒込近辺の近代建物をチェックしてからのお出かけです。こういう時はポタリングって言えるのかどうかわかりませんが、目的地に行き着かなくてもかまわないし、寄り道してもいいし。

 白山通りから駒込方面へ。
 白山通りに出ていた「巣鴨撮影所跡」のプレートを撮影。
 大都映畫(だいとえいが)株式會社は、1933年から1942年までの戦前から戦中にかけて東京・西巣鴨に存在した映画会社です。大衆向けのB級映画を大量生産して、戦後は大映に吸収合併されました。撮影所がなくなってからは中学校敷地になり、その中学校も合併によって廃校になりましたので、現在では豊島区地域文化創造館巣鴨として活用されています。



 戦前の映画について詳しく知っていたわけじゃないのですが、たまたま見ていた散歩番組で、巣鴨に映画撮影所があったことが取り上げられていたので、お、ここだったのか、と足をとめました。

 白山通り沿い巣鴨とげぬき地蔵入口前のマルヨシダンス用品専門店で、ジャズダンスパンツを買いました。「XLの足短め」というのを試着したら、なんとかおなかが入ったので、購入。1500円。新宿のチャコットだかシルビアだったか、バレエ用品店では同じようなのが5000でしたから、お買い得の気分。

 とげぬき地蔵の通りをぶらぶら。どうやら、1月いっぱいは「あけましておめでとう」の垂れ幕がかかげられているようす。まあ、ばあちゃん達は1年中めでたいってもんですが。



 「おばあちゃんの原宿」には補助カートにつかまって歩くお年寄りもいますから、自転車は押して歩きます。けっこうな人混みで、テレビで紹介されたらしい和菓子屋の前に長い行列。巣鴨地蔵商店街に2軒あったトキワ食堂という店の前にも行列が伸びていました。

 巣鴨地蔵通りを過ぎ、地下鉄三田線巣鴨駅前へ。  
 トキワ食堂巣鴨駅前店には店の前に行列がなかったので、自転車を止めて店内へ。あれれ、店の外ではなく、店内で並んでいました。でもお一人様だったから、割合すぐに座れました。

 エビフライ定食に牡蠣フライ2個を追加。ごはんと味噌汁がついて1500円。でっかいエビ2本は食べ応えがありました。ご飯は軽めの盛り付けで、そのかわり「おかわり無料」と壁に貼ってあります。貧乏性老女、ついつい「おかわり」してしまいました。食べ過ぎです。


 巣鴨から本駒込へ。
 
 <つづく>
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ぽかぽか春庭「東京雪景色と水道パッキン修理」

2018-01-25 00:00:01 | エッセイ、コラム


20180125
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記寒の内(2)東京雪景色&水道パッキン修理

 1月22日、東京、大雪になりました。東京では、降ってもめったに積もることなく、降るとすぐに溶けてしまうのでなかなか雪景色は見ることができません。
 積もったら積もったで、交通機関は大騒動になって、帰宅の足も乱れるのですが、それでも見たい雪景色。

 雪に苦しむ北国の方には申し訳ないのだけれど、「東京に大雪」の予報にわくわくしてしまいました。久しぶりの雪景色。あたり一面真っ白になる景色をみたいと思う気持ちがつのるのはいたしかたなし。

 朝から窓の外をちらちらと眺めて、11時すぎには雪になったのを確認。「おひる12時ごろまで雨で、それから雪に変わる」という予報より早く雪になったようです。寒さも厳しい。息子はこんな日に限って大学に用事があるとかで、雪のなか、出て行きました。

 降りしきる雪。団地9階から見る雪をまとった木々、きれいです。



 22日夜中、台所の水道から水漏れ。前からパッキン劣化の水漏れが懸念されていたのですが、大雪の夜についにどんなにきつく栓をを閉めても水がとまらず、ツツーと細く水が流れつづけます。

 娘は水道代を心配して、24時間サービスの水道修理を呼ぼうと言いましたが、そんな修理屋さん頼んだら、たかが水道のパッキン取り替えで、たぶん水道代より高くつく。「修理は、明日母がやるから」と言ってふとんに潜りました。

 23日火曜日。朝は晴れ予報なので、雪が溶けないうちに「インスタ映え」を狙って雪景色撮影に励もうと思っていたのですが、朝起きたらすでに8時。窓の外を撮ってみたのだけれど、木々の枝はもう溶けていました。4時とか5時に目覚める朝もあるのに、雪の朝に8時起床。残念無念。



 息子がバイトに出かけたあと、「こんな日くらいは外出しないでいたい」と思ったのですが、水道パッキン修理をしなくては。
 団地の中の雪、除雪してあるところとしてないところ、気をつけて歩きます。

 片手であかちゃんを抱きかかえ、片手でベビーバギーを押しているお母さんがいました。どうしてベビーカーに乗せていないのかわからないけれど、片手だっこで、危なっかしい。
 「どちらまで?赤ちゃん雪の中に落としたらたいへんだから、両手で抱っこしてあげて。私がベビーカーを押しますよ」と、遠慮するおかあさんにかまわず、押しました。

 「すみません」という発音を聞いて「たぶん中国北部出身」と感じたので、「お国は雪が降る地方ですか」と尋ねてみる。「あ、中国の大連です」というので、「それじゃ、雪降りますよね。私は夏の大連に3度行ったのですが、冬は行ったことないのです」などと話ながら、3号棟の入り口までベビーカーを押しました。
 韓国、中国北方、中国南方、ベトナム、タイ。くらいまでは、一言発音を聞いただけでだいたい出身がわかるようになって、別段なんの得にもならぬけれど、クイズに当たった気分。

 大通り沿いのホームセンターへ行って、「13番パッキン」を購入。5個入りで100円。
 商店街のなかでも、除雪してあるところとないところがあるので、右に寄ったり左に寄ったりして歩き、八百屋で小さな白菜半切りが百円で出ていたので買いました。スーパーだと四半分で200円だから、お買い得。今夜は白菜鍋にしよ。この雪だと、この先も野菜が高いままかも。我が家、白菜半玉なんて、一回にペロリの大食いです。

 玄関脇メータボックスの水道元栓を閉め、家の中の水がでなくなったことを確認して、昔水道局でもらったレンチで蛇口栓をはずす。パッキンを入れ替えて、10分もかからずに終了。これ、修理屋さんにやってもらうと、修理料金5千円プラス出張費5千円とかで、1万円以上かかるのが相場みたい。ウフフ、1万円の節約だわん。

 娘が「母、すご~い」と誉めてくれました。私、修理方法を習った覚えもないのに、なんで出来るのか、わからない。母はエライ!
 たぶん、昔の田舎の家庭では、何でも父親が家の中の修理をするのが当然で、私はそれをよく見ていて、パッキン取り替えもできるようになったのだろうと思います。姉は、母親の料理を見て育ち、料理上手になりました。私は父を見て育ちパッキン修理上手に、、、、。と言っても、この団地に30年も住んでいてパッキン取り替えるの、何回目だろ。毎日役立つ料理見ておいた方がよかったかも。

 そういや、今はブレーカーがよくなったからヒューズ取り替えってしなくなったけれど、結婚した当初、超不器用夫は「電球とりかえることもやったことない」というので、ヒューズも電球も私がやってていました。つうか、家の中のことと子供の世話をいっさいしない夫でした。ひとりで全部やって、わたしはエラカッタ!
 修理終えて、エラい私にごほうび。商店街のパン屋で買ったマカロンをおやつに食べる。

 水道水漏れもおさまり、さて、料理はねぇ、、、、。本日もお手軽に、白菜鍋の準備、白菜を刻むだけです。昆布しいて、豆腐とネギと豚肉加えればよし。
 鍋に水を入れる。うん、もう水漏れなし。

 23日は快晴。溶けてしまったあとの雪景色はパッとしなかったけれど、東京はまあまあの一日でした。しかし、故郷群馬では、この大雪に加えて草津白根山が噴火。救助活動もたいへんだったでしょうが、皆様雪にも負けず、ご苦労様でした。この災害、草津で訓練中になくなったという自衛官の方、ご冥福を。 

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ムーミン問題やってみた」

2018-01-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180123
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記寒の内(1)ムーミン問題やってみた

 22日、東京は雪になりました。
 立春になるまでの1ヶ月ほどが「寒の内」。1年で一番寒い季節。このところ、年々、冬の寒さ夏の暑さは激しさを増し、春と秋は短くなっている気がします。今年の冬も、日本海側では激しい寒風と雪が連日の天気予報で伝えられ、欧州では冬の嵐で死者もでたというのをニュースで見ました。
 東京は、めったに積もるほどの雪にはならないのですが、22日は久しぶりの大雪でした。

 先日行われたセンター試験。悪天候によって、センター試験の実施に支障が出た、というニュースも毎年のことです。
 こんな季節に若者の一生を左右するかもしれない試験をしなくても、と思います。私が大学入試を受けたときも、確か大雪が降ったことを、50年たっても忘れないでいます。私は雪に負けてしまったけれど、どうぞ、若者達の大事な日が天気に恵まれますように、と天を見上げてしまいます。(ほんとうは、雪に負けたのではなく、高校生活でまったく受験勉強をせずにいた自分に負けたんですけれど、思い出は美化されるという法則にのっとって)

 今年のセンター試験、天気も悪かった上に、地理の出題が話題になりました。
 出題者は、凝った「考える問題」にしようとして、はりきって作成したのでしょうが、受験生にしてみると、答えに困る問題になっていました。

 我が家、クイズ番組が大好きで、よく見ています。「Qさま」というクイズ番組では、3人で答えを考えるので、正答率は90%くらいになります。息子は日本史、娘は地理と芸能問題、私は、文学音楽美術問題が得意。3人とも苦手は球技。野球やサッカー問題はさっぱり出来ません。
 センター試験問題も、クイズ感覚で挑戦することがあり、今回のムーミン問題も親子で楽しんで解答してみました。

 話題になった「ムーミン問題」とは、地理Bの出題で、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドのスカンジナビア三国、比較問題の中の出題です。

 私は、問い1も問い2も間違えました。
 問い1は、最低気温と最高気温の表から、ノルウェーのベルゲン、スウェーデンの首都ストックホルム、フィンランドの首都ヘルシンキを当てる問題です。私は、スウェーデンもフィンランドも首都であるのに、ノルウェーだけが首都オスロでなく、海辺の町ベルゲンであるところに出題の作為を感じました。引っかけ問題だろうと思ったのです。
 海辺の町は、内陸の町に比べて寒暖の差が小さいはず、でも、わざわざ首都ではなくベルゲンを出したのは引っかけだろうから、寒暖の差が一番小さいのはベルゲンではないだろうと、「大人の判断」をしたら、間違えました。すなおに、ベルゲンが一番寒暖差が小さい町でした。

 問い2は、エネルギー源のグラフから、火力水力原子力の区分を当てる問題。ドイツが原子力発電を廃止したことは知っていましたが、北欧のエネルギー源について、海底油田があるところはどこだったっけ、と迷ったあげく、間違えました。

 問い3は、産業と輸出相手国から三国を区分する問題。ノルウェーは工業より漁業や酪農のイメージ。スウェーデンはエリクソン、フィンランドはノキアのイメージで工業の感じ。あれれ、家具のイケアって、どこだったっけ。でも、フィンランドの輸出相手国は、隣り合っているロシアがあるだろう、という判断で当たりました。

 問い4が、話題の「ムーミン問題」です。日本で放映されたアニメ作品。『ニルスのふしぎな旅』はスウェーデンが舞台という前置きがあり、雁に乗って旅するニルスの絵と「Vad kostar det?ヴァッ・コスタ・デッこれいくら」と、スエーデン語が出ています。


 出題は、「針葉樹の前に立つムーミンとスノークのお嬢さん」と、船の前に立つ「小さなバイキング・ビッケと少女チッチ」の絵があり、「Hva kostar det?ヴァッ・コスタ・デッこれいくら」と「Paljonko se maksaa?パリヨンコ・セ・マクサーこれいくら」という言語が出ています。フィンランドを舞台にしたアニメと言語を選ぶ問題でした。



 答えは。「2」フィンランドを舞台にしているアニメはムーミン。フィンランド語で「これいくら」は、「パリヨンコセマクサー」だ、ということがわかれば正解です。春庭、こちらは正解できました。

 ムーミン谷はフィンランドを舞台にしていることを「ムーミンの背景から推察せよ」と、出題者は考えた。言語はフィンランド語。ムーミンがものを買うときはフィンランド語で、「パリヨンコセマクサー」と言って買い物をしたであろう、というのが正解です。しかし、しかし。

 高校生が、この答えに辿り着くには、フィンランド語が北欧諸語とは系統がことなる。という言語地理学の知識を持っている必要があります。
 スウェーデン語とノルウェー語は、同じゲルマン語派北ゲルマン語群に属している。一方フィンランドは、アジアにいたフィン族が北欧に民族移動したので、言語はウラル語族バルト・フィン諸語です。

 私は、日本語教育概論の中で「留学生の母語、世界の言語ファミー」という授業を行い、言語ファミリーについて1コマのなかで話しています。
 インドネシア語とマレーシア語は、大阪弁と名古屋弁くらいの差しかないこと、ハンガリー語とモルドバ語も、ふたごのような言語。デンマーク語とノルウェー語とスウェーデン語は、ほぼ兄弟言語。ポルトガル語とスペイン語はいとこくらいの間柄。英語とドイツ語は、遠くに住んでいて、法事のときだけ顔を見る「またいとこの息子」くらい。一方日本語は、韓国朝鮮語とも、遠いとおい親戚で、もはや法事でも会わない。日本語は世界言語の中の孤児です。

 だから、「わたしは3カ国語が話せます」なんて言っても、「デンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語」というのなら「私は、名古屋弁、広島弁、博多弁が話せます」というのと、変わりない、という話をします。また、ひとくちに中国語と言っても、北京語と上海語では、昔なら通訳が必要なほど違いが大きい、という話もします。(現在は北京官話をもとにした普通話プートンファが普及している)

 英語しか他の言語を知らない大学生にそんな話をすると、「そういうことばの話は初めて聞いた」という者が多いので、高校の地理教科書に言語地理学が載っているとは思っていませんでした。もしかしたら、地理学習参照本の中に、世界の言語地図が1ページ、あるのかもしれませんが、授業でとりあげない学校が多いのでしょうね。

 センター試験の解説によれば、「バイキングとして活動した人々は、ノルウェーとデンマークを中心とした人々によってである、ということを地誌として知っていれば、ビッケがノルウェーであることは明らか。また、ムーミンの作者ヤンソンの著作物の中に、「ムーミン谷はフィンランドのどこかにある」という意味の文章が書かれているので、フィンランドを舞台にしたアニメはムーミンであると考えることに矛盾はない」ということです。

 しかし、ビッケの故郷については、異論があります。大阪大学スウェーデン語研究室の見解によると。
 「スウェーデン人作家のルーネル・ヨンソンがスウェーデン語で記した『小さなバイキング』の舞台は、『ノルウェーとスウェーデンの海岸にはかつてバイキングと呼ばれる海賊たちが活躍していた』とあるだけで、ビッケと仲間たちが住んでいるフラーケ村がノルウェーだとは明示されていません」
 
 ルーネル・ヨンソンはスウェーデン語でビッケを書き、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンもスウェーデン語で書いていたのです。

 ムーミン作者のトーベ・ヤンソン(1914-2001)は、フィンランドの首都ヘルシンキでスウェーデン系の家庭に生まれ、母語はスウェーデン語。ムーミンもスウェーデン語で書かれ、トーベの末弟ラルスが英訳して世界に広まりました。私が揃えたムーミン全巻も、英語からの翻訳だったと思います。

 1971年フジテレビ系、1990年テレビ東京系で放映されたアニメ『ムーミン』は、私も大好きで見ていましたし、ムーミンシリーズ全巻を初版本で持っていました。(毎月のこづかいで楽しみに揃えたのを、姉が私に無断で友人に貸してしまい、戻ってきませんでした。今は文庫本のヤンソン全集も出ているので、仕事リタイア後にもう一度読みたいです。

 1990年から放映のムーミンは、幼い娘といっしょに見ました。息子も見ていましたが、あまり覚えていないようす。でも、再放送などを見てきたし、現在ではムーミンを「好きなキャラもののひとつ」ととらえていて、息子のペンケースの柄はスナフキンですし、ハンドタオルにはニョロニョロが。
 
 春庭息子は中学3年生から不登校になり、内部進学の高校でただの一日も授業を受けないで引きこもり、ゲームをしてすごしました。16歳の夏に「高認(高校卒業資格認定試験)」に合格して退学。以後もゲーム生活を続け、センター試験のみで合否を決める試験形式の私立校を受験して都内の私立2校から合格通知を受けました。「信長の野望」などのゲームのために関連の史書を読んで日本史が得意になっていたのが功を奏し、一日も高校授業を受けていないのに合格できて、私にとっては、センター試験さまさまですから、センター試験をアダやおろそかには思えません。受験生のために、適正な出題をしてほしいと願っています。

 ムーミンの国をノルウェーとしてしまい、「ムーミンよ、急いで国籍を変えてくれ」とつぶやいた受験生が続出だったと、ネットで話題になっていました。
 「ムーミン問題」配点は3点でした。ムーミンの国を間違えてしまったとしても、それだけで合否が決まるとは思えませんが、このような「正解に異論が出るような問題」は、センター試験問題として適切ではなかったように思うのです。

 さて、スウェーデン語でムーミンを書いたトーベ・ヤンソンは、生まれたフィンランドのほか、スウェーデンのストックホルムで芸術教育を受けました。画家であった母親(スウェーデン系フィンランド人)の影響を強く受けたと言われています。

 トーベの生涯のパートナーとなったのは、フィンランド系アメリカ人女性のトゥーリッキ・ピエティラ(1917-2009)です。ムーミンキャラのおしゃまさん(トゥーティッキー)は、彼女がモデル。女性同士のパートナーとして仕事でも生活でも40年の歳月を共に助け合って過ごしました。
 毎年、夏には孤島で二人だけで過ごし、合作が生み出されました。この夏の生活は、ピエティラが撮影したドキュメンタリーになって残されているということなので、見てみたいなあと思います。ふたりが1964年から1992年までをすごした孤島の小さな小屋を撮影したビデオ映像がyoutubeにUPされていました。
https://www.youtube.com/watch?v=p3nQ_ar_6Zk

 孤島でのふたりの静かな夏。トーベもおしゃまさんも、まさか2018年の冬にふたりが共作したムーミンが受験生を悩ますことになるとは夢にも思わなかったでしょうけれど。

 以上、「ムーミン問題」についての感想でした。まだ寒い。がんばれ受験生。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「質問に答えてその3」

2018-01-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180121
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>質問に答えて(3)

(日本語教師、日本語教育)
質問8)先生になってから外国の文化を知ろうとする努力はしていますか?
[回答]
 留学生と接していれば、日々、異文化に出会うのが日本語教師の仕事になります。私は、1988年に第1回日本語教育能力検定試験に合格して以来、百カ国以上の国の留学生と出会ってきましたので、さまざまな世界の文化を知る機会がありました。ただ、その異文化の知識を日本語授業に反映できるかできないかは、教師の努力しだいです。

 一例をあげると。「~ことができない」「~できる」の文型練習で、食文化の多様性をクラスメートに教えあう時間を作りました。どの食材も、文化によって食べられないものがあることを話しておいた上で)
・日本では、昆虫(蜂の子やイナゴ)を食べることができます。(昆虫食文化は、アジアアフリカに広がっていますが、欧米の留学生にはなじみがない。
・私の国では、ラマダンの間、日の出から夜まで、食べ物を食べることはできません。
・イスラム教の人はお酒を飲むことができません。
・ヒンズー教の人は牛肉を食べることができません。

などを出してもらい、世界の食文化比較をして、自分たちの文化では食べないものを、食べる文化があったとき、相手の文化を尊重すべきことを伝えました。日本の鯨食文化について、欧米からの反発もありましたし、犬肉を食べることについて嫌悪感を示した学生もいました。
 交流授業で、ウナギやあなごが大好きと言った日本人学生が、蛇肉を食べる食文化を否定したり、ということもありました。自分自身の好き嫌いを表現するのはかまいませんが、自分とは異なる文化や習慣を否定してしまっては、語学教師の資質に疑問が出てしまいます。語学教師は、言葉による伝達交流を教えるのと同じくらい、多様な文化を受け入れることを教えていきたいと思います。

質問9)日本語教員は、給料が低いってほんとうですか。
[回答]
 日本語教師の主な就職先である日本国内の日本語学校は、経営が順調な学校ばかりではありません。教育についてきちんとした見識のある経営者もいないことはないですが、日本語就学生を「授業料を搾り取る金儲けの対象」とみなす経営者もいるのです。
 外国人が出稼ぎ労働者として日本に働きにくる場合、労働ビザは取得が難しい。専門的職業人でなく、単純労働、アルバイトの労働には労働ビザは発給されません。その場合、日本ではアルバイトとして働きたい外国人はどうするか。就学生として日本語学校に在籍し、就学生に対するアルバイト許可を利用して稼ぎたい外国人を集めて、学生から授業料を徴収し、労働を主にして、授業はテキトーに受けさせておけばよい。そういう授業なら、できるだけ賃金の安い教師を雇って、収益率を高くしたい、と考える経営者もいます。全部とはいいませんが、そういう学校の存在が日本語教師全体のレベルを下げ、「日本人ならだれでも日本語授業ができるだろう」といういいかげんな日本語学校経営者の考えを排除できないでこれまできました。
 もちろん、良心的な学校もあり、しっかりした教育を行っている学校もあります。

 日本語教師の資格をきちんと評価してくれる社会になってほしい、と思っています。

質問10) 日本語教員になって1番苦労したことはなんですか?
[回答]
 日本語を教えはじめのころ、授業準備には膨大な時間がかかり、大変でしたが、それを苦労とは思いませんでした。日本語学は大学で学ぶ以上に、毎日の授業の下調べでしっかり学ぶことができました。教室での留学生とのふれ合いのなかで、異文化理解も深まりました。
 苦労をしたとしたら、日本語教師になりたてのころ、周囲の先生方との人間関係だったように思います。手本としたい立派な教員もいました。しかし、私が第1回目の日本語教育能力検定試験に合格して日本語教師になったころ、先輩の先生はこの試験に合格していない方のほうが多かったです。後輩なのに、自分がまだ合格していない資格を持っていることが目障りだと感じた先輩もいて、いわれのない意地悪をされました。いわゆるイジメ。でも、このことがあったから私も強くなれたし、今、後輩にはできる限り先輩として面倒をみてやりたい、という気持ちも持てましたから、意地悪だった先輩にも、今では反面教師として感謝しています。
 
 すぐれた同僚や先輩にもたくさんのことを教えてもらったし、多くの人に助けてもらって30年間続けてこられたのだと思います。中学校の国語教師は3年でリタイアしてしまったことを思うと、30年続いた留学生への日本語教育の授業、日本人学生への日本語教育学の授業、苦労したこと、と言われて振り返ってみると、ほんとうに私は恵まれた教師生活をおくれたと、感謝の思いがいっぱいになります。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「質問に答えて2」

2018-01-20 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180120
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン教師日誌>質問に答えます(2)

(日本語音声学)
質問4)日本語の「に」のIPA表記は、[ɲi]  [ni] [nʲi]の三種類です。
一つ目の[ɲi]の場合は、調音点が硬口蓋になるので、グループ発表で言った「か[ka]のみ軟口蓋音で、他は歯茎音」というのは間違いになってしまいます。
[回答]
[子音の調音点]という観点から、A~Eの中の仲間はずれを選びなさい。
A)か[ka] B)せ[se] C)た[ta] D)つ[tsu] E)に[ni]
という設問でした。
E)に[ni]は、[ɲi]でもなく、[nʲi]でもなく、[ni]の発音を問題にしています。歯茎音です。[ ]のカッコは、IPA発音を示す記号です。この質問では[ɲi]ではなく[ni]の発音を問うているのであって、「に」の発音を3種類出すことは意味がありません。問われているのは[ni]のみです。
 日本語の「に」の一般的な発音を問題にしています。[ɲi]は、「蟹が」と発音したときのカニの二が、「軟口蓋音のガ」に寄せられて口蓋化した音です。口蓋音ではありません。設問は、口蓋化した「に」ではなく、一般的な「なにぬねの」と発音した場合の「に」の音声を問うています。よってAの「か」は軟口蓋音、他は歯茎音という調音点の回答でよろしいと思います。


質問5)「結局モーラって何なの?」「モーラと拍と音節って何が違うの?
[回答]
 mora英語モーラ、ラテン語モラとは、音韻論上、一定の時間的長さをもった音の単位。日本語訳は拍。音節は、音韻の構造によって定められる、日本語の音節は「子音+母音:が基本の単位。モーラの長さは、各言語内によって異なるが、日本語は音節が拍とほぼ等しいので、日本語は拍が一定を保つ場合が多い。イヌの発音の長さとネコの発音の長さはほぼ等しい。英語のばあい、ドグという人もドォッグも犬を表しており、拍の長さは話者によって異なる場合もある。ワタシをワタ~シという外国人の発音が気になるのは、ワタシは3拍の音節であるのに、ワタ~シは4音節になっているからです。

 (私が担当している日本語教育学は、学部の方針で、日本語学(文法)や日本語音声学を履修していない学生でも選択することができ、基本的な日本語学知識を持たない学生でもクラスに存在します。したがって、基本的なことがらも授業中に随時解説しながらすすめていくのですが、算数ができない学生にいきなり線形数学を教えるようなことになっており、たいへんです)


(文法、語彙・意味)
質問5)「足りない」と「足らない」の違いがよくわかりません。
[回答]
「足りない」は「足りる」という動詞(上一段活用)の否定形です。
「足らない」は「足る」という動詞(五段活用)の否定形です。
「マス形」ではどちらも「足ります」になる。
足りる(一段):足りない、足ります、足りる、足りれば、足りよう
足る(五段) :足らない、足ります、足る、足れば、足ろう
足る(古語四段):足らぬ 足りて 足る 足れる 足れば 

 「足る」は万葉集にも用例があります。東歌、真間手児奈の伝説を詠んだ長歌です。
[万葉集1807] 望月の足れる面わに花のごと笑みて立てれば夏虫の 火に入るがごと 港入りに 舟漕ぐごとく 行きかぐれ,,,,,,,,

「足る」は現代語でも「足るを知る」「信用に足る人物」など、ことわざや格言などには使われ、古風な言い回しに感じられます。
 「足りる」は江戸時代以降になって使われるようになったことばです。
例文)結婚資金の足りない分は、親に借りて足りるようにした。
 肯定形では「足りる」のほうが多く使われていますが、否定形では「足らない」も「足りない」と同じように使われています。
 否定形を用いた「舌足らず、寸足らず」や「1時間足らずで仕上げた」などのように否定の「~ず」が接続する場合には、「~足らず」のみで「足りず」という言い方はありません。これは否定の「ず」が古語的だから、新しい動詞の「足りる」ではなく古いほうの「足る」が使われるためと思われます。

(待遇表現)
質問6)餌はあげる? やる?
 「動物にえさをあげないでください」「動物にえさをやらないでください」どちらも表現としては使える。『みんなの日本語』には「えさをやる」のほうが登場していたので、恐らく日本語教育では餌は「やる」ものなのだろう。
 しかし、学習者が「えさをあげる」と発言したら、それは間違いだと言って訂正すべきか? それともそういった表現も使われる、ということで容認すべきか?
[回答]
 現在の待遇表現基準では、犬には「エサをやる」が標準のいい方です。しかし、待遇表現のうち、丁寧表現はすぐに「すり切れる」ものであり、長年使っていると敬意がすり切れてきます。対称のうち二人称を例にとると、御前(おまえ)は自分の目の前にいる尊い人に用いられてきましたが、現代語ではオマエは、目下に使われています。「やる」は、目下の対象者に話し手の所有物を与えるときに用いますから、犬には「やる」でよろしい。しかし、できるだけ丁寧な言葉遣いをしたい、と考える現代人にとって、「やる」は乱暴な言葉遣いに思えてきました。そこで、同等または目上に人にものを与える「あげる」の敬意が薄れてきて、尊敬語ではなく丁寧語として使われるようになったのが、「犬に餌をあげる」「花に水をあげる」です。
 
 日本語教科書には規範通りに「犬に餌をやる」が出ていますが、学習者が「犬にえさをあげる」と表現したとき、「それは間違いです」と訂正する必要はありません。この「あげる」は丁寧表現だからです。しかし、「犬にえさを差し上げる」となったら、それは誤用です。犬はたとえ、目上の人の飼い犬だとしても、尊敬語の対象にはなりません。「社長の飼い犬にドッグフードをさしあげた」という人がいたら、その人は「犬」に対してではなく社長に敬意を示したのだ、と判断することもできますが、現在のところ、私は、犬に対して敬意表現は用いたくないです。

質問7)バイト敬語で「よろしかったですか?」はよく使うけれど、「よろしかったです」と答えられると違和感……、これって何故?
[回答]
 注文された飲食物をテーブルに並べて「ご注文は以上でよろしかったですか」というような表現は、レストランなどでよく使われる表現です。それに対して「はい、よろしかったです」と答えると、なんだか変に感じる、ということが質問の趣旨と思います。
 まず、「よろしかったでしょうか」は、「ご注文の品は、これで全部そろったと考えてよろしいでしょうか」と、ウエイターウエイトレスが客に確認しています。客に対して、確認作業をお願いしているので、より丁寧な言葉遣いをしたという意識が働き、「注文した品はこれでいいですね」よりも「これでいいでしょうか」のほうが丁寧だと感じ、さらに「よろしいでしょうか」よりも「よろしかったでしょうか」と、タ形(過去形)にしたほうがより丁寧に感じられる、というバイト敬意の表現になっています。

 したがって、レストラン従業員に対して敬語を使う必要のない客が「はい、注文した品は、これでよろしかったです」と、言うと違和感が残るのです。
 では、客はなんと答えればいいのでしょうか。「ご注文の品、以上でよろしかったでしょうか」「はい」これだけでいいと思います。もっと付け加えたいなら「はい、けっこうです」くらいでしょうか。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「質問に答えてその1」

2018-01-18 23:56:20 | エッセイ、コラム
20180118
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>質問に答えます(1)発音・音声教育

 期末に「日本語、日本語教育、日本文化について、なんでも質問受け付けまず。ただし、答えられない質問はパス」という学生からの質問受け付け時間を設けています。寄せられた質問にできる限り答えるという企画です。
 例年同じような質問が重なりますが、さしつかえない範囲で答えています。

<発音・音声教育>
質問1 日本語や外国語でそれぞれ存在しない音があったり、発音が難しい音があるのはなぜか
[回答]
 人間が唇、歯、舌、のど、声帯などを使って作り出す音(音声)は、いくつあるでしょうか。無限大です。微妙な違いを聞き分けられる人にとっては、さまざまな音色の違いが感じられるでしょう。
 人間の赤ん坊は、生まれてきたときは、どんな音も口のなかで作り出す能力を持っています。しかし、周囲の人(養育者)の音声を聞き分け、言語音に必要な音のみを発音することによって、必要な音を選び取っていきます。
 日本語は、母音が5つと子音の種類が14で、音素数は20ほど。音節数は115ほどです。(学者によって数え方がことなる)
 音素が100くらいある言語もあるそうですが、赤ん坊は、それぞれの養育者の言語音を聞き分け、発音できるようになっていきます。

 言語として音声を使うには、無限にある音の違いは必要ありません。
 日本語は世界の言語の中でもごくわずかな音声を使って、豊かな語彙を表現できる言語です。日本語の音節はわずか115ですが、これで森羅万象なんでも表現できます。
 
 言語によって採用されている音素音節は異なるため、母語にない音は、聞き分けるのも難しく、発音もむずかしいです。日本語母語話者には「L」と「R」は同じ音にきこえるため、電灯のライトlightと、右のライトrightは、同じ音に聞こえます。日本語にはこの区別は必要ないからです。
 自分の母語にない音の発音は難しい。当然のことです。
 日本語は音節数が少なくて、発音は難しくない言語です。しかし、日本語の促音(小さい「つ」で書き表している)が自分の母語にない学習者にとって、促音は難しいです。

 なぜ、外国語の発音はむずかしいのか。赤ちゃんのときは発音していたはずの、多様な発音を忘れて、母語(養育者のことば)に必要な発音を選び取ることで言語が習得できるようになるからです。無限大のすべての発音を保持したままで、すべての言語を習得することはできません。
 母語(思考していくための言語)は、ひとつで十分だからです。社交のビジネスには多言語が必要になる人もいますが、思考言語(頭のなかで考える言語・内言語)は、ひとつかふたつに絞らないと、考えることが分裂してしまうと言われています。
 
 それぞれの言語にそれぞれ独自の発音が含まれていること、その違いや発音の多様性を知ることも、言語学習の楽しみだと思えるように、語学教育に携わりたいものです。

質問2 以前、韓国・中国の留学生と話したことがありますが、彼らの「た行」の発音が気になりました。他の言葉は上手なのに、「ちゅくる(つくる)」「ちゅよい(つよい)」という様に、た行だけ正しく発音できていませんでした。
 これは、韓国と中国の留学生で共通していましたが、他の国では た行の発音はどのようになっているか疑問に思いました。また、韓国と中国が共通してこのような発音になるのは何故でしょうか。
[回答]
 留学生の母語に日本語の「つ」IPA[t͡sɯ]̈ の音がなければ、発音が難しいです。
 日本語の「tsu」[t͡sɯ]という発音を持たない言語は多数あります。英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語、インドネシア語、マレーシア語、タイ語、ラオス語、ベトナム語、カンボジア語、ビルマ語、アラビア語、トルコ語など。これらの言語を母語とする人は、練習しないと「つみき」「おつかれ様」などが言いにくいです。

「つ」の発音練習。
 「つ」は、tの口構えをしてから、その直後すぐに「す」を発音するという音です。「つ」が発音できない場合は、舌先を下の歯の裏につけてからすぐに「す」と言うように教えると、だんだんできるようになります。
(この回答は、東外大ページ参照)

質問3)日本語母語話者のナチュラルスピードのテープ音声を聞き、学習者の反応を見たとき、どんなことを工夫することができますか。
[回答]
 ネイティブスピーカーのナチュラルスピードは、初級学習者にはとてもはやいと感じられるようです。CDの録音を聞いた学習者の反応が悪く、聞き取れていないことが明らかなときは、教師がスロースピードで言い直すこともあります。
 しかし、できるだけ初期の段階からなるべくナチュラルスピードになれさせたほうが、結局は聞き取りの力が伸びていく例が多いように思います。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ゲーム実況者」

2018-01-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180114
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>十八番ことばの知恵袋(3)ゲーム実況者

 学生の発表を聞いていると、学生にはなんでもない日常生活範囲のことだけれど、私には「お初にお目にかかります」のことがらに出会います。
 毎年、学生との世代ギャップが広がる一方の教師にとって、若者文化との距離はどんどん遠くなっていきます。

 日本語日本文学コースの学生が発表したことについては、知らないことはありません。でも、クリエイティブデザインなんちゃらコースで学ぶ学生の発表の中に、まったく私の知らない世界がありました。

 私はやりませんが、ゲームという娯楽があることは知っています。また、トップクラスのゲーマーになると、ゲーム大会に出場して賞金を稼いだり、ゲームソフト開発会社と契約してゲーム開発に協力するなど、職業として成立していることも知っていました。

 しかし、一般のゲーマーがゲームを自分たちでやりながらその進行を実況中継して、インターネットでUPする人々がいて、その人々は「ゲーム実況者」と呼ばれていることをようやく知りました。インターネットの中で、自分たちがゲームをやりながら、その実況中継を動画で見せる人々をゲーム実況者というのです。

 子ども達の間で、将来なりたい職業として「ユーチューバー」が上げられたのにもびっくりしましたが、次はなりたい職業の上位に「ゲーム実況者」がくるかもしれません。昔は宇宙飛行士や野球選手、今ユーチューバー、明日はゲーム実況者です。

 (あ、学者も復権したみたいですけれど、それは。理系学者が開発したものを製品化すると膨大な特許料を手にできることがわかったから。つまり、金がらみです。ほんとうに研究をしたくて学者を希望しているのではないようです。文系の学者になりたい子供、ますます変わり者になると思われます。貧乏暮らしに耐えられる人でないと)。

 ゲームで遊んでいるだけに見えるゲーム実況動画ですが、職業とするには、まず、ゲームスキルが高いこと。次に言葉が大事。プレイ状況を視聴者にわかりやすく伝えることは当然として、視聴者の興味を引く雑談やリアクションを交える技量が必要。視聴者に支持されるトークスキルはかなり高度なものだそうです

 ゲーム実況者を紹介した学生は、現在人気が高い有名ゲーム実況者として「兄者弟者あにじゃおとじゃ」をあげました。声がよく声優としても活動をはじめた兄と、ゲームスキルの高い弟、それに動画編集デザイナーが助っ人格で加わったグループ。
 そして一番好きなゲーム実況者として「最終兵器俺達」という4人組のグルームを紹介しました。

 個性ある4人の男性が、それぞれのスキルを生かしてゲーム実況をしているそうで、その実況を見て、買いたいと思ったゲームがあったと、学生は発表していました。人気実況者は、ゲーム会社からのオファーもあるので、職業として成り立つらしい。

 ゲームのことは知らないのだけれど、息子がクリスマスプレゼントとして姉に贈ったスイッチマリオ「世界の旅オデュッセイ」は、自分でプレイしなくても見ているだけで面白かったので、実況を聞いて見ました。2017年10月末にyoutubeUPで、2ヶ月ちょっとで再生回数7万回になっていました。

 有名ゲーム実況者になると、1ヶ月のクリック再生回数1千万にもなり、ネット広告アフィリエイト収入が1ヶ月百万円になる人もいるのですって。
 ほう、そりゃ、小学生も将来なりたい職業にユーチューバーって言ったりゲームプレーヤーと言ったりするわね。朝から晩までこつこつ働いて、雀の涙ほどの給金振り込まれる親父より、ネットの中のゲームプレーヤーにあこがれる、って小学生。

 私には、実況を聞いていて面白い、とは感じられるものはありませんでした。
 でも、私にはわからない世界がこうして広がっていること、若者にはこういうのが面白いんだ、ということは、わかりました。

 キュビズム絵画を見て「これを芸術というなら、芸術は死んだ」と言った美術愛好者もいたし、ロックを初めて聞いた高齢者は、「こんなのは音楽じゃない」と嘆いたもんでした。
 私も、ゲーム実況の何が楽しいかわからなかったけれど、私にわからないものを、面白いと感じる若い世代がいることは理解できます。
 ああ、しかし、わからん。

 これらの発表は、日本語教師養成コーズの最終課題として実施されました。
 「あなたが外国を旅行中、知り合いの所属する日本語科の教室で、日本の文化、歴史、現代社会、現代文化を紹介してほしいと頼まれました。日本語能力試験2級レベル合格者が在籍する中級クラスで講義をすると想定して、自分が紹介したい得意な分野について、10分~15分の発表をしなさい」という課題の発表です。

 「日本の忍者について」「歌舞伎の成り立ちと現代アイドル文化」「日本の妖怪」「僕の自炊生活から学んだ日本料理の調理器具と野菜の切り方」など、自分が興味を持った題材について、パワーポイントスライドなどを用いて、わかりやすくまとめていて、感心しましたが、日本語日本文化コースの学生発表で私の知らないことはありませんでした。
 クリエイティブデザインなんたらコースというのは、アニメやゲームなど、最先端の文化の創造に関わるコースらしいです。

 私にわからんことをわかっている学生がおり、そこには何やら新しい産業の芽もあるらしいということは、なんとなくわかったようなわからんような。新しい世界を知る楽しみがあるのもスズメの涙ほどの給金を補う役得かも。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「歌会始の尊敬語」

2018-01-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180114
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>十八番ことばの知恵袋(2)歌会始の尊敬語

 新年の歌会始で話題の最年少入選者、佐世保市の中学1年男子、中島由優樹12歳。
 「文法の尊敬丁寧謙譲語僕にはみんな同じに見える」

 選者たちも、この歌を見て、「そうそう、同じだよね」と共感したから、入選したのでしょう。
 きっと中島君は、「以下のことばを、尊敬語、謙譲語、丁寧語に分けよ」なんていうつまらぬテストを受けて、「ああ文法ってつまらないなあ、こんなこと習ってなんになるんだろう」と思ったのかも。

 でもね、同じ中学生の藤井聡太四段は、どの会見でもインタビューでもきちんと尊敬語謙譲語を使い分けていたし、中島君もきっと「僕はおせち料理をいただきました」と、「両陛下は新年のお焼きがちんを召し上がりました」というのを「僕はおせち料理を召し上がりました」としたり、「両陛下はお焼きがちんを食った」と言ったりはしていないはず。きっと、きちんとした言葉遣いができる中学生に違いない。

(ちなみに、「お焼きがちん」とは、明治宮中で正月に食べられていた主食のこと。山川三千子『女官』に登場。白い丸餅を15センチくらいに平べったくのして焼き、その上に小豆で色づけした焼いた菱餅を重ねて、菱餅の上に牛蒡をやわらかく甘煮にしたものと白味噌を載せ、白い餅を半月形に折り、美濃紙に包んであるもの。正月の祝い餅。現代の宮中お祝い膳にも出されるのでしょうか)

 中島君も「召し上がります」と「いただきます」と「食べます」と「食う」が、どれも同じに見えるのではないと思います。
 「いただく」は、丁寧語なのか謙譲語なのか、なんていう試験問題が出された日にゃ、そりゃ丁寧語も謙譲語どれも同じに見えるよね。

 「いただくは謙譲語」という呼び名を覚えることが重要なのではなく、「食べる」という行為を表現したいとき、食べているのが自分と自分の身内なら「いただく」を使い、目上の行為なら「召し上がる)を使う、という区別がついていればそれでいいのであって、「召し上がる」は尊敬語、という区分けを覚えておけば、自分自身の行為や目下の行為に使ってしまう失敗はしなくなるので便利、というだけのこと。留学生は、ときどき間違えて使ってしまいますから、区別して覚えておくことは重要。

 昨年、私が出題した言葉遣い問題で、留学生の誤答が多かったものがあります。
 「先生は、私が提出したレポートを拝見しました」
 「私は、先生のご著書をごらんになりました」
 「私の母は、先生からのお手紙をお読みになりました」

 正しい言葉遣いに○をつけよ、という問題でしたが、3つとも誤用「×」です。でも、留学生にはどちらも丁寧ないい方として同じに見えたのですって。「先生が書いた本」だから、「ごらんになる」を使っていうほうが丁寧だと思った、というのが間違えた留学生の主張。「大学に入る前、日本語学校で何を習ってきたのさ」と愚痴りながら、敬語復習に90分使いました。

 「文法の尊敬丁寧謙譲語僕にはみんな同じに見える」うん、気持ちはわかる。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ことば収集車」

2018-01-13 00:00:01 | エッセイ、コラム
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>十八番ことばの知恵袋(1)ことば収集車(電動アシストつき)

 ことばの教師を長年続けてきて、日本語収集にかけては日常生活をして覚えた以上の語彙力はあるつもりでいるのに、まだまだ不足だなあと毎年思いを重ねています。新語流行語、若者言葉カタカナ言葉で新しく知っていくのは仕方がないと思いますが、昔習ったはずの言葉をまったく覚えていなかったり、初めて出会う言葉に出会うと、語彙力自慢の鼻をへし折られるので、これは高慢にならない薬だと肝に銘じています。元々高くもない鼻なのついつい「ことばに関しては、きょうびの学生よりは知っている」という思いで授業に出てしまうのは、よくないことです。

 2018年、さっそく知らない言葉忘れていた言葉に出会いました。

1)本初子午線
 小学校中学校で、グリニッジ天文台の経度零度が出てきた時に教わったはずだ、ということばなのですが、子午線に本初という接頭語がつくとグリニッジの零度のことだということ、まったく頭の中にありませんでした。「○初子午線」の○に当てはまることば、「元」だろうか、「原」だろうかと頭をひねり、「本初」という語にたどり着けませんでした。

 「本初」は、ものごとのはじめ、元になること。子午線は、由来も知っているし、朗読劇「子午線の祭り」も好き。なじみの言葉です。
 昔の方位で北が午(うま=時計では12時の方角)、南が子(ね=6時)に当たるから子午線っていうのは知っていたのですが、グリニッジ天文台の経度零度を本初子午線と呼ぶとは、思いつきませんでした。小学校中学校で習った覚えがないのだけれど、本当に習ったのかどうか、思い出せません。

2)由蘖(ゆうげつ)
 昨年末に、「蘖ひこばえ」について書きました。しかし、漢語でそれを「由蘖」と書くのだということ、知りませんでした。現代中国語でも「由蘖」はありますが漢詩や学術書の中に用例がありますが、一般的な語ではないようです。手持ちの漢和辞典国語辞書とも由蘖は出ていませんでした。

3)弊竇へいとう、品隲ひんしつ、跼蹐きょくせき
 語彙収集訓練として、古い本を読むようにしています。もちろん、自分にとって興味ある内容でなければ、読み続けることができません。今読んでいるのは、原勝郎『南海一見』という戦前の旅行記です。
 ジャンクが一杯詰め込んであるために古いパソコン立ち上げまで時間がかかるので、画面がちゃんと出るまで、数分の間読み、どこでもやめられる本として、司馬遼太郎の街道シリーズや、このような古い旅行記は重宝です。『南海一見』は、中公文庫1979の版ですが、元本は大正3年の発行です。大正のはじめに東南アジアを旅行した西洋史の先生が書いた本です。

 文庫本48ページに、まったく知らなかった語が2つと、日頃使わない語が1つ出てきました。この3語、手持ちの辞書には出ていません。こんなとき、頼ってしまうネット検索。
・弊竇(へいとう)とは。「竇」は穴の意。弊害となる点。欠陥。(デジタル大辞典)
・品隲(ひんしつ品騭)とは。「隲」はさだめる意。事物の優劣や品物のよしあしを批評し定めること。品定め。品評。品藻。(大辞林第3版)
・跼蹐(きょくせき)とは。身の置き場所もない思いをすること(岩波国語第4版)

 跼蹐は、司馬遼太郎の本にでてきたのを覚えていますし、私の辞書にも意味は出ている語なので、それほど使用稀な熟語ではないのでしょうけれど、まったくもって私にとっては、「理解語彙」であるが「使用語彙」ではありません。
 この先一生使わないと思う語彙であるけれど、自分は使わない語であっても、頭の中の辞書には入れておかなければ。跼蹐すべき場面はこの先いくらでもありそうな気はするけれど。

 我が身顧みて、その品隲こころみるに、弊竇多々あり、跼蹐すべき人物なり。
 ふう、使って見ました。これで跼蹐も使用語彙。

ことば収集車、BMBで行く人も電気自動車もありだけれど、私は自転車で集めます。あ、今年は電動アシストつき。現代日本語として「収集車」を検索すると、ゴミ収集車(塵芥収集車)ばかりが登場します。ほかのものは日常生活であまり収集していないのでしょう。そのほかでも、廃油収集車とかいらないものを集めるほうが主流のようです。ことば収集車となると、死語瀕死語を集めるおもむきになるのかもしれません。

 「弊竇」など、死語の感がありますが、新しいことばも収集していく、電動アシストつき自転車、ことばの苑を走り、ことばの林をかけぬけ、ことばの海を、、、おっと、自転車では海は行けませぬな。では、海を行くときは小舟に乗り換えて。溺れぬように。
 
<つづく>
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ぽかぽか春庭「自分にお年玉、電動アシストデビュー」

2018-01-11 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180111
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記1月(6)自分にお年玉、電動アシストデビュー

 小学校2年生、8歳のとき自転車に乗れるようになりました。父が一日がかりで小学校の庭で訓練してくれたのです。それから60年間、自転車は私の足になってくれました。
 どこに行くにも自転車。歩くのは10分でいやになるけれど、自転車は一日中乗っていられます。朝から10時間こぎ続けたこともある。 

 でもでも、この年です。坂道はこいで登れなくなり、降りてから自転車を押して歩きます。

 1993にヤマハパスが発売されて以来、価格が5万円切ったら買うと言っていたのですが、なかなか国産メーカーの電動アシスト自転車は5万円を切りません。中国製で5万円以下のものを見かけたのですが、いつもパンクの世話になっている商店街なじみのT自転車屋さんに聞いてみたら、最初は安いからと飛びついた人もいたけれど、すぐに部品の一部が傷む製品もあり、しかも部品の調達がなかなかできなくて、修理できなかったりするので、かえって高くつく、という説明でしたから、買わずにいました。

 この正月に、自分へのお年玉として、ついに電動アシスト自転車を買いました。T自転車屋さんのおすすめのブリジストン製です。
 茶色の24インチ。電動アシスト自転車の前後ろに大きな荷物籠をつけ、籠カバーを掛け、防犯登録代、盗難保険代込みで10万円でした。

 ヤマハパス発売から20年も安くなるのを待ち続け、自転車通勤を含めてずっと働き続けてきたのです。お年玉もらってもバチあたらない。

 東京は坂道の多い町です。仕事先にいくにも、ジャズダンスの練習に行くにも、坂の上り下りがあります。
 坂道を自転車押して歩いてきましたが、これからはさっそうとこいでのぼっていけます。
 9日、自転車を受け取って、10日さっそく仕事先まで行ってきました。
 快適な走行でしたが、後輪にジャージャーという音が聞こえます。仕事帰りに自転車屋へ寄ったら、スカートなどが後輪に巻き込まれるのを防ぐためのプラスチックカバーがタイヤに接触してこすれる音でした。調整してもらいました。

ブリジストンフロンティア


 2017年に2時間かけて自転車で水元公園へ行ったとき、帰りには、自転車捨ててタクシーで帰ろうかと思ったくらいくたびれました。もう自転車で遠出サイクリングは無理だなあと感じたのですが、電動アシストあれば、2時間くらいのサイクリングは楽勝です。

 今年の夏は、葛西臨海水族園まで出かけてみようかな。荒川沿いのサイクリングロードを通って息子と葛西臨海水族園まで行ったのは、今年30歳になる息子が小学校6年生の夏でした。往復自転車をこいだ私も若かった。

 フル充電した場合の電気代は10円程度だそうです。1回の充電で普通のスピードなら50kmほどは走行できます。
 サイクリングの計画、あれこれ楽しみです。 

<おわり>
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ぽかぽか春庭「エアー御年始」

2018-01-09 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180109
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記1月(5)エアー御年始

 姑亡きあとも姑の家に御年始に行くことにした昨年。今年はどうするかとしばしの思案はあったけれど、今年も姑のいない夫の実家に行くことにしました。

 夫は、姑が暮らさなくなった実家に週に1回は泊まりに行って、窓を開けて空気の入れ換えをしているのですが、火を使わなくなった家は急速にあちことにガタが来るということです。ほんとうは、今の住まいの賃貸公団を整理して、姑が残した家に移ったほうがいいのですが、娘の体調息子の先行き不透明など、懸案事項があって、まだその決断ができないでいます。

 御年始と言っても、スーパーでお寿司やサラダなど、テキトーに食べ物を買って、いっしょに食べる、というだけのものですけれど。

 静かな住宅街の姑ご近所ですが、やはり変化はありました。姑が長年親しくお付き合いしてきたご近所さんの家が取り壊され、新しい建物が建築中でした。夫に聞いても、「親同士は仲良しだったけれど、僕は向こうの息子と仲いいわけじゃないから、別段あいさつもなかったし、どういう事情なのか全然わからない」という頼りなさ。

 姑が長年お願いしていた庭師さん、今年90歳という話。夫は、「あの人に剪定のお願いが出来なくなったら、もう木の世話もできないから、全部切っちゃったほうがいいかなあ」と、猫の額ほどの庭の手入れも負担になってきたようす。

 年々歳々、すべては変わっていくのも仕方のないことですが、代わり映えしなくてもいいから、穏やかに過ごしていたいです。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「闘うガングリオンと踊る米寿」

2018-01-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180107
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記1月(4)闘うガングリオンと踊る米寿

 七草粥食べて平日気分になりましたか。今年は、3連中8日まではお休み気分の方も多いかしら。
 七草のゴギョウ(御行)は、植物名のハハコグサ(母子草)と書くと春の季語。ゴギョウだと正月の季語。太陽暦に変えたために「新春」という語が春ではなく冬のさなかになってしまったための季語のずれです。

 我が家の母子草。相変わらずぐずぐずと生きています。
 三が日が終わり、世の中が平日体制に戻って、娘が一番先にしたことは、医院に行くこと。
 娘が気にしていたのは、掌にできた「グリグリ」でした。暮れの28日に掌の違和感に気づき、ネットで調べたらどうやら「ガングリオン」という無害のものらしい。

 でも、もしもこれが、「胸のしこりに気づいたら、乳がんの症状だった」と世間で言うようなものならたいへんだ、と感じて、暮れも正月も心配のほうがつのって正月気分になれず、この手のしこりが気になっていたのでした。

 いっしょに近所の整形外科へ。私は2階で肩こり予防と腰痛予防のマッサージを受けました。その間娘は1階の待合室で30分待ち、私がマッサージを終えてもさらに1時間半待ちました。待合室は風邪引きさんで満杯です。

 マスク姿の人が多い中、男の子が咳こんでいます。両手にマンガ本を持ち、読みふけりながらの咳、口を覆うことをしません。どうやら男の子の診察ではなく、母親の受診を待っている様子。ここは病院なのだから、母親は「咳をするときは、口を覆いなさい」と、いつ注意するのか気になっていました。おせっかいにも、知らないオバアがしゃしゃり出て、「咳をするときは、他の人に咳をとばさないために、口を覆ってね」と言うべきかどうか、しばし悩みました。病院でなくても、咳をしているときマスクをするのは、最低限のマナーと思います。

 あとから来たお年寄りがバッグからマスクをひとつ出して「坊や、咳が出るなら、これ使って」と言ったのですが、母親は「あ、だいじょうぶです」と言う。あんたの息子が大丈夫かどうかが問題じゃないんだよ、息子の口を覆わない咳が他の人に嫌な気分を起こさせているのがわからないのか、と、腹が立ってきた。

 やっと母親の診察の番になって、診察室へ入っていきました。その間にも待合室の男の子は咳をする。母親が隣にいないのを見計らったように、お年寄りは男の子にマスクを渡しました。男の子は案外素直にマスクを口にしました。
 診察が終わった母親が出てきて、息子のマスクを見て「あらまあ、咳してたからねぇ」と言いました。息子には「お礼、言ったの?」と聞いています。お年寄りは「言ったよねぇ」と男の子をかばいました。母親は、人様から息子が何かされたことを、あまり快くは思っていないという感じでした。

 息子をお医者さんに診てもらうのでなければ、咳をしている子供を狭い医院の待合室に連れてくるべきではないし、連れてくるなら、両手でマンガにふさいでいる息子に、咳のマナーぐらい教えておくべきと、またまた「昔の母親が近頃の若い母親のしつけ力のなさを慨嘆」といういつもの老女愚痴第一弾になってしまいました。
 新年早々「他人の咳込みがいやなら、いつもマスクの数枚をバッグに入れておいて、さりげなくプレゼントしたらいい」と、用意の悪さを反省することしきり。

 娘は2時間待って、診察室に入り、5分で出てきました。あまりに早いので「えっ、診察終わったの?」と聞くと、「診察も治療も終わった」と。
 診察室で掌を診てもらうと、医師はちょっと掌にさわって「ああ、これはガングリオン」
 娘がガングリオンについて知識を持っているのを確認すると「良性の腫瘤だから、自然に治るまでほうっておいても大丈夫。痛みがあるなら治療しますけど、どうします」と聞き、娘が「少し痛みがあるから、治療したい」と言うと、掌をアルコールで拭くと、あっという間に注射針刺して、ゼリー状のガングリオンを抜き取って、絆創膏貼って終わり。これで、診察治療5分。

 娘は、ほっとしていました。「身体にぐりぐりしたとこがあったら、もし、これが乳がんのしこりみたいなものだったらどうしようって心配しちゃうけれど、お医者さんにはっきりと良性のものだって言ってもらってよかった。でも、どうして関節の潤滑剤みたいなゼリーが外に漏れてガングリオンになるのかわかっていないんだって」と、医者の説明を私にもする。

 そういえば、私も手首の親指側に、小さなグリグリが出来たことがあったけれど、いつのまにか消えてなくなったことがありました。あれも、ガングリオンだったんだ。

 会計を終えていっしょにスーパーで買い物。
 娘はすっかり晴れ晴れして「ああ、1週間心配して損した」と言っています。ちょうど年末年始の病院休診に当たってしまったので、1週間も診察に行けなかったのが悪かった。休日診療にいくほどのことでもないけれど、心配は心配、というところでした。

 家に帰ると娘は「ガングリオンって、なんか、仮面ライダーとか連隊ヒーローものの悪役怪獣の名前みたいだね」と、笑っています。
 ガングリオン、年末年始、我が家にとっては、宇宙怪獣並の害獣でした。退治できてよかった。注射針での退治、30秒。

 この調子で、さまざまな世の悪役を退治できたらいいのだけれど、そうはうまくいかないでしょうね。でも、口を覆わない咳込みという小さなことからはじめて、「僕はいやだ」と、叫べる世の中にしないと。私は、咳boyの母親がどんな反応をするにかが気になって「口を覆ってね」と言えなかった。みな、保身に走ってイヤなこともイヤと言えない世の中にならないように。

 5日は、ジャズダンスサークルの総会。5人しかいないので、役員決めといっても、それぞれが互いの都合を照らしあいながら、会長はミサイルママ、会計はみやちゃん、e-Naちゃんは発表会係などと決まりました。

 発表曲の順番なども決めて、残りの時間、ご主人介護のTTさんの現状報告と3月までは練習休会の承認。姑介護が長かったクニコさんの体験談、みやちゃんが見聞した町で出会った認知症高齢者の事例など。
 排泄管理ができない身体になると、おもらししていることに気づかないまま町を徘徊するようになるので、町でオシッコ臭い人とすれ違ったら、声がけをしてあげるほうが、よい、お節介と思われるくらいでちょうどいい、とみやちゃんは話していました。

 だれも、なりたくて認知症になるわけではないけれど、やはり、脳と身体を鍛えておけばそれなりの効果はある、という結論、今年もがんばってダンス練習をしていこうと励まし合いました。TTさんは、舞踊家のアキコカンダが75歳で死去する2週間前まで公演して踊っていたことにふれ、「今72歳だけれど、とりあえず、目標は75歳でダンス発表会」と決意を語ります。
 私など75歳まであと何年もないので、目標は米寿まで、と大きくでました。あと20年、踊る阿呆にみる阿呆、同じアホなら、踊ります。

 2017年は、6人で帽子を回しましたが、

2018年は、この5人でがんばります。


<つづく>
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ぽかぽか春庭「雅楽 in 東京都写真美術館」

2018-01-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180106
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記1月(4)雅楽 in 東京都写真美術館

 三が日のうち、なにかひとつくらいお正月らしいことをしとこうか、と思って、久しぶりに東京都写真美術館へでかけました。毎年「雅楽演奏」が2階ロビーで行われるからです。

 北風強い中、恵比寿ガーデンプレイスを写真美術館まで急いで向かうと、ちょうど獅子舞の一行と出会いました。通行者は獅子に頭を噛んでもらっていますので、私も「お願いします」とひと噛みしてもらいました。
 噛んでもらえばこののち1年は病気知らず、風邪引かない。おお、インフルエンザ予防接種の予約しようとしているのに、去年からずっと「ワクチン注射液が不足しているので当院では接種できません」と言われ続けてちょい不安でしたが、もうこれで風邪引かない。よかったよかった。イワシの頭も信心から。獅子のひと噛みもありがたやありがたや。



 恵比寿ガーデンプレイスに11月から1月8日まで飾られているバカラシャンデリアも、いっそう私のために輝いてありがたき正月気分。


 これまで、何度か美術館ロビーで雅楽を聴いて、お正月らしい気分になってきたのですが、今年はじめて、なぜ、写真美術館で雅楽演奏が行われるのかわかりました。

 鳳笙(ほうしょう)と司会:下宮高純
 篳篥(ひちりき):金子隆一
 龍笛(りゅうてき):内田慈庸

 ひちりき演奏の金子隆一さん、写真美術館の学芸員であり、芸術写真と写真史研究家であり写真集コレクターとして、写真研究界では有名な方でした。そして、東京谷中の正行院の僧侶。雅楽は、橘雅友会のメンバーとして演奏会に出演しています。

 写真研究者としては、「2018年1月5日(金) 18:00~19:30に写真史家金子隆一が東京都写真美術館1階スタジオで講演します」というアナウンスがありました。
 雅楽演奏者としては、昨年11月にも橘雅友会として銀座王子ホールで演奏会がありました。
 お坊さんとしてのおつとめも、谷中のお寺でなさっているのだと思います。

 司会をした下宮さんが「金子さん講演会」のお知らせをして、私は初めて演奏者自身が写真美術館の学芸員とわかりびっくりでした。どうして写真美術館で雅楽演奏なのか、という謎が解けました。

 下宮さんも、橘雅友会楽頭として各地で演奏活動を行い、また、雅楽の編曲なども担当している方で、私が気楽に見ていた「おじいさんが退職後の趣味として悠々自適に雅楽を奏でている」というのとはイメージが違いました。

・平調音取(えいちょうのねとり)
・平調越天楽
・嘉辰(朗唱)
 「♪嘉辰令月 歓無極 万歳千秋 楽未央」という漢詩を、かあああああしいいいいいんれえええええええ、、、、、というように長くひっぱる発声で、歌っていました。雅楽でこのように声で演奏するのを初めて聞きました。
・家路(ドボルザーク交響曲第9番より)毎年ラスト曲は、童謡やクラシックなどをアレンジした曲。今年は♪遠き山に日は落ちて~の曲でした。



 以上の4曲で約20分間。正月気分を味わいました。担当係員が、写真も動画も取り放題で、ネットUPしてください、という事前挨拶していましたので、写真を撮らせていただきました。ネットで橘雅友会を宣伝してください、というご挨拶でしたので、昨年の演奏会ポスターを。去年はチケット4000円。お正月ゆえ、タダで聞けてありがたや。


 昨年は酉年だったので、鳥にちなんだ曲が選ばれたようですが、今年、戌年に関わる曲が雅楽にはあるのかどうか、わかりません。曲のテーマは何になるでしょうか。

 というわけで、私のお正月はめでたくおひらきに。もれなく餅太りがついてきたけれど、まだ風邪ひいていないし、めでたく平日へ。

<つづく>
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