春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

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ぽかぽか春庭2023年9月もくじ

2023-09-30 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230930
ぽかぽか春庭2023年9月もくじ

0902 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>2023hot・hot新しい語(1)ガストフロントとダウンバースト
0903 2023hot・hot新しい語(2)コぺルト

0905 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記残暑(1)ハッピープレゼント
0907 2023文日記残暑(2)イヨクコーヒー再開

0909 ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩写真を見る(1)ドアノー&本橋成一展 in 写真美術館
0910 2023アート散歩写真を見る(2)田沼武能展 in 東京写真美術館

0912 ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023夏シネマ(1)タゲール街の人々 by アニエス・ヴァルダ in 写真美術館
0914 2023夏シネマ(2)ナミィと唄えば・バオバブの記憶 by 本橋成一
0916 2023夏シネマ(3)しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~

0917 ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る(1)細川護立が愛した画家たち in 永青文庫
0919 アート散歩玄鳥去る(2)マティス展 in 東京都美術館
0921 アート散歩玄鳥去る(3)さいたまりそな銀行フリーデ― in 埼玉県立近代美術館
0923 アート散歩玄鳥去る (4)横尾龍彦・瞑想の彼方 in 埼玉県立近代美術館
0924 アート散歩玄鳥去る (5)横尾忠則水のように展 in 現代美術館
0926 アート散歩玄鳥去る (6)コレクション展 被膜虚実 in 現代美術館
0928 アート散歩玄鳥去る (7)日本伝統工芸展 in 日本橋三越
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ぽかぽか春庭「日本伝統工芸展 in 日本橋三越」

2023-09-28 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230928
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る (5)日本伝統工芸展 in 日本橋三越

 9月19日、日本橋三越で「日本伝統工芸展」を観覧。無料。
 展示点数が数多いので、ひとつひとつをじっくり見ていると一日がかりになります。気に入った作品と受賞作品を中心に、全体をささっと見て通る。
 平日の日中ですから、観覧者は高齢者ばかり。若い人には「伝統」も「工芸」も心に響かないのか。たぶん、土日は若い人も工芸を見るだろうが、とにかく私が見た火曜日はジジババばっかりだった。お前もナー。

日本工芸会の口上
 日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に、公益社団法人 日本工芸会が毎年開催する日本工芸の技と美が集結する公募展。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸7部門の一般公募作品1,112点より厳正な鑑査を経て選ばれた入選作と重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)の最新作を含む557点を一堂に展覧いたします。
 人形が好きなので、最初人形の展示をまわりました。賞をとっていなくても、好きな作品があって見入りました。
 
 中村弘峰 陶彫彩色「霧笛」朝日新聞社賞

 小林眞知子 紙塑和紙貼「ひと休み」

 野田リツ子 木芯桐塑布紙貼「風花」

 真鍋道 木彫布貼彩色「夕暮れの響き」

 藤野聖子 截金飾筥「光彩万華」日本工芸会奨励賞

 柴田昭 有線七宝抽象文花器 日本工芸会保持者賞

一番出店数が多い陶器の展示


 陶器はあまりにたくさん並んでいて、私には入賞作品とそうでないのはさっぱりわからず、絶対にこれが好きという作品はえらべませんでした。

 金工作品、漆蒔絵の作品のほうが、「これが好き」という作品が多かった。

鹿島和生 布目鎖盛象嵌扁形鉄花器「阿吽」東京都知事賞

奥村公規 朧銀地象嵌匣「時」日本工芸会奨励賞

金城一国斎 切金螺鈿箱「穂波」

寺西松太 螺鈿蒔絵箱「浮遊」

奥平慶司 蒔絵箱「木洩れ日の熊谷草」第70回記念賞

北岡道代 乾漆蒟醤「瑠璃藤花」日本工芸会新人賞


浅井康宏 蒔絵螺鈿「Rain」
 

古田則行 蒔絵箱「爽風」

山下哲司 蒟醤存清合子「緑韻」

久富夢庵 竹芸花籠「奏でる」

大村幸太郎 染織 友禅訪問着「浪に魚」文部科学大臣賞

 着物も、好きだと思う作品がたくさんあったのですが、一着だけ紹介。私は彫刻より人形のほうが好きだと言うことは前からわかっていましたが、今回、陶芸より漆芸作品のほうが好きだと言うことがよくわかりました。たくさんのすぐれた工芸作品を見て、伝統工芸の力を感じましたが、7階の展示会場から6階の美術品売り場に降りて、売値のついている作品を見て回る。買おうと思っても、高齢貧乏人には手が出ない作品ばかりでした。陶器など、もし買う機会があったら、ぐい飲みのひとつも買ってみたいですけど、百円ショップで買える品と人間国宝の品を並べてあっても、目がきかない人は、百円ショップの陶器で十分だと思います。今気に入っているのは、文化センター祭の陶芸教室の部屋で「どれでもお好きな作品をひとつプレゼント」というコーナーでもらったぐい飲みには大きく、小鉢にはミニすぎる茶色の釉薬がかかった「ご自由にお持ち帰りください」コーナーの品。プレゼント、ありがとうございました。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「コレクション展 被膜虚実&サム・フランシスほか in 現代美術館」

2023-09-26 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230926
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る (5)コレクション展 被膜虚実&サム・フランシスほか in 現代美術館

 敬老の日無料公開の現代美術館、3階の横尾忠則のほか、1階では「被膜虚実」の展示と、サムフランシスほかの現代美術展示がありました。

 現代美術館の口上
 1階では、「被膜虚実(ひまくきょじつ)」と題し、1980年代末以降の作品を紹介します。このほど新規収蔵した三上晴子の1990年代初めの作品と同時期に三上が用いていた「被膜」というキーワードを起点とし、石原友明、平川典俊、ホンマタカシ、開発好明、加藤美佳、名和晃平、百瀬文、潘逸舟、トーマス・デマンド、方力鈞ほかの作家による多様な作品をたどりながら、約30年という時間の流れと、そこに見られる身体観の移ろいと生への眼差しに着目します。
  約5600点の収蔵作品のなかから、今回は1980年代末以降の、より現在に近い時期に制作された作品を選びました。約30年の間に個々に生み出された作品を巡りながら、時間の経過やその背景を感じとるとともに、絵画、立体、写真、映像、インスタレーションなど多彩な現代美術の表現に触れることができます。

 「虚実皮膜」とは、近松門左衛門が唱えたとされることば。江戸時代の人形浄瑠璃などの芸は、実と虚の境の微妙なところ、事実と虚構との微妙な境界に芸術の真実があるという論。
 三上 晴子(みかみせいこ1961- 2015)年の作品に「被膜」というシリーズがあるため、展示タイトルとして「被膜虚実」がつけられました。

 現代美術館の「被膜虚実」の展示室に入ると、三上晴子の作品「スーツケース」が並んでいます。正式なタイトルは『スーツケース(World Membrane: Disposal Containers - Suitcase)』1993

 一列に並べられたビニール製のスーツケース。1993年の本作の前に、発表されていた「地球の皮膜/処理容器」(P3 art and environment、東京)、「被膜世界:廃棄物処理容器」のふたつを発展させた作品だという。
 見学者は、最初の部屋だから、スーツケースの列を一瞥するとささっと次の部屋に足を進める。ひとつひとつのスーツケースの中身がなんであるかを確認する人は少ない。布団袋のような感じの簡素なスーツケースの中身は、核物質や毒ガスなどの地球を滅ぼす危険なものばかり。中央前面に置かれている黄色い箱状のものは、実験用動物の入れ物。さまざまな危険な実験に利用された動物が入っていて、その動物は死ぬ運命にありますが、動物にさわっても危険極まりない。
 こんなにたくさんの、地球を滅ぼすに十分な量の危険物があふれているのに、人々はなんの疑問も恐怖も抱かずに、日常生活を送っていまる。もしかしたら、これらの物質が明日地球を滅ぼすかもしれないのに。

 いろんな展覧会で見てきたなじみの作品もありました。名和晃平の「鹿」です。
 しかし、今回しっかり説明書きを読んで、わかったことに驚愕。
 クリスタルガラスビーズ球体が鹿の身体を形作っている。このキラキラした丸いさまざまな大きさのガラス玉が周囲の光を反射し、視点を変えると光り方が変わる。目玉になっている玉は、ある角度から見ると黒い目だけれど、視点を変えると透明になります。大きさの異なる透明な球体を通して鹿を見ると、視点がずれることによって球体の中に移り込むものが変わる、不思議な鹿。
 
 物のイメージはすべて光学情報としての”画素”に変換されて私たちの目に入ってくることになります。ガラスの球体ビーズは、物の表皮がすべて画素に変換されている様を彫刻的に表しています。ビーズに覆われた物を私たちは決して直接見ることはなく、見る角度によってその像も歪んだり拡大されたりします。

 題名は『PixCell-Deer』です。Pixel(画素)とCell(細胞、粒、器)を掛け合わせてつくった名和の造語。2011年に制作された制作された『PixCell-Deer#24』が日本の現代美術で最初にニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵された作品として、現代美術に弱い私も名和に注目することとなりました。

 さて、びっくりしたことというのは、この球体をまとった中身は、名和がネット注文で手に入れた鹿の剥製だ、ということ。剥製に球体を張り付けて作品を完成させていたことです。中身が剥製だなんて思いもよりませんでした。


 名和は、京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了という彫刻を学んだアーティストですから、中身が粘土で作った塑像だときけばそれほど驚きはなかったでしょうが、やはり中身が剥製と知ると、動物の生と死、そして死後が生々しく伝わる気がします。

 クリスタルガラスビーズの球体で覆われた鹿は、輝く光の集合体として再生し、光が当たると、内側から発光しているかのように見る者の前に現れます。美しい。だが、中身は作品になるまでは日本の山野をかけめぐり、あるときは森林や作物を荒らすとして駆除されて剥製になった存在。

 そのほかの作品では、映像作品がよかった。(以下、だ/である文体)。
 開発好明「Roll」1998。15分40秒。
 はるか遠くで歩道を何かが動いて前進している。近づくとそれは開発自身が前転しながらカメラに向かって進む姿だ。歩道の奥には2011で標的となったワールドトレードセンターが写っている。ビルが倒壊したため、同じ映像は二度と写せない。


 そのことを知らないまま、このなんだかわからない前転男を私は15分間見続けた。チベットの巡礼のやり方のひとつに「五体投地」という前進方法がある。芋虫が這うような、信仰の証としての五体投地は、信仰を持たない者の目には、いささか笑いたくなるような奇妙なユーモアを感じることがある。開発の前転は、まったく信仰とは関係なく、最初からこの無意味な前転を笑うに笑えない何かを感じてしまう。しかも後方にはこの映像作品の3年後には、ビルが丸ごと崩壊していくという時間軸がある。確固として佇立していたビルが一機のジェット機突入によって崩壊していくという時間を知っている。
 前転男の行動が「ばかばかしく無意味であるがゆえに尊い」という思いに凝縮されていく。

 映像作品二つ目。百瀬文「山羊を抱く/貧しき文法」2016
 最初に目にしたのは、ヤギ。ヤギの角をつかんでいる若い男。一目見て、あ、この若い男はヤギを犯しているのだと気づく。男の局所がヤギに尻に当てられていたからだ。えっ、ほんと?そんな絵を現代美術館で堂々公開なのか。

 9月18日月曜日は、敬老の日祝日ゆえに、映像前のベンチには小学生の男の子が母親といっしょに座っている。R指定なんぞない。ヤギがなにやらの絵を食わせられている。この先、この母と息子が、絵の意味に気づいたならどうするのか、と敬老の日高齢者無料で入場した婆さんは、こりゃ最初からちゃんと見ようと次の部屋を見て、ループ上映の映像があたまになったので、あらためてベンチにすわる。
 冒頭、作者の百瀬文がネットであることばを検索してひとつの画像を得る。検索した語は、「zoophilia」。ほらあ、やっぱりそうじゃんか。小学生に見せていいのか。小学生は百瀬がネットから打ち出した絵を模写するようすをちょっと見て、飽きて出ていく。たぶん、母親も息子も、絵が何を表現していたか、理解していない。百瀬は丹念に模写を続け、最後にヤギの尻のつづきを描く。


 模写が完成したあと、作者はこの模写の絵をヤギに食べさせようと、ヤギの口に絵を咥えさせようと試みる。食用着色料で彩色された絵。ヤギは着色料の絵が好みに合わなかったのか、紙を食べようとはしない。作者は紙を破る。破られた紙もヤギに拒否され、百瀬は紙を丸めて自分の口に突っ込む。完。


 ヤギは、角を青い染料で染められている。このヤギが「普通じゃない」ことの表現なんだろうか。牧畜放牧社会では、古来よりヤギの獣姦は「若い男性の性欲処理」に利用されてきた歴史があるのだそうだ。女性は「経済的利用、社交的交換に役立つ資産」であるから、人の資産にうっかり手を出すことはできない。

 「zoophilia」という語の訳語「獣姦」を、小学生男子の母親は知らなかったか、息子が獣姦絵の模写に飽きるまでは、いっしょに見ていた。zoophiliaが獣姦であることを知っていても「息子には影響ない」と思ったのかわからない。ヤギは青く染められた角を縄で縛られており、百瀬はその綱を離すことはない。ヤギは逃げることはできない犠牲の山羊だ。

 日本はこの夏、例年にない暑さにうだっていたが、ネット社会ではpedophilia という語が大量消費され、権力者によるペドフィリアの痛ましい人権蹂躙の真相が社会を席巻した。大声で非難されればされるほど、それに加担し隠そうとしてきたメディアは、すます巧妙に自分自身の加担については口を閉ざしている。

 記者会見の場では語られていなかったことだが、新社長の過去の証言によれば。絶対権力者だった創業者社長は、自分の組織に登録している少年のデータをすべて把握しており、だれが地方出身者であるか、だれが母子家庭であるか、だれの家が貧しいか、すべて把握していたと語っている。逃げることができない犠牲の山羊をしばりつけていたのは、この小児性愛者も同じ。縄の名は「デビュー」

 前社長は、相続した890億円(一説に1000憶とも2000億円とも)いわれる資産の相続税を「払わずにすませる」ために、代表取締役の座は守るとのこと。代表をやめると、相続税を払わなければならなくなる。

 pedophilia小児性愛者の男は、過去50年に渡って数百人の幼い男子に強制姦を繰り返していたのに、関係者はみなそれを押し隠してきた。きらきらした輝く球体を身にまとって歌い踊る美しい姿の中身が、剥製に見えてくることのないように願っていますが、告発者が増えれば増えるほど、おぞましい事実が明らかになってきています。

 おぞましい事件をこれでもか、と知らされてきたゆえか、獣姦なんぞは屁でもないと思うのか、この映像を見た人は、たいてい全部は見ずに、一部を見てすぐ飽きて出ていった。
 

 百瀬はなぜ、模写した獣姦の絵をヤギに喰わせようとしたのか、喰わなかった絵を自分の口に押し込んだのか、現代美術もわからず、映像作品の見方もわかっていない「高齢者無料入場」の老婆は、百瀬文の「山羊を抱く/貧しき文法」という作品の真意もわからず、映像の前に座っていた。

 3階展示室。生誕百年を迎えたサム・フランシス。朝日ビールから寄託された作品の公開です。
 サム・フランシス「無題」1985




 サム・フランシス(1923-1994)。アンフォルメルの画家。
 アンフォルメルとはフランス語で非定形(informel) の絵画をいう。サム・フランシスは日本画の「にじみ」などを作風に取り入れているということなので、日本人の感性になじむ。抽象画を「よくわからん」と思う私も、サムフランシスの色彩は心地良い。ただ、「心地良い」ことに不安が沸き上がるのは、現代に生きる者の宿命かもしれない。

 ただで見た現代美術館。
 横尾忠則、サムフランシス、現代作家の作品。ただで一日すごさせていただき、ありがとうございました。老婆には理解できない現代作品も多かったですが、理解なんかしようと思っていないから、大丈夫。ただ、「山羊を抱く」の作家の作品意図は、わかったほうがいいと思ったのですが、思いがペドフィリアの方にいってしまったので、わからないままでした。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「横尾忠則水のように展in 現代美術館」

2023-09-24 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230924
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る (4)横尾忠則水のように展in 現代美術館

 現代美術館が、敬老の日無料公開を復活するというので大喜びで出かけました。
 MOTコレクション展の特集展示3階は横尾忠則特集。横尾忠則の初期状況劇場ポスターから2021年の作品まで70点、充実した展示でした。

 現代美術館の口上
 3階では、「特集展示 横尾忠則―水のように」と題し、2021年の当館での個展を機に収蔵された作品を中心にご紹介します。1960年代から近作まで、その変化に富んだ数々の作品に表れた「水」の表現に注目することで、新たな魅力を探っていきます。



「落下する男」1966

「滝」

「滝行」


「彼岸へ」2000






「意思の彷徨」2002


「暗夜行路 赤い闇から」2001


 1960年代1970年代に状況劇場などの講演ポスターを描いていたころは、ぜんぜん感応しなかった感性ゼロの私でしたが、こうして140点がずらりと特集しているのを眺めれば、突出した才能であることがわかります。いつも時代の最先端にはおいていかれる古色いろあせ人間。美術鑑賞者として残念無念な感性ですが、最先端をいち早く切り取って美術評論なんぞをものする人とはちがって、毎度毎度「おくればせながら」と見て回る周回遅れ人間ですから、いいんです。

ポスター「網走番外地」


ポスター「腰巻お仙」




「霊妙の得」2021

 横尾忠則流の寒山拾得のふたりだそうです。特集展示のポスターにも採用されているのは、2021年に現代美術館で横尾の個展開催の際、現代美術館が購入した所蔵品だから。寒山拾得がにっこにこの笑顔で描かれているのも、他の寒山拾得とは違っていいのじゃないかと思います。ふたりが座っているのが洋式便器であり、手にしているのは経文の巻物じゃなくて白いトイレットペーパーです。
 「水のように」という特集テーマですから、このペーパーも水のように流れて功徳百倍。チベットのマニ車を一回回せばお経を1万回唱えたのとおなじ功徳を得られる。今後、私はトイレットペーパーを水のように流すたびに、功徳1万回と思うことにしまう。なんまいだ。

「新香港ナイト」2021/2022

 アメリカンポップアートコレクターには大いに高値で売れそうな横尾忠則。これを1枚あげます、と言われると部屋に飾ろうと思う作品は、寒山拾得が一番かな。他の絵は、ニューヨークあたりのコレクターをターゲットに利殖めあてで1枚をもらっておきますが、ほんとうに横尾忠則が好きでたまらない、という絵がないのです。困ったことだ。高くなりそうなのに。
 もらうことはないから悩まないでもいいんだけれど。

 敬老の日、無料で見せていただき、ありがとうございました。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩残暑(3)横尾龍彦瞑想の彼方点 in 埼玉県立近代美術館 in 埼玉県立近代美術館」

2023-09-23 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230923
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る (4)横尾龍彦・瞑想の彼方 in 埼玉県立近代美術館

 有効期間2か月のぐるっとパス利用の最初にも、そごう美術館で「大森暁生 」を見て、中間あたりでオペラシティギャラリーで「野又穫 」を見て、利用期限ぎりぎりになってさいたま近代美術館で「横尾龍彦」を見ました。    
 ぐるっとパスのいいところ。2500円最初に払えば、利用可能な美術館どこに行ってもいいので、知らない画家でも「タダなら見るか」の根性で出かける気になる。「まったく今まで見たこともなく名前も知らなかった画家」に触れることができました。

 横尾龍彦、まったく知らない画家でした。埼玉銀行無料デーに惹かれて埼玉県立近代美術館に出かけて、ぐるっとパスで入場。

埼玉県立近代美術館の口上
 横尾龍彦(1928-2015)は、日本とドイツを往来しながら活躍した画家です。1960年代後半、神話や聖書を題材とした幻想画を描き、澁澤龍彦や種村季弘ら著名人に認められました。
 1980年以降には、禅やルドルフ・シュタイナーの思想に影響を受け、瞑想によって湧き上がるイメージを、絵具の激しい飛沫やダイナミックな描線によって抽象的に表現するようになります。晩年は埼玉県内のアトリエを拠点に、制作やワークショップに尽力しました。
 

 「ラ・ポム」1965 

 「教会」1965 

エゼキエルの幻視」1966


「水と霊」1966

「不死鳥」1967

「海」1960年代後半

「幽谷」1971

「愚者の旅」1975(安井賞受賞作)
「黙示録ゴグとマゴグ」1977


「聖杯」1980

 宗教的な幻視的な題材で描き続けてきた横尾龍彦の絵が、1980年を境にガラリと変わります。さまざまな思想書を読み、瞑想経験などによって大きく画風が変わりました。
 公開政策のようすが映像となっていました。大勢の人が見守る中、大きな筆に色をのせ、足下のキャンバスに振りまきます。どこまでが画家の意思なのかどこからが偶然の産物なのかわかりませんが、あらたな表現が生まれます。


「アウロラ」1981


「円相」1992


「天体音響」1992

 初めて知った画家の生涯をたどる展示。さいたま市は今の住まいからは遠くなってしまったので、それほどhんパンにはこられなくなりましたけれど、美術館の建物も好きですし、機会があったらまた来たいところです。


<おわり>
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ぽかぽか春庭「さいたまりそな銀行フリーデ― in 埼玉県立近代美術館」

2023-09-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230921
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩(3)さいたまりそな銀行フリーデ― in 埼玉県立近代美術館

 8月、ぐるっとパスの利用期間が17日で終わるので、せっせと美術館通い。もう十分モト取っているのに、最後まで使い倒そうとするもったいない精神です。
 8月5日は、埼玉県立美術館へ。さいたま銀行メセナによる無料のコレクション展と、ぐるっとパス利用、特別展横尾竜彦の両方を見ます。
 まずは、通常は有料のコレクション展。今回は海をテーマにした作品が並んでいました。

会期:7月15日(土)~8月27日(日) 

さいたま銀行による口上
 埼玉県立近代美術館は当社の開業20周年を記念し、5月13日(土)から当社の前身銀行の一つである埼玉銀行等の寄贈等により収蔵した作品を中心とした常設展を実施します。企業の支援によるコレクションとして、パリ移住後に肖像画や裸婦像で人気を博した岩槻出身の田中保の「黒いドレスの腰かけている女」、「キュビストA」やオーギュスト・ルノワールの「三人の浴女」等を展示します
 
 埼玉銀行がスポンサーとなって、入場無料の展覧会を開催するということなのでで、今使っていない休眠中のさいたまりそなの通帳、ちょっとはお金を出し入れしようかしら、と思いました。銀行寄贈の品のほか、さいたま近代美術館所蔵品を展示。見ごたえがありました。

モネ「ジベルニーの積み藁」1888-1889


ルノワール「三人の浴女」1917-1919   
モーリス・ドニ「トレストリニェルの岩場」1920

モーリス・ドニ「シャグマユリの聖母子」1925


シャガール「ふたつの花束」1925



パブロ・ピカソ「静物」1944


キスリング「赤いテーブルの上の果実」1944


 なんといっても、無料がうれしい無職無収入高齢者、北浦和は今の住まいからは遠くなったので、遠い美術館になってしまったのが残念ですが、また無料の機会にうかがいます。

「海を描いた絵画」の展示室で


<つづく>


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ぽかぽか春庭「マティス展 in 東京都美術館 」

2023-09-19 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230919
ぽかぽか春庭アート散歩>アート散歩玄鳥去る(2)マティス展 in 東京都美術館

 マティス展、8月第3水曜日もシルバー無料が復活しないようなので、8月20日の会期終了前にかけこみで東京都美術館に行ってきました。8月9日水曜日。高齢者券は1500円。一般2200円。どうせ行くなら会期はじまりに行ったほうが混んでないのに、もしかしてシルバーデイ復活あるかと思ってぐずぐずしていました。
 平日の午後、けっこうな混み具合でした。やはりマティスは大人気です。友人A子さんが出かけた土曜日は、もう混みこみでたいへんだったということなので、平日の混み具合はまだましだったのだと思います。なかなか見られないマティスが晩年に「私の集大成」として力を注いだ教会のようすを映像で見ることができたので、出かけてよかったです。

会期:2023年4月27日(木)~8月20日(日)

東京都美術館の口上
 20世紀を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティス(1869-1954年)。強烈な色彩によって美術史に大きな影響を与えたフォーヴィスム(野獣派)の中心的な存在として活動したのち、絵画の革新者として、84歳で亡くなるまでの生涯を、感覚に直接訴えかけるような鮮やかな色彩とかたちの探求に捧げました。彼が残した仕事は、今なお色あせることなく私たちを魅了し、後世の芸術家たちにも大きな影響を与え続けています。
 世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するパリのポンピドゥー・センターの全面的な協力を得て開催する本展は、日本では約20年ぶりの大規模な回顧展です。絵画に加えて、彫刻、素描、版画、切り紙絵、晩年の最大の傑作と言われる南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まで、各時代の代表的な作品によって多角的にその仕事を紹介しながら、豊かな光と色に満ちた巨匠の造形的な冒険を辿ります
。  

  他のマティス展示では見ることがなかった教会の映像が一番興味ひかれるところでした。ロザリオ礼拝堂はこじんまりした小さな礼拝堂ですが、資料の展示もあり映像では礼拝堂の中に入ったような気持になれました。


 ポンピドーセンター所蔵の作品は、撮影可能。教会の映像は撮影不可でしたが、無料画像とゲリラ撮影で補いました。
 以下の絵の画像がすこし斜めになっているのは、ガラスを入れてある絵にどうしても照明が反射してしまうので、反射しないよう斜めから撮影したためです。

「パイプをくわえた自画像」1919

「ニースの室内シエスタ」1922

「赤いキュロットのオダリスク」1921

「若いスペイン女性」1921  

「グールゴー男爵夫人の肖像」1924


「若い女性の肖像」1925

「石膏のある静物」1927 アーティゾン美術館蔵

「緑色の食器棚と静物」1928


「夢」1935

「座るバラ色の裸婦」1935-36


「鏡の前の青いドレス」1937


「ラフランス」1939(ひろしま美術館蔵)


「緑色の大理石のテーブルと静物」1941


「マグノリアのある静物」1941


「若い女性と白い毛皮の外套」1944

「黄色と青の室内」1946

 
「立っているヌード」1947

「赤の大きな室内」1948

 晩年の切り紙作品も多数展示されていました。
 絵筆を持てなくなって取り組んだ切り紙。色彩と形に思いを込めたことがわかります。

 東京都美術館、よい展示でした。願うらくはシルバーデイの復活を。

<つづく>
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ぽかぽか春「細川護立が愛した画家たち in 永青文庫

2023-09-17 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230917
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩玄鳥去る(1)細川護立が愛した画家たち in 永青文庫

 永青文庫は「ぐるっとパス」で入れるので、ときどき訪れます。熊本のお殿様細川護立侯爵が設立した永青文庫は、武家や茶道に関わる「武家の美」展示が多かったのですが、今回は珍しく洋画です。

 永青文庫の口上
 永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ)(1883~1970)は、白隠(はくいん)・仙厓(せんがい)などの禅画、刀剣、近代絵画、東洋美術などを幅広く蒐集し、「美術の殿様」とも呼ばれました。本展で久しぶりに公開するポール・セザンヌ(1839~1906)の水彩画「登り道」は、文芸雑誌『白樺(しらかば)』に掲載されたのち、大正15年(1926)にヨーロッパ滞在中の護立がパリで自ら購入した思い出の作品です。1874年の第1回印象派展以前に描かれたセザンヌの初期作であり、日本にもたらされた最初期のセザンヌと考えられています。この「登り道」について、護立は後に「私がもっとも大切にしているもの」と語っています。
 また護立は、学習院の同級生であった武者小路実篤(むしゃこうじさねあつ)(1885~1976)らとの交友から『白樺』の活動を支援するほか、梅原龍三郎(うめはらりゅうざぶろう)(1888~1986)や安井曾太郎(やすいそうたろう)(1888~1955)など同時代の芸術家とも親交を結びました。永青文庫に残る書簡や逸話からは、彼らの親密な交友が見て取れます。本展では、そうした芸術家との交流によって細川家に集った洋画を中心に、永青文庫の近代絵画コレクションの一面をご紹介します。

会期:2023年7月29日(土)~9月24日(日)

セザンヌ「上り道」1867


ドニ「トレストリニュルの水浴」1920


キスリング「赤いテーブルの上の果物」1944


ピカソ「生物」1944


 細川のお殿様は、画家や文学者との交流を楽しみ、好きな絵の収集を楽しんだことがわかります。
 細川幽斎からえんえんと遺伝子をつないで、元首相の陶芸にまできているのかと思うと、金持ちの上に才能を持った一族にまたまた貧乏かつ才なきもののやっかみがつのりそうでしたが、収集したゲージュツをのんびり見せていただいたことに感謝しつつ、観覧客もほとんどいない展示室でゆっくりすごしました。
 いつもの金ある者才ある者へのひがみやっかみが少なかったのは、来るときの電車の中で、司馬遼太郎の『護貞さんの話』を読んでいたからかもしれません。司馬さんは護貞のお人柄に魅せられた。細川護貞は、護立の息子。華族だの元何々だかの肩書を嫌っていた司馬遼太郎ですが、若手作家だった司馬さんが熊本へ講演の仕事で赴いたときのこと。熊本を案内してくれたのが講演主催者の熊本県職員などでなく、元のお殿様護貞さんがつきっきりで案内し、いろいろなお話をしてくださったこと、そのお人柄に魅せられたことを書いている。また、お話の内容が、戦国大名の中で特に好きな細川幽斎三斎親子のことだったことに感激していました。司馬は小説に書く時、客観的な視線で登場人物を描きますが、どうしても好き嫌いはあります。このエッセイによって、司馬遼太郎の細川びいき、細川家に流れるガラシャお玉への好印象がうかがえました。明治以後は鍋島が入ったり近衛が入ったりした細川家ですが、それでも直系が続いてきたので、ガラシャの血筋であることは間違いない。

 観覧客が少ないのも道理。絵を見終わって玄関から外にでると、どしゃぶりになっていました。皆、外に出たくない天気予報だったのでしょう。私は、8月17日で終わってしまうぐるっとパスを無駄にしたくなくて、天気予報関係なく出てきたのでした。
 来るときは江戸川橋から目白行きのバスに乗り、椿山荘前で降りて下り道を歩きました。同じ道を戻るなら、こんどは上り道です。こんな雨の中、上り道もしんどいと思って、神田川へ向かって下る細川庭園の細道をそろそろと降りていきました。
 神田川に沿って江戸川橋駅に向かう間に雨はこぶりに。あんなどしゃぶりの中を歩かないで、雨宿りをしていればよかったのに、いつやむかわからないから、無理して庭園を下りました。
 人生どしゃぶりもあるよね。雨宿りするのもアリだし、無理して歩くのもアリなのでしょう。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦戦 ~とべとべ手巻き寿司~」

2023-09-16 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230916
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023夏シネマ(3)しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦戦 ~とべとべ手巻き寿司~

 ひさしぶりのシネコン。『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦戦 ~とべとべ手巻き寿司~ 』を見ました。むろん、無収入高齢者が入場料はらって見るわけがない。娘が観覧券を当てたのですが、息子が行かないと言うので、娘はひとりで見てきたという。息子の分のチケットが余っているけど、母が見にいくならあげる、というので、ありがたく受け取りました。

 夏休みの最後を楽しむ親子、家族連れがほとんど。婆がひとりで見ているのは、私くらいでした。『クレヨンしんちゃん』の映画は、「大人も泣ける」という評判をとっているので、今回のムービーはどうかな、という興味でひとりで見ているのよ。おひとり様が悪いか、このクソガキ。前の座席を蹴るなっていう注意書きがスクリーンに出ているだろがっ!あ、字読めないのか。「館内販売の飲食物以外に座席への持ち込み禁止」と出ているのに、自宅でペットボトルにインスタントコーヒーを詰めて凍らせたのを飲んでいる私も、館内注意に違反しているのよね。すみません。

 映画は、しんちゃん映画初の3DCG制作。技術面ではこれまでのアニメよりは画面構成に3Dを生かしたシーンがあったと思います。~とべとべ手巻き寿司~というサブタイトルは、制作が寿司店とのコラボだから。手巻き寿司に家族皆で食事を楽しむことが象徴されているというのだが、肉屋がコラボしていれば~とべとべすき焼き~になったろうし、カレールーとのコラボなら~とべとべカレーライス~だ。


 お話の中身は。
 いじめられっこで孤独だった非理谷充(声:松坂桃李)は、宇宙から注いだ黒い光によって超能力を得た。同じく白い光を浴びた超能力しんちゃんは、世界制覇しようとするヌスットラダマス2世 との戦いに挑む。野原家は遊園地でのしんちゃんの戦いを見守る。しんちゃんが白い光を浴びた時、そばにいたのは妹のひまわり。
 すみません、おひとりさまは途中ちょっと寝ました。で、深田恭子さんの「キミノヒトミニコイシテル」 が流れていたあたりは、見ていません。

 遊園地に現れた巨大な妖怪。ちびっこには見た目おそろしいが、まぬけな感じが出された造形で、このビジュアルはうまいなと思う。ほんとうに子供が泣きだすような見た目ではなく、しんちゃんならやっつけられると思わせる恐ろしさ。
 
 怪物に飲み込まれた体内で、しんちゃんは非理谷の子ども時代の孤独を知り、友だちとして寄り添う。だれかが寄り添うことが力になることが示されて、教育的によろしい場面だ。現実にはそれが日本の教育現場にないから、不登校生24万人という結果になっている。しんちゃんのメッセージが、孤独を抱えている全国の非理谷くんに届くといいね。


 初の3DCD作品というので、スタッフも今まで以上にがんばったと思います。
 全部を真剣な目で見なかった婆のいうことじゃないけれど、テレビで放映されたら、深田恭子のキミノヒトミニコイシテルをちゃんと聞こうと思います。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「ナミィと唄えば・バオバブの記憶」

2023-09-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230914
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023シネマ夏(2)ナミィと唄えば・バオバブの記憶 by 本橋成一

 ドアノーと本橋成一を並べる展示の関連イベントとして、東京写真美術館は「無料映画鑑賞会」を開催。無料大好きの春庭は全9回の映画上映のうち、本橋成一とアニエス・ヴァルダを見ました。
 東中野にある映画館ポレポレが扱う作品に興味を持ってきたのですが、一度もでかけたことはありませんでした。ポレポレというのがスワヒリ語でゆっくりという意味であることは承知していたので、アフリカや第3世界に興味がある人が設立したのだろうとは思っていましたが、本橋成一が設立した映画会社「ポレポレタイムス社」が制作した作品のほか、ユニークな作品を上映しています。そんなに儲かっているとも思えないけれど、本橋作品を無料で公開。

 『ナミィと唄えば』2006 監督本橋成一(ポレポレタイムス社)
 石垣島生まれのナミィは、5歳のとき母を亡くし9歳のときに那覇の遊郭に250円で売られました。いっしょに売られた顔のかわいい女の子は300円で、踊りの仕込みっこになり、ナミィは「顔が悪かったから」三線を仕込まれる。
 1921(大正10)年に生まれ、2017年に97歳まで、三線をひき唄をうたいまくる人生でした。120(百はたち)まで生きて歌うと言っていたナミィでしたが、97歳までの生涯、すばらしい人生だったと思います。亡くなったご亭主の写真に向かって「私はしあわせ」と語りかけ「まだ、あんたのとこへ行く気はないよ」と語りかけていました。映画撮影時には85歳。


 父によって遊郭に売られ、15歳のとき叔父に助け出され、父が働いていたサイパンへ。サイパンでは、本土出身者の家の女中の仕事につく。21歳で恋した男に連れられて台湾へ。台湾へ渡りアルミニュームの工場で働き、従姉妹がいた温泉の料亭に。終戦で引き上げ石垣の料亭で仕事をする。沖縄に出てからはお座敷で三線を弾いて暮らす。2度の結婚を経て長女を出産。料亭などで働きながら山里勇吉・大浜安伴などの八重山民謡の名手たちとも交流を重ねる。
 子供を育て、働きの悪いご亭主に「稼いできたお金を巻き上げられる生活」を続けながらも、唄はナミィの心の支えでした。

 2009年に郷土史家の大田静男(1948~) さんと出会い、タッグを組んでデイケアセンターなどで公演を続けました。太田さんは地元で沖縄史や芸能を研究してきた方。ナミィに「私の恋人」と頼りにされながら各地での公演、浅草での一代記の公演などにもつきそいました。

 ナミィに「けらい」と呼ばれてつきそうのは、ルポルタージュライターの姜信子(1961~)。 「ナミィと唄えば」の原作脚本を担当しました。

 浅草での公演「ナミィ新城浪一代記」を玉川美穂子 の浪曲仕立ての語りにのせてナミィは島唄、歌謡曲、童謡、好きな歌を好きなように唄い、三線をひきます。
 つらいことも悲しいこともいっぱいあった85年の人生だったろうけれど、画面のナミィは元気いっぱいでエネルギーにあふれていました。

 『バオバブの記憶』2009 
本橋成一は、セネガルのバオバブ林を、再訪して見たら一本だけのこして切り倒され、住宅団地が開発されていたのを見ました。一本残された木は住宅団地の名前を「バオバブ団地」とネーミングする看板として残されていたのです。

 監督は、首都ダカールから車で約2時間のトゥーバ・トゥール村を写していく。どの家も大家族、主人公のモードゥの一家は町に働きに出ていてめったに家にはかえらない父と、家を守る妻ふたり。ふたりは仲がいい。ふたりの妻から子どもうじゃうじゃ。30人の大家族。モードゥは父にかわって一家の生活を支える働き手だ。姉たちが通っている学校へ行きたいが、父親の許しが出ません。
 羊を追ったり、バオバブの実や樹皮を収穫したり、樹皮の繊維からは丈夫なロープが作れるし、バオバブの葉っぱは干して粉にし、主食の雑穀ミールにまぜて栄養の足しにする。学校のファトマ先生は学びたいモードゥの気持ちを理解し、欲しがっていたノートをプレゼントします。
 バオバブの木を大切にし、ゆったり流れていく村の暮らし。



 2009年の撮影時から20年近くたって、木たちがどうなっているのか、知りたいです。セネガルで産業が発達したら、バオバブは切り倒されてしまうのではないかと心配です。

 写真家・本橋成一が初めてバオバブを見たのは、今から35年前の1973年、テレビ番組の撮影で訪れた東アフリカのツァボ国立公園で。
 1979年に私とタカ氏がトラックの荷台に乗って訪れたアンボセリ国立公園には、ソーントゥリー(棘の木)の方が多くて、ツァボ国立公園は夜行列車で通り抜けただけだったので、バオバブはあまり見ていない。 
 日本では「星の王子さま」に登場する木としてバオバブは有名になりました。
 もう一度ケニアのサバンナへ行きたいなあ。バオバブの木にもソーントゥリーにも会いたいなあ。ナイロビにはビルが増えているでしょうが、サバンナの景色は変わっていないと信じています。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「タゲール街の人々 by アニエス・ヴァルダ in 写真美術館」

2023-09-12 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230912
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023夏シネマ(1)タゲール街の人々 by アニエス・ヴァルダ in 写真美術館

 海の日、7月17日。写真美術館で、10時半から『5時から7時までのクレオ』、15時から『タゲール街の人々』を観賞。
 「タゲール街の人々」、原題は「Daguerreotypes タゲレオタペ」
 パリ14区、モンパルナスの一角にタゲールの名を冠した通りがある。銀板の写真乾板を発明したタゲール。アニエス自身がタゲール街に事務所兼住所を構えて50年住み続けており、住民たちのひとりひとりをよく知っている。タゲール通りに暮らす住民たちの生活を追ったドキュメンタリー作品。

 肉屋、美容院、仕立て屋、香水屋、ボタン屋、パン屋、さまざまな小さな商売に励み地道に地味に生きていた人々に、いつパリに出てきたか、夫婦のなれそめは、などの質問をして答えてもらう。香水屋の奥さんはほとんど口をきかないが、みなよく話し、笑い、手品師が町で公演すると、手品師の火吹き術やらナイフ刺しやらの術に大喜びし、筋肉硬直の催眠術に協力し、皆で楽しむ。

 小さな街角の心温まる人々、というおなじみのドキュメンタリーに仕立ててあるし、1975年の制作ということを考えると、ひとつの地域の「群像劇」ドキュメンタリーとしては、その後のドキュメンタリーのひとつの「型」になっているのかもしれない。たとえば、私がときどき見る「小さなイタリアの村」というテレビ番組のドキュメンタリー。毎回イタリアの村の人々の生活をとらえています。ドキュメンタリーの作り方としては、イタリアの村のほうがわかりやすく村のけしきが美しい分、画面になじめる。

 タゲール街の人々も悪くはなかったけれど、それぞれの店の中のロケがほとんどだったので、画面がやや単調だったのと、手品が古臭いので、冒頭のマントを広げた手品師がなにやら魔術的なことをするのかという期待がはぐらかされて、手品師いないほうがよかった。
 せっかくの「タゲレオタイプ」なので、白黒銀板写真でそれぞれの店の夫婦を写し、手彩色で色付けした絵が実物の夫婦になってそれぞれのなれそめなどを話し出す、という作業を手品師にさせたかった。

 香水屋の夫婦。妻はほとんど声をださないが、夫は妻をあたたかく包んでいる。


 アニエス・ヴァルダ(1928-2019 )は、夫のジャック・ドミとともにヌーベルヴァーグ映画の旗手として走り続けて、91歳で亡くなりました。
 ヴァルダの代表作となったのは、1961年の『5時から7時までのクレオ』医師からがんの疑いを告げられ、検査の結果を待つ間の2時間を歌手クレオがどうすごしたか、リアルタイムで時間がすすむ、という作りの2時間の映画は、高い評価を受けました。
 私が見たのは70年代もおそくなってからの名画座上映だったろうと思うのですが、クレオの2時間は私にはさっぱりおもしろくともなんともなかった。映画の深いところをくみ取る感受性がないのは若いころも今も同じですが、今なら少しはこの映画に近づけるかしらと、写真美術館の無料上映にでかけました。無料大好きですから。

 前の晩9時に寝て、午前1時にトイレに起きました。そのまますぐに眠れることもあるけれど、17日は午前5時まで眠れないので、布団の中ごろごろしながら原田マハ『リボルバー』を読む。夫が「読むならあげる」とよこした文庫。原田マハのアート小説、好きです。リボルバーというタイトルだからアートとは関係ない話かと思ったら、ゴッホとゴーガンが暮らした下宿屋の1階食堂に飾ってあった拳銃の話。
 睡眠不足をいいわけにしてはなんですが、クレオの2時間のうち、三分の二は眠っていた。『5時から7時までのクレオ』、どうも相性悪い作品みたい。

 写真美術館は、第3水曜日のシルバー無料もいち早く復活させたし、こうして無料の映画上映会もしてくれて、高齢者にやさしい美術館。夷ガーデンプレイスのビル38階には無料展望室もあるし、恵比寿駅から動く歩道で行けるし、都内で好きな場所のひとつ。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「田沼武能展 in 東京写真美術館」

2023-09-10 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230910
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩写真を見る(2)田沼武能展 in 東京写真美術館

 7月第3水曜日19日は、東京写真美術館へ。第3水曜日65歳以上無料入館が、写真美術館と庭園美術館の2館で復活しました。

 ぐるっとパス入館も考えていたのですが、それだと入場できるのは1フロアだけになるので、田沼武能展、ドアノー&本橋成一展のどちらに入場するか、どちらも見たいなあと思っていたら、シルバーディ復活を知りました。

 地下1階で「田沼武能 人間賛歌」を見ました。田沼は昨2022年、93歳で逝去。写真家として初めて文化勲章を受けた功成り名遂げた写真家です。

会期:2023年6月2日~7月30日
 

 写真美術館の口上 
 田沼武能は、東京写真工業専門学校(現・東京工芸大学)卒業後、写真家・木村伊兵衛に師事し、『芸術新潮』の嘱託写真家として芸術家や文化人を撮影、その後はタイム・ライフ社の契約写真家となるなど、フォトジャーナリズムの世界で華々しい活躍を展開しました。1972年からはライフワークとして世界の子どもたちを撮影、黒柳徹子ユニセフ親善 大使の各国訪問に私費で同行取材を行い、生涯で130を超える国と地域に足を運びました。
 田沼は国内外で精力的な取材活動を展開し、自身の作品を発表し続け、その旺盛な 好奇心と行動力は生涯衰えることはありませんでした。その一方で、母校・東京工芸大 学で後進の指導にあたり、日本写真家協会会長、日本写真著作権協会会長、日本写真保存センター代表など写真界の要職を歴任しながら、わが国の写真文化の普及啓発、写真の著作権保護にも力を注ぐなど、大きな役割を果たしました。本展では未発表最新作「武蔵野」を初公開するとともに、ヒューマニスティックなまなざしで人間のドラマを描き続 けてきた田沼の70年を超える写真家としての軌跡を辿ります。

 第1章 戦後の子どもたち
 1949~1962に東京を中心に、福岡北海道東北の子どもたち。戦災孤児など貧しい子どもたちが生き抜いていく姿が映されています。

 マチ子巻でおつかいに


第2章 人間万歳
 田沼は世界の子どもたち世界の人々の喜怒哀楽を写し取りました。黒柳徹子がユニセフ親善大使として世界の国々、特に恵まれない子供たちが多い地域に出かける際、自費で同行しました。私はユニセフから旅費宿泊代が出ていて同行したのだとばかり思っていましたから、自費で同行したという記事にびっくり。

 展示室内


第3章 ふるさと武蔵野
 田沼は下町の生まれですが、武蔵野の風景を「こころのふるさと」として撮り続けました。



 2022年の没後、最初の展覧会だということで、写真美術館所蔵のほかの展示もあり、3つの章それぞれに心惹かれる写真がありました。

 コロナ禍以後、どこの美術館も「第3水曜日65歳以上無料」を中止にしてきました。ようやくマスクも緩和され、早くシルバーディ復活してほしいなあと思っていたところ、東京都写真美術館と庭園美術館がシルバーディ復活してくれました。どちらも日頃それほど混まない美術館ですから、密をおそれることもない。他に先がけて復活したこと、よかったです。高齢者が暑さをさけ、足腰衰えないよう歩くには最適の場所。タカ氏のように美術はそれほど好きでない人もいますが、美術大好きな私にとっては、ありがたいことこの上なし。実は6月第3水曜日には復活していたのですが、気づきませんでした。これから、毎月第3水曜日にお出かけします。
 
 展示室のエントランスロビーでは撮影できました。

 
<つづく>
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ぽかぽか春庭「ドアノー&本橋成一展 in 写真美術館」

2023-09-09 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230909
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩写真を見る(1)ドアノー&本橋成一展 in 写真美術館

 ロベール・ドアノーの名前を知らない人も、写真美術館に1度でも入ったことがあるなら、1階入り口の前に、大きな写真パネルが展示してあるうちのひとつ「パリ市庁舎前のキス」の写真を目にしているでしょう。世界的に有名な写真です。私はこの写真について、ルポルタージュ写真と思い込んでいたのですが、実は、俳優ふたりにポーズをとらせて写した1枚だとのこと。
 ドアノー(1912-1994)写真の全容を知らなかったので、今回の企画、高齢者無料の日にありがたく観覧。

会期:2023年6月16日(金)~9月24日(日)

 ドアノーの娘ふたりは父の残された写真の版権などを管理しています。娘ふたりのインタビュー、本橋成一のインタビューが2階エントランスロビーで上映されていました。


 写真美術館の口上
 このたび東京都写真美術館では「本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語」展を開催いたします。本橋成一は東京に生まれ、50年以上にわたり、写真と映画によって、揺れ動く社会とそこに暮らす人々の姿を記録してきました。一方ロベール・ドアノーは、パリや自身が生まれたパリ郊外を舞台として、常にユーモアをもって身近にある喜びをとらえてきました。生まれた時代・地域が異なる二人の写真家ですが、奇しくも炭鉱、サーカス、市場など、同じテーマによる優れたルポルタージュを残しています。そして、それぞれに第二次世界大戦による混乱を経験した二人は、慎ましくも懸命に生きる人々の営みの中に、力強さと豊かさを見出し、失われゆく光景とともに写真に収めてきました。 多くの対立、紛争の絶えない現代において、人間に対する際限のない愛情と好奇心が生み出す視線、そしてユーモアや優しさをもって現実や社会と関わった二人の写真家によって編み出される物語を通して、生きることの豊かさについて考える機会となれば幸いです。

展覧会構成
1章|原点  
2章|劇場と幕間
3章|街・劇場・広場
4章|人々の物語
5章|新たな物語へ
 

 ドアノーは、貧しい生い立ちの中、石版印刷の資格をとり、兵役にもつきました。退役後はルノーの記録係として写真を撮るという安定した仕事を手に入れましたが、写真の完成度を追求するあまりに「ただの社内記録」と考える会社側とあわず、退社。家族を写した写真をはじめ、パリを中心として人々の姿をあたたかい視線でとらえました。

 4本のヘアピン(結婚式の準備)  テープを切って新しい場所へ


 本橋成一は、1940年東京・東中野生まれ。1960年代から市井の人々の姿を写真と映画で記録してきた写真家・映画監督。1968年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。以後、サーカス、上野駅、築地魚河岸などに通い、作品を発表。
 私は本橋成一は「ナミィが唄えば」などの映画監督の側面は知っていたのですが、写真家として作品展を観覧したことはありませんでした。

 キュレーターがこのふたりを並べてみようという企画を思いついたのは、炭鉱やサーカス、市場など、人々が交差するシーンの捉え方が似ているところ、金銭面では貧しくとも心豊かに生き抜いている人々を見つめる温かいまなざしや、時代や権力におもねらない凛とした姿をとらえるところが共通していたからだろうと思います。

ドアノー「炭鉱」 「サーカス」


本橋「市場」

 本橋は、チェルノブイリ被災地に生きる人やサーカスの人々、屠殺場や市場に生きる人々を見つめる。

 今回の写真展のイベントがすばらしい。ポレポレ東中野で上映されてきた本橋のドキュメンタリー作品が、写真美術館の映画ホールで無料公開されるサービス。なぜか、アニエス・ヴァルダ作品も無料。ただが大好きなHALは、せっせとえびすに通います。広場にミストもでています。暑い中、写真美術館の4階図書室で写真集ながめてすごし、映画を見て、年寄りがエアコンがまんして熱中症で搬送されるよりは、よい夏の過ごし方と思います。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「イヨクコーヒー再開」  

2023-09-07 00:00:01 | エッセイ、コラム

20230907
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記残暑(2)イヨクコーヒー再開

 6月に近所にできたイヨクコーヒー店を紹介しました。スタバもマックもない、カフェ砂漠だった駅前にできたコーヒー専門店。カウンター4席、テーブル4席のミニ客席のミニカフェですが、コーヒーは本格的なドリップ。マスターがていねいに豆を挽き淹れてくれるコーヒーは、味音痴の舌にも違いがわかりました。
ぽかぽか春庭「6月の街」 
https://blog.goo.ne.jp/hal-niwa/e/31109dfc2721fc1b6b0b667947f55432 
 ところが、次に楽しみに訪れたところ、シャッターが閉まり、「しばらく休業。休みは長くなります」という張り紙が。

 休みは2か月に及び、ようやく8月に再開しました。
 通勤がなくなったので、最寄り駅を隣りの大学前の駅に変えています。一番近い駅は徒歩2分。大学前の駅は徒歩5分ですが、マックもあるしスーパーや商店街があるので、美術館などにおでかけして、帰りに買い物するなら、こちらになります。なかなか「なんにもない駅」のほうに降りませんでした。

 8月25日、やっとイヨクコーヒーに立ち寄りました。シネコンで映画を見た帰りです。駅におりて、家に帰る前にほっとひといきできる場所があるのはありがたいこと。

 マスターが淹れてくれるコーヒーをカウンター席で待つうち、あとからカップルのお客さんさん来訪。コーヒーに詳しそうなふたりに、マスターは、ふたつの豆のボトルを開き、ふたりに違いを説明しています。ひとつは豆をそのまま乾燥させたもの。もうひとつは、豆を発酵させてあるもの。コーヒーの豆の違いなどわからない私にも、香りをかぐよう、勧めてくれました。いわれてみれば、ちがいがあるような。私は舌も耳も弱く、もひとつ鼻も弱いです。(唯一、口でしゃべるかわりのワープロ運指が強い。)
 おふたりの客は納得したらしく、豆の名前を確認し、通常のブレンドコーヒーと本日のスペシャルを注文。たぶん、ふたりでブレンドとスペシャルを飲み比べてみるのでしょう。

 私の注文した本日のスペシャル。マスターは、「私は発酵したコーヒーは、実は今まであまり好きではなかったです。コピルアックとか」
「ああ、インドネシアのね」と、私もようやく話にのれた。1度飲んでみたことあるけれど、ほかのコーヒーの3倍くらいの値段だけれど、おばかな私の舌には、3倍おいしいとも思わなかったので、2度目を飲んだことがないのだけれど。
「発酵コーヒーが好きではない私ですが、このルワンダのコーヒーは大好きです。ただ、残念ですがコンスタントに輸入できないこともあるので、スペシャルでしか出せず、店のかんばん商品にするのはむずかしい」というようなお話でした。

 本日のスペシャルは、ルワンダのコーヒーでウブンフェ・ウォッシングステーション、ファンキーナチュラル サムワル・ムヒルワ(Buf Cofee代表)


 コーヒー専門店などで、豆の名前をブルーマウンテンとかキリマンジャロとか提示してある店はあるけれど、豆の名前とそれを生産した農場の名前、生産者の名前までも掲示してあり、マスターがこの豆に誇りを持っていることがうかがえました。

 淹れていただいたコーヒー、おいしかったけど、舌音痴の私には、その味を表現できる語彙も持っていない。ただただ「おいしいです」

 店に飾ってある販売中のポップな絵と写真の話から、ブレンドとスペシャルを注文したふたりは、駅からもう少し離れた場所に開店したカフェのご主人とマダムということがわかりました。
 ご主人は画家で、店には絵が展示販売されているそうです。店はイヨクコーヒーと同じころに開店したので、駅前カフェに来たいと思っているうちに休業してしまったので、ようやく来ることができました、とおっしゃる。カフェはコーヒーはブレンドだけで、カレーなどのランチメニューを提供しているという。

 同じ商売の人とわかって、イヨクコーヒーマスターとの話がはずみ、陪席の私も興味深いお話を陪聴させていただきました。
 イヨクコーヒーのカップなどは、奥さんの父の作品だということは、前回立ち寄ったときに、店の屋号が奥さんのお父さんの陶芸作家からとっている、ということといっしょに聞いていました。
 今回聞いたのは。地元では名の通った陶芸作家でコーヒーカップも一客3万円くらいで売り出されているそう。おっと、うっかり落として割ったらたいへんなことだった。マスターの本職はスタイリストですが、コロナで仕事も不安定で、この先のことも考えていたとき、駅前の八百屋が店じまいすると言うのを聞いてカフェを開くことにしました。

 2か月ほどの準備を経て、念願のカフェオープン。ところがまもなく体調を悪くし、2か月間の入院となってしまいました。体調が悪くなった日、ようよう病院についたら、今日は土曜日だから月曜日に来るようにと言われてドアを閉められた。乗ってきたタクシーは帰ってしまったので、どうしようかと思っていたら、ドアまえで倒れてしまい、さすがに緊急入院ができた。一分一秒でも早い措置が必要なのに、もしタクシーがあって、家に帰っていたら、2か月では回復できなかったし、後遺症も残ったかもしれない、という「九死に一生」話を聞きました。

 スタイリストの仕事がいつ入るのかわからないので、カフェは不定期休にしているけれど、体調第一でやっていきます、というお話をうかがいました。せっかくできた心のオアシスのようなカフェ、無理なくのんびりつづけてほしいです。

<おわり>
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ぽかぽか春庭 「ハッピープレゼント」 

2023-09-05 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230905
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記残暑(1)ハッピープレゼント

 誕生日です。もう年が増えるのはうれしくはないが、娘からは例年のようにプレゼントがテーブルの上に置かれていました。
 メッセージ。
1 望遠鏡型デジタルカメラ
 メモリーカードは1枚買っておきましたが、足りない物は適宜買足してください。
2 ディズニートレーナー
 前にディズニーのTシャツは持っているけれど、寒い時に切るディズニーの服がないと言っていたので。
3 牧野富太郎の本
4 お菓子


 お菓子はユーハイムのバームクーヘンやフルーツケーキの詰め合わせ。牧野富太郎の植物図鑑は持っていましたけれど、プレゼントしてもらったのは、『らんまん』人気をあてこんで最近発行された「牧野富太郎の植物図鑑」という、牧野の植物画と牧野富太郎伝記を組み合わせた本。



 伝記内容はネットで調べられる範囲で調べて、富太郎をモデルにした『らんまん』のストーリーのどこが史実通りで、どこが万太郎の伝記と異なるか、分かったうえでドラマを楽しんでいる。たとえば、万太郎が初上京したときに妻になる壽恵子を見初めたことになっているけれど、富太郎初上京のとき、実在のすえちゃんはまだ10歳。見初めたとしたら、富太郎さん相当な少女好き?また、ドラマの主要人物である万太郎の姉さんアヤは、実在の人物としては、富太郎が最初に結婚した年下の従妹。祖母のはからいの紙の上の結婚としても、実際に結婚届は出している。
 土佐でドラマの万太郎が出会った坂本龍馬やジョン万次郎、自由民権運動の壮士らは、実際には会っていないとしても、ドラマを大いに盛り上げた。

 愛妻壽恵子が15歳のときに結婚してから40年。壽恵子が54歳で早世したあと、66歳から94歳まで、植物研究を続けました。たぶんドラマはこの30年はナレーションだけで、ちゃっちゃとすませると思う。
 ドラマが終わるまではこみこみだろうけれど、前にyokoちゃんに案内されて訪れた練馬区の牧野庭園に、娘を連れていきたい。

 中国の旧友が日本の知り合いに頼んでとどいた誕生日祝いの花


<おわり>
コメント (8)
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