名作誕生ポスター
20180614
ぽかぽか春庭アート散歩>薫風アートめぐり(2)名作誕生 in 東京国立博物館、美人投票観覧
東京国立博物館の展覧会「名画誕生・つながる日本美術」(4月13日~5月27日)。
前期展示と後期展示で入れ替えがあるので、前期と後期、2回見に行きました。と、いうと、いかにも熱心な美術ファンみたいですけれど。
招待券2枚あるのに、いっしょに行く人なく、1枚無駄にするのは「タダが損した」気分になるという貧乏性ゆえの2度見です。
前期観覧は、4月21日土曜日。土曜日は8時まで開館していますから、午後ゆっくり出て行って、まずは、お庭散歩。それからすいている本館と考古館でしばし常設展示の「好きなもん」と対話。
本館の国宝室、今回の展示は「法華経」。ありがたいお経の文字なのですが、読めないし、ありがたやと念じながらさらっと通り過ぎました。
考古室では、大好きな群馬出土美女埴輪と「あたしたち、群馬の美女同士、気が合いそうねぇ」と対話。埴輪からは「1400年もたつと、かみつけの国のオミナも劣化したのが出てくるわねぇ、すっくと盛装しているアタクシを見習いなさい」と、カツを入れられました。
群馬県伊勢崎市豊城町横塚出土の盛装女性埴輪(6世紀)国宝(見ている女性は酷崩)
そうそう、千数百年前は若い女性と老女では異なる発音でした。若い女性である埴輪美女は「をみなwomina」で、見上げている老女は「おみなomina」。
だったのに、1000年のあいだに、「を」と「お」は、発音おなじになってしまいました。美しさに年齢はカンケーない、ってことですよね、きっと、、、、。
午後5時過ぎから、平成館へ。「名画誕生・つながる日本美術」は、世に知られた名作が、どのような影響関係から生まれてきたのか、というつながりを明示する展覧会です。
ある作品を規範として新しい作品が生み出される。そして、その新しい作品も、後世に影響を残す。名作と言われる作品も、ひょこっと新しいものが出てきたわけではなく、先行作品の影響下に生み出されている、ということを知る展示です。
第1章
1.一木の祈り
鑑真とともに来日した仏師たちが作り出した仏像。その技法は日本の仏師たちに伝えられ、平安の仏像となって各地の寺で人々の祈りの対象となりました。一本の木から掘り出される見事な造形。思わず手を合わせたくなります。
2.祈る普賢
象に乗る普賢菩薩像。中国図像から出発し、日本独自の普賢像も描かれました。普賢とともに祈る十羅刹女(じゅうらせつにょ)。元は鬼神でしたが、仏法の感化を受け仏教守護神になっりました。鬼神(鬼子母神もそのひとり)の絵、多くは女性像として描かれます。その姿は中国風衣装あり十二単を着た姿あり。
象に乗っている普賢はおなじみの図像ですが、十二単を着ている十羅刹女は、日本的。
十人とも美人さんですが、ここはやはり象に乗る普賢さんに一票。
3.祖師に祈る
「聖徳太子絵伝」など、仏教の普及に尽くした偉人の絵。
第2章は、雪舟、宗達、若冲の作品がどのような影響を受けて画風を円熟させていったのか、中国の南画などと並べて示されていました。
若冲「仙人掌群鶏図」1789年 西福寺所蔵
雌鶏に一票入れたいけれど、どう見てもオスが美形。ここはジェンダーフリーってことで、オスメスこだわりなし。
左隻中央に「どうだい、オレ様のとさかとしっぽ、惚れただろ」と、踏ん張っているおんどり、いるわよね、自分の美形ぶりにうっとりしちゃうナルシスタイプ。
アメリカのミスコン、水着審査廃止ですってよ。代わりに知性テストなんだってさ。ほんとは頭よかったマリリンモンローが「頭からっぽ美女」のふりをしたのも、今は昔。
第3章は、古典につながる、という「伊勢物語」や「源氏物語」などからモチーフを得て作られた工芸品など。
第4章は、風景や花の絵など、モチーフの影響関係を展示。
彦根城博物館に展示されている「風俗図屏風」を初めて見ることができました。
左隻。右端で書きものをしている美人がいいな。
右隻。後ろの若衆に目もくれず、犬を見ている美人に一票。
5月20日に2度目に見に行き、後期展示を観覧。前期後期の両方を見たために見逃すことがなく、全作品見ることができました。とは言っても、もはやどれが前期にみたのやら後期にみたのやらごちゃごちゃです。
近代美術館や東博に常設されている作品は、国宝展示室などで見るチャンスはありましたが、彦根屏風などは、見る機会もなかったので、今回見ることができ、よかったです。
国宝は、国の宝、国民の宝。東博の国宝室だと写真撮影可能ですが、今回は特別展だから、写真を撮ることはできなかったのが残念。
後期展示だったと思う、岩佐又兵衛『洛中洛外図・舟木本』
写真撮影禁止だったので、以上の画像はすべて借り物。
5月20日の休憩コーナーにあった「ここは写真撮影してもいいよ」のコーナー。
洛中洛外図のコピーパネルの中に、見返り美人が紛れ込んでいるパネルが飾ってあり、題して「見返り美人を探せ」。
よく見ると4人の見返り美人が見つかりました。私のコンパクトカメラだと、どこに美人さんが立っているのかわかりにくいと思いますが。
橋の真ん中に美人さん
ここです。前にいる「おこもさん」が差し出す物乞いの入れ物には目もやらず、後方の貴人たちを見ています。
上方の舞台の中に美人さん。下方右の大きなお屋敷のなかにもいます。
ここです。舞台に立っているのに、踊り出しそうには見えません。
ここにもひとり。お屋敷の中で見返っています。
上方真ん中あたり、武士たちに見つめられている美人さん。洛中洛外図の武士たちの時代よりははるかに後代の美人さんですが、美人はいつの時代でも人目を惹く。
ここです。
祭りの山車(?)が通る
ここにはいなかった。
老眼の目をこらして4人の美人さんを見つけるの、おもしろかった。デート中なのか、カップルが「ほら、ここだよ」なんて楽しそうに探していました。親子で探すのも楽しそう。ここなら、おしゃべりOK。
静かに「美の探求」をしたいアートファンもいることはわかりますが、この「見返り美人を探せ」のような楽しい企画が、展示のひとつとして観覧のルートの中にあって、おしゃべりしながら見ることができる日もあっていいんじゃないでしょうか。
美術館観覧について提案。
第1第3の金土日と第2第4の水木は「Zap観覧日」とする。そのほかの日は、Zen観覧日。
フランス新幹線は、乗車エリアが分かれています。Zen車両は、「車内でのおしゃべりご遠慮願います」という車両。静かに落ち着いて旅したい人は、この車両を利用する。
Zap車両は、車内でおしゃべりしたり、ゲームしたり、にぎやかに過ごしたい人向け。車両を分けることで、静かに本を読みたい人寝たい人と、騒ぎたい人が、互いに迷惑かけあうこともない。
同じように、Zen観覧日「黙って静かに鑑賞したい人」が見る。その他の日は、展示室内で大声でなければおしゃべり観覧が可能。写真撮影は、許可を得たうえで、Zen観覧日は撮影可能。おしゃべり観覧日は不可。
こんなルールで、写真撮るのもしゃべるのも、自由にできるようになったら、美術を楽しむ人がもっと増えて、アートはそれぞれの心で楽しむものだ、ということが、お小さい方々にもわかるでしょうに。今のように、全館いっせいにおしゃべり禁止だと、子供にとって、美術館は絵を見ても何も言うこともできない苦痛空間なだけ。子供の時から「絵を観覧するのは苦痛」ということを教えているようなもの。
絵を見て感じたことを、いっしょに来た人と話すのも、たまたま隣り合って同じ絵を見た人と、思ったこと言い合えたら楽しいでしょうに。
「この見返り美人って、切手でもグラビアでもいろいろ見てきたけれど、やっぱり本物はちがうねぇ、一段と美人に感じるよ。振り返って何を見ているんだろ」
「そりゃ、水もしたたるイケメンに声かけられて、振り返っているんじゃないの」
「ねぇ、この帯の結び方、なんていうのかしら、私お太鼓しかわからないから」
「これはね、吉弥(きちや)むすびっていうんだって」
「へぇ、すごい、よく知っているね」
「東博のHPに書いてある」
「そうなんだ、教えてくれてありがと」
なんてことしゃべりあいながら見ていたら、もっと見返り美人さんとなかよくなれるんじゃないかしら。
さて、美人投票の結果は。
群馬出土の国宝埴輪美女を眺めている酷崩美女に一票入れたあなた、さすが、真の美を理解している方とお見受け申し上げます。あは、美の感じ方も、時代によって人によってさまざまですからね。
<つづく>