医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病とビタミンCについて その三 栄養医学ブログ

2011-02-25 18:07:21 | 健康・病気

 Robert Root-Bernstein博士らによると、高血糖症は糖尿病性神経障害、網膜症、それに腎症の進行にとって、主な原因となる因子であることは、よく知られているが、正しい機構はわかっていません。たとえば、細小血管障害の発症の原因となる毛細血管の脆弱性を含む、細小血管障害の合併症は高血糖症が原因で発症すると、考えられています。これらの合併症は、網膜細胞、神経細胞、それに、その他の細胞への酸素や栄養物質の引き渡しを減らしてしまうと、考えられます。

 実際、糖尿病時の高血糖症により生じた末梢器官の損傷は、protein KinaseC経路の活性化、ポリオール代謝経路を通ってglucoseの流入の増加、それに、糖化の進行による最終産物の蓄積らと結びついています。aldose reductase,protein KinaseCの活性化、糖化の進行による最終産物の蓄積の増大を含む、高血糖症により生じたあらゆる変化は、glucoseにより生じた活性酸素の産生阻害に、逆に働くという報告が最近あります。glucoseにより生じた酸化ストレスを阻害することは、その他の経路による損傷を防ぎます。

 還元型ビタミンC(AA)は抗酸化防御機構で中心的役割を担い、糖尿病合併症と結びついた酸化ストレスを取り除きます。実際、Heaney博士がビタミンCと言って用いた、毒性のある酸化型ビタミンC(DHA)でなく、安全な還元型ビタミンCの大量投与は、糖化の進行による最終産物の産生を抑制し、ラットの糖尿病性網膜症を改善し、ポリオール産生を減らします。

 神経の上皮細胞や内皮細胞では、糖尿病時、むしろ酸化型ビタミンCは、糖輸送担体による輸送に依存しているようです。しかし、高血糖時は糖輸送担体によるDHAの細胞内への取り込みが阻害されます。AAの摂取を増やすことにより血漿総ビタミンC塩値を増やして、AAからDHAに一部変化し、それがglucoseと競合し、上皮細胞や内皮細胞をglucoseによる糖毒性からそれらの細胞を守っています。細胞に入ったDHAは電子を受け取りAAに転換します。また、当方の調査でも、VCを1g/日摂取している境界型糖尿病患者では、合併症の発現が抑えられているようですが、マルチビタミン、ミネラル、食事療法の併用も相乗効果と考えられます。

reference: Robert Root-Bernstein, J.theor.Biol.(2002)216,345-359

なお、当方の、別の栄養医学ブログ記事は、nutr-blog.blogspot.comでも発信しています。