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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 620 週間リポート・太平洋クラブライオンズ

2020年01月29日 | 1976 年 



プロを何とわきまえているんだ!
" 乱投 " 東尾に晒し者のキツ~イお仕置き
エースの東尾投手が今にも泣きだしそうな顔でベンチから逃げ出してきたのは9月11日の対近鉄戦終了後だった。東尾はこの試合に先発したが近鉄打線の餌食となり13安打・7失点で敗戦投手となった。ただの敗戦なら大の男が泣きベソをかくはずもない。およそエースと呼ぶには相応しくない投球に堪忍袋の緒が切れた首脳陣が東尾を晒し者にしたのだった。3回に2失点、5回に1失点したが味方打線も2点を返して1点差で終盤へ。ここで踏ん張るのがエースなのだが6回にも1失点し形勢は更に不利に。普段なら投手交代しても不思議ではない試合展開だがベンチは動かない。7回も続投したが長短4安打を浴び3失点し万事休す。

今季の東尾は好不調の波が激しくベンチはイライラしていた。「今年はいつもあんなピッチングばかり。我慢にも限度があろうというもんじゃないか。ああなれば10点取られようが交代させない」と江田投手コーチ。東尾が晒し者にされたのは歴然であった。東尾自身も最後は虚ろな表情で放心状態だった。この続投強行は当然ネット裏の話題となった。青木一三球団代表は「続投の真意を担当コーチから直接聞いていないが」と前置きした上で「今年の投球内容がエースの名に値しないのは確かだ」とエース失格の烙印を押した。鬼頭監督も「東尾の扱いは江田コーチに任せているが、あんな投球ではエースは勿論、先発投手としても落第だ」と手厳しい。

これが直属の上司となる江田コーチは「全くエースとしての自覚がない。こんなピッチングをされてはこれから先、彼を使う自信がない。マウンド上だけでなく私生活を含めてプロ野球選手としての自覚を取り戻さないと今後はリリーフあるいは中継ぎで起用するしかなくなる」と更に厳しい。東尾に対する積もりに積もった怒りが一気に爆発した感じだ。こうした周囲の声に東尾は「周りにあれこれ言われるのは僕がだらしない投球をしたから。今シーズンは本当に納得のいく投球が出来ていない。自分でも情けなくなる。シーズンは残り少ないけど精一杯頑張りたいです」と普段の奔放な東尾とは別人のようだ。



ウワサの二人がやっぱり
シーズン中から内定?の基と関本が新天地へ
師走の声が聞こえだすとにわかにトレード戦線に2人の名前が挙がり始めた。先ず基選手。シーズン中から首脳陣と折り合いが悪く自らトレードを志願し、公然とセ・リーグ球団に行きたいと発言し球団から訓戒処分を受けた経緯もあり移籍は決定的と見られていた。日ハム、ヤクルト、大洋、中日から引き合いがありその中から中日の左腕・竹田投手プラス新人王・藤波選手との1対2の交換トレードが両球団で合意した。藤波選手が移籍を不本意として拒否しているが近日中にも正式に発表される見込みだ。もう1人が関本投手。加藤初投手と交換トレードで入団したが、巨人で活躍した加藤投手とは対照的に僅か1勝に終わった。

期待された関本だったが前期の終わり頃に肩が痛みだし針治療など行ったが効果なく、後期は丸々シーズンを棒に振った。トレードに関してエキスパートであると自認する青木球団代表だが「このトレードは失敗だった」と認め、責任を取ってシーズン終了後に代表職を辞し専務に降格する一幕もあった。現在の関本は秋季練習にも参加できる程に回復して球威も徐々に戻ってきた。肩さえ治れば2ケタ勝利は堅い関本だけに同一リーグへの放出は避けたい球団は大洋の山下律投手プラス高垣投手との交換トレードを模索している。関本をセ・リーグ向きの投手だと判断する大洋もこのトレードに前向きである。

このトレード話はシーズン中から囁かれていたが表面化したのはドラフト会議後である。太平洋は狙っていた即戦力投手を指名できず来季の投手編成に苦慮していた。そこへこのトレード話が再燃し一気に進んだ。安定感のある山下と抑え役も出来る高垣は魅力的。山下は肘を痛めているという情報もあるが短いイニングなら大丈夫と考えている。今回のトレード話が実現すれば10年間住み慣れた古巣を去る事になる基は「世話になった友人・知人と別れるのは寂しいがライオンンズに未練は無い」と言い切り、関本は「力になれず1年で去るのは申し訳ないと言うしかない」と殊勝そのもの。2人の新天地での活躍を願う。



甘ったれるんじゃないよ藤波
プロ3年目の男に袖にされ大ムクレの基と球団首脳
「一体オレはどうなるんだ。こんなアホみたいな話はあるか!」と気色ばむのは基選手。11月中旬に中日の藤波選手プラス竹田投手との交換トレードが成立し今頃は晴れて希望したセ・リーグの選手になっていた筈だった。ところが中日の交換要員の1人である藤波が「クラウンへは行きたくない」と駄々をこねて任意引退も辞さない構えで、このままではこのトレードは御破算になりかねない。「大体、給料はいらないから出さないでくれとか楽しく野球をやりたいとかプロ野球選手が言う台詞か?そんなんやったら最初からプロ入りすんなって事よ!」と基がいくら熱く言っても藤波にはカエルの面に何とやら。

新天地で頑張ろうと意気込んでいた基や中日の竹田。中日・クラウンの両球団に迷惑をかけた藤波の手前勝手さは球界の秩序を乱すものとして厳しく処断されるべきであろう。それはそれとして今回のゴタゴタはクラウンにとって単なる不手際では済まない問題となっている。「この話がストップしている間にウチが狙っていた選手のトレードが進行してしまい遅れをとってしまった。その上さらに今回のトレードが御破算になったら泣きっ面に蜂だよ(某コーチ)」「このトレードはもう駄目だね。基は戦力になるから残留でも構わないけど竹田投手のトレードと藤波選手の任意引退は中日側に要求してもいいんじゃないかな(球団職員)」など騒動は収まりそうもない。

プロ入り僅か3年目の藤波にコケにされて来季を心配するライオンズファンにちょっと明るいニュースを。今年のドラフト会議で1位に指名した立花選手。地元福岡・柳川商のスラッガーで将来を嘱望される逸材だが、当初は「名前がクルクル変わるような球団は嫌(立花)」と拒否の姿勢の姿勢を崩さずノンプロの松下電器入りが濃厚で入団は絶望的ではないかと言われていたが風向きが変わってきた。そこには父親・義行さんの存在が。「いずれプロ入りしたいのであれば早い方がいい」と助言。「2~3年先には必ずクリーンアップを打てる素質を持っている。選手を見る私の目に狂いはない」と豪語する青木専務直々の口説き文句が功を奏したようだ。

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