面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

真夜中のカーニバル

2006年11月07日 | music
ポール・モーリア氏が亡くなったという報道は驚いた。
もう確かに“イイ歳”ではあったのだなあと、改めて気付いた。

ポール・モーリア・グランド・オーケストラといえば、いわゆる「イージーリスニング」という音楽ジャンルの先がけである。
(このジャンルは日本独自のものか?)
ポール・モーリアと言えば、手品のBGMとして定番化している「オリーブの首飾り」だろうが、個人的には「真夜中のカーニバル」や「涙のトッカータ」が好きだ。
「シバの女王」(「サバの女王」とする場合も)は、他のオーケストラ(例えばカラベリ)よりもポール・モーリア・グランド・オーケストラの演奏・アレンジが心地よい。

ポール・モーリアと聞いて思い浮かぶイメージは日曜の朝。
そして、豆から挽いてサイフォンで入れたコーヒーの香りとドイツパン。
小学生の頃、山登りが趣味で日曜の朝はめったに家に居ることのなかった父親が、たまに居たときの風景であり、原体験として記憶の中に刷り込まれているのである。

大の親日家としても有名だったポール・モーリア。
指揮者としての引退公演も日本を最後の舞台とした、ということも今回の死をきっかけに初めて知った。
また一人、偉大なアーチストがこの世を去ってしまった。

合掌

「地下鉄(メトロ)に乗って」

2006年11月07日 | 映画
大人の童話。

絶縁状態の父親が倒れたという知らせを受けた、小さな衣料品会社の営業マン・長谷部真次(堤真一)は、いつものようにスーツケースを転がしながら地下鉄を移動していた。
ホームで中学時代の恩師(田中泯)と不思議な再会をした真次は、亡き兄がエスカレーターを上っていく姿を見かける。
兄を追って地下通路を抜けると、そこは昭和39年の東京だった。
真次はまた現在に戻ってくるが、後日、今度は恋人の軽部みち子(岡本綾)も一緒に昭和21年に遡り、闇市でしたたかに生きる若き日の父・小沼佐吉(大沢たかお)に出会う。

過去と現在との行き来を通して、深く対立していた父親を理解していく真次。
そして、真次とともに過去を訪れることで、真次との絆を深めるみち子だったが、同時にあまりにも残酷な事実を知ることになる。
そして、愛する真次の幸せのためと、非情な決断を下すみち子があまりにも切ない…。
なにもそこまで、という思いがするのは男目線だろうか。

それにしても、みんなそんなに昔に戻りたいのだろうか。
いつ頃からか「あのときに戻りたい」と思わなくなった自分には、本作は面白くはあっても真次に感情移入ができない。
確かに戻りたい過去の地点はいくつかあるが、親子の対立を経験していない自分にとっては、真次のように父親の過去や母親の過去を見せられても辛い気がする。

団塊の世代以上の年齢層で、特に東京で生まれ育った観客には、「ALWAYS 三丁目の夕日」的なノスタルジーに浸ることができ、郷愁を誘うだろう。
大阪生まれの大阪育ちで、しかも自分よりも上の世代の話で、やはりあまり入り込めない。
そうやって客観的に観れたから、原作者の浅田次郎の出演を見つけられたかな!?
また、真次の恩師役・田中泯が、少ない登場シーンで強烈な存在感を見せる。

地下鉄(メトロ)に乗って
2006年/日本  監督:篠原哲雄
出演:堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかお、田中泯