面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「FOUJITA」

2015年11月27日 | 映画
1913年、27歳で単身フランスへ渡った、画家の藤田嗣治(オダギリジョー)。
1920年代、「ジュイ布のある裸婦(寝室の裸婦キキ)」をはじめとする裸婦像が「乳白色の肌」と称されてパリで絶賛を浴び、ピカソやモディリアーニ、キスリングらとともに時代を代表する画家となる。
エコール・ド・パリの寵児としてもてはやされた“フジタ”は、夜ごとカフェへと繰り出しては、モデルや画家仲間達と乱痴気騒ぎに興じていた。

1940年、第二次世界大戦の惨禍に見舞われたパリがナチス・ドイツの手に落ちる直前、藤田は日本に帰国する。
フランス時代の裸婦像から一転して、陸軍美術協会のもと戦争画「アッツ島玉砕」を描き、戦意高揚のために開かれた「国民総力決戦美術展」において展示される。
その絵を前にして人々は手を合わせ、絵の前に置かれた箱に“賽銭”を投げ込んだ。
その様子に藤田は、
「絵が人の心を動かすものだということを、私は初めて目の当たりにした」
と感動を覚え、数多くの戦争画を描いて、日本美術界の重鎮へと上っていく。

やがて戦争が激化してくると、藤田は5番目の妻となる君代(中谷美紀)と共に疎開した。
彼は、農家の別棟をアトリエ兼住まいとして田舎の村に暮らしながら、改めて“日本”に触れることになる。
しかし静かな日々を送りながらも、バンザイクリフを題材にして戦争画を描く…


“華のパリ”において、煌びやかで華やかな喧騒に包まれた日々の中で描かれた裸婦像。
その作品群が持つ“静けさ”は、どこか日本的な空気が漂っている。
一方、帰国した日本では、戦時における息の詰まる“静けさ”の中で描かれた戦争画。
猛々しく荒々しい筆致で描かれたその絵には、どこか西洋絵画的な雰囲気が醸し出されている。

フランスにおいては、当時大変珍しかったであろう“日本的なもの”でパリっ子たちの注目を集め、日本においては、パリで触れた西洋絵画の持つ力強さを応用して国民の心を打つ。
それぞれの時代におけるそれぞれの国で、藤田嗣治は人々の心を掴むために策を弄したかのよう。
しかし、画家として売れんがためのしたたかさにも見えるその姿勢は、絵画に対して真っ直ぐに向き合う、藤田の真摯な姿に他ならないのではないだろうか。
彼はただひたすらに、大好きな絵を生かしたいだけだったのかもしれない。


戦前のフランスで人気を博し、戦時中の日本で国威発揚に協力し、それがために戦争責任を問われることとなって再びフランスに渡り、そのまま日本の土を踏むことのなかった日本人画家・藤田嗣治の生き様を、その波乱万丈な生涯とはうってかわって静かなタッチで描く。
凛とした静謐さと計算され尽くしたカットは、映像作家・小栗康平の真骨頂!
絵画と映画が融合した、格調高い芸術作品。


FOUJITA
2015年/日本・フランス  監督・脚本:小栗康平
出演:オダギリ・ジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー、マリー・クレメール、加瀬亮、りりィ、岸部一徳、青木崇高、福士誠治、井川比佐志、風間杜夫

豪華首脳

2015年11月07日 | 野球
金本新監督&掛布2軍監督W指導で鳴尾浜は超満員

タイガースの2軍練習場が大入り満員とか。
観客のお目当ては1軍監督の金本と2軍監督の掛布の“雄姿”。
どちらも現役時代の背番号を背負い、往年の二人をよく知るファンにとってはたまらないものがあるのだから当然だ。
プロ野球が興行である以上、観客動員につながることはいいことだが、チームとして考えた場合、豪華な首脳陣というのは無意味。
豪華な首脳が並ぶのではなく、少しでも早く豪華な“主砲”に出てきてもらいたい。
せっかく現役時代に“主砲”として活躍した二人が監督になったのだから。