面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「フード・インク」

2011年12月27日 | 映画
スーパーには四季を問わず豊富な食材が並んでいる。
農業技術の発達によってもたらされた食材生産の工業化。
安価な食材を大量に生産できる一方で多くのリスクもはらんでいる。

鶏舎で、従来の半分の期間で2倍の大きさとなる鶏を育て、鶏肉を効率よく作ることに成功した。
しかし急激に大きくなったことでプロイラーは自分の身体を支えられず、2、3歩歩くだけで足が折れてしまう。

草地が全くない巨大農場に押し込められた牛。
本来食べるはずのないコーンを餌として与えられているため、牛の胃はうまく消化できず、それがためにO-157などの大腸菌に感染しやすくなってしまうという。

現在、アメリカの農地の30%はコーン畑。
それらのコーンは家畜の飼料だけでなく、ジュースやケチャップ、スナック菓子などあらゆる食材の原料として使われている。
そのコーンの多くは遺伝子組換捜査によって作られたものだが、アメリカも日本もラベル表示の義務はない。

もちろん工場での生産ではなく、有機農法を実践している農家もある。
J・サラティンは広い屋外の農場に牛を飼い、牧草を食べさせて育て、手作業で肉を捌いている。
本来のものである彼の農法は、決して効率の悪いものではないと彼はいう。
「利益や効率重視になると家畜を商品としてしか見なくなる。農家は美味しい食品を作ることを目標にするべきだ。」

アメリカで、オーガニック・フードが注目を浴び始めている。
大手スーパーにもオーガニック棚が出来るほどで、有機農家と提携する巨大企業が急増しているという。
しかし“企業論理”に乗って大量生産されるオーガニック・フードが、果たして本当に“オーガニック”と呼べるのか!?


第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた、「食」についてのドキュメンタリー作品。
『ファースト・フードネーション』の原案となった「ファースト・フードが世界を食いつくす」の著者、エリック・シュローサーがプロデュースを手掛ける。


薄暗い鶏舎の中でギュウギュウ詰めにされ、ほとんど動くことなく育てられる“ブロイラー工場”は知っていたが、短期間で急激に太らされるブロイラーがいることは初めて知った。
確かに短期間で大量の鶏肉が収穫できるが、自分の体重も支えられないような鶏の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか?

牛の飼料にとうもろこしが使われていることは知っていたが、もともと牛はとうもろこしなど食べないことを初めて知った。
それだけでなく、食べることのない“食料”であるため、牛はうまくとうもろこしを消化できないということも初めて知った。
植物を食べていれば何でも大丈夫というわけではないということを改めて知った次第だが、食文化の違う欧米人と日本人では小腸の長さが違うという話を思い出して、確かにそりゃそうだろうと納得した。
かつて狂牛病が大問題となったとき、その原因として牛に与えられていた肉骨粉が問題視され、牛に与えることが禁止されたことがあった。
この肉骨粉なるものも、当然のことながら本来牛が食べるはずのないもの。
人間他の哺乳類同様、“母乳”によって蛋白源を得て成長する牛が、その“母乳”たる牛乳を人間が搾取するため、これを補完するものとして肉骨粉が与えられたと記憶している。
安価な牛肉を供給するためのコスト削減方法として、本来口にするはずのないものを無理矢理に食べさせられて育つ牛の肉が、果たして我々の身体にイイものなのか??

そして牛だけでなく、家畜の飼料として供給されているとうもろこしは、そのほとんどが遺伝子操作によって作られたものだという。
日本では、遺伝子操作によって作られた農作物は人体への影響を考慮して敬遠されているが、食材が作られる“工程”の中で、もはやどこでどう使用されているか分かったものではない。

映画が進むにつれて、「食」に対する安心感は薄れ、信頼感は揺らぎ、不信を超えて諦めを感じる間もなく、無力感から脱力して何も感じなくなっていく気がした。
巨大企業がオーガニック・フードを扱うくだりに至っては、もはや失笑するしかない。


自分たちの健康を、いや生命を守るため、日本は鎖国して外国からの食材に関する物資の流入を一切遮断し、昔ながらの農法に立ち戻って自給自足で暮らしていかなければいけない!
本作を通してそのような考えに至ったとしても……それはただ、虚しいだけ……


「ありあまるごちそう」とセットで観ると、今までとは違った角度で拝金主義の愚かしさを実感できる。
もはや怒りさえ沸き起こらない…


「フード・インク」
2008年/アメリカ  監督:ロバート・ケナー
出演:エリック・シュローサー、マイケル・ポーラン

「ありあまるごちそう」

2011年12月26日 | 映画
オーストリア。
毎日何台ものトラックがパンの山をゴミ処理場に捨てていく。
その量は年間2000万トンにも上る。『食糧に関する権利』の著者ジャン・ジグレールは言う。
スイスではパンの原材料のうち4/5は輸入に頼っている。
主な輸入先はインドだが、そのインドでは2億人以上もの人が栄養失調に苦しんでいる。

フランス。
ブルターニュ地方の漁師たちは嘆く。
EU加盟後、長時間操業する大型船が増えて乱獲状態。
不要な魚まで取っている状態で、限られた海洋資源を枯渇させる恐れがある。

スペイン。
広大な土地に広がる無数のビニールハウス農場。
もともと貧しい場所だったこの土地を開墾し、トマトを植えた。
そのトマトは一時、ヨーロッパ市場を席巻したものの、最近では豊かなEU諸国やアメリカから安価に供給される農作物に太刀打ちできなくなっている。

ルーマニアのナス畑。
牧歌的な農作業風景が広がる豊かな土地で、遺伝子組み換えの種を使って、見た目がよいナスを育てている。
一方の在来種はいびつな形をしているが味はこちらの方が上だという。
国や農家は、有機農法を選ぶかどうかの岐路に立たされている。

オーストリアにあるブロイラーの親鳥の飼育工場。
週40万羽ものひよこを育て、肥育業者に販売している。
安さを追求するために工場は全てコンピュータ制御、暖房費を賄うためにニワトリを大量に飼わねばならない。
だが、それでも利益は薄く、今やアジアや南米の養育業者に取って代わられようとしている。

スイス。
世界最大の食品会社ネスレのペーター・ブラベックCEO。
「私たちは世界中で仕事を生み出し、安い製品を生み出し、飢えの問題にも取り組んでいる。」
そう語る彼が示した社内モニター映し出されるのは、ロボット制御の無人工場。

人類は120億人を養えるだけの食料を生産しながら、毎日10万人が餓死し、10億人が栄養失調という現実。
これは飢餓ではなく、殺人ではないのか…?


フランスの大型漁業船による魚の乱獲の問題が提起されているが、製作されたのは今から6年も前。
今ならここに中国の“蛮行”が入ってくることだろう。
自国の近海では魚が獲れなくなった今、中国の漁船は殺人も厭わない海賊と化して韓国の領海に侵入し、日本の領海へも押し寄せる。
東南アジア方面でも問題を起こす中国の覇権主義は、ヨーロッパ各国のそれよりも凶暴で凶悪だ。
中国の“巨大化”(強大化?)は、本作が作られた当時に輪をかけて食料需給の危機を招いているように思えてならない。
「ありあまるごちそう」は拡大の一途を辿っているのではないだろうか。

日本政府はWFE(国連世界食糧計画)を通じて182億円を供与したというが、今、求められているのは付け焼刃の援助ではなく、流通システムの再構築ではないかと監督は訴える。
国際援助に関しては、そういったシステマチックな問題で考えればいいかもしれない。
しかし、地球全体を蝕む危機的状況は、ただシステマチックな対応をすれば済むという話ではなくなっている。
日本には「守銭奴」という素晴らしい表現があるにも関わらず「グローバリズム」や「自由主義経済」という冠を被って(あるいは「被せて」)巧みに姿をくらましている我利我利亡者の、限りない暴走を止めることが何にもまして必要な措置なのである。
が、現代社会に跳梁跋扈する強欲な魑魅魍魎を止めることは誰にもできないわけで、こうなると結局のところ「措置無し」という身もフタもない話になってしまう。
とはいえ、「一億総中流化」と言われた時代を現出し、豊かさを実感でき、社会の安定と安全・安心を謳歌した日本が見る影も無く荒れ果てた今、本作を観て何かを感じることは悪くない。


「NHKスペシャル」や民放の夜中のドキュメンタリー番組だけでなく、社会の現実をより深く知ることのできるこういったドキュメンタリーは欠かせない。


ありあまるごちそう
2005年/オーストリア  監督:エルヴィン・ヴァーゲンホーファー
出演:ジャン・ジグレール、ピーター・ブラベック、カール・オトロック

「5デイズ」

2011年12月25日 | 映画
2007年、イラク。
アメリカ人フリー・ジャーナリストのトマス・アンダース(ルパート・フレンド)は、バグダッドの市街戦で恋人のミリアム(ヘザー・グラハム)を失い、心に大きな傷を負った。
それから1年。
再び戦場取材に戻る決意をしたアンダースは、グルジア共和国の首都トビリシに旅立つ。
グルジアでは、南オセチア独立問題に端を発したロシアとの対立が激化しており、アンダースは、カメラマンで相棒のセバスチャン(リチャード・コイル)らと共に一触即発の紛争地帯に向かう。
2008年8月8日未明、グルジア側のオセチア攻撃を理由に、ロシアは軍事介入を開始。
グルジアのサアカシュヴィリ大統領(アンディ・ガルシア)は戒厳令を宣言し、ついに戦争が始まった。
ロシア軍の空爆に巻き込まれたアンダースは、爆弾が降り注ぐ修羅場でタティア(エマニュエル・シュリーキー)という美しいグルジア女性を助ける。
非武装地帯への空爆を告発しようとするアンダースだったが、世界の関心は開幕したばかりの北京オリンピックに集中し、この事態を伝えようとするネットワークは一局もなかった。
そんな中、アンダースとセバスチャンは、離れ離れになった家族を捜すというタティアと共に危険地帯の奥深く踏み込んでゆく。
そこで彼らは、市民の無差別虐殺を目撃、戦争犯罪の証拠となる映像を撮影するが、オセチア軍によって身柄を拘束されてしまう。
真実を世界に伝えるため、アンダースは決死の脱出を図る……


恥ずかしながら、本作で描かれる5日間戦争(「8月戦争」)の事実を知らなかった。
世界が北京オリンピックの開幕に沸き、その華やかな祭典に見とれていた陰で、激しい戦闘が繰り広げられていたとは!
おそらくはテレビニュースでも放映されていたのだろうが、全く意識していなかった…というのが本音。
ことほど左様に、自分に直接“火の粉”が降りかからない惨事には関心が向かないものであることを、劇場で改めて痛感したとともに、己の不明を恥じ入るばかりだった。


渡部某という戦場カメラマンがテレビのバラエティ番組に引っ張りだこになっているうちに、戦場ジャーナリズムの過酷さを忘れかけていた。
演出とはいえ、テレビに映る某の緊張感のカケラも感じられない表情に、戦場を駆け巡るジャーナリストと言ってもこんな程度かという勝手な評価が、無意識下に形成されていったような気がする。
しかし本作で、改めて戦場におけるジャーナリズムの熾烈さを思い知らされた。
と同時に、戦争の実態を命懸けで発信しようとする戦場ジャーナリズムの燃え滾る炎に、胸が熱くなった。

5日間戦争における事実に基づいて描かれる本作は、より現実味を増すために戦闘シーンは全て“ホンモノ”が使われている。
グルジア政府と軍の全面協力により、登場する兵器・火器は全て実物なのである。
戦闘機や戦闘ヘリが街を破壊する壮絶な空爆シーンは、飛来するヘリや飛行機が本物なら爆発炎上する市街地も本物。
丘を埋め尽くすほどの戦車部隊も本物で、これら本物だけが持つ迫力は、今や実物と見紛うばかりの映像を描くCGでも描けない奥行きや広がりを作り出す。
そしてその“ホンモノ”を使うからこそ作り出される映像によって、まるで自分も戦場に立っているかのような臨場感が生まれ、戦場ジャーナリスト達の熱い使命感が、ヒシヒシと伝わってくるのである。


「真実を伝えたい」というジャーナリストが本来持っているはずの使命感の尊さを再認識した。
本作を観て熱い思いを抱かない“自称”ジャーナリストは、即刻看板を下ろすべし。

くだらないスキャンダルや浅はかな“揚げ足取り”記事が氾濫する昨今、真っ当なジャーナリズムを思い起こさせてくれる佳作。


5デイズ
2011年/アメリカ  監督:レニー・ハーリン
出演:ルパート・フレンド、エマニュエル・シューキー、リチャード・コイル、ヘザー・グラハム、ジョナサン・シェック

「密告・者」

2011年12月24日 | 映画
香港警察犯罪情報局の敏腕捜査官ドン(ニック・チョン)は、ある犯罪組織に“密告者”を送り込んで内偵させていた。
いよいよ闇取引の場所と時間を押さえ、取引が行われる現場に乗り込もうとしたその時、“密告者”の正体がばれてしまう。
“密告者”は裏切り者として制裁を受け、瀕死の重傷追うとともに精神に異常をきたして廃人同様の姿になってしまった。

それから1年。
深い罪の意識を負いながらもドンは、台湾から帰ってきた凶悪犯罪者バーバイ(ルー・イー)の動向を探ることになり、新たな“密告者”として出所間近の青年サイグァイ(ニコラス・ツェー)に白羽の矢を立てる。
ドンの申し出を断るサイグァイは出所すると、親の遺した借金のカタに最愛の妹がヤクザによって娼婦にされていることに愕然となる。
妹を救い出す金を作るために“密告者”となったサイグァイは、バーバイと彼の情婦のディー(グイ・ルンメイ)に近づき、抜群の運転技術を見込まれて運転手として雇われ、組織への潜入に成功した。
バーバイの信頼を得たサイグァイは、ドンが用意した隠れ家を介して情報を伝えていく。
警察は犯罪組織の包囲に成功するが、やがてドンとサイグァイ二人の関係に危機が訪れる…


犯罪組織の内部情報を提供する代わりに報酬を得る「密告者」と、それを利用して悪を追い詰めようとする捜査官との関係が、ヒリヒリとした緊張感を伴って描かれ、観る者をスクリーンに釘付けにする。
かつて自分が“飼っていた”密告者が廃人同様となったことから、罪悪感に苛まれ続けるドン。
いざとなればその命は“使い捨て”にされる密告者。
犯罪組織壊滅のためとはいえ、そんな存在を作るということは、真っ当な「正義」ではない。
やがて密告者を“コスト”と見なす警察組織に対してドンは、自分の中の“真っ当な正義”を貫こうとするが、それは“組織人”としては生きていけないことを意味する。

世の中における「正義」の味方であるはずの警察組織に翻弄される「正義」を、強大な組織の前では儚い存在でしかない捜査官と密告者の関係性を通してダイナミックに描く、クライム・サスペンスの佳作。


密告・者
2010年/香港  監督:ダンテ・ラム
出演:ニコラス・ツェー、ニック・チョン、グイ・ルンメイ、リウ・カイチー、ミャオ・プゥ、ルー・イー

東大卒投手

2011年12月21日 | 野球
杉内投手を挑発した?…問題発言の取締役辞任(読売新聞) - goo ニュース


杉内に悔し涙を流させた球団幹部というのは、あの小林だったのか。
自分の記憶が確かならば、何人目かの東大出身プロ野球選手として話題を振りまきながらロッテに入団したものの、1軍での登板は「あぶさん」の中だけで終わってしまった投手ではなかったか。

杉内がFAしてもどこも獲りにくるところなど無いと本気で思っていたのなら、その見る目の無さは噴飯もの。
プロ野球で通用しなかった最大の要因を露呈している。
センスの無い人間は、センスのある人間を見てもそのセンスを感じられないもの。

東大出身だから優秀だろうとフロントに置いていたのなら、同じくソフトバンク経営陣にもセンスは無かったということだ。
大丈夫か!?来年のホークス。

「デッドボール」

2011年12月20日 | 映画
キャッチボールで父親を死なせてしまい、野球を辞めると誓った野球ジュウベイ(坂口拓)は、数々の凶悪犯罪で逮捕され、矯正施設である鳥竜矯正学院高校に収容される。
施設を管理する三船知事(田山涼成)から、野球部への入部を要請されるが固辞。
しかし生き別れた弟のムサシの居場所を教えるという条件を突きつけられて承諾してしまう。
「全国非行甲子園」の制覇を目指し、同室の進之助(星野真里)とともに部員を集めたジュウベイは、過去に受刑者が謎の死を遂げたことを知らされる。
一体何があったのか…?

いよいよ非行甲子園が始まり、対戦相手は殺人少女愚連隊のブラック・ダリア高校だと知らされる。
試合当日、ジュウベイたちが連れて行かれたのは、地面が石造りになった要塞のようなグラウンド。
そこで繰り広げられる“試合”は、爆弾、地雷、改造金属バットと、何でもアリ“過ぎる”超極悪非道野球バトルだった!
果たしてジュウベイは、この“試合”を勝ち抜くことができるのか!?
いやその前に、生きて試合を終えることができるのか…!?


「地獄甲子園」の監督・山口雄大と主演・坂口拓のコンビが再びタッグを組み、野球をまったく描かない「本格野球バイオレンス青春スプラッター映画」。
一応、野球による勝負のテイをとってはいるが、全然野球らしい試合やってないし(爆)

番場蛮もビックリの“ハイジャンプ投法”でジュウベイが投げる剛球(と言うのか、やはり??)は、親父を殺してしまうほどの破壊力を持つ、野球用語におけるそれとは意味の異なる「デッドボール」。
試合の流れを止めるという意味での“デッド”ではなく、その球によって人を殺めることができるという“デッド”なのだから凄まじい。
自分の“狂気の潜在能力”におそれを抱き、二度と野球はしないと心に決めて封印してしまうジュウベイだが、生き別れた弟と会うために再びマウンドに立つことを決意し、非行甲子園に挑む。

…などとマジメな調子で書くことに意味は無い(笑)

その昔、少年たちの憧れのスポーツといえば、プロ野球がその筆頭にあった頃、野球漫画は花盛りだった。
野球漫画の金字塔ともいえる「巨人の星」、先に書いた番場蛮が主人公の「侍ジャイアンツ」に、今でも野球漫画を生み続ける水島新司の一連の作品など、数え上げればキリが無いほど。
そしてそんな野球漫画全盛時代、子供心に度肝を抜かれた“トンデモ野球漫画”があった。
体の一部に野球のボールのアザを持つ超人たちを集めて結成されたチームが主役の「アストロ球団」である。
盲目の選手や、サーカスもビックリなアクロバチックなプレーでどんな飛球もキャッチしてしまう外野手コンビ、そして“とてつもない投球”を繰り広げるとてつもないエースに、投球を張り手で二塁まではじき返して盗塁を阻止する相撲出身のキャッチャーなどなど、対抗するべく結成されたライバル球団も含めて、とんでもない選手が次から次へと現れる。
人間技を超えた“超人プレー”に、ワクワクを超えて「んな、アホな!」という大阪人にとってはツッコミ放題の奇想天外な異色の野球漫画であったが、それでもちゃんと「野球の試合」をしていた。
(「野球漫画」やねんから当たり前やがな(笑))

「デッドボール」は、その「アストロ球団」を彷彿とさせるが、決定的に違うのは「ちゃんとした野球の試合」をしていないこと。
しかし「ちゃんとした」というところがミソで、「本格野球パイオレンス青春スプラッター映画」というキャッチーなコピーから、「野球」を外すのはまた違うところが妙味♪

七面倒なことは何も考えずに、ただ眼前に繰り広げられる狂ったスラップスティック・コメディの世界に没頭すべし!


デッドボール
2011年/日本  監督:山口雄大
出演:坂口拓、星野真里、ミッキー・カーチス、山寺宏一、田山涼成

「極道兵器」

2011年12月18日 | 映画
西日本を牛耳る岩鬼組組長の一人息子・岩鬼将造(坂口拓)は、父親である権造(麿赤兒)の訃報の知らせに、4年ぶりに帰国した。
しかし、かつて組事務所があった場所は、サラ金へと姿を変えていた。
将造はそこで、父親を死に追いやったのは、岩鬼組若頭であった倉脇(鶴見辰吾)であることを知る。
将造は仇である倉脇を追い詰めていくが、あと一歩のところで逆襲に遭い、右腕と左足を吹き飛ばされてしまう。

一命をとりとめた将造は内閣特務警察に保護され、ある特殊な大手術を受けた。
居場所を突き止めた倉脇の送り込んだ刺客が迫ったそのとき、手術から目覚めた将造は、右腕のバルカン砲と左膝のロケットランチャーで敵を蹴散らした。
最強の「極道兵器」となった将造は、仁義を通すために倉脇への反撃に転じた……!


「SUSHI TYPHOON」に欠かせないアクション俳優であり、アクション監督である坂口拓が盟友・山口雄大とタッグを組んで、石川賢原作の伝説コミックを映画化。
瀕死の重傷を負った体が改造され、兵器が組み込まれた姿は、さながら「サイボーグ009」における004。
石ノ森章太郎なら、独特の哀感が漂うキャラクターを生み出すのであろうが、「極道兵器」である将造には微塵も悲哀は無い。
「ワシャこの身体、気に入ったどーーっ!」
と怪気炎をあげ、最強の身体が手に入った喜びに満ち溢れた歓喜の雄叫びをあげる。
切れ味鋭いアクションにバルカン砲とロケットランチャーが加わって、物語のボルテージはイッキに急上昇する!
そんなド派手なスタントだけでなく、ライバルたる相手との一騎討ちの見せ場もクライマックスに用意され、多様なアクションシーンがふんだんに織り込まれたストーリー展開は、正に坂口拓の真骨頂を発揮している。


「片腕マシンガール」を凌駕する“片腕片足強力兵器”の“最終兵器極道”が暴れまわる(ん!?色んな要素テンコ盛りやな!)、ハイテンション・ヤクザムービー。
ノンストップで疾走し続けるアクションに見ているこちらのテンションもアゲアゲ↑↑の(表現に世代的なムリがありますか!?(笑))、疾風怒濤のバイオレンス・エンターテインメント!


極道兵器
2010年/日本  監督:坂口拓、山口雄大
出演:坂口拓、村上淳、黒川芽以、鶴見辰吾、麿赤兒

「ヘルドライバー」

2011年12月18日 | 映画
残忍な母親リッカ(しいなえいひ)に隠れ家を見つけられ、目の前で最愛の父親を惨殺されたキカ(原裕美子)。
凶暴な魔の手が自分へと向けられ、必死に逃げるキカが追い詰められた瞬間、リッカの胸を空の彼方から落下してきた物体が貫いた。
しかしリッカはキカの胸に手をねじ込むと心臓をつかみ出すと、なんと自分の胸に移植してしまう。
その瞬間、リッカの体に異形の物体が寄生、口から赤黒い灰を猛烈な勢いで吐き出した。
謎の灰はなんと人間をゾンビ化さる力を持ち、瞬く間に北海道、東北に蔓延し、人々をゾンビ化してしまった。
日本政府は東北以北を高い壁を築いて隔離する。
1年後。
胸に人工心臓を埋め込まれて甦ったキカは、体から延びたチューブの先にある日本刀型チェーンソーをつかんで立ち上がった。
「もう逃げない。」
自分を地獄の苦しみに叩き落した母親リッカに対する、壮絶な復讐の戦いが始まる…!


「片腕マシンガール」でその名を初めて認識し、監督作品「東京残酷警察」での独特の造形とブラッディ・シーン嵐に度肝を抜かれた、特殊メイクのトップランナー・西村喜廣が、監督・脚本を務めて送り出した“血飛沫芸術”の世界。
不条理なストーリー展開に、今度はゾンビと人間の壮絶な戦いをスプラッター描写たっぷりに盛り込み、近親憎悪という言葉を遥かに凌駕する母親への激しい憎しみに燃える少女の復讐劇を描く。

ワールドワイドに熱狂的なファンを持つ西村喜廣が創り出す映像は、江戸時代末期から明治期にかけて現出した「残酷絵」を彷彿とさせる。
世界に誇る日本の芸術である浮世絵がたどり着いた世界を、映像文化の中へと昇華させた彼は、現代の月岡芳年か土佐の絵金か!?

和製スプラッター映画の第一人者が遺憾なくその力を発揮した、ゾンビ&カーアクションムービーの怪作!


ヘルドライバー
2010年/日本  監督:西村喜廣
出演:原裕美子、しいなえいひ、波岡一喜、柳憂怜、鳥肌実、ガダルカナル・タカ

「AVN/エイリアンVSニンジャ」

2011年12月16日 | 映画
時は戦国時代。
伊賀の下忍である耶麻汰(三元雅芸)、陣内(柏原収史)、寝隅(土平ドンペイ)の3人は任務からの帰り道、炎に包まれた物体が上空を横切っていくのを目撃する。
忍者の里近くに墜落した“謎の火の玉”を、織田信長軍の新しい武器だと睨んだ下忍頭は3人を送り込んだ。
凛林(肘井美佳)ら別働隊と合流した耶麻汰たちが落下地点へと近づいたとき、不穏な気配を感じて警戒したその瞬間、仲間の一人が地中へと引きずりこまれたかと思うと、バラバラになって放出された。
何か化け物がいる!?
下忍衆が次々に無残な死を遂げていく中、ついに姿を現した怪物は、鋭い牙や爪を持ち、強力な尾を自在に操る異形のエイリアンだった!
下忍衆の中でも高い身体能力を持ち、ずば抜けた使い手である耶麻汰たちは、あらゆる戦術を駆使してエイリアンに立ち向かっていった…!


ハリウッドで西部開拓時代にエイリアンが登場するよりも以前、既に日本の戦国時代にエイリアンが登場していた!
2011年2月に全米でDVDが発売されるや、リメイクのオファーが殺到、「ブラック・スワン」などを手がけた製作会社が権利を獲得したという話題のアクション・エンタテインメントが日本に“逆輸入”された。


怪獣と忍者という組み合わせは、幼い頃にテレビで見た「仮面の忍者赤影」を彷彿とさせる。
しかし赤影が相手にしていたのは、敵対する忍者が操る怪獣であったが、本作でのバトルの相手は、得体の知れないエイリアン。
こんな怪物を相手に戦えるのはプレデターかシガニー・ウィーバーくらいのものと思っていたが、鍛え抜かれた肉体を誇る優れた忍者たちも十分に対抗できることを知り、その優秀さを誇りに思った(笑)

醜悪なエイリアンの鋭い爪や牙、角によって五体は切り裂かれ、血肉が飛び散るスプラッター・シーンは「SUSHI TYPHOON」レーベルの真骨頂。
しかし単にそれだけで終わってはただの“ゲテモノモンスター・ムービー”でしかないのだが、本格的なアクションによって戦闘シーンがキリッと引き締まり、展開が小気味良い。
それにしても柏原収史が、こんなにしっかりしたアクションがこなせるとは知らなかった。
己が不明を恥じ入るばかり。


戦国の世に来襲した凶悪エイリアンと忍者たちとの凄まじい戦いが熱い、究極の異種格闘バトルアクション(ここはまんま受け売り!)。


AVN/エイリアンVSニンジャ
2010年/日本  監督:千葉誠治
出演:三元雅芸、柏原収史、土平ドンペイ、肘井美佳

「カウボーイ&エイリアン」

2011年12月15日 | 映画
1873年、アリゾナ。
男(ダニエル・クレイグ)は荒野で目を覚ました。
なぜ、ここにいるのか、自分が誰かさえもわからない。
ふと腕を見ると、奇妙な金属製の腕輪をはめられている。
外し方の見当もつかず、石で叩いてもビクともしない。
男は仕方なく、腕輪をそのままにして歩き出す。

やがてたどり着いたのは、ダラーハイド(ハリソン・フォード)という男に支配される荒野の町・アブソリューション。
偶然訪れたバーで、見知らぬ女が話しかけてくる。
「あなた、何も覚えてないの?」
その女は自分の知らない何かを知っているようだ。

その夜、アブソリューションの夜空に、突如未知の飛行物体が現われる。
見たことの無い“火器”で攻撃してきた飛行物体は、次々と人間をさらってゆく。
いまだかつて誰も遭遇したことのない脅威の攻撃になす術も無く、町は大混乱に陥る中、男の腕輪が突然起動し始める。
そして青い閃光が走った瞬間、見事謎の飛行物体に光線が命中し、撃墜してしまう。
一体、この男は何ものなのか?
彼の手首にはめられている腕輪は何なのか??
男自身、自分の身に何が起きているのかも分からない。
しかし、謎の侵略者にまともに対抗できるのは、男の腕輪だけ。

かくして、さらわれた町の人々を救い出し、自らの記憶を取り戻すべく、男はダラーハイドとその部下達、更には無法者、アパッチ族の戦士、町の住人達と共に、侵略者の後を追う。
彼らが生き残るための壮大な決戦が、始まろうとしていた…


「もし侵略型エイリアンが西部劇の時代に現れたら」というスコット・ミッチェル・ローゼンバーグの発想を、CG技術を駆使して映像化。
腕が立つガンマン、荒野の町に力で牛耳る権力者、酒場に謎の女…。
典型的な西部劇のモチーフが散りばめられた画面に、突如現われる「未確認飛行物体」。
このとんでもない組み合わせが生み出す“違和感”が実に新鮮♪
西部開拓時代の人々がUFOに太刀打ちできるはずもなく、一方的に攻撃を受け続けるしかなく、単純にハラハラさせられる。
しかし男の腕輪が突然起動して反撃に転じるのだが、UFOを撃墜したときには思わず快哉を叫びたくなった。
(我ながら、なんと単純な)


西部劇もエイリアンの侵略も、いずれもハリウッドの得意とするところ。
実写と見紛うばかりのエイリアンの映像と、死力を尽くして立ち向かう人類という、エイリアン・ムービーの基本を忠実に守り、“悪”を倒したヒーローは独り静かに馬で去る…という西部劇の王道もしっかり踏襲した、本格的なウエスタンSF!
…て、新ジャンル誕生!?
これに対抗できるのは「エイリアンVSニンジャ」だけ(!?)


典型的なハリウッド映画の二大テーマを融合させたのは、製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグと、「アイアンマン」シリーズで大当たり中の監督ジョン・ファブローの、これまたハリウッドを代表する二人。
そして、007の新機軸を打ち立てたダニエル・クレイグと、珍しく悪役で登場しながらも結局のところは“カッコイイ”男であるハリソン・フォードが共演。
これで面白くないはずがない!

贅沢な作りに、何も考えず単純に展開を楽しめるだけでなく、ツッコミどころ満載な点もまた妙味の、空想科学活劇の娯楽大作♪


カウボーイ&エイリアン
2011年/アメリカ  監督:ジョン・ファヴロー
出演:ダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、オリヴィア・ワイルド、サム・ロックウェル