面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

ボーグルソン!

2012年10月29日 | 野球
元阪神・ボーグルソンが好投! 海の向こうもジャイアンツが逆王手(夕刊フジ) - goo ニュース


久しぶりに名前を聞いたと思ったら、メジャーで投げていたとは驚いた!
(なぜか表記が「ボーゲルソン」になっているが)
タイガースに入団したときは、ハリウッド女優並みにキレイな奥さんばかりが話題になり(確か何かのCMにも出ていたように記憶しているが…)、肝心の実績の方は記憶に残らない程度のものだったが、その苦労した時期が糧になったのなら来日の甲斐があったというもの。
帰国してメジャーを代表するパワーヒッターになったフィルダーのように、大きく羽ばたけるだろうか。
ワールドシリーズという檜舞台をステップに、来年はシーズン中も大いに話題になるよう頑張ってもらいたい!

月のあかり

2012年10月27日 | ニュースから
内田裕也、桑名正博さんに「長い間お疲れ」(サンケイスポーツ) - goo ニュース


脳幹出血で倒れて入院したときには、驚くと同時にある種“覚悟”はしていた。
意識不明が続いていたので、後はいつになるか、か……と正直思っていたところはあったが、いざその時が来ると寂しいもの。
桑名を可愛がっていた内田裕也も、さぞ落胆していることだろう。
別れていたとはいえ、このことがアン・ルイスに大きなショックとなって、彼女がヒドく落ち込まなければいいのだが…
(ここは親友の竹内まりやの出動が必要ではなかろうか)

テレビの報道では「セクシャル・バイオレットNo.1」の映像ばかりが流れるが、自分の中では実は「哀愁トゥナイト」の印象が強かった。
今さらながらそれがソロ・デビュー曲だったことを知って、彼のことをほとんど知らなかったことを知ったがコテコテの関西弁をしゃべりながらのテレビ主演は、自分もあんな風にカッコ良く歳を取りたいものと憧れていた。

大麻で捕まるわ、ドラッグの噂は絶えないわ、フツウの小中学生だった自分の中では「不良」というイメージで、特段好きではなかったが、テレビに出ていれば、大阪出身ということもあって気になる存在だった。
確かシングルにはなっていなかったと思うが、何かの番組で「月のあかり」が“隠れた名曲”的な紹介をされて初めて聞いたとき、いかにも“やんちゃなロッカーが、ふとした拍子にしっとり歌うバラード”的な感じがした。
しかしカッコいい曲だったので、こりゃカラオケのレパートリーにと思っていたが、まだマスターできてない。
あまりカラオケでも歌われるのを聞いたことがないが、ここ最近で全国のカラオケで歌われているのではなかろうか。

オモロイことが好きだった彼らしく、全国で彼を偲んで歌われるカラオケはレクイエムとなるのではなかろうか。
冥福を祈るのみ。

合掌

「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」

2012年10月23日 | 映画
20年前。
ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック(「帰ってきたウルトラマン」)、ウルトラマンAのウルトラ4兄弟は、異次元人ヤプールの怨念が集結した究極超獣・Uキラーザウルスを死闘の末に倒して神戸港沖へと沈め、彼らが持つ光エネルギーのほとんどを使い果たすファイナル・クロスシールドによって封印した。
その代償として変身する能力を失ってしまった彼らは、一心同体であった人間の姿、すなわちハヤタ(黒部進)、モロボシ・ダン(森次晃嗣)、郷秀樹(団時朗)、北斗星司(高峰圭二)として、人知れず神戸市内に暮らしながら、神戸の沖合いに眠る怪物を見守っていた。
時が経ち、地球の平和はウルトラマンメビウスとCREW GUYSによって守られていた。
そんなある日、神戸沖に異変が生じはじめ、時を同じくしてテンペラー星人、ザラブ星人、ガッツ星人、ナックル星人による宇宙人連合が侵略してきた。
迎え撃つウルトラマンメビウスだったが、狡猾な宇宙人連合の策略にはまり、囚われの身となってしまう。
メビウスを救い、そして愛する地球を守るため、自らの命と引き換えになることも恐れず、ウルトラ4兄弟は再び立ち上がった…!


宇宙警備隊のルーキーであるウルトラマンメビウスは、命をかけて地球を守ってきたウルトラ兄弟たちに、強い憧れを抱いていた。
そして、ウルトラ4兄弟が地球を守るための死力を尽くした最後の戦いを“伝説”として胸に刻み、ウルトラの父に異星人や怪獣の攻撃から人類を守ることを命じられて地球に降り立った、若きヒーローである。
そんな“後輩”の活躍を、ウルトラ4兄弟は地球人として、神戸に暮しながら見守っていた。

この「神戸に暮しながら」というところが、関西人である自分の心の琴線に触れずにはいられない。
ウルトラマンのハヤタは神戸空港の長として、ウルトラセブンのモロボシ・ダンは牧場のスタッフとして、帰ってきたウルトラマン郷秀樹はサーキットの指導員として、そしてウルトラマンエース北斗星司はレストランのシェフとして、それぞれ神戸市民として生活しながら、遥か沖合に鎮めたUキラーザウルスとヤプールの怨念を見守っているその姿を見るだけで胸が熱くなった。
(「アホ」のそしりも是とするものである)
神戸における“不穏な空気”を感じ取り、調査にやってきたヒビノ・ミライを彼ら4人が出迎え、激励する場面では、伝説のヒーローたる宇宙警備隊の大先輩達との邂逅に感激するミライと同じく、自分も感動が胸に迫って涙がこぼれた。
(「アホ」と言われるのも致し方ないものと思われる)


宇宙人連合の攻撃によって神戸の街が破壊され、荒廃した風景が登場する。
かつての阪神大震災がフラッシュバックし、軽い不安や恐怖に襲われたが、ふと敗戦の爪痕がまだ色濃く残っていた東京の街を破壊し尽くしたゴジラが脳裏に浮かんだ。
東宝特撮シリーズの先駆けであり、輝かしい金字塔を打ち立てた「ゴジラ」に人々が恐怖し、熱狂したことが理解できた気がする。
震災によって壊滅した街並みを思い起こした自分以上に、東京大空襲を思わせるゴジラの破壊活動に、人々は大いに心を痛め、中には涙した人もいたことだろう。
怪獣が暴れまわる姿は災害や戦争の簡易な比喩であるなどと、無邪気な子供のころには夢にも思わなかったが。


往年のウルトラマンシリーズと共に育った我々世代のノスタルジーを掻き立て、更に神戸を舞台に展開する物語が関西のファンの心を鷲掴みにする、劇場版ウルトラマンシリーズにおける傑作!

昔ながらの“着ぐるみ”による戦闘だけでなく、最新のCG技術を駆使したスピード感あふれる映像は圧巻!
来る11月3日(土)の午後1時15分より、神戸・新長田ピフレホールでの「第17回神戸100年映画祭」にて上映されるので、ぜひ劇場のスクリーンで存分にその迫力を味わっていただきたい♪


「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」
2006年/日本  監督:小中和哉
出演 五十嵐隼士、黒部進、森次晃嗣、団時朗、高峰圭二、いとうあいこ、田中碧海、堀内正美、山田まりや、アメリカザリガニ、布川敏和、田中実、風見しんご、氷川きよし



訃報。

2012年10月19日 | 映画
シルビア・クリステルさん死去=「エマニエル夫人」が世界的ヒット(時事通信) - goo ニュース


若松孝二監督の訃報に驚いていたら、今度はシルビア・クリステルの訃報が。
立て続けの訃報も辛いが、今年は毎月のように役者や監督の訃報があるように思う。
…という感想を去年も持ったような気がする。
それだけ、自分が昔からよく知っている有名人が高齢化してきたということに他ならないのだが、それは即ち己の高齢化とも言えるワケであるのが、これまた辛い。

それにしてもシルビア・クリステルもそんな歳か…?と思って記事を読めば、なんとまだ60歳。
100年前ならともかく、いまどきの60歳はまだまだこれからの年齢。
しかしガンを患っていたとのことで、それが起因となってしまったようであることは残念な話。

冥福を祈るのみ。
合掌

「そして友よ、静かに死ね」

2012年10月17日 | 映画
伝説のギャングとして一時代を築いたエドモン・ヴィダル(通称「モモン」=ジェラール・ランヴァン)。
今は還暦を迎えて、かつての仲間達、妻ジャヌー(ヴァレリア・カヴァッリ)や息子、そして孫たちと共に心穏やかに暮らし、昔の自分を忘れようとしていた。
ある日、親友のセルジュ(チェッキー・カリョ)が13年に渡る逃亡の末、暴力団担当刑事のブロナー(パトリック・カタリフォ)に逮捕されたという知らせが届く。
その昔、共に数々の派手な強盗事件を繰り返した友であるセルジュ。
実刑が確定すれば、もう生きて刑務所を出ることはできない…。

「もう手出しはしない」という妻との約束を守るため、はじめは突き放していたモモンだが、幼い頃から結ばれた固い友情の絆は、そう容易く断ち切れるものではない。
愛妻の反対を押し切ってセルジュを奪還し、13年ぶりの再会を果たす。
隠れ家を用意し、仲間達と協力してセルジュを匿い、逃亡の準備を進めるモモンだったが、その生活は一変し、再びかつてのように身の危険に曝される。
そして逃亡したセルジュを追うブロナーから、衝撃の事実を知らされ…


1970年代、数々の派手な強盗事件を繰り返し、“リヨンの男たち”と呼ばれた伝説のギャングを率いたモモン・ヴィダルの半生を、彼の自叙伝「さくらんぼ、ひとつかみで」をベースに、当時の事件とフィクションを織り交ぜて描かれたフレンチ・フィルムノワール。
全く予備知識を持たずに観たが、まず実在のギャングの実話がもとになっていることに驚いた。
そしてタイトルから勝手に、命を狙われた親友の盾となって死にゆく男の話か?などと想像していたのだが、そんなありきたりで生易しい話ではなく、言葉を失ったまま唸ることもできずに、エンドロールをただ静かに眺めていた。
「友情」と「裏切り」は、ギャング映画に定番のモチーフであるが、本作に描かれるそれらは、他の追随を許さないほどに厳しく、切ない。
ラストシーンで響く銃声の“重さ”に気圧され、身体が固まってイスに張り付いてしまった…。

友情の絆が篤く固いほど、身悶えする深い悲しみに打ちひしがれる。
それでも毅然と歩いていけるのは、数々の修羅場をくぐり抜けてきたからこそなのだろう。


登場人物のほとんどがギャングで占められ、それも“往年のギャング達”が縦横無尽にスクリーンを占領するため、オッサンばかりが出てきて絵面は決して良くないが、独特の“渋さ”が漂う、薫り高いフィルムノワール。


そして友よ、静かに死ね
2011年/フランス  監督:オリヴィエ・マルシャル
出演:ジェラール・ランヴァン、チェッキー・カリョ、ダニエル・デュバル、ディミトリ・ストロージュ、オリビエ・シャントロー、パトリック・カタリフォ、フランソワ・ルヴァンタル、フランシス・ルノー、リヨネル・アスティエ、ヴァレリア・カヴァッリ

「アイアン・スカイ」

2012年10月16日 | 映画
2018年。
再選を目指すアメリカ大統領(ステファニー・ポール)は、ジリ貧となった支持率を回復するため、アポロ17号以来となる有人月面着陸プロジェクトを推し進めた。
黒人男性ファッションモデルのジェームズ・ワシントン(クリストファー・カービー)が月へと送り込まれ、無事月面に到着すると、着陸船から大統領再選に向けた宣伝用の巨大な“旗”を掲げることに成功した。
とりあえずくだらないミッションに成功した月面着陸チームは、次のミッションを果たすべく近くのクレーターを覗き込むと、なんと!
そこには巨大な建造物が建てられていたのだった!
一体誰が何のために?ていうか、何なんだこれは??
大混乱に陥っているところへ突如、黒い装備に身を固めた謎の人型生命体が現れ、哀れにもジェームズの同僚は射殺されてしまった。
慌てて着陸船に戻ろうとしたジェームズだったが、黒ずくめの連中は着陸船を砲撃し、木端微塵に破壊してしまう。

ジェームズを捕らえた連中は、ハーケンクロイツの紋章を付けて武装していた。
彼が連行されていったのは、月の裏側にある巨大な秘密基地。
そしてその秘密基地にいたのは、第二次世界大戦に敗退して月へと逃れてきた、ナチスドイツの残党だったのである!
彼らは、“月面総統”コーツフライシュ(ウド・キア)のもとで、再び地球に帰還し、世界を征服する機会をうかがっていたのだった。

ナチスは、黒人が宇宙飛行士であることに衝撃を受けたのだが、それ以上に驚愕したのはワシントンが持っていたスマホだった。
彼らが長年に渡って築き上げてきた巨大な電子計算機をはるかに凌ぐ演算能力を持つスマホ。
これさえあれば、地球侵略のために開発してきた最終兵器の宇宙船「神々の黄昏号」を完成させることができる!
次期総統候補と目されているキレ者であると同時に腹に一物持った野心家である将校のクラウス・アドラー(ゲッツ・オットー)は、スマホ調達のための地球潜入作戦に志願。
マッドサイエンティストのリヒター博士(ティロ・ブリュックナー)によって“白人化”されたワシントンに案内役を命じると、円盤ハウニブに乗り込み、地球を目指して飛び立った。
このハウニブには、クラウスの恋人でナチスが掲げる理想を妄信している美人地球学者のレナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)が、彼の後を追ってこっそり乗り込んでいたのだった。

ニューヨークに降り立ったクラウスは、大統領直属広報官のヴィヴィアン・ワグナー(ペータ・サージェント)を誘拐し、大統領との面会を要求する。
しかしクラウスの燃えるようなカリスマ性と、レナーテのナチスの理想主義に対する真摯な思いは、大衆の心を掴むプロモーションに活用できると踏んだヴィヴィアンは、2人を大統領に引き合わせると、パブリシストとして登用した。
実はクラウスは、アメリカと手を組んで権力を手に入れ、総統の座を奪おうと目論んでいた。
またレナーテは、ナチスの理想を世界に広めるチャンスと思い込んでいた。
それぞれに思惑を抱えながら2人は、大統領の再選に向けた宣伝広報活動に辣腕をふるう。

その一方で月面では、地球侵略に向けて着々と体制が整えられていた。
嗚呼、地球の平和の行方や如何に……!?


第二次大戦で敗北したナチスの残党が、実は虎視眈眈と地球制服の機会を狙っている。
そんな伝説が、日本で言うところの「都市伝説」のように全世界で語られてきた。
そしてナチスの残党が潜むのは、アマゾンの奥地である!というような話を、昔何かの本(おそらくはG社の「M」であろう)で読んだ覚えがあるのだが、その他にも潜んでいるとされる場所は何箇所かあったように思う。
しかし月に逃れて巨大基地を建設していた!という話に触れることは無かった。
そりゃそうだ。
荒唐無稽というには、あまりにも“無い話”なのだから。

その「ありえねー!」話を映画にしてしまった「アイアン・スカイ」は、“あり得無さ過ぎる”が故に、何も考えずに安心して楽しめる作品に仕上がっている。
そしてヒロインには、妙に色っぽい可愛いキレイな女優を配して、B級映画の基本を忠実に押さえていて心地よい。
他にも、ナチスドイツ軍のデザインを巧みに織り込んだ将校の衣装や兵士の装備はミリタリー好きを喜ばせ、細々として複雑なメカニック・デザインの数々は、「スター・ウォーズ」や「エイリアン」を初めて見たときの興奮を思い起こすような、楽しい緻密さに満ちている。
ミリタリーに興味があり、細かいメカニック・デザインにワクワクする、B級好きのSF愛好家である自分のツボを、ものの見事に押さえてくれている♪


物語は、全編痛烈な風刺を込めて描かれている。
まず分かりやすいところでは、アメリカ大統領は明らかにサラ・ベイリンがモチーフになっており、再選にしか興味は無く、支持率アップのためには手段を選ばず話題になることは何でもやり、戦争さえも選挙の道具に活用する姿は、アメリカの政治体制や大統領選を笑い飛ばしている。
細かいところでは、かつてヒトラーが大統領選で使用したポスターの引用や、ヒトラーが1939年に行った第二次世界大戦開戦時の国会演説、ドイツ第三帝国空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングの制服をならった衣装などのシーンが描かれている。
その他にも、突如襲いかかってきたUFO軍団を迎え撃つために召集された国連の会議の席で、UFOの正体が分からずにいると北朝鮮の代表が得意げに「我々が開発していたものである」と言い放って他国の代表たちに爆笑されたり、アメリカ大統領が「靴を投げるのはやめて!」と言ってみたり、ナチス軍の本拠を攻める際に司令官が「我々はテロリストとは交渉しない」とブチ上げたりと、微に入り細に入りパロディが織り込まれている。
また、往年のCMや映画作品のオマージュも散りばめられていて、なんのモチーフも無い完全なオリジナル部分を探す方が難しいくらいに、“いじり倒され”ている。

個人的には、“月面帝国”の国家が度々流れるシーンに苦笑した。
「ラインの守り」という第一世界大戦まで帝政ドイツの国家のように歌われたもので、実は我が母校のカレッジ・ソングに採用されているメロディーなのである。
(映画「カサブランカ」でもドイツ軍人達が声高らかに熱唱する有名なシーンがあるが)


正統派スペースオペラの香り漂う正統派B級映画である、SFコメディの娯楽怪作♪


アイアン・スカイ
2012年/フィンランド=ドイツ=オーストラリア  監督:ティモ・ヴオレンソラ
出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービー、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール、ティロ・プリュックナー、ウド・キア

「最強のふたり」

2012年10月15日 | 映画
首から下が麻痺し、車イス生活を送る大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を募集して面接を行っていた。
介護の経験者や専門知識を持った人々が集まった中、長時間待たされていることにイライラしている黒人青年がいた。
ドリス(オマール・シー)というスラム出身の彼は、次に呼ばれた応募者を無視して面接会場の部屋に押し入る。
フィリップの介護をする気など毛頭なく、不採用の証明書でもらえる失業手当で面接に来たという彼は、フィリップと秘書のマガリー(オドレイ・フルーロ)に対して傍若無人にふるまうと、さっさと書類を作るよう迫った。
しかしドリスはフィリップから、書類はすぐにできるものではないため翌朝9時に取りに来るよう言われて退出する。
その夜、半年ぶりに幼い弟や妹がいる実家に戻ったドリスだったが、彼のこれまでの行いに怒りをぶつける母親に追いだされてしまった。

翌朝、不採用の書類を受け取ろうとフィリップの邸を訪れたドリスは、邸内を取り仕切っているイヴォンヌ(アンヌ・ル・ニ)から、介護の条件である住み込み用の個室に案内される。
なんと彼は採用となり、1ヶ月の“試用期間”を与えられたのだった。
しかしフィリップはドリスに言う。
「2週間ともたないだろう。」

豪華な個室と専用の浴室に気を良くしたドリスは働く気になり、フィリップを介護するための訓練を受けるが、お気楽でマイペースな調子は崩さない。
マガリーを熱心に口説き、フィリップの麻痺を不思議に思って足に熱湯をかけて“実験”し、手に持てないことを忘れて着信音の鳴る携帯電話をフィリップに差しだす。
下ネタを連発し、容赦なくブラックジョークを飛ばしてくるドリスに対してフィリップは、シニカルなユーモアと深い教養で対抗した。
そんなやりとりを繰り返しながら、日毎に二人の交流は深まっていき、いつしか二人は“最強の友情”で結ばれていく…


首から下が麻痺し、一人では生きていけない車イス生活を送る貴族出身の大富豪と、スラム街で生まれ育ち、前科もある無教養な黒人青年。
フィリップが健常者だったなら決して交わることなど無いであろう二人が、彼が重度の障害を持っていたことから出会う。
貧困生活の中で様々な苦労を強いられ、黒人であることからの差別を受けてきたであろうドリスだからこそ、周りの健常者から“遠慮”され、同情する空気の中で“異質なもの”として扱われてきたフィリップに対して、自分の仲間といつも通りに付き合うのと同じ接し方ができたのかもしれない。
ドリスは、もちろんフィリップの重い障害を理解し、身の回りの世話をするのだが、接し方には遠慮は一切ない。
世間から「蔑み」の目で見られてきたであろうドリスと、周りから「憐れみ」の目で見られてきたであろうフィリップとが意気投合していくのは、自然な流れだったのではないだろうか。

スクリーンには、「介護とはかくあるべし」という風景が流れているのだが、全編を通してひしひしと伝わってくるのは、「コミュニケーションの取り方」とは、かくあるべしということだ。
大富豪のフィリップの邸には、いわゆる使用人達がたくさんいて、専門知識を持った“優秀な”介護人も雇うことができる。
彼の日常生活は、邸内の人々の手助けによって事足りるはず。
しかしそれは、あくまでもフィリップに“仕える”者、あるいは専門知識を持った者による介護としての接し方でしかなく、彼と対等に、ごく普通のコミュニケーションを取る者はいない。
そんな日常の中で、彼はいつしか傲慢で気難しい性格が彼を覆ってしまい、その結果介護人が1週間ともたずに逃げ出してしまうという状態に陥っていたのだろう。
また、親類や友人は、彼と対等のコミュニケーションを取れる位置にいるはずであるが、今度は彼の障害に対する“気遣い”という名の遠慮が働き、意識はしなくとも距離を置いた接し方になってしまう。
貴族の家柄でもあるフィリップは、こうして望みもしない「孤高の存在」となっていったのではないだろうか。

ドリスの過去を調べた親類が、親切ごかしに強盗の前科があるから注意しろとフィリップに忠告するが、彼は言う。
「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいいことだ。」
また、ドリスに心を許したフィリップが、不治の病で亡くした妻との思い出を語って打ち明ける。
「一番辛い障害は、彼女の不在だ。」
彼が募集したかったのは、専門知識を持つ介護人ではなく、自分と対等の、ごく普通のコミュニケーションを取ってくれる人間だったに違いない。


気取りが無く、お気楽でマイペースなドリスは、常にずけずけと言いたいことを言い、好きなように振る舞う。
そんな彼に対して、フィリップだけでなく、邸内の人々も心を開いていく。
ドリスが来てから、明らかにフィリップは生き生きとし、豪邸全体の雰囲気も明るくなっていった。
しかしある事件をきっかけにドリスは邸を去ることになり、フィリップは新しい介護人を雇わざるを得なくなる。
真面目で、専門的な知識が豊富な新しい介護人を採用するが、通り一遍の介護を施されて、フィリップの心は荒んでいく。
専門知識や理論による介護は、その対象者をモノとしか見ていないと言えるかもしれない。
そこには、人間同士による本来のコミュニケーションは成立しない。
あるがままの姿でコミュニケーションを取るドリスは、フィリップの“あるがまま”に自然に接することができ、それが結局“理想的な介護”のあり方になっている。
そして自然体の二人の間には、最強の友情と信頼が築かれることになるのである。

介護に限った話ではなく、コミュニケーションのあり方というものを、明るく楽しい雰囲気の中で改めて考えさせられる、ヒューマンドラマの傑作!


最強のふたり
2011年/フランス  監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ、クロティルド・モレ、グレゴア・オスターマン

「映画 ひみつのアッコちゃん」

2012年10月14日 | 映画
アッコちゃん(加賀見あつ子=吉田里琴)は、メイクやファッションが大好きな10歳の女の子。
ある日、パパが買ってくれた大切な鏡が割れてしまう。
おウチの庭先に「鏡のお墓」を作って悲しんでいると、鏡の精(香川照之)が現れて、呪文を唱えてのぞきこめば、何にでも変身できるという魔法のコンパクトをくれた。

半信半疑で試しにコンパクトに向かって呪文を唱えてみるアッコ。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、オトナのワタシになぁれ!」
コンパクトから出たまばゆい光に包まれたかと思うと、アッコは22歳のオトナ(綾瀬はるか)に変身!

冬休み。
アッコは塾の講習をサボると「22歳」に変身し、街に出てオトナの世界を楽しむことに♪
デパートに行ったアッコが、ママ(堀内敬子)が愛用している「赤塚」社の化粧品売り場で大好きなメイクを楽しんでいたとき、ひょんなことから赤塚のエリート社員・早瀬尚人(岡田将生)に、アルバイトとしてスカウトされる。
カッコいい早瀬に、小学生の心では気付けない恋心を抱くアッコだったが、赤塚は買収問題に揺れて大変な状況にあった。
難しいことは分からないアッコだが、新商品の開発で会社を立て直そうと頑張っている早瀬のために何とかしたい!
魔法のコンパクトを駆使して、あの手この手で赤塚を…いや早瀬を助けようとするアッコ。
次から次へと押し寄せてくる問題に、早瀬と共に必死で立ち向かうアッコの運命やいかに…!?


1962年、少女漫画誌「りぼん」6月号より連載が開始され、過去3回もTVシリーズが放映された、赤塚不二夫の代表作「ひみつのアッコちゃん」。
誕生50周年を記念して、綾瀬はるかを主演に据えて実写化された。
子供の頃、テレビで放映されていたアニメ「ひみつのアッコちゃん」。
小学生のアッコちゃんが主人公だけに、ストーリーは子供の世界における日常が描かれたものだった記憶しかない。
(さすがに女の子向けのアニメだったので、全て見ているわけではなく…)
そんなアニメの実写版て…!?というのが、本作を観る前の正直なところだった。
が、しかし……!

魔法のコンパクトを手に入れたアッコちゃんが、ひょんなことからイケメンの“オトナの男性”と出逢って憧れを抱くが、彼から「仕事のパートナー」として見染められてスカウトされ、一緒の時間を過ごすことになる。
彼と共に過ごせる時間が長く取れる長期休暇の冬休みを迎えたタイミングの良さも相まって、毎日22歳の自分に変身しては憧れの彼がいる会社に通うという、子供の頃に見たアッコちゃんには無いイメージの物語が実に新鮮♪
そして“悪い人たち”から“憧れの彼”を守るべく、コンパクトの魔法を駆使しながら、小学生らしい自由奔放さ、闊達さとピュアな正義を武器に困難に立ち向かっていく姿は微笑ましく、単純に応援してしまいながら心癒される思いもする。
“大人のアッコちゃん”にピタリとハマっている綾瀬はるかのキャラクターに拠るところ大なのだが、これほど見事にマッチした配役もなかなかない。
配役の重要性を改めて認識させられた。


女性にとっての「戦闘服」に例えられることのある化粧。
素顔にメイクを施すことで、よりキレイな自分になっていく化粧という行為は、女性の変身願望の表れ。
アッコちゃんのコンパクトは、そんな女性本来の願望の象徴であるということを、オトナとなった今(それもエエ歳をしたオトナになってようやく)ようやく知り、「ひみつのアッコちゃん」が色褪せることなく愛され続ける理由が理解できた。

スクリーンの中のアッコちゃんと同世代の女子には心ときめくに違いないラストシーンも可愛い、ラブコメ・ファンタジー♪


映画 ひみつのアッコちゃん
2012年/日本  監督:川村泰祐
出演:綾瀬はるか、岡田将生、谷原章介、吹石一恵、塚地武雅、大杉漣、堀内敬子、肘井美佳、内田春菊、柿澤勇人、吉田里琴、もたいまさこ、香川照之

「新しい靴を買わなくちゃ」

2012年10月04日 | 映画
妹に、半ば強制的にパリに連れてこられたカメラマンのセン(向井理)。
パリに着くなり、セーヌ川のほとりで妹スズメ(桐谷美玲)の“策略”にハマって置き去りにされてしまう。
スズメのあまりの傍若無人ぶりにブー垂れるセンは、気づかないうちにその場にパスポートを落してしまっていたが、あろうことかたまたま通りがかった女性がパスポートを踏みつける。
無残にも破れたパスポートに足を取られて、女性はすってんころりん!
転んだ拍子にヒールが折れてしまった。
女性はアオイ(中山美穂)という名の、パリに住んでフリーペーパーの編集をしている日本人。
センが折れたヒールを接着剤で直してやると、アオイはいたく感謝して、困ったときのためにと彼に名刺を渡した。

スズメがいなくなって宿泊先のホテルの場所さえ分からなくなったセンは、仕方なくアオイに助けを求めて電話をかける。
無事にホテルまでたどり着いたセンは、御礼方々アオイを食事に誘った。
話が弾んでついつい飲み過ぎたアオイは泥酔。
彼女の自宅まで送り届けるはめになったセンは、ホテルに戻ることもできずにアオイの部屋で夜を明かすことに。
その頃スズメは、彼女を日本に置いてパリに渡り、絵を学んでいる恋人のカンゴ(綾野剛)のもとを訪ねて、久しぶりの再会を喜び合うのだが…

パリ在住の妙齢の独身日本人女性・アオイと、たまたまパリに連れてこられた若手カメラマン・セン。
セーヌ川のほとりで、彼のパスポートを踏んで彼女のヒールが折れたことで始まる二人のドラマに、世の多くの女性はときめくに違いない。
ことにアオイと同年代の女性は、心ときめいてうっとりするはず(だと思う)。
そう!野暮なツッコミは一切封印して(特に大阪の女性は要注意!?)、我が身をミポリンに置き換えて、心ときめかせてスクリーンに入り込むのが本作の正しい鑑賞法なのである。
フランス語を駆使して活躍するフリーペーパーの美人編集者が、分別をわきまえた年下で超イケメンのカメラマンとセーヌ川のほとりで出逢い、美しい風景とお洒落な空間の中でつかの間の“大人の恋”に静かに燃え上がる。
オールパリロケが敢行され、室内の場面もパリのアパルトメントで撮影されていて、ロマンティックなシチュエーションをこれでもかとばかりに取り揃えられていて、全編ムード満点!
そもそも映画とは、非日常的な空間に我が身を置き、浮世の煩わしさから解放され、憂さを晴らすもの。
女性の皆さんには、しばし「パリでイケメンと恋に落ちるワタシ」という「妄想の世界」に我が身を置いて堪能していただきたい。

アオイとセン、スズメとカンゴという二組のカップル。
濃密に絡み合い、密着した愛情表現により情熱的に触れ合うスズメとカンゴに対して、アオイとセンの二人は冷静さを保ちながら少しずつ少しずつ距離を縮めていく。
対照的な二組を通して年齢や世代による恋愛模様の違いが描かれるが、“年相応の展開”によってセンとアオイの恋の行方はより「ロマンティック度」を増していて面白い。


男性諸氏には、斜に構えることなく物語と映像をしっかりと受け止めて、女性が憧れるものについて学び、実践あるいは実生活の中に応用していただければgood♪
「どうせオレは向井理とは大違いやわい!」と“逃げる”のではなく、我が身を冷静に見つめて、同じことを真似するのではなく(それは本当に“大違い”でしかないままになるのだから)、あくまでも自分流に応用していけば、ちょっと日常が変わるはず。
女性が楽しめる作品には、様々な“示唆”が示されているのである。


人気脚本化の北川悦吏子と、監督だけでなく敏腕プロデューサーでもある岩井俊二がタッグを組む。
恋愛物語はおてのものの二人ならではの、覇道を行くロマンティック・ラブストーリー♪


新しい靴を買わなくちゃ
2012年10月6日公開/日本  監督・脚本 北川悦吏子
プロデュース:岩井俊二
音楽監督:坂本龍一
出演:中山美穂、向井理、桐谷美玲、綾野剛、アマンダ・プラマー