日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 北朝鮮に関する国連安保理決議の件、中国国内メディアも報道しましたけどサラリと流した印象でした。2日経ったらもうサミットに軸足を移していて、安保理決議?何それ?というノリでしたね(笑)。

 お約束の自画自賛報道すら目につかなかったというのは、中共にとってよほど思惑通りに事が運ばなかった証拠。特に北朝鮮説得失敗で不機嫌なのでしょう。八つ当たりに「敵基地攻撃能力」を「先制攻撃」に故意にすり替えて日本を叩いていましたね。まあ不機嫌でなくてもセオリーな展開ですし、香港の新聞も概ねそんな感じでしたけど。

 「格」の話をすれば、説得に当たるとされて注目された武大偉・外務次官は一連の説得工作における露払いの役割でしかなかったのだろうと思います。外務次官というポストですから会える相手も話す内容も限られます。次官級協議で話題もたぶん六者協議復帰に限定、というのが実情だったのではないかと。

 その後に北朝鮮入りした回玉良・副首相が本来ミサイル発射や安保理決議を含めた北朝鮮の回答を持ち帰る役目を急遽担わされたのでしょうけど、この人も最高意思決定機関である党中央政治局常務委員ですらありません。胡錦涛・総書記がブタキムに電話ぐらいしたかも知れませんけど、結局は袖にされてしまいました。

 ……という流れだったのかなあと考えているのですが、実際どうだったのかは謎のまま。ただ中共系メディアが不機嫌ぽいので上のような展開を想像するのみです。

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 しかしやっぱり外患よりは内憂なのです。中国の今年上半期のGDP成長率が前年同期比10.9%に達していることが昨日(7月18日)正式に発表されました。第二四半期だけをみると何とまあ11.3%!「走り過ぎだろ。引き締めろよ手綱」といわれた第一四半期(10.3%)より大幅に加速しています(笑)。

 他の指標も安定成長に乗せる筈だった経済がオーバーペース気味に疾走していることを示していて、各地方勢力たる「諸侯」どもが胡錦涛率いる中央の指示を無視して突っ走っている構図が改めて浮き彫りにされた格好です。経済過熱懸念で報道もヒートアップ。

 「いやいやまだ大丈夫」と豪語するエコノミストもいますけど、増速していることで事態が香ばしい方向に向かいつつあることは確かです。以前ふれましたが、中国の場合は経済成長率が高ければ高いほど地域間格差や貧富の格差が拡大しますので、現時点での高度成長は逆に社会不安を高めることになりかねません。

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 今回はそういった旬の話題には背を向けます。アキバ系香港人のいう
「ACG」(アニメ、コミック、ゲーム)の中国国内における動きについて、鮮度が落ちないうちに取り組んでおきたいのです。……あ、ゲームには触れられていないのでアニメとコミックですね。

 ●国務院、アニメ・マンガ産業発展への「意見」発表(人民網日本語版 2006/07/15)
 http://j.peopledaily.com.cn/2006/07/15/jp20060715_61436.html

 原文はこちら。

 http://news.xinhuanet.com/newmedia/2006-07/15/content_4835442.htm

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 この記事によると、政府がこのほど「中国アニメーション・マンガ産業発展に関する若干の意見」なる通達を発しました。財政部、教育部、科技部、情報産業部、商務部、文化部、税務総局、工商総局、国家広播電影電視総局(放送事業を統括)など10部門が作成したものとのこと。

 主な内容は、

 (1)定義=アニメ・コミック産業とはいかなるものか。
 (2)中央政府・地方政府はアニメ・コミック産業振興予算を計上するように。
 (3)銀行や国内企業による投資促進とアニメ・コミック関連企業の企業制度確立を急げ。
 (4)アニメ・コミック産業の発展を支援するため海賊版など知的財産権保護を強化しろ。

 ……といったところです。「定義」から入っているところからみると、あるいは「アニメ・コミック」を初めて産業として公認した記念碑的な通達といえるかも知れません。

 ともあれ食べるのに精一杯な時代なら一顧だにされず、それゆえ商売として成立しない「どうでもいい」種類のものが「産業」として認められたことは、中国が歪んだ形ながらも経済発展を実現しつつあることの証拠といっていいでしょう。

 ただ、喜ぶべきことなのかどうかは疑問です。

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 「定義」を以て公認されたというのは、コミックとアニメ、またその関連グッズなどが「文芸」(文化芸術一般)のひとつとして中共に認知されたことになります。そして、それによって同時に枠をはめられたともいえます。

 ここで必ず持ち出さなければならないのは延安における毛沢東の「文芸講話」(1942年)です。ざっくりと言ってしまえば、

「『文芸』は人民に奉仕する存在でなければならない。クリエイターたる者は人民に奉仕する作品を創造することに一意専心、励まなければならない」

 というもの。当時は「人民」=「工・農・兵」と単純な色分けで済みました。現在はそれが複雑になり、資本家でも中国共産党員になれる時代ですから北京の紀念堂で充電中の毛沢東もビックリするでしょうが、「人民に奉仕する」という線はそのままでしょう。これがクリエイターを縛ることになります。

 「人民に奉仕する」ものしか創れないということ、それからその判断をするのが中国共産党だということ。……さらにもう一点、実は最も重要なのが現在の政治状況下ではアマチュア層が育たないということです。

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 私は副業でサブカルチャー関連業界に接する機会が多いのでこういう問題には非常に興味があります。一度反日サイトの掲示板でこの話題が出たとき例によって「なんちゃって香港人」として議論に加わった私がその「文芸講話」を引き合いにしてつらつらと上のようなことを書き連ね、

「政治的自由のない国では自由な発想が許されず、一定の枠内での創作を強いられる。だから結局いい作品は生まれない。天才が生まれることはあってもそれは例外的なケースで、海外と伍する実力を有した業界を形成することはできない」

「それに天才であれば恐らく国内の状況に嫌気がさして海外に活動拠点を移すだろう。米国のハリウッドで才能を発揮しているのが必ずしもアメリカ人とは限らないのと同じだ。より身近には、海外に出た中国人留学生の多くが戻ってこないことを思えばいい」

 という趣旨の書き込みをしたところ、稀有なことに糞青(自称愛国者の反日教徒)どもの喝采を浴びたことがあります。まあ連中にしても「ガンダム」ファンだったり「名探偵コナン」にハマっていたりしますし、劣化した糞青になると「おれは海賊版のガンダムを買ったことで反日を実行した!」という馬鹿もいます(笑)。

 糞青でなくても、「動漫節」(アニメ・コミックフェア)が開かれればコスプレの大半は日本モノだったりしますし。かつての台湾や香港がそうだったように、海賊版も相当数入っていることでしょう。

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 毛沢東の「延安講話」はいまなお聖なる掟のままですから、現在の中国にあっては表現の自由は認められていません。それで発禁本が出たり新聞が潰されたり記者が逮捕されたりするニュースが後を絶ちません。中共の枠内で創られた作品は面白くなくて海外では勝負にならない。才能のあるクリエイターは無念なことでしょう。

 ただ、そういうクリエイターがどれほどいることか。私たちが中国(ひいては香港や台湾)のテレビドラマやCMをみれば「ダサい」とか「ショボい」と思うことが多いかと思いますが、現地の視聴者の多くはそういう感想を抱かないでしょう。そもそもそういう環境で育ってきたクリエイターが海外でも通用する娯楽作品を生み出すことこそ容易ではないように思います。

 「ACG」に限定していうなら、「技術はあるけど娯楽性に欠ける」という状況が生じるでしょうし、現に副業で取材者として私が接してきた日本の著名クリエイターたちが韓国・香港・台湾の作品(中国は論外)について必ず指摘するのもその点でした。

「アイデアは悪くないし技術もある。でも作品に仕上がってみると面白くないんだよなあ」

 とのことです。

 何年か前、日本の某サブカルチャー業界でのキャリアが長い中国人を中心にチームが組まれ、香港と中国本土に一部の仕事を請け負わせてひとつの作品を世に送り出したことがあります。制作に参加したのは中国人、香港人、それに日本人です。取材者として立ち上げから完成までを眺めていた私が、

「感覚の違いなんかがあって大変だったでしょう?」

 と聞いたところ、中国人リーダーは、

「いや、本当に大変でした。日本人とは問題ないんです。それよりも香港や中国本土の連中とのギャップが大きくて苦労しましたよ」

 と答え、やはり、

「技術はあるけど娯楽性に欠ける」
「エンターテインメントに関するセンスがかけ離れていて話にならない」

 といったことを話してくれました。これは「表現の自由」に関わる問題であり、表現の自由が制限されているために生じる問題といっていいでしょう。

 政治や社会問題を扱った作品やルポルタージュもこの「枠」に苦しんでいますが、むしろアニメやコミックは娯楽性(面白いかどうか)という点で海外の作品との違いがより際立ってしまいます。

 この分野で中国が保護主義をとる、つまり海外の作品が流入することを防がなければ、中国ではたぶん日本のアニメやコミックが氾濫することとなり、鑑賞する方もまたそれを支持することでしょう。コスプレはもちろん、糞青だって「ガンダム」や「名探偵コナン」にハマっているくらいですから。

 そして、いきおい中共によってようやく公認された中国国内の「アニメ・コミック産業」は日本の下請けになるか、あるいは国内市場でもそれなりの規模があることから海外では見向きもされない駄作を量産し続けることになるでしょう。ただ海外作品の大挙流入となれば駄作の量産もままならず、結局は下請けに転じることになるかも知れません。


「下」に続く)



コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
うまくいくのかいな? (おっさん)
2006-07-19 20:50:05
中国原産のアニメ・コミックかあ・・・・想像が出来ないなあw

日本のアニメ・マンガの類は元々外国に売り込むために作っているものではなく(一部には、そういう前提で販売先の事情に合わせた作品もあるでしょうけど)、国内で生産と需要が完結するようなマーケットで、その中で人気を得るか、海外のバイヤーの目にかなった作品が海外へ出て行くパターンだと思うから、ある意味特殊な業界だと思う。・・・・中国では国が絡むとタブーやら縛りが多すぎて、そういう発展は難しいのと違うかな?
 
 
 
やっぱり技術じゃなくて内容が大事では (HAL)
2006-07-19 21:25:48
絵が綺麗だからではなく、内容が面白いからこそ作品は売れるのに、何か勘違いしているんじゃないですかね。

そして、その面白いコンテンツが生まれてくる土壌は一朝一夕には培われないかと。

スポーツ選手を育成するようにはいきませんよ。



どうも日本から海外進出している作品だけ見えてないんじゃない気がしますね。

海外進出しているようなメジャーな作品は全体の極々一部で、その裏には海外には出ていないけども素晴らしい作品が大量にあり、それらが積み重なった上でようやく生まれたものではないでしょうか。

大量の作品が消費者の目にさらされて、クリエイター同士が切磋琢磨して今の姿があると。

特にマンガが質・量ともに圧倒的で、アニメの大半はマンガが原作ですし、最近じゃドラマもそうです。ハリウッド映画でもいくつか日本のマンガを原作に持つものがあります。

(というか、最近はハリウッドですらいいコンテンツが無くて映画作りに困っている気がしてなりません)



これって中国じゃなくたって厳しんじゃないかな。
 
 
 
Unknown (SPSS)
2006-07-19 21:26:47
 毎回思うのですが、なぜ御家人氏はこうも中国経済の暴走を手放しで喜べるのですか?あれがこけるとこっちもただでは済まないのですが。
 
 
 
支那産コンテンツ (いとのこ)
2006-07-19 22:25:08
創作の線がだめでも、あっちには有り余る「事実」があるではないですか。

今まで隠していた「それ」をちょろっと持ってくるだけでも、そうそうたる一大巨編が………って、それこそあちらのトップが何を圧しても隠しておきたいものなのだからしょうがないですねえ。

ヤッパ、外に出て発表するしかないことになってしまいますねえ。



でもって、あちらが転けて困るのは、あんなところと知らずにもしくは知ってて手を出した一部の奴らだけじゃなかったでしたっけ?

早いとこ引き上げの算段をつけることをお勧めしますとしか言えませんなあ。



つか、何であんなとこに夢を持てるのかと……



しかし、こんなところでも「ジョジョ」ネタを見れるとは(ちがった?(w
 
 
 
最近、単純に物事を考える人が多いようで… (きんぎんすなご)
2006-07-19 22:37:57
まあ冗談や皮肉も言えない世知辛い世の中だけは勘弁。

さて最近、隆盛な萌えフィギュア物を見る度に、中国の女工達がどんな思いでこれを塗ったりしているのかなァと考えたりする訳ですが…

今回のアニメやコミックについての考察は、まことにその通りでありましてソ連時代の共産圏の芸術アニメを見れば、海外の下請け産業以外成り立たないのは必死であります。

韓国やフランスみたいに、国産ソフト利用を強制する保護政策を執れば別ですが…

まあそうは言いながらも、チェコスロバキア時代の「ゆかいなもぐら(クルテク)」は結構好きだったりします(笑

 
 
 
抗日英雄もの (はげ親爺)
2006-07-19 23:27:09
イデオロギーで縛って創るアニメってどんなものかなナ~? 見たいような見たくないような・・・・

きっと、「抗日英雄もの」みたいなものが量産されるんだろうな。
 
 
 
規制がある以上きついような気がする (通りすがり)
2006-07-20 00:11:47
さあいいもの作れって言われて作れるものでもないですしね。



中国絡みで仕事をしておりますが、現地のスタッフからは創造的な発想を生み出すバックボーンが欠けている以外に、最終消費者に楽しんでもらおうという意識が低い印象を受けますね。

娯楽に飢えているけれどその娯楽を生み出す術を知らないというか…。



日本のようにクリエイタの才能をほぼ制限しない環境、文化以外にさまざまなシステムを構築するところまでいたった社会ってのは稀有なのかなあと思います。
 
 
 
Unknown (さつき)
2006-07-20 00:19:51
こういう柔らかネタしかコメントできないんですが、「もののけ姫」が全米公開されていたときにアメリカにいた時のことです。「なんであんな残虐なものを子供に見せるんだ?」と近所のおばさんが言うんです。「アニメだって言うから連れて行ったのに!」

アメリカでさえ、「アニメ」=「子供のもの」=「夢を壊してはいけないルール」でがんじがらめです。容姿コンプレックスの日本人にとって「アニメ」=「無限の自由」だと考えれば、自由じゃないことを知る自由すらない中国では何をかいわんや、、、という気がします。
 
 
 
創作を刺激するもの (nurui)
2006-07-20 21:31:02
あえて、ポジティブな意見を言えば、たぶん中共の縛りが逆にとてつもない想像を生み出す原動力にもなりかねます。制限が多いほどそれをかいくぐり生まれる芸術もあるでしょう。(簡単に言えば俳句の575という制限)



中共は大嫌いですけどね。
 
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