一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『しらみつぶしの時計』

2009-01-24 | 乱読日記
新聞か雑誌の書評欄に載っていた本。
たまには日本のミステリでも読もうと思いついでに注文しました。

(後で知ったのですが)著者の法月綸太郎は20年のキャリアのあるベテラン。
遅筆で有名だそうですが、その作者の短編集です。


で、結論から言えばいまひとつでした。
語り口が硬いのは好みによるでしょうが、短編のなかで謎解きの解説の占める割合が高く、事件が起きてすぐに謎解きになってしまい、読者が読みながら楽しめるという構成の妙が足りない作品が多かったです(表題作はけっこう面白かったですが)。

もともとこの作者に慣れていない、というところもあるのでしょうけど。


ふと思ったのが、新人作家がこの短編で賞に応募したら賞がとれるだろうか、ということ。

もちろんベテラン作家は作品のレベルも一定以上あるでしょうし、固定ファンもついていて売上も見込めるのでしょうが、毎回賞レベルの作品を書くのは難しいわけで、それでも出版するというのは出版社の出している発行部数は少ない月刊小説誌向けに書いてくれた義理に報いる、というあたりの事情もあるのではないかと思います。
出版業界の仲間内になっていることがポイントなのではないでしょうか。

これは、今問題の「派遣切り」、なぜ正社員のリストラの前に派遣から切るのか、という問題にもつながっているような。
つまり正社員は、(少なくともかつては)一定の能力を発揮したことがあり、会社組織のいろいろ面倒な(不合理な)ことも文句を言わずにこなしている、といういわば「仲間内」という意識があるのではないかと。

逆に言えば問題は(実際にリストラが可能かどうかは別として)、企業にとって本当に現在の正社員を優遇するのが経営上最適な戦略なのか、というところにあるのではないかと思います。

過去のパフォーマンスだけを基準にしていないか、「その会社に特有の不合理なことを文句を言わずにこなす」ことが重要なのか(そもそも不合理な慣行をなくすべきではないか)、「仲間」意識が正社員の「ぬるま湯」と非正規労働者への差別意識を生んでいないか、という部分も冷静に判断したほうがいいと思います。
特に若年層の労働力を非正規雇用に依存している企業は、高齢者層を優遇措置などでリタイヤしてもらい優秀な若年層を正社員として取り込むほうが長期的には競争力を維持できるはずです。


書評のはずが話がそれてしまいましたが、本自身についてあまり語ることがなかったのでご容赦を。






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