アポイントの時間より早く着きすぎたので、近くの本屋で時間つぶしに入ったときに目に付いて買ったもの。
寺島実郎氏は雑誌記事とかテレビではよく見るものの本を読んだのは初めて。
比較的若いビジネスパーソンや学生に向けて、世界情勢や世界認識のあり方を熱く説いています。
寺島氏は、戦後の日本人はアメリカを通じてしか世界を見なくなってしまっていることを問題視しています。そして、世界認識のためにはさまざまな国や民族の立場から多面的に見ることの必要性とともに、そういった知識をフィールドワークや経験で裏打ちすることの重要性を語っています。
そして寺島氏は、本書の最後で、なによりもその知識を生かそうとす動機付けが一番大事だと言います。
わたしたちは、「世界を知る」という言葉を耳にすると、とかく「教養を高めて世界を見渡す」といった理解に走りがちである。しかし、そのような態度で身につけた教養など何も役に立ちはしない。世界を知れば知るほど、世界が不条理に満ちていることが見えてくるはずだ。その不条理に対する怒り、問題意識が、戦慄するがごとく胸に込み上げてくるようでなければ、人間としての知とは呼べない。たんなる知識はコンピュータにでも詰め込んでおけばいい。
世界の不条理に目を向け、それを解説するのではなく、行動することで問題の解決に至ろうとする。そういう情念をもって世界に向き合うのでなければ、世界を知っても何の意味もなさないのである。
寺島氏は三井物産の常務執行役員まで勤めたあと、現在は日本総研の会長や多摩大学の学長に従事しています。また、鳩山政権のブレーンの一人とも言われています。
この本も若者への啓蒙だけでなく、第二の人生の出発点での宣言という意味合いがあるのかもしれません。
(本書でも鳩山首相の「友愛」について語るとともに、それを単なるお題目にするのではなく、理念を実体化させるための努力が重要と語っています。)
政治的な立ち位置はともかく、具体的な経験を元に展開される話は面白く、かつ説得力をもっていて、引き込まれながら一気に読め、世界認識のありようなどの示唆にも富みます。
(僕自身、見方を変えて、というのが好きなことや、冒頭で昔のエントリで触れた地図の見方(参照)とか日本と中国の過去からの国力の関係の話(参照)などが出てきたこともあって、ツボにはまったという部分もありますが。)