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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ピラニア』

2012-01-09 | キネマ
地震で地底湖から出てきた凶暴な古代ピラニアがビキニコンテストの最中のビーチを阿鼻叫喚に陥れるという単純明快な映画。

劇場公開は3Dだったらしいですが、ビキニ美女とピラニアの群れとスプラッターという3Dにうってつけの素材を使って思う存分遊んで作った作品です。
「B級3D映画」というカテゴリができたとしたら、これはその嚆矢の作品として残るのではないでしょうか。
ちゃっかり最後は「2」もできるようなオチも用意しています。

もともと1978年の作品のリメイクだそうです。
映像のコントラストが強めで、昔の映画っぽいトーンを感じるのはそこを意識しているのでしょうか。
Wikipediaによると原作のほうも「『ジョーズ』の世界的大ヒットを受けて数多く製作された生物パニック映画の中でも、批評的・興行的双方で成功した数少ない作品。」とのこと。
当時CGもない中でどのように作ったか興味があるのでこっちのほうも機会があれば見てみようと思います。




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『フードインク』

2011-11-01 | キネマ

アメリカの農業や畜産業は工業化が進んだ結果、農民や労働者は企業に経済的に支配され、行政や司法と結びついた企業は食の安全の問題をないがしろにしている、というドキュメンタリーです。

マイケル・ムーア監督の作品のように扇情的ではなく、有機栽培をしながら企業との提携を模索する農家など比較的多面的な見方をしているので納得できる部分が多く、その分逆に心配にもなります。


畜産については、家畜を閉じ込めて運動をさせずに飼料はコーンを与えて「効率的に」太らせる、という話は今までも聞いたことがあったのですが、その結果草を食べている牛と違って牛の腸内でO-157などの病原性大腸菌が繁殖しやすくなること、また全米の食肉加工のほとんどはわずか13箇所の食肉処理工場で、それも劣悪な労働環境で行なわれており、感染が広がりやすい状態にあることなどは初耳でした。

そして安い食肉はハンバーガーショップなどに提供され、貧困地域ではファストフード店がスーパーマーケットを駆逐してしまい住民は「塩、脂肪、砂糖」を選ぶように強制されている実情が描かれます(「99セントでチーズバーガーは買えるのにブロッコリーは買えない」)。
その結果若年者にも糖尿病が増えていて、2000年以降生まれの米国人の1/3は糖尿病予備軍と言われています。


農業については、主として大豆をとりあげています。  

いまやアメリカで栽培されている大豆の90%がモンサントという企業の提供する遺伝子組み換え大豆(GMO)だそうです。
モンサントはRoun Upという強力な除草剤を持ち(これは日本のホームセンターでも見たことがあります)、同時に遺伝子組み換えでRound Up ReadyというRound Upに強い大豆の種を提供することで、農作業を飛躍的に効率化させました。

一方で1980年代に種子の特許が最高裁で認められた結果、モンサントの種子を使った大豆を収穫して次の栽培に種として使うことは特許権の侵害になってしまうため(これに関する最高裁判決に関わった判事のうちの一人は元モンサントの顧問弁護士だったとか)、農家は毎年必ずモンサントからGMOを買わなければならなくなりました。  

一方モンサントは調査員を雇いホットラインで密告を奨励し、種子を洗浄する業者や種子を使う農家を片っ端から訴えます。
そして多くの農家は弁護士費用が続かずに和解することになります。 
モンサントの種子に頼らない在来種を育てている農家も、周辺の畑から飛来したモンサントのGMOの花粉に汚染されてしまうと、収穫した種を次に播こうとするとモンサントに訴えられます。
この場合、農家の方で特許を侵害していないことを立証する必要があるそうです(立証責任は本当にそうなっているのかは直感的には疑問でしたが)。  
モンサントはオプラ・ウインフリーも彼女の番組で風評被害を被ったと訴え、オプラは結局勝訴したものの6年の期間と100万ドルの弁護士費用を負担したそうです。

「奴らは『教訓』を与えるに負けるとわかっていても訴える」  

特許で保護された独占企業が暴走するとやっかいになるという見本かもしれません。 
(日本では許認可で保護された地域独占企業の暴走が問題になってますが)  


映画ではオーガニック食品をウォルマートなどに供給し広めていこうとしている農場主が効率化の落とし穴を語っています。  

人間はいかにGPSを使ってコーンを作付けし、肥料をやり、収穫するかについては熱心に研究するが、牛にコーンを与えていいかとか誰も考えない。
これは技術屋の文化だ。
みんな技術漬けになっている。
「なぜ」とは誰も問わない。


さて、ふりかえって日本。
今日(月曜なのでもう昨日ですね)の新聞にこんな記事がありました。

住友化学、山形に農業法人 トマトとイチゴ生産 地元農家を組織化

地元卸や青果市場と連携するとともに、周辺の約50農家を組織化し、高効率の栽培方法の指導で統一ブランドによる大量・安定出荷を目指す。住化は農薬の国内最大手で、化学肥料や種苗・土壌を覆うフィルムなどを手がけており、取引先農家を組織化して農業事業拡大を目指す。

住友化学はモンサントと提携していて(農作物保護(雑草防除)分野におけるモンサント社との長期的協力関係について)、住友化学の米倉会長が会長を勤める経団連がTPPを推進するのも農業を米国化して企業支配しようと言う狙いがあるのではないかなどとも言われていますが、もしそういう狙いがあるとしてもそれは防がなければいけないと同時に、そこまでアメリカの農業が病んでいるのであれば、逆に日本の農業にもチャンスがあるのではないかとも思いました。
がんばれ日本農業!


また、日本の食肉業界の話としては、最近見つけたこちらが面白かったのでご参考。
食品の原産地や加工食品の原材料表示はきちんと見たほうがいいとつくづく思います。

食肉業界で働いてたけど質問ある?




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『インサイド・ジョブ』

2011-10-30 | キネマ
「世界不況の知られざる真実」という副題のとおり、リーマンショックに代表される米国に丹を発する金融危機が1980年代の金融規制緩和に端を発し、金融業界が政界、監督官庁、学者を自らの利害関係の中に巻き込む(「インサイド・ジョブ」化する)ことで誰も責任を問われずにリスクをとって高収益(高収入)を目指す巨大なものになってしまったことを、関係者へのインタビューを中心に構成したドキュメンタリーです。

CDO(資産担保証券)やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のしくみやサブプライムローンがなぜ急拡大したかなどの説明もわかりやすく、よくまとまっていると思います。

「インサイサイド」の人はほとんどインタビューを拒否しているので、周辺部の関係者を中心に構成されていますが、インサイドに近い人の白の切り方も人間観察として勉強になります。
印象深いのは学者系の人(当時政府機関や委員会にいて、現在大学教授の人など)。
たぶん自信があるから(または立場上断りにくいと思って)インタビューを受けたであろうにもかかわらず、皆、面の皮厚くしらばっくれたりせずに理屈で説明しようとして最後はつまってしまう人が続出します。
ビジネスの世界の人が全然悪びれずにいるのと好対照です。
米国でもまだ学者は中立的で清廉というイメージを保とうとしているのでしょうか(その割りに数十万ドル以上の報酬を受け取っていたりしますが)
また、スキャンダルで辞任したIMFのストラスカーン専務理事と、(そのかわりに)IMFの事務局長になったラガルド女史(当時はフランスの財務相)がともに登場するあたり人生の皮肉を感じます。


こういうドキュメンタリーが作られることで、問題の渦中にいる当事者が後日のインタビューにどのように答えるか(=後世の批判に耐えられるか)を意識すれば、身の処し方も少しは変わるのかもしれません。

たとえば、欧州債務危機とか福島原発事故とか。





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『ダイ・ハード2』

2011-10-17 | キネマ

テレビで『ダイ・ハード2』をやっていたので懐かしく観てしまった。

公開は1990年
ブルース・ウイリスもまだまだ若く、テロリストの端役で『ターミネーター2』で敵役のターミネーターをやった役者が出てたりと、とっても時代を感じさせる。

この作品は『○○2』とついた中では『エイリアン2』『ターミネーター2』と並んでかなり出来のいいほうだと思う。
CGに頼らなかったころの方が荒唐無稽な作品でもアクションにリアリティがあってよかったのかもしれない。


そして、1990年といえば日本ではバブルまっさかり。
でも当時はまだ今に比べると笑ってしまうくらいローテクだった。

インターネットももちろん普及していないし、映画でも連絡手段はFAX。
携帯電話は業務用くらいしか持っていなくて、しかも子供の弁当箱くらいの分厚い奴。
でも、アメリカの航空会社は飛行機の中に電話があったのはちと驚き。
そして皆断りもなくどこでもタバコを吸ってる。

20年も経つといろいろ変わるもんだ。


一番変わったのが先行きに対するマインドだったりするのがかなり問題だけど。


(昔話のおまけ)

先週ジャコビニ流星群が見えたらしい。

個人的にはジャコビニ流星群といえば、『アストロ球団』の「ジャコビニ流星打法」なんだが、話題に出たとき知ってる奴が居なかったのがちと悲しかった。


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長寿の秘訣

2011-08-28 | キネマ
夏休み最後の週末だからなのか、TSUTAYAで旧作DVD100円につられて、『LOST』のファイナルシーズンをまとめて借りてきました。

週末は土日ともゴルフなのに借りてくるのが「ロスト」ってどうよ、という感もあったのですが。


DVDのおまけでついてくる8分15秒でわかる今までのダイジェストというのはなかなか面白く、自分の記憶がいかに曖昧だったかがよくわかります。

でまあ、相変わらず謎が謎を呼ぶというのが最後まで続きそうな展開ですけど、結局このシリーズは

 「この謎の答えを知りたければ一緒に来い」

という決め台詞と、ついていったあげくに新しい謎が登場し新展開があるというのの繰り返しが一つのお約束になっているんだなとやっと気がつきました。



『24』では、ジャック・バウアーが事態を解決するために他の登場人物に

 「俺を信じろ!」

とという決め台詞でリスクをおかすように説得して危機を解決するんだけど、ジャック・バウアーを信じた登場人物はけっこう悲惨な目にあうというのと似ていますね。


こういう決め台詞があるのが長寿の秘訣なのかもしれません。


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『ウォール・ストリート』(思いっきりネタバレあり)

2011-08-25 | キネマ
監督のオリバー・ストーンの意図はわかりませんが、自分にない他人の持つ資源をなんらかの形で得ようとするという点では、「強欲」も「社会貢献」も「愛」も同根なんだということがわかる映画です。


(以下ほとんどストーリーを明らかにしてしまうので、それをご承知の上お読みください)





前作『ウォール街』でインサイダー取引で捕まったマイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーが刑務所から出所するところから始まります。

その後ゲッコーは著書を著し、サブプライム・ローンがバブルだと指摘し、講演で「今やファンドマネジャーは他人の金を高いリスクの投資につぎ込むことで自らの報酬を得ている」と警鐘を鳴らす金融評論家として脚光を浴びます。
(ゲッコーは投資する資金がないのでそうやって糊口をしのぐしかないという事情もあります。)

それは、一匹狼の投資家が自らの手金で勝負していた1980年代のスタイルから見ると、庶民や年金(これも元をたどれば庶民)の金を投資銀行がファンドと言うかたちで吸い上げる時代のほうがより不健全だと見えたのかもしれません。
(正確に言えばゲッコーは自らの投資のためにインサイダー取引に手を染めたわけですが、昔はそのように「不健全さ」がわかりやすかったのに対して、現在ではそれが表に出にくいということでしょう)

一方で主人公ジェイコブ(『トランスフォーマー』のシャイア・ラブーフ)は投資銀行に勤務し、ゲッコーの娘(ウィニー、ゲッコーを嫌い、非営利のニュースサイトを運営)と婚約しています。
ところがジェイコブの投資銀行はサブプライム崩壊の過程で倒産し、さらに(この間はいろいろあるのですが)彼が投資先として支援していた常温核融合技術(のようなもの?)の会社が資金繰り難に陥ります。

ゲッコーとウィニーの仲を取り持とうとしていたジェイコブは、ゲッコーからウィニーのためにスイスの銀行に信託財産として1億ドルを隠していること、それはウィニーが24歳になるまでは引き出せないが、ウィニー(受益者)とゲッコー(委託者)の同意で契約を解除すれば引き出し可能なことを聞きます。

そして「父親の汚れた金なんて」と嫌がるウィニーをジェイコブは「地球の未来のために、(僕のために)その金の一部を役立ててくれ」と説得します。

ところが、ウィニーが銀行でサインをしたあと、ゲッコーは自分がサインをして手元に資金を手にするや否や、その資金を投資先に振り込まず、それを元に自らの投資会社をつくり、サブプライムの崩壊をとらまえて一気に資金を10億ドルに増やし、さらに自らのヘッジファンドを立ち上げます。

この辺はゲッコーの面目躍如です。


一方ジェイコブはウィニーに別れを切り出され、投資先の会社は資金難に陥ります。
はめられた当初はゲッコーを激しく非難したジェイコブですが最後にゲッコーのオフィスを訪れ、非難する代わりにウィニーがジェイコブの子供を妊娠していることを告げます。
(でいろいろあって)最終的にはゲッコーはジェイコブはウィニーのよりを戻すために自ら投資会社に出資することを告げ、最後はみんなハッピーエンドになります。

ネットでレビューをみると最後のハッピーエンドが中途半端だという感想が多いようですが、よく考えるとジェイコブの行動は突っ込みどころ満載です。


・ジェイコブは最初から最後まで核融合会社に自分の金は1セントも投資していない。すべて顧客やガールフレンド(の父親)の金
・なおかつ相当ハイリスクな投資であり、しかもウィニーに持ちかけたのは自らの尻拭いをしてもらおうというもの。
・ジェイコブはゲッコーに資金を持ち逃げされたときに、ウイニーの金(そもそもはゲッコーの資産隠しの金)なのにあたかもゲッコーが自分の金を奪ったかのように激昂する(そもそも同じ業界の奴がはめられて逆切れしてるだけなんですが...)。
・ジェイコブは最終的には1セントも使わずにウィニーともよりを戻せたし核融合会社も救えて一番字ハッピー。

つまり、ジェイコブこそがゲッコー言うところの最近の投資銀行員の行動(他人の金でハイリスクな投資をし本人は報酬を得る)を一貫して実践しているわけ。


一方で、ゲッコーにとってみれば、資産が10倍に増えたあとであれば、その一部を投資するのは懐がほとんど痛まないわけで、それで娘との関係が修復するのなら安い投資なわけです。


そうするとウィニーは
・献身的なボーイフレンドの努力によって父親とも和解できた幸せな女性
なのか
・自分の欲得で動く男二人に振り回された挙句に本来自分が得るべき預金も失ったにもかかわらず丸め込まれてしまったお人よしの女性
なのかわからなくなってしまいますね。


では、ジェイコブは悪い奴なのか?

(ここで「愛はお金では買えない」という話は今回はひとまず置きます。)


ジェイコブの行動のポイントは、あたかも他人の金を投資させるために全身全霊をつくして説得し、一度コミットをえたらあたかもそれが自分の金であるかのように執着することにあります。

これを「情熱と努力と創意工夫と集中力」と言い換えれば、商売で成功する一つのコツでもあります。要するにジェイコブは商売上手なだけなのかもしれません。


ところで「他人の金を使う」ということ広くとらえると、自分にかけているもの(資産・技術・能力など)を他人から補うという日常よく見られる行動のひとつとも考えられます。

足りないものを補うためには対価として貨幣を払うこともあれば(これが日常生活ではほとんどを占めます)、互酬のこともあれば(親戚や友達づきあいがそうですね)、「善意にすがる」(親子・恋人関係)こともあるわけです。
竹内久美子流にいえば、親の庇護をうける子供が可愛さをアピールしたり、自らの遺伝子を残すために異性を獲得しようとしたりするのも同じです。


そう考えると、前作から一貫してゲッコーが問いかけている

 「強欲は悪か?」

という問いがよみがえってきます。


「欠けているものを補う」ことを否定したら人間の社会生活は成り立ちません。
(うろ覚えですが、マルクスも『経済学・哲学草稿』で「人間は受苦的な存在であることこそが、本来回復すべき情熱、人間の生の根源的な意味だ」というようなことを言っていたような-引用の文脈が違っていたらすみません-)

問題は何が欠けているか、という欲求が人によって違う(違いすぎる)ことです。
一方で上の命題は「強欲」に「過ぎたる欲求を持つ」という善悪・価値判断にかかわる意味を持たせるとトートロジーになってしまいます。



愛と新エネルギーへの投資用の資金を同時に得ようとするジェイコブの行動は「強欲」なのでしょうか、それとも「善」の行動なのでしょうか。



そうやっていろいろ考えるきっかけとしてはおもしろい映画だと思いました。



PS
前作のチャーリー・シーンが「その後」として一場面だけ登場して、けっこう笑えます。





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映画あれこれ

2011-08-24 | キネマ

震災関係は一休みして、夏の間に見たDVDの感想をまとめて。
一部ネタバレありですのでご注意を


『デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』

 副題があらすじを説明してくれているのは前作『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』と同じ。
『ハングオーバー』の製作陣が同作で怪演したザック・ガリフィアナキスと主演にロバート・ダウニーJr.を迎えて作ったコメディです。

2人のからみが見所の中心ですが、前作同様せりふや設定が細かいところまで遊んでいるのでいろいろと楽しめます。コーヒー缶に入った遺灰というのは『ビッグ・リボウスキ』の「本歌取り」なのでしょうが(さすがに散灰したときに風下にいたので遺灰をかぶってしまう、というところまでは真似てなかった)、似たような仕掛けがほかにもあったのかもしれませんがよくわからず。

普通に面白いが前作以上ではない。


 

 

『デート&ナイト』

 トム・クルーズとキャメロン・ディアスの共演『ナイト&デイ』の二番煎じだと思ったら、日本未公開なだけでもともと"Date Night"という原題でした。
DVDの配給元の小手先技だったようです。

倦怠期というか中だるみ状態の夫婦がひょんなことから事件に巻き込まれて・・・という小品。それなりに面白いんだけど日本ではヒットはしないだろうなという感じ。
これが劇場公開でそこそこ投資回収できるとするとアメリカでは日常の娯楽として映画館が定着しているんですね。

WebCGのコラムでカーチェイスがオススメとあったのですが、カーチェイスも最近は派手さ、ハンドルさばきというよりは発想の面白さ勝負になっているようで、カーチェイスだけに期待するとちょっとがっかりするかも。


 

『マチェーテ』

 『グラインドハウス』の劇中劇の予告編を監督のロバート・ロドリゲス自身が1本の作品にしたもの。
「よい子は見てはいけません」の超B級(形容矛盾?)アクションです。

登場人物のキャラ設定が単純明快で、それを主役のダニー・トレホ(居るだけでものすごい存在感)にくわえスティーブン・セガール、ロバート・デ・ニーロが「いかにも」という役回りを演じてます。
他にドン・ジョンソン(老けたよな~。還暦過ぎたんだね。TVシリーズ『マイアミ・バイス』が懐かしい)、ミシェル・ロドリゲス(相変わらず態度の悪い女の役ははまり役)、リンジー・ローハン(ひとりだけ子供が混じってるw)が固めてます。

マチェーテというのはナタのようなもので(「マシェーテ」って発音してたようだけど)、これでトレホが暴れまくるのが見所。
ストーリーは一応ありますけど、トレホの生命力の濃さと容赦ない殺戮てんこ盛りの映画です。

土用の丑の日に鰻を食べるのと同じような意味で夏場に見るのはいいかもしれません。


 


『バウンド』

 『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟の初監督・脚本作品(1996年)。
ストーリーの入り組んだクライム・ストーリー。

エロスも暴力も知恵比べもありで、どこかで見たような展開が続くのですが破綻なくまとまっています。

ウォシャウスキー兄弟のファンならもっといろんな楽しみ方があるのかも。




 

『ザ・タウン』

DVDの裏に「『ヒート』を超える銃撃戦」と書いてあって、その時点でだめじゃん(少なくともこのコピーは)、と思いました。

派手な銃撃戦という時点でギャング側としては追い詰められているわけで、『ヒート』もそこに至るまでのストーリーが大事だったんですけどね。

本作はボストンの犯罪多発地区のギャングの話。ベン・アフレックが主演、監督を努めていて、このギャングの町に生まれた若者の葛藤を描いています。
ただ、主人公は、女にはもてるし、警察より頭は切れるし、一般人を傷つけないことに気を使うしときれいに演じすぎて、「ザ・タウン」というタイトルが示す犯罪地区に生まれた若者の行き場のなさのようなものが感じ取れないのが残念。
ギャング仲間はそのへんを好演しているのですが、そうであるほど主人公が「正義の味方」に見えてきてしまいます。
義賊なわけでもないし(アメリカで義賊を名乗ると政治的主張を持った犯罪者=「テロリスト」になっちゃうのかな?)単なる犯罪者なんですけどね。

犯罪者(銀行強盗)を素材にしたアクション映画としてはよく出来ていますが、それ以上の深みがないのが残念。

あと、昨年亡くなったピート・ポスルスウェイトがいい味出しています。これが遺作になるのでしょうか。合掌。


 

 

  

『エクスペリメント』

1971年にスタンフォード監獄実験を題材にした映画としては、2001年に『es』というドイツ映画が製作されたのですがそれのハリウッドリメイクという、帰国子女みたいな経緯の作品。

舞台が現代のアメリカになっている以外は『es』同様基本的に史実に忠実なようです。
「事実は小説より・・・」の題材勝負の映画なので、素材の味を生かして丁寧に料理しています。

看守役を演じるフォレスト・ウィテカーは相変わらずいい雰囲気を出してます。
おどおどしている普通の人間が何かのきっかけで(いろんな方向に)変わるところを演じるのは上手。

実験が中止になったあと手に入れた報酬で主人公が先に渡航したガールフレンドを追ってインドを訪れます、こういうインドのイメージは1970年代と変わってないんでしょうか。


※ 実験を行なったフィリップ・ジンバルドーは"Stanford Prison Experiment"というサイトを作ってます。学術的な評価というよりはドキュメンタリー風なつくりなのがどうなのよ、という感じです。

 

 

 

 

『23年の沈黙』

ドイツ映画。
23年前に少女暴行殺人事件が起きた場所で同じ事件が繰り返されたかのように13歳の少女が失踪し自転車が発見される。この事件の伸展に23年前に犯行を傍観していた者、犯人を追い続けていた刑事らが巻き込まれていく、という話。

世界では、アメリカ(ハリウッド)流の感情表現でない生活がいっぱいあって当然だよね、というところでまずホッとします。
役者も感情表現が大げさでないかわりに、暗喩的な映像が多く使われるのはドイツ風。
それぞれの登場人物の屈折したり歪んだ内面がわかりやすい解説をされないまま投げ出されてくるのでずっしりと来ます。
しかもカタルシスのない終わり方。

たまにはこういう映画も見たいな、という人向けです。


 

『ミックマック』

『アメリ』や『デリカテッセン』の監督ジャン・ピエール・ジュネの作品。
最初の30分で荒唐無稽な設定とキャラのたった登場人物を並べ、残りの60分でそれを上手に料理する、というフランスのブラックユーモアあふれるコメディの典型のような作品。

なかなか面白いです。

珍妙な仲間が変な大活躍をするという点では『デリカテッセン』に近い感じ。
ストーリーの展開は予想できるのですが、それをどうやって面白く見せようかというサービス精神が旺盛で楽しめます。


 

 

  

  

  

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『RED』

2011-07-12 | キネマ
"RED"は、"Retired Extremely Dangerous"と呼ばれている引退したCIAの腕利きエージェントの略称。それをブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレンが演じるという企画物度全開の映画。

ほかにリチャード・ドレイファスとアーネスト・ボーグナインも「らしい」役で出ています。


同じオールスターキャストの企画物としては、楽屋落ちというか中途半端にひねって不完全燃焼だった『バーン・アフター・リーディング』とは好対照で、派手な道具立てとけれんたっぷりのストーリー展開が気持ちいい作品になっています。

ソ連の元スパイでロシア大使館の高官がいい役回りを演じていて、political correctnessに遠慮せず「強力な装備を持った悪役」を描けた冷戦時代というのは幸せだったという今の映画制作者のノスタルジーすら感じとれます。
武器も全部ローテクなのがいいです。

節電疲れのストレス解消に、夜にエアコンを思いっきり効かせてビールでも飲みながら観ることをオススメします。





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『ガルシアの首』

2011-05-09 | キネマ

1974年、サム・ペキンパー監督、ウォーレン・オーツ主演の映画 桐野夏生の『白蛇教異端審問』のなかのエッセイで取り上げられていて、この映画が」封切だったときサングラスをかけたウォーレン・オーツのポスター(これ↓)

を見たのを思い出して。


場末の男と女が人生の逆転をかけて一発勝負する映画なんですが、主人公男女の意見や考え方が短期的な好業績の可能性への挑戦対中期的かつ目に見える安定の対比になっていて、なんか企業経営をめぐる誰かと誰かの対立みたいだなと。

映画は、サム・ペキンパー監督で、しかも世の中が今よりも単純で、善悪・強弱がはっきりしていた時代だけあって、Political Correctnessに配慮をしない迫力があります。

余談ですが、白煙を上げながら走るオンボロ車を見ると、この頃は自動車の方が石油よりも希少価値が高かった時代だったなと感慨にふけったり、最後に主人公が乗って逃げるのがダットサン510(ブルーバード)だったりして、これは昔我が家にもあったし、日本車の海外輸出のさきがけの車だったことも懐かしく思い出されます。

 

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『ブタがいた教室』

2011-04-26 | キネマ
(2011.5.26追記あり)

小学校の授業の一環としてクラスで豚を飼って卒業までに食べよう、という先生とクラスの子供たちの実話を基にした話。

20年くらい前に週末のNHKで見たドイツのドキュメンタリー番組で、父親が生きている豚を1頭買ってきて自家製ソーセージにするまで、という番組を思い出しました。

ドラム缶のような大鍋にお湯を沸かし、豚を解体し、肉をひき肉にして容器になる内臓と組み合わせていろいろなソーセージを作ります。家族も父親を取り囲んで和気藹々の様子(そもそも豚がトコトコ歩いてきたときから盛り上がってる)や、心臓にレバーを詰めるのがお祖父さんの直伝で赤と白のグラデーションがきれいに出るのが自慢だ、などという様子を見ると、文化の違いを感じたものです。
(僕は葛西臨海水族園などの水族館の回遊水槽でマグロを見ると寿司が食べたくなってしまうので、どっちもどっちですが)


閑話休題

この映画は、ヒットの定石の「子供」と「動物」をダブルで使っているということを置いても、面白い映画でした。映画の大半はクラスの子供たちの討論にあてられていて、それがどこまでが台本なのかわからないほど迫真で見ごたえがあります。

そういう意味ではいい素材を生かして料理した、というのはこの映画自体についても言えますね。

それにしても、なにかあるとトラウマだPTSDだと言われるご時勢にこれをやった先生は立派だと思います。






(追記)

saitoさんからコメントをいただき、NHKの番組名とともにDVDになっていることもわかりましたので追記します。

番組は、1985~94年にかけてNHKで放送されたドキュメンタリー番組「人間は何を食べてきたか」で、上のエピソードは2話目になります。
DVDでは第一巻に収録されています。





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『英国王のスピーチ』

2011-04-25 | キネマ
ストーリー自体は予告編で大体わかってしまうのですが、構成や脚本と演技で見せるという、アカデミー賞の正道を行くような作品ではあります。

「君臨すれども統治せず」の英国王室の政治的位置づけや国民との関係、王族の立場と個人としての欲求や悩みとどう向き合ってきたかという背景が映画に厚みを与えているし、登場人物の台詞や立ち居振る舞いの端々に現れて楽しめます。

こういう映画が作られること自体が、イギリス王室と国民との距離感をよくあらわしているともいえます。

そういう意味では、いろいろとお悩みのご様子の雅子さまと皇太子殿下にぜひ見ていただきたいと。



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『オーケストラ!』

2011-03-27 | キネマ

 「人が死なない」という前提だと、大きく分けてラブ・ストーリー、おバカコメディー(たまに死ぬ)と中高年ががんばる話になるのですが、一番最後のカテゴリーを選ぶ傾向にあるのは歳のせいかもしれません。

さて、この作品は旧ソ連時代に共産党からのユダヤ系演奏家の排斥の指令を拒絶したため解雇され、劇場の掃除人として働いているボリショイ交響楽団の元主席指揮者だったアンドレイ・フィリポフが、キャンセルの代役公演を探していたパリの劇場からのファックスを見て、昔のメンバーでオーケストラを再結成しボリショイ交響楽団になりすましてパリに乗り込む。そしてフィリポフが指名した若手女性ソリストとは実は・・・という話です。

そして最後の公演のところで大団円を迎える、というきちんと定石を踏まえたうえで、かつ魅力あふれる作品になっています。

登場人物の造形がユーモアと皮肉たっぷりで、ロシア訛りのフランス語(字幕はがんばっていますがフランス人は大笑いなんだろうな)や楽団員のユダヤ人やジプシー(って言葉使っていいんだっけ?)のふるまい、パリの劇場の支配人や元共産党員、ロシアの成金などポイントごとの配役が効いています。
このへんの脇役の生かし方はさすがフランス映画です。


苦難や悲劇を乗り越えた先に希望がある映画、いい選択でした。

 


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『ホルテンさんのはじめての冒険』

2011-03-25 | キネマ

ノルウェーの映画

ノルウェーの首都オスロと第2の都市ベルゲンを結ぶ「ベルゲン急行」に乗務する運転士のホルテンさん。40年にわたって毎日決まった時刻に決まった仕事を生真面目にこなしてきた彼も、とうとう定年を迎えることになった。しかし定年退職の日、前の晩にお祝いの席を開いてもらった彼は、あろうことか人生初の大遅刻をしてしまう・・・
生真面目一徹だったホルテンさんがその後つぎつぎと巻き込まれるトラブルをきっかけにして、定年後の新しい人生を踏み出す、という映画です。

舞台がノルウェーのオスロの冬ということもあり、また室内の照度も節電モードの日本より低い上に、ホルテンさんは極めて無口で、にぎやかな場面は退職祝いの席ぐらいしかなく、他の登場人物も穏やかな人ばかりなので、とても落ち着いた映画ですが、要所要所の設定やエピソードが効いていて、ニヤッとさせられます。

「人生は手遅ればかりだ。でも逆に考えれば何でも間に合う」という言葉に後押しされて「定年後」(しかも67歳)であっても「老後」ではない人生にゆっくり一歩を踏み出すホルテンさんの幸せを祈りたい気持ちになります。

 

予告編を下にのせますが、けっこうネタバレがあるので、先に見ないほうがいいかもしれません。

 

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Our son of a bitch

2011-03-23 | キネマ
「人が死なない」という条件をつけると意外と該当する映画が少ないことに愕然としながら気分転換に借りてきたのが「松嶋&町山 未公開映画を観るTV」で紹介された映画のDVD化企画のうちの一本。
『スーパーサイズ・ミー』でマクドナルドの連続1ヶ月3食食べ続けに自ら挑戦したスパーロック監督がオサマ・ビン・ラディンを探しに中東を訪れて現地の人に聞いて回るというドキュメンタリータッチの映画です。

アル・カイダ自体は中東全体で根強い支持をされているというわけではなく、批判も多いが、それ以上に現状の長期独裁政権(2009年公開なのでエジプトなど)への不満と政権を支持するアメリカへの根強い不信感がクローズアップされてくるという展開になっています。

まあ、切り口自体は既にテレビのドキュメンタリーで取り上げられていそうで『スーパーサイズ・ミー』ほど個人的にはインパクトはなかったのですが、こういうのが3大ネットワークでは取り上げられないで映画になるというあたりがアメリカの国情なのでしょうか。


この映画のなかで、アメリカが(その掲げる理想にも関わらず)自国の利益のために独裁政権を支援してきた歴史を象徴する言葉として、そこでもフランクリン・D・ルーズヴェルトがニカラグアのソモザ大統領について言った"He may be a son of a bitch, but he's our son of a bitch."という言葉(参照)が引用されています。


?搶ャ平の「白猫黒猫論」もそうですが、「役に立つ」ことを最優先にすべきときもあるわけで、その意味では今回菅総理が震災救援・復旧担当として入閣を打診するなら、自民党の谷垣総裁でなく、小沢一郎ではないでしょうか。

もともと岩手は「小沢王国」なので土建業者などには太いネットワークがあるはずで、急場の課題である瓦礫の撤去と道路の応急修理による物資輸送ルートの確保には最適の人材ではないでしょうか。
それに今回は「小沢詣で」をする業者だけでは到底処理しきれないほどの仕事量があります。
仕事がないところに公共事業を出すから利権に結びつくのであって、キャパを超える仕事量があれば利権にはつながらないはずです。
「小沢王国」の君主としては東北3県+福島・茨城の救援・復旧を頼まれたら「できない」とはいえないはずだし「一兵卒」としてコネクションを総動員して働くのではないかと。
それに、資金使途には厳しい眼が向けられるし今度問題になったらさすがにアウトなのは本人も十分承知でしょう。


いいアイデアだと思うんだけどなぁ。












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『息もできない』

2011-02-12 | キネマ
公式サイトの説明を借りると、こんな感じ

「家族」という逃れられないしがらみの中で生きてきた二人。父への怒りと憎しみを抱いて社会の底辺で生きる男サンフンと、傷ついた心をかくした勝気な女子高生ヨニ。


ストーリーを文章にしてしまうと意外と平板になってしまうのですが、ディテイルの描き方が徹底していて、画面からの圧力を感じる映画です。
音楽が流れず、効果音も最小限で、手持ちカメラで登場人物を大写しにしながら会話と表情で押してきます。


登場人物はそれぞれ、彼/彼女なりの愛情や善意を持っているんだけどそれがいつも相手に届く一歩手前。そんな行き場のない感情の矢がいろんな方向に飛び交って見るものを切なくさせます。

普段僕らが切り捨ててる、または切り捨てようとしている意識の部分を表に出して見せられるので、筋書きを追う(途中でフラグが立っていて先は予想できます)だけでなく、自分がそれぞれの立場にいたらどうすると考えながら見ると、問いかけてくるものの多い映画です。








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