さくらの花びらの「日本人よ、誇りを持とう」 からの転載です。情報を読む姿勢としては、悲観的に見ることが必要とおっしゃっています。これはあらゆる可能性を検討するという姿勢です。楽観的な気持ちというのは、たしかに人生においては必要ですが、それは情報判断とはまた別の話であろうと思います。
TPPへの参加かどうかの報道が連日にぎわっています。
そして、TPPに関する情報もあふれかえっている状況です。
その「情報」に関して中西輝政氏は著書『情報を読む技術』の中で、
情報を読む姿勢として「楽観主義」と「悲観主義」という対比で、
どちらが的確に情報を役立たせることができるのかを書いています。
たとえばTPPの交渉で「とにかく参加して、悪ければ離脱すればよい」という楽観的考えと、
「いや、交渉に参加したら簡単には離脱できない」という意見があります。
さらには、「中身がわからない状況で交渉参加はすべきではない」という意見とともに、
「中身がわからないからまずは交渉に参加するのだ」という意見があります。
肝心の政治家自体がわかれている状況でも、マスコミの報道はどちらかというとTPP参加推進の論調なので、何も知らない国民は、離脱できるなら交渉くらいは参加してもいいのでは? とか、
よくわかんない、というところが大半かもしれません。
ここで私は自分の意見としてTPP参加、不参加については書かず、
中西氏の著書を参考に、あえて考えることにしたいと思います。
これはTPPに限らず、あらゆる「情報」にあてはまることです。
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ある情報に接したら、まずは、悲観的にとらえてみる。これが、情報を的確に読むためのスタート地点です。情報に対する基本的な姿勢、といってもいいでしょう。
情報というものは、つねにあやふやなものです。「百パーセントたしかな情報」など、まずありえません。だからこそ、情報を楽観的にとらえるのは危険です。楽観的にとらえたとたんに納得してしまって、それ以上、考えなくなってしまうからです。
朝 のニュースのお天気コーナーで、「今日は雨になるでしょう」といっていたとします。ところが窓の外を見ると、雲一つない晴天です。これで、「なんだ、雨な んか降らないさ」といって傘を持たずに出るか。「降るかもしれないし、降らないかもしれない。午前中は晴れて、午後から降るかもしれない」と考えて、折り たたみ傘を持って出るか―
情報を読む姿勢としては、後者の方が正解です。私はこうした対比を、「愚かな楽観主義」と「活力ある悲観主義」と呼んでいます。
愚かな楽観主義は、情報を自分の都合のいいようにとらえて、あるいは自分の都合の悪い情報にはフタをして、考えることをやめてしまいます。言い換えれば、自分の「実感」でしか、ものごとをとらえないといったらいいでしょうか。
しかし活力ある悲観主義とは、いったんは悲観的に情報をとらえた上で、いろいろな可能性を考えます。そして、それぞれの可能性にシナリオを描き、結論を用意します。
こ うして考えれば考えるほど、情報を読む精度は上がります。考えた分、危機に備えることもできますし、状況の変化に対する考え方や行動の柔軟性、迅速性も高 まります。「悲観」を出発点にすると、自ずとより正しく考え、行動できるようになるのです。日本人という国民は、この過程を踏むことを非常に苦手としてい ます。天気予報なら雨に降られるだけですが、これが国際関係となるとどうでしょう。
た とえば、中国の軍事予算が年々上がっているという情報があります。アメリカをはじめヨーロッパからインドに至るまで、各国の評論家も中国の危険性を指摘し ています。ところが現在、私たちが日々、耳目に接する中国といえば、せいぜい、経済発展に勢いを得た買い物客が秋葉原や銀座に押し寄せている、といった程 度のものでしょう。ここで私たち日本人は、満面の笑みで買い物袋をぶら下げる中国人を見て、「かつてのバブル期の日本みたいに、経済が発展すれば平和的に なるに決まっている」と、安心してしまいがちです。「中国の軍事予算が上がっている」という情報を、目の前の中国人を見た「肌身の実感」で楽観的に読みか え、思考停止してしまうのです。これでは、相手が「お天気」から「中国」に変わっただけで、「愚かな楽観主義」であることに変わりありません。困ったことに政治家までが、この楽観主義に陥りがちです。
日本には国家戦略がない、とよくいわれますが、その根本的な理由はただ一つ。国のトップが、極力楽観主義を廃し、「Aに転んだらC、Bに転んだらD」という具合に、一つの情報に対していくつかシナリオを描いておく労力を避けているからです。「この情報は事実に間違いない」と確定して初めて策を講じるから、時間がかかるだけでなく、大抵は遅すぎて役に立たない。それだけではなく、シナリオで考えないから、戦略もビジョンもなく、つねに行き当たりばったりになってしまうのです。
歴 史をひも解いてみると、優れたリーダーは、ほぼ例外なく悲観論者です。前向きにことをいえば、人気は高まるでしょうが、国のかじ取りを誤りかねません。だ からこそ、優れたリーダーは、プレッシャーに耐えながらも、あえて黙して悲観主義に徹し、あらゆる事態に備えてきたのです。
(中西輝政氏著書『情報を読む技術』より)
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これを読むと、余計な解釈は不要であります。
民主党の歴代首相(歴代といっても鳩山、菅)、そして野田首相に欠けているものこそ、
国家にとって一番危険だということが理解できます。
TPP交渉参加を主張する人たちの言い分は”楽観”過ぎると思えてなりません。
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