安倍総理が今日、TPP参加表明を行うという報道が一昨日からあって、なんとも言えず不安というか、気が沈むというか、ほんとに日本はどうなるのだろうという心配で落ち着かない気持ちでした。
メディアの報道は、参加推進を誘導するような先行報道が多いという話なので、正確な情報はないかと探しても、ないですね。三橋貴明さんのブログのみがずっとこの問題を取り上げておられて、唯一の頼りですが、安倍総理の心の中までは推測するしかありません。安倍総理がTPPの実態を解っておられるというのは確かのようですが、戦後レジーム脱却のための舵取りにおいて、チャンネル桜の水島さんが言われるように、それをさせたくないアメリカが安倍おろしに向かう可能性のある中で、あまりアメリカの意志に反する行動が取れないので、TPPの参加表明をせざるを得ないというお話もあり、第一次安倍内閣の轍を踏まないように慎重な政策決定をする上で、果たしてこのTPPをどのように決断されるのか、なにか気が気でない思いです。
それにしても、このTPPの実態について、ほとんどのメディアは関税の問題のみしか報道しません。あまりにも国民の知る権利に答えてなさすぎです。もしネットがなければ、国民は知らないうちに生活の安全、環境の保全の権利を奪われて、取り返しがつかなくなっているでしょう。
今回の自民党の決議案さえも、主要メディアは全文掲載をせずに、関税撤廃という事のみに問題を矮小化して伝えています。このような大事な問題を国民に知らせないマスコミというのは、存在意義があるのでしょうか。国民を馬鹿にしている気がします。勝手に自分たちの作ったイメージのみを押し付けて、国民を誘導するのが仕事だと思ってでもいるようです。
アメリカの市民団体が抗議しているように、TPPの26章ある項目のうち貿易に関するものは2章のみで、あとはすべてグローバル企業の権利を拡大し、国家が国民の健康、安全、環境、国防などをまもる権限を奪うものとなっているということです。
さて、また三橋貴明さんのブログから転載です。
さて、予想通り大手紙には抜粋(切り貼り版)しか載らない自民党の「TPP対策委員会の決議」ですが、農業協同組合新聞に全文が掲載されました。
『【TPP】自民党TPP対策委員会の決議
http://www.jacom.or.jp/news/2013/03/news130314-20126.php
自民党のTPP対策委員会は3月13日夜、「TPP対策に関する決議」(本文参照)を採択した。各グループ会合のとりまとめ報告とともに、14日夕の外交・経済連携本部で正式の了承する。
【TPP対策に関する決議】 平成25年3月13日 自由民主党外交・経済連携本部 TPP対策委員会
本年2月22日の日米首脳会談の結果、安倍総理とオバマ大統領は、「環太平洋パートナーシップ」(TPP)交渉に関する共同声明を発表し、「聖域なき関税撤廃」が前提でないことが文書で確認された。これは、安倍新政権による日本外交の成果と考えられる。
これを受けて、自由民主党外交・経済連携本部に置かれたTPP対策委員会は、政府並びに関係諸団体等から意見聴取を行うとともに、分野毎の検証作業など を通じ、全党挙げての集中的な議論を行った。これらの結果として、以下の通り決議し、安倍総理に対し、申し入れを行うものである。
1.先の総選挙において、自由民主党は、TPP交渉参加に関し6項目の約束を国民に対して行って選挙戦に臨み、政権復帰を果たした。これらの公約は、国民との直接の約束であり、党として必ず守らなければならない。
このため、政府は、国民生活に対する影響を明らかにし、守るべき国益を如何にして守るかについて明確な方針と十分な情報を国民に速やかに提示しなければならない。また、本年2月27日に自由民主党外交・経済連携調査会で採択した「TPP交渉参加に関する決議」を遵守し、その実現に向けた戦略的方針を確立するべきである。
2.TPP交渉参加については、国民の間に様々な不安の声が存在している。
(1)もし、聖域の確保が達成できなければ、食料自給率の低下、農地の荒廃、担い手の減少などにより、国民に安定的に食糧を供給する食料安全保障が確保できなくなるのではないか、離島や農山漁村地域などにおける社会基盤が維持できなくなるのではないか、また、美しい故郷と国土を維持する多面的機能が維持できなくなるのではないか、との声が大きい。
(2)国民の生活に欠かせない医療分野でも、これまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度が損なわれるのではないか、また食の分野においては、食品添加物や遺伝子組換え食品などに関する規制緩和によって食の安全・安心が脅かされるのではないか、との強い懸念が示されている。
(3)さらに、我が国の主権を損なうようなISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)が導入されるのではないか、政府調達、金融サービス等について、我が国の特性を踏まえることなく、国際調和の名の下に変節を余儀なくされるのではないか、といった様々な懸念が示されている。
3.一方、今TPP交渉に参加しなければ、今後、我が国の人口減少・高齢化が一層進む中、アジア太平洋地域の成長を十分に取り込むことができず、我 が国がこれまで築き上げてきた国民生活の水準、国際社会における地位を保つことはできなくなるのではないか、との懸念する声も大きい。また、世界第3位の 経済大国である我が国が、アジア太平洋地域における貿易や投資等の経済ルール作りに参加しないことは、この地域における政治的・経済的リーダーシップの低 下につながるとの声もある。
さらに、我が国にとって日米関係が外交の基軸であることにかんがみ、今後のアジア太平洋地域における経済連携を進めるに当たっては、TPP交渉に参加し て、米国との一層の経済的連携を深めるとともに、守るべき国益の議論のみでなく、交渉において攻めるべき点を攻めていくべき、との大きな声もある。
4.このように、国民の意見が大きく分かれる中で、我が国がTPP交渉参加の是非を判断することは、容易ではない。安倍総理におかれては、岐路に立つ日本 の経済・社会が今後進むべき方向を選択するという高い見地から判断願いたい。なかんずく、上記のような様々な意見を十分に尊重され、我が国の自然的・地理 的あるいは歴史的・社会的条件、我が国を取り巻く国際環境、経済再生の重要性等を踏まえ、国家百年の計に基づく大きな決断をしていただきたい。
5.なお、仮に交渉参加を決断する場合において、TPPが国民生活に大きな影響を及ぼし得ることから、以下の諸点を確実に実行すべきである。
この場合において、特に、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする。
(1)政府は、別紙の党内5グループ並びに21作業分野に対する検討チームの取りまとめの内容を踏まえ、2国間交渉等にも留意しつつ、その主張が交渉結果にしっかりと反映されるよう全力を挙げ、交渉の進展に応じ、適時に十分な情報提供を行うこと。
(2)これまで、国内の各産業や各制度については、省庁ごとに個別に交渉することが多かったが、TPP交渉においては、強力な交渉チームを作り、また閣内の連携を強く保つことにより、政府一丸となって国益を十分に実現していくこと。
[結び] 仮にTPP交渉に参加する場合は、国益がしっかり守られ、結果として日本の繁栄につながるよう、政府と与党が一体となって交渉を進めるべく、自由民主党外交・経済連携本部内のTPP対策委員会と政府は緊密に連携すべきである。
また、各国の主張を冷静に見極め、我が国としての主張を効果的に展開していくために、党としても国会議員による議員外交を、戦略的、かつ、積極的に展開してまいる所存である。 以上』
農業、医療、国民皆保険制度、食の安全・安心、ISD,政府調達、金融サービスなど、元々の「六つの判断基準」を基本的には踏襲したものになっています。(まあ、六つの判断基準にしても自民党党内で決議したものなので、当然なのですが)
「別紙の党内5グループ並びに21作業分野に対する検討チームの取りまとめの内容を踏まえ」
というのは、昨日、一部だけ掲載した各分野におけるとりまとめになります。別紙がどこかに掲載されていないか探したのですが、見つかりませんでした。
自民党のホームページに上記決議が掲載されるときは、合わせて公表されると思いますが。(一応、自民党は21分野すべてについて、意見のとりまとめをしています。結構「不明」が多いのですが)。
先日から書いていますが、例えば国民皆保険制度の場合、
「国民皆保険制度を維持する」
と、
「国民皆保険制度を事実上、形骸化させる」
は両立し得ます。
韓国のように、特区を作られて自由診療の病院サービスが大々的に提供されたり、あるいは混合診療拡大で医療費(自由診療分)を吊り上げていくなどにより、国民皆保険制度は維持したまま、アメリカの医療保険サービス会社に「ビジネスチャンス」を与えることができるわけです。
というわけで、自民党の検討グループは、
「混合診療の全面解禁や営利企業の医療参入を認めないことなど、我が国の安心・安全な医療が損なわれないように対応すること」
「医薬品価格ひいては医療費全体の高騰をまねくような薬価制度の改悪を受け入れることがないようにすること」
と、アメリカ医療保険サービス会社に日本市場が「食われる」ことが無いように「枠」を設定しているわけです。
何が言いたいのかと言えば、上記のような情報こそ、日本の新聞が掲載し、国民に伝えるべきで、さらに自民党は別紙としてまとめているにも関わらず、どこのメディアも取り上げないのは、つくづく「異常」という話です。自民党のホームページに別紙が掲載されたら、本ブログで取り上げたいと思います。
「交渉の進展に応じ、適時に十分な情報提供を行うこと。」
韓国の米韓FTAがすんなり国会を通り、後で大騒ぎになった理由は、この「情報提供」が無かったためです。国内法の上に立ち、事実上の憲法化する国際条約について、国民に「隠蔽」したまま進めることは許されません。
無論、憲法で条約締結は内閣の専権事項になっていますが、TPPは「国内法」に多大な影響を与えるため、単なる「条約」として捉えてはならない性質のものなのです。
「聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする。」
以前の「原案」では、「脱退も辞さない覚悟」となっていましたが、
「覚悟じゃだめだ!」
という声が大きく「脱退も辞さないものとする」に表現が変わったそうです。
本日、安倍総理大臣がいかなる発言をするのかは知りませんが、自民党がそれなりにまともな判断基準を出し、さらにTPP加盟国側が、
「日本はカナダやメキシコのように、前提条件を付けずに交渉入りすべきだ」
と言ってきており、加えて妥結前に9月の交渉参加のみのワンチャンスで、一体、いかなる「交渉参加表明」ができるのでしょうか。発言がどうなるかはわかりませんが、取りあえずTPPにより「日本の形」が壊れることが許せない日本国民(わたくし含む)にとって、上記の決議作成に尽力した自民党内の議員たちは「味方」であることを理解してください。
例えば、安倍政権が「聖域」「死活的利益」を無視したTPP推進に邁進するような事態になった場合、それを制止できるの可能性が最も高いのは、自民党内の多数派であるTPP反対の国会議員たちなのです。彼らを通じ、国民が意志を政治に反映させようとすることは、これはもう民主主義の基本でございます。
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