先日ニュースで、宮内庁が皇后陛下のご養蚕というビデオを作成したという話を聞いて、見てみたいと思っていましたら、日本政策研究センターのホームページで紹介していました。
皇后陛下が、先の香淳皇后から 受け継がれて、毎年行っておられるご養蚕の様子を映したもので、皇后さまがやさしく微笑みながら丁寧に細やかに蚕の世話をされるご様子に、日本の皇室の在り方そのものを垣間見るような静かな感動をおぼえます。
世界の君主のほとんどが、歴史の戦いの中で覇王として君臨している中で、日本の天皇、皇室というものがそうした君主とは違い、常に国民の手本と成るように国民全体の宗家のような存在として、常に率先して行動される君主なのだということを感じました。
天皇陛下は、自ら田植えをなさり、稲を育て、収穫されて、皇祖天照大御神に、新米を捧げられますが、皇后陛下も、自ら蚕を育てられて、働くことの意義、素晴らしさ、尊さ、そして働くということへの感謝の気持を、表しておられるように思えます。
日本政策研究センターの明日への選択の中の記事に次のように書いてあります。
>そこで育てられる品種に「小石丸」がある。養蚕業の衰退とともに皇居でしか生産 されなくなった貴重な品種だが、御養蚕所でも昭和の終わりには一旦、飼育中止が検討されたという。《しかしその時、皇后さまが「日本の純粋種と聞いてお り、繭の形が愛らしく糸が繊細でとても美しい。もうしばらく古いものを残しておきたいので、小石丸を育ててみましょう」と仰せられたことで、引き続き飼育 が続けられることになったのです。
この「もうしばらく古いものを残しておきたい」というお言葉にもうかがえるように、皇后さまはやはり歴代の皇后さま方が守ってこられたということを大切に思われていたのではないでしょうか。>
この小石丸という日本の純粋種を皇后陛下が愛おしくお思いになり、育て続けられた結果、その小石丸から取れる絹糸が、正倉院宝物の修復に役立つこととなり、素晴らしい古代織物の再現が可能となりました。
日本が技術大国であったり、職人技を尊び、品質管理が優れているという国民性には、こうした天皇、皇室のそれを尊ぶ姿勢が根底にあるからだと思います。誠 意を込めた仕事の素晴らしさ、それを自ら行動で示される歴代天皇、皇后陛下の伝統が、日本を作っているような気がします。あるいは、そうした国民性がこの ような皇室を生んだとも言えるかもしれません。
まさに神道そのものの世界観であり、日本の自然観、宇宙観、人生観が結実したご皇室の姿に、深い感動を感じました。
皇后陛下のご養蚕