メディアのほとんどがTPPを推進しているという話ですが、そのせいで、非常に印象操作、情報操作をした報道をしているようです。このTPPが日本にとって、第二の占領だといわれるくらい、国家主権を失うような条約となることは、少し勉強すればわかります。
我が国では国内法の上に国際条約が位置するような法体系となっており、条約で決めたことは、国内法を変更してそれに合わせたり、国内法の超法規的な例外のように位置したりするようになります。
このTPPに関して、アメリカは、日本の市場に参入し輸出を増加させ、アメリカの雇用を増やすという目的で行うと、オバマ大統領ははっきりと言っています。
アメリカがこのTPPで掲げている貿易の自由化というのは、関税だけの話ではありません。日本の国内のいろいろな法的規制、それらは国民の健康や、あるいは国家としての主権を維持するための国益、たとえば空港、港湾、海上水路、鉄道いろいろな国の重要な施設を日本国家や日本国民自身が管理するように規定した法律など、そういう規制をすべて自由化して、そうした分野にもTPP加盟国である外国資本つまりはアメリカが参入してくるということです。
これは内国民待遇と呼ばれるもので、加盟国間では、自国の国民と他の加盟国の国民とを差別しないという規定があり、他の加盟国の資本を受け入れざるをえない のです。
極端には、日本の自衛隊の軍事関係の技術もすべてにアメリカが入って来るということにもなります。そうしたことを阻止できないような状況が起こってくるということです。そして、それを国益のために守ろうとすれば、ISD条項というものがあって、参入しようとしたアメリカ資本が、日本の国を訴えることができるのです。
ISD条項等による紛争処理機関は、アメリカの中にあって、この機関は、加盟国の安全保障だとか主権だとかそういうことには一切関係なく、純粋に貿易の自由化ついてのみ、企業の損失を判断するところであり、たいていは、訴えた企業側が勝っています。
さらにアメリカの企業のためにあるような機関であって、アメリカ自身が国益を損なうような時は、アメリカでは国内法が条約より上にあるので、アメリカでは全く自国が損をすることはありません。実際にカナダやメキシコはNAFTA(北米自由貿易協定)をアメリカと結びましたが、たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していました。同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にあります。ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えたのです。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなりました。
【宇都隆史】正しい報道を!国を憂えるからこそのTPP反対論[桜H25/2/15]