*井笠鉄道さよなら運転(1971年3月31日)、この日の写真はネットに流れていないようです。
昨年末に、鉄道好きでカメラ好きの知人と話す機会がありました。
岡山県の私が育ったあたりを走っていた井笠鉄道が話題になったのです。井笠鉄道は、鉄道好きには評判の<ナローゲージ>、<軽便鉄道>だったようです。
その時に見せようとして、すぐに出てこなかった写真が、先日ひょっこり出てきたのです。
JR山陽本線で、岡山県と広島県の境に、笠岡駅があります。瀬戸内海に面しています。笠岡駅から北に向かう鉄道がありました。終点は井原駅です。そこに2つの支線もありました。これが井笠鉄道です。むろん今は廃線です。
私は、その井原近くで育ちました。この井笠鉄道を見ながら育ったのです。年に数度は乗る機会もありました。
おとなになって大阪に出てからの帰省時には、笠岡駅から井笠鉄道に乗って40分、終着の井原駅のひとつ手前の七日市駅でおり、30分ほど歩いていたのです。
子どもの頃、山陽本線に比べて小さな車両・鉄道を小馬鹿にしていたほど、親しんでいた、というべきか、生活の中に溶け込んでいたのです。
そこを、可愛い蒸気機関車がひっぱっていたのです。それをまだ、SLとは言わなかった時代です。 可愛いSLは、昭和29~30(1954~55)年にすべて、休車(廃車)され、機関庫などに放置されました。井笠鉄道は、気動車(ディーゼルカー)になったのです。
井笠鉄道が完全に廃線になったのは、昭和46(1971)年3月31日です。“さよなら運転”をしたようです。
その時、私は北海道で暮らしていました。北海道では、国鉄の大きな“本物”のSLが完全になくなりそうな頃です。
郷里井原の知人が、写真を送ってくれたのです。
*故郷の知人が送ってくれた四つ切りの写真2枚。SL1号機関車は、煙は出していますが、後の気動車に押されて走ったそうです。
写真の上とはいえ、“井笠のSL”とのなつかしいご対面になったのです。 その後、札幌から東京に出てきた頃には、新聞記事で“井笠のSL”に対面します。1975年に、なんと“あの有名な、都会の遊園地、西武遊園地を、“井笠のSL”が走るというニュースがあったのです。<田舎の“井笠”がメジャーになった瞬間です>
それから、ウン十年、私は、ついに一度も西武遊園地にいくこともなく、本物と<涙のご対面>はなかったのです。
そして、西武遊園地の“井笠のSL”は、老朽化、用立たずになって、1977年に実家に戻されます。
実家である井笠鉄道は、新山駅跡に記念館をつくり、その労をねぎらっているのです。私はまだ、その記念館にも対面にいったこともないのです。
暖かくなったら、井原の桜の頃に出かけてみようと思っています。
【おまけ】
* 今日は、おまけの方が長くなります。井笠のSL(9両、10両かもしれません)の廃車後の流転の運命を追ってみます。人の流転にも似た悲しい運命があるのです。
* 鉄道好き・全国の井笠鉄道ファンが、ネット上に、たくさん書いています。参考にしました。
* ○は、保存・放置中で見ることができます。×は、消息不明です。
○1号機関車;>井笠鉄道さよなら運転>京都の円山公園>埼玉の西武・山口線>現在は笠岡市の井笠鉄道記念館
*西武遊園地の1号機関車
*井笠鉄道記念館の1号機関車
(ドイツ・コッペル、大正2年(1913)年製Bタンクで昭和30年まで使われていた。静態保存されていたが、さよなら運転(気動車に押されて走った。その後、西武鉄道山口線に貸与、修復されて遊園地で活躍。昭和56年に井笠鉄道創立70周年に合わせて、旧新山駅の井笠鉄道記念館に展示されている)
○2号機関車;>現在は岡山市の池田動物園
*池田動物園の2号機関車
(ドイツ・コッペル、大正2(1913)年製のBタンク、ナンバープレートは3は、動物園が希望したからという)
○3号機関車;福山市の赤坂遊園>現在は福山市新市町の新市クラシックゴルフ
*ゴルフ場(?)の3号機関車
(ドイツ・コッペル大正2(1913)年製のBタンク、ナンバープレートは2)
×4号機関車;(ドイツ・コッペル)
×5号機関車;
×6号機関車;(7号機関車と同型)
○ 7号機関車;>姫路市阿賀線駅近くのナス畑>姫路のパチンコ百万ドル>DIYの駐車場>現在は長野県野辺山SLランド
*ナス畑のSLと呼ばれた流浪の7号機関車は、野辺山SLランドが安住の地になればよいのですが。
(ドイツ・コッペル大正12年(1913製)のCタンク)
×8号機関車;
○9号機関車;広島県尾道市の高架下>井原線井原駅予定地>現在は井原市七日市公園
*井原線井原駅予定地にあった9号機関車
*七日市公園の9号機関車
(ベルギー・コッケリル製昭和14年(1939)Bタンク、富士製鉄釜石鉱山専用鉄道で使われていた。23年4月購入。約1年半使用された後。24年10月休車、井笠最大の機関車。46年同社の廃止となり、尾道市の高架道路下に展示保存されていたが、井原に戻った)
* <おまけ>の写真などネットから引用しました。“井笠のSL”に関心を持たれた方、特に、訪ねてみようとお思いの方は、ネットWEBなどで現状を再確認してお出かけ下さい。