「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

弁証法的行動療法とは どのような治療法か

2016年03月12日 20時05分56秒 | 「DBT実践トレーニングブック」より
 
 マーシャ・リネハンが開発した 弁証法的行動療法 (DBT) は、
 
 圧倒されるような感情に 苦悩している人々を 援助するうえで極めて有効です。
 
 感情は抑制したり、 蓋をしたりすればするほど、
 
 ますます圧倒されるものになってしまいます。
 
 強烈な感情が起こる可能性は、 生まれつきであることが示唆されています。
 
 一方、 幼少期のトラウマや虐待によっても
 
 大きな影響を受けている 可能性もあります。
 
 しかし、 本書のスキルで 感情をうまくコントロールすることができます。
 
 DBTには 4つの重要なスキルがあります。
 
1. 苦悩耐性スキル
 
   回復力を強化します。
 
   感情の影響を和らげるための 方法を提供します。
 
2. マインドフルネス・スキル
 
   過去の苦痛な経験や 将来の恐怖に 焦点を当てることを少なくし、
 
   今現在の瞬間瞬間を あるがままに受け入れるのを助けます。
 
   自分自身と他の人への、 否定的な価値判断を 克服するための手段も提供します。
 
3. 感情調節スキル
 
   感情に圧倒されることなく、 観察する手助けをします。
 
   反射的に自分や他人を傷つけず、 自分の感情を調整します。
 
4. 対人関係スキル
 
   自分の要求を表現し、 限界を設定し、
 
   問題の解決策を交渉する 手段を提供します。
 
   人間関係を保護し、 他の人に敬意を持って 接しながら行なわれます。
 
 本書を読むだけでなく、 スキルを実行しなければ、 何も変わることはありません。
 
 あなたが変化させたい 自分の感情の、
 
 現在の反応の仕方を 3通り書き出してください。
 
1. _____________________________________
 
2. _____________________________________
 
3. _____________________________________
 
 生まれつきや 幼い頃のつらいでき事の 有無に拘らず、
 
 本書のスキルは、 全ての葛藤に影響を与え、 人間関係を変えることが可能です。
 
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ,ジェフリー・C・ウッド,ジェフリー・ブラントリー)
 訳/遊佐安一郎,荒井まゆみ〕より
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

DBTスキル訓練プログラム(2)

2016年03月09日 20時28分41秒 | 「DBT実践トレーニングブック」より
 
(前の記事からの続き)
 
・ マインドフルネス・スキル
 
 マインドフルネスは、
 
 「自分自身や 自分の経験について 価値判断したり、 批判したりせず、
 
 今このときにおける 自分の志向, 感情, 身体的感覚, 行動を
 
 ありのままに捉えるための能力」 です。
 
 うつや不安だけでなく、 痛みやむちゃ食いなどにも効果があり、
 
 ストレスマネジメント効果もあります。
 
 自分への価値判断をせずに  「気付く」 能力は、
 
 感情調節, 対人関係, 苦悩耐性のスキルのためにも 役立ちます。
 
 例えば、 人から誤解されて辛くなると、 それが頭から離れず、
 
 その人や自分を 価値判断してしまいます。
 
 感情が強烈になると、 その感情と関係のある 過去や未来のことで一杯になり、
 
 圧倒されてしまいます。
 
 マインドフルネスは、
 
 そのような状態を価値判断せずに ありのままに捉える能力です。
 
○ DBTスキルの 総合的活用と部分的活用
 
 DBTスキルは、 総合的に組み合わせると 一層効果を発揮します。
 
 感情に圧倒されたとき、
 
 カウンセラーとの面接や 電話相談を組み合わせて 頑張ることで、
 
 辛い状態を乗り越えられます。
 
 また、 状態が酷くならないように予防するためにも、
 
 DBTスキルは部分的活用できます。
 
 自分の感情と より効果的に付き合いたいと思っている 一般の人も、
 
 4つのDBTスキルと 色々なスキルが 役立つことでしょう。
 
〈遊佐安一郎〉
 
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ, ジェフリー・C・ウッド, ジェフリー・ブラントリー)
 訳/遊佐安一郎, 荒井まゆみ〕より
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

DBTスキル訓練プログラム (1)

2016年03月08日 20時21分10秒 | 「DBT実践トレーニングブック」より
 
 DBTスキル訓練プログラムは 24週1セットのプログラムで、
 
 つらさに耐える (苦悩耐性) スキル, 感情調節スキル, 対人関係スキルの
 
 3つのモジュールから成っています。
 
 どのモジュールでも、 マインドフルネス・スキルを学びます。
 
 以下のようなローテーションを 2回りすると、 48週 すなわち約1年になります。
 
  マインドフルネス → 感情調節スキル → マインドフルネス
 
       ↑                      ↓
 
  対人関係スキル ← マインドフルネス ← 苦悩耐性スキル
 
・ 感情調節スキル
 
 リネハン博士は、 問題は感情調節がうまく働かないため と考えています。
 
 従って 自分の感情を理解し、 感情と上手に付き合うことで、
 
 問題を改善できると考えられます。
 
・ 対人関係スキル
 
 感情的に辛い経験は、 対人関係がうまくいかないことと 大いに関係があります。
 
 感情的に辛くなると、 対人関係のトラブルが起きやすくなります。
 
 すると更に 感情的な辛さが悪化するので、
 
 対人関係を効果的に持てる スキルが大切になるのです。
 
・ 苦悩耐性スキル
 
 感情に圧倒されると、 しばしば行動に結びつきます。
 
 例えば 怒りを強く体験すると、 攻撃的になった怒鳴ったりするでしょう。
 
 感情に触発される行動自体は 自然な反応ですが、 感情調節がうまくできないと、  
 
 行動も極端になり、 社会生活に支障をきたします。
 
 自殺企図や自傷などの行動も、 辛い状態に対する対処行動です。
 
 辛くなるとまた そのような対処行動が繰り返され、
 
 問題がこじれ、 一層つらい状態になるのです。
 
 苦悩耐性スキルは 問題をこじらせないように その状態に耐え、
 
 他のスキルを使って 状況を改善するためのスキルです。
 
(次の記事に続く)
 
〈遊佐安一郎〉
 
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ, ジェフリー・C・ウッド, ジェフリー・ブラントリー)
 訳/遊佐安一郎, 荒井まゆみ〕より
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」

2016年03月07日 21時03分36秒 | 「DBT実践トレーニングブック」より
 
 本日より、 星和書店 「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」 の内容を
 
 要約・ 抜粋して紹介していきます。
 
 --------------------------------------
 
○ 弁証法的行動療法 (DBT) と DBTスキル訓練について
 
 本書は 弁証法的行動療法 (DBT) のワークブックで、
 
 圧倒されるような感情と 効果的に付き合うための スキルの訓練になります。
 
 アメリカではDBTは 広く使われている治療法です。
 
弁証法的行動療法 (DBT)
 
 1970年代後半に、 心理学者のマーシャ・リネハン博士は、
 
 自殺念慮が強い成人女性のために、 認知行動療法を使って 治療を研究していました。
 
 しかし多くの問題に直面し、 患者は感情的に辛くなって、
 
 認知行動療法だけでは 患者を支えられませんでした。
 
 そこで色々な工夫を施し、 DBTが生まれたのです。
 
 リネハンの患者は
 
 境界性パーソナリティ障害 (BPD) の 診断基準を満たしていることが分かり、
 
 DBTはBPDの治療法として 世界で最も 効果が実証されるようになったのです。
 
 その後、 双極性障害, 発達障害, 摂食障害, 薬物やアルコール乱用など、
 
 感情調節困難のために起こる問題の 改善に効果が認められるようになってきました。
 
 DBTは 以下の4つの治療的な方法を 組み合わせて行なわれます。
 
1. 毎週1時間の個人心理療法 (カウンセリング)
 
2. 毎週2時間半の、 感情と付き合うための DBTスキル訓練プログラム
 
3. 電話コンサルテーション:
 
   実生活で感情に圧倒されるときに、 DBTスキルを活用するための電話相談。
 
   いつでも電話をかけることができます。
 
4. 治療チームのスーパービジョン
 
 これらの方法を約1年半行ない、 症状が改善するとされます。
 
(続く)
 
〈遊佐安一郎〉
 
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ, ジェフリー・C・ウッド, ジェフリー・ブラントリー)
 訳/遊佐安一郎, 荒井まゆみ〕より
 [星和書店の許可のうえ掲載]