「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

面接委員 出直し後押し (1) -- 矯正の現場 (14)

2012年01月15日 20時04分21秒 | 罪,裁き,償い
 
 教誨師 (きょうかいし) であり、 篤志面接委員でもある、

 住職のKさん (69才) は、

ある刑務所で 所内限定の音楽トーク番組を、 月1回放送しています。

 「故郷」 「恩師」 「涙」 ……。

 毎月テーマを決め、

 受刑者が 200字以内の短文とリクエスト曲を、 ペンネームで書いて出します。

 Kさんは めぼしい文を紹介しながら、 曲を流します。

 「その気持ちを 立ち直る力に変えましょう」

 と、受刑者に語りかけます。

 ある夜の放送は、  「母の思い出」 がテーマでした。

 数日後、 傷害事件で 3度目の服役中の受刑者が、

 面接を申し込んできて、 涙ながらに語りました。

 「失明したあとも 食事を作ってくれた 母のことを、 誰かに聞いてほしくなった。

 母を裏切り、 葬儀にも出られなかった私が、

 今さら反省しても 遅いでしょうか?」

 「今の気持ちを忘れなければ、 出直すことは いつでもできるんだよ」

 半年後、 この受刑者は 仮出所が認められました。

 「番組が始まると、 けんかや言い争いもやみ、 所内は静かになった。

 『よし、 頑張るぞ』 と 前向きになれた」 と、 ある服役男性は振り返ります。

 この男性は 出所から20年後、 たまたま Kさんの寺の番号を知り、

 電話をかけました。

 男性は ヤクザから足を洗い、 福祉の仕事に携わっていると  報告しました。

 「そうか、 そうか」

 Kさんの 懐かしい声が喜んでくれました。

(次の記事に続く)

〔 読売新聞より 〕
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿