「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

12回入所、 「反省の場」 遠く (1) -- 矯正の現場 (7)

2012年01月06日 22時29分39秒 | 罪,裁き,償い
 
 「累犯部屋」。

 更生保護施設にいる女性 (64) が、 過去に入った 刑務所の部屋は、

 仲間内でそう呼ばれています。

 女性は 5ヶ所の刑務所に 計12回入所しましたが、

 そのうち4ヶ所では、 罪を重ねた受刑者を 同じ部屋に収容していました。

 「覚せい剤やらない?」  「空き巣は面白いよ」。

 「殺人以外の ほとんどの犯罪の誘いが 飛び交っていました」 と、

 女性は振り返ります。

 30年前、 万引きなどで3回目の服役中、

 累犯部屋で すり常習犯の受刑者と知り合いました。

 出所後、 この人物に すりの手口を教えられ、 やめられなくなりました。

 回を重ねるにつれ、 出所から次の再犯までの 期間は短くなりました。

 「今度こそやめる?」 と、 面会に来た母親から 尋ねられても、

 うなずくことができません。

 母親は 9回目の服役中に他界。

 身元引受先になっていた子供も、 11回目の入所以降、

 音信不通になってしまいました。

 「私にとっての刑務所は、  『もうあんな所に行きたくない』 と、

 犯行を思いとどまらせるものではなかった」 と 女性は言います。

 「過ごしにくいという訳でもなく、

 刑務所というより 学校か会社の寮みたいな 感じの所もあった」 と。

(次の記事に続く)

〔 読売新聞より 〕