家庭裁判所の審判廷。
19才の加害者少年は、 56才の男性に言いがかりを付けて、
殴る蹴るの暴行で 意識不明にし、 3ヶ月の重傷を負わせました。
前方に、 両親にはさまれて 長椅子に座っている、 少年の背中が見えます。
被害者男性の妻 (49) は、 少年の背中に向かって 意見陳述をしました。
「今は回復したとはいっても、 まだ元のように 仕事ができるわけではありません。
主人の大切な時間を 返してください」。
「謝罪はいりません。
心から反省しているかどうかは、 これからの生き様で 見せてくれたらいい。
私はしっかり見ていますから」
少年院に収容された少年は、 担当教官と交換する ノートに綴りしまた。
〈審判の時、 被害者の方の奥さんが来て、
僕は凄いことを言われるんだろうなって 思っていました。
でもその方は 「あなたが奪った時を 返してください」 と言われました>
教官から返事が返ってきます。
〈これ程大きな発言はない。
それだけ奥さんも つらかったということです〉
半年後、 少年は 父親を病気で亡くします。
最期の8日間、 意識不明の状態が続き、
被害者の妻の 「時間を返してほしい」 という言葉が 頭に浮かびました。
「自分と同じように、 意識が回復するのを待ち続けた 奥さんの苦しみを思い、
事件を初めて 心から後悔しました」
少年はそう振り返りました。
(次の日記に続く)
〔読売新聞より〕