「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

民間の支援  父との絆回復 -- 命に寄り添う (2)

2012年07月11日 20時35分41秒 | 介護帳
 
 B子さん (62才) は、 最愛の母とは逆に、

 父との関係は 長年うまくいっていませんでした。

 B子さんは 病弱な母の介護を 一人でしていましたが、 調子を崩して倒れました。

 父 (88才) が 母の介護を引き継ぐと、 今度は 父が倒れてしまいました。

 母はまもなく 病院で亡くなり、 父は体力が急に低下しましたが、

 B子さんは体調が悪く、 父の介護をできる 状態ではありませんでした。

 そこで支援を受けたのが、 生活自立の支援や相談を行なう 会員制のNPO協会です。

 B子さんは 93才になった父に、 同協会の保養所に移ってもらいました。

 病院と違い、 宿泊者は 自由に時間を過ごせます。

 訪問診療やヘルパーも頼め、 B子さんも好きなときに来て 泊まることができました。

 しかし 父は脳梗塞を起こし、 口から食べる力も衰えました。

 協会のカウンセラーは、

 「二人の絆を取り戻すまで、 もう少し頑張ってほしい」  と願いました。

 B子さんも同じ思いで、 相談の結果、 父に胃ろうを付けてもらいました。

 B子さんは父を看取るため 施設に住み込みます。

 父は衰弱が進んで 言葉数も少なく、

 お互いわだかまりもあって 視線を合わそうとしませんでした。

 でも次第に 目と目で会話ができるようになり、 1年が過ぎたある夜。

 B子さんが  「おやすみ」 と声をかけると、

 父は  「一人になっても大丈夫か」 と 聞いてくれました。

 自分を案じてくれ たその言葉に、 B子さんは愛情を感じたといいます。

 翌朝、 父は 微笑みながら旅立ちました。

 「快適な環境で、 父と二人だけの時間を 作ってもらったおかげで、

 最期にやっと 心が通じ合えた」

 そう B子さんは感謝しています。

〔読売新聞より〕