「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

俗説4 「BPDの原因は 悪い親にある」

2011年09月06日 20時15分00秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 「悪い子育て」 という間違った考えは、

 多くの心理学の分野で 改められてきましたが、

 今でもBPDの原因は 虐待, 育児放棄, 不適切な育児にあるとされています。

 確かに、 幼児期に虐待を受けていると、

 BPDを引き起こす可能性は 増す兆候は見られます。

 しかし BPDの人の全ての人が 虐待を受けているわけではありませんし、

 BPDの人のほとんどは 虐待された経験がありません。

 保護者との間に 悪い関係がなくても、 BPDになる可能性はあるのです。

 BPDは、 個性と 成長過程におけるストレスとの 組み合わせで発症します。

 例えば、 自分が感情的で 他の家族は自制心が強い場合、

 自分を部外者のように感じ、 ストレスが溜まります。

 自分が悪いのではないかと 信じてしまう可能性もあり、

 そのようなストレス要因でさえ BPDを引き起こす可能性があるのです。

 また、 親が忙しくて 子供のそばに 充分にはいられなかったとしても、

 そのこと自体は BPDの原因にはなりません。

 しかし、 あるパーソナリティの特質がある人、 または別のストレスを経験した人が、

 このような家族環境にいると、 BPDを発症する可能性があります。

 それは 親が悪いからではなく、

 家族が単に この子供の特別な要求に 応えられなかったからなのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

 2005年発刊の 新風舎版 「境界に生きた心子」 では、

 ボーダーの原因は生育歴と 書いてしまいました。

 その頃は その考えが主流でしたが、 そのすぐあと頃から、

 生まれつきの因子に 第一の原因があり、 家庭以外の体験や、

 社会的・ 時代的影響もあることなどが よく知られるようになってきました。

 そして 親の責任の範囲は どんどん狭くなってきました。

 以前は ボーダーの第一人者が、

 ボーダーのいる家で、 問題のない家庭を 見たことがないと言っていましたが、

 今 僕が参加している 「BPD家族の会」 では、 どの親も全員、

 BPDの問題に真剣に苦しみ、 何とかしたいと 必死になっている人たちばかりです。