「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「生まれ」 と 「育ち」 の相互関係

2010年11月11日 20時02分08秒 | ボーダーに関して

 精神療法は伝統的に

 「生まれ」 よりも 「育ち」 の問題を 重視する傾向があった。

 境界性パーソナリティ障害も、

 早期の母子関係の 分離不安や共感不全に 関したことが、

 原因として重視されていた 時期があった。

 しかし 現在は、 患者の生得的な脆弱性と、

 早期の対人関係 (両親との関わり方) にも 共感不全などの問題があり、

 それらが組み合わさって 病像を形成していると 考えられている。

 「生まれ」 と 「育ち」 を 完全に切り離して 議論することはしない。

 これらは相互に関係している。

 「生まれ」 によって方向づけられた 一定の性格傾向や行動パターンは、

 「育ち」 による経験の中で 刺激を受けて初めて現れる。

 同様に、 その人がどのように  「育ち」 の経験をしていくかは、

 「生まれ」 による 遺伝的な気質や行動パターンに 影響されるものでもある。

 例えば うつ病では、

 ストレスを受けたときに 心が折れやすいという 脆弱性だけでなく、

 そもそも ストレス的な経験をしやすい 行動パターンを 性格的に生まれ持っている。

 遺伝的要因で方向づけられる 行動パターンによって、

 本人が身を置く環境が 方向づけられるために、 環境要因に影響を与えてくる。

 もし 生まれつき折れやすい心を 持っていたとしても、

 嫌な体験をする 環境要因がなければ、

 遺伝的な脆弱性は 発現することは少ないのだから、

 環境要因は遺伝的要因に 影響を与えているとも言える。

 このような意味で、 遺伝的要因と環境要因は 切り離せないものである。

 境界性パーソナリティ障害においても、 同様のことが言えると 類推できる。

 境界性パーソナリティ障害になりやすい人は、

 早期親子関係でも、 その後の対人関係の環境でも、

 遺伝的に方向づけられた 情緒の反応性や 行動パターンによって、

 両親から不適切な養育行動を 引き起こしがちだったり、

 不都合なできごとに 出会いやすかったりするのである。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 みすず書房 (小羽俊士) より 〕

関連記事: http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57801589.html
 
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