「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「ジャン=クリストフ」 および 友人との出会い

2008年11月24日 22時27分17秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
(前の記事からの続き)

 僕は20代の中頃、 マンガ家を目指して、

 あるマンガ同人誌に加わり、 自分の創作を 模索していました。

 当時 僕はマンガ同人誌とは 別の場で、

 ある天才的な友人の 影響を受け、 特殊な芸術観を 構築していきました。

 同人誌のメンバーは皆 僕より年少でもあり、

 その価値観は 彼らのそれとは 異なっていました。

 しかし当初は、 僕はメンバーに影響も与え、

 仲間として数年間 親しく活動していました。

 恋愛もありましたが、 そのうちメンバーとは 次第に隔たりが大きくなってきて、

 厳しい批判も受け、 軋轢が増していきました。

 傾倒した友人の芸術観は、 高度で難解であり、

 あまりに特異な 世界であったのです。

 二人の女性に 恋愛を抱きましたが、

 特に二人目の女性は 僕とは全く 別の世界の人でした。

 やがて 痛ましい失恋が訪れて、 僕は 自分の創作観も否定され、

 それまでの 自分の全ての価値観が 崩壊して、

 生き地獄へと 落ちていったのです。

 価値に生きる人間が、 「価値そのもの」 を 失ってしまったとき、

 その苦悩は 奈落の底を 遥かに超えています。

 そして、 最も理解してほしい人に 理解されないこと、

 それは人間にとって 最大の苦しみです。

 ボーダーの人が、 愛する人の愛を 得られない苦痛と 通じるでしょう。

 そんな 阿鼻叫喚のなかで出会ったのが、 同じアパートの 友人の存在と、

 ロマン・ロランの 「ジャン=クリストフ」 でした。

 「ジャン=クリストフ」 は、

 ベートーヴェンをモデルとした 天才音楽家・ ジャン=クリストフの、

 苦悩と歓喜の 生涯を描いた ノーベル文学賞作品です。

 クリストフの挫折と苦悩は、

 まさしく 当時の僕のそれと 全く同じものでした。

 友人は、 「ジャン=クリストフ」 は

 ロマン・ロランが 僕のために書いた小説だ と言ってくれたほどでした。

 そして アパートの友人は、 苦しみもがく僕の 出口のない話に、

 毎晩毎晩 何時間も一生懸命 耳を傾けてくれたのでした。

 そのことによって僕は、 地獄の底から 長い時間をかけて ようやく這い上がり、

 やがて 豊饒なものを 育んでいくことができたのです。

 少々長くなりますが、

 当時の僕の日記や  「ジャン=クリストフ」 などからの抜粋で、

 僕が歩んできた 茨の道と、 そこから体得していったものを 綴っていきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/56858392.html