「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (8) (電話相談,治療者のためのコンサルテーション)

2008年07月28日 20時21分46秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55299142.html からの続き)

(3) 電話相談

 弁証法的行動療法 (DBT) の 3つ目の要素である 「電話相談」 です。

 セッションとセッションの間の 電話相談には、3つの重要な働きがあります。

 第一に、集団療法で学習したスキルを

 日常生活に活かすための 「コーチング」 です。

 危機的状況にあったとき 治療者と電話で話し合い、

 具体的なスキルを使って 問題解決のための行動が 取れるようにします。

 患者は自分で 葛藤場面に対処できたという 「成功体験」 を 積むことができます。

 第二は、危機的状況でないときに 支援を求める練習です。

 BPD患者は 命の危機以外では 助けを求めるのが苦手なことが多く、

 治療者は 危機のみに対応するため、

 かえって患者の自殺行動などを 強化してしまうこともあります。

 自殺行動や未遂のあとでは 電話を受け付けず、自殺衝動に駆られているときか、

 危機以外のときに サポートを求める練習をします。

 第三に、次のセッションまでに 未解決の問題を軽減しておくことです。

 治療者と患者の間の 葛藤や誤解を解きほぐすためです。

 
(4)治療者のための コンサルテーション・ミーティング

 治療者に対するスーパーバイズや コンサルテーションも、治療の重要な一部です。

 週1回 2時間のミーティングに、スタッフ全員が参加します。

 DBTでは 治療者の間で 意見が分かれることも多く、

 治療者が治療枠を 逸脱してしまう場合もあります。

 治療経過の分析や確認をし、治療者が 患者に否定的な態度を 取ることを避け、

 バーンアウトの予防を目指します。

 
●おわりに

 創始者のリネハンは、DBTを ジャズの集団即興演奏に例えます。

 DBTは マインドフルネスや問題解決療法など、

 多くの治療技法が 体系的にまとめられています。

 治療者は患者の 病態や状況に合わせて、適切な技法を選択し、

 柔軟に対応していくことが 要求されます。

 患者が発した 音に対して、治療者は 協和音が取れるよう、

 技法を駆使して 曲を奏でていくことが 大切なのです。

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕