境界性パーソナリティ障害と 解離性同一性障害 (DID) は、
深い関連性があると 言われています。
DIDがBPDを 合併する比率は 23~70%とされており、
心子も広義のDIDであると 解釈されました。
DIDでは、防衛機制としての解離 〔*注〕 と、
BPDの 「分裂機制」 (スプリッティング) 〔*注〕 とが、
様々なレベルで 作用しています。
両者は 別の全く概念ですが、
解離と分裂の間には 連続性があると指摘されています。
〔*注: 防衛機制としての解離というのは、耐えがたい苦痛から 逃れるために、
その苦痛から 意識を切り離してしまい、別の意識 (人格) が作られることです。
分裂 (スプリッティング) は、100か0か、白か黒かしかない、
中間がないという BPDの極端な二分思考です。〕
BPDでも、DIDに類似した現象として、
「かのような人格」 (As if personality) が記されています。
その場に合わせて 様々な人格を 無意識に演じわける、BPDの特徴です。
DIDとBPDは、ともに 人格の統合性に 問題がある病態ですから、
両者の間に 近縁性があるのは 当然といえるかもしれません。
解離状態の治療は、抑圧された記憶を 回復することが主眼です。
そのために、外傷体験を意識化する精神療法,
抑圧を解除して 記憶を呼び戻す催眠療法,睡眠薬や抗不安薬などが 行なわれます。
その次に、蘇った記憶や外傷体験を 人格に再統合し、
外傷体験にまつわる 感情の反応を 受け止める作業が必要となります。
心子も 主治医の森本先生から、同様の治療が必要だと 言われていました。
例えば、以下のようなモデルがあります。
1.交代人格と それぞれよい関係を結び、安全感を育む
2.外傷体験を回想し、それに対する 悲哀の作業を進める
3.交代人格に代表される 人格の様々な側面を 統合する
自分の心の状態を把握し、自分自身のあり方を 見つめるという、
BPDに準じた治療を することができます。
〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕