「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「世界仰天ニュース」に要望書

2007年08月05日 18時14分33秒 | 「世界仰天ニュース」でBPD誤報
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/49332360.html からの続き)

 日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース」に宛てて、意見書(要望書)を拙著と共に送りました。
 昨日までの記事に書いた内容と重複するのですが、こちらの訴えが伝わるように書き方を変えました。参考までに。

 これが通る可能性は低いと思いますが、もし何かのきっかけになったらと願望を込めて……。

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                           8月4日
日本テレビ 「ザ!世界仰天ニュース」 御中
                                稲本 雅之
拝啓
 初めまして。稲本雅之と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 境界性人格障害の女性と過ごした日々の実体験を、同封の拙著「境界に生きた心子」(新風舎)として綴りました。

 さて、8月1日の「ザ!世界仰天ニュース」で、境界性人格障害の話をやっていたことを知人が教えてくれ、番組のWebページを拝見いたしました。TVでボーダーをこれだけ前面に出して取り上げた例は珍しいでしょう。しかし、すでに多くの抗議や意見が寄せられていると思いますが、ボーダー本人の方や関わる者にとっては、残念ながら極めて遺憾な内容でした。解離性同一性障害(多重人格)の初期の扱われ方がそうであったように、ボーダーが犯罪と結びつけられてしまっているのは非常に不幸なことです。

 番組の趣旨があくまで“女の凶悪事件”の紹介であって、取材した女性がたまたま境界性人格障害の診断を受けていたということだったのでしょうか(この女性なら他の診断名もあるのではないかと思いますが)。でも見る側としては、境界性人格障害という恐ろしい病気があるとインプットされてしまうでしょう(スタジオ出演者にボーダー診断基準がいくつ当てはまるか、というコーナーもやっていますし。)

 数年前の性同一性障害の報道に関しては、初めて性別再判定手術(性転換術)を行なった埼玉医大の原科教授が、興味本位で報道しないよう最初の記者会見で要請をしたので、好意的に紹介される幸運なスタートを切りました。苦しんでいる当事者をさらに苦しめることがないよう、正当な情報を提供することがマスコミにはできるはずだと思います。是非ともそれを強く期待しております。

 「あるある大辞典」の問題も記憶に新しく、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」も組織され、放送倫理が問われている昨今です。(「BPO」と「BPD」〈Borderline PersonalityDisorder 〉が似ているのも、何かの因縁でしょうか。)マスコミの役割は視聴者に偏見を植えつけることではなく、世の無理解を是正することでしょう。ボーダーは極めて誤解されやすいものであるからこそ、内実を正しく理解されるよう報道する責任が、マスコミには課せられているのではないかと思います。

 現在、「ザ!世界仰天ニュース」のWebページから「境界性人格障害」の表記は削除されていますが、TVで放送された影響は残されたままです。番組で「周囲の支えが必要」という医師の言葉は紹介していたものの、結果的に視聴者が受けた印象はボーダーに対するネガティブなものばかりです(後述)。治療もあまり期待できないと述べられていましたが、現在欧米では「弁証法的行動療法」というとても有効な治療法が行なわれており、日本にも紹介されています。ボーダーは今や、決して治らない障害ではありません。

 番組に登場した女性の殺人行為は全くボーダーの特徴ではなく、視聴者に深刻な誤解を与えています。ミクシィやブログを検索すると、視聴者の感想などが多々ヒットします。多くが当事者の人たちの怒りや嘆き,不快感の書き込みでした。彼らは必死で病と闘い、自分を治したいと思い、自分自身が激しい感情の奔流に最も苦しみ、周りの人を傷つけてしまったことへの悔恨の情に苛まれています。

 書き込みの中には、番組を見て悲しくてリストカットをしそうになった、という人もいました。実際に切ってしまった人もいるのではないかと思います。そしてさらに、最悪の行為に繋がってしまうかも知れない人も……? 彼らはこの上なく傷つきやすいのです。このように悲惨な結果を招きかねないということを、番組制作の際に少しでも考えていただけたでしょうか? 

 「境界性人格障害って、こえ~~!」という類の書き込みも多数あります。このような状況で、ボーダーの人がその診断名を知られてしまったらどうなるでしょう。著しい誤認と差別を受けることになり、ますます人に言えなくなってしまったと、ボーダーの人たちは嘆いています。現在就職活動中のボーダーの方は、履歴書を見る人が見れば病歴が分かってしまうので、絶望的になったとも言っています。

 また、自分にボーダー的な傾向があると感じていた人が、番組を見て自分の行く末を恐れ、不必要に不安に駆られたり。奥さんが旦那さんから突然、「お前、境界性人格障害だろう?」と言われ、本で調べたら自分に当てはまるので、傷つき心を痛めたり。

 このような事態が、マスコミによって誤解や偏見が広められていく、ということではないでしょうか。境界性人格障害というものが理解できたというような、肯定的な書き込みは当たりませんでした。

 上記のように“被害”を受けた方々や、これからの生活にも支障をきたす方々がいらっしゃいます。それを回復するためには、同じ番組の中で今回の放送内容の訂正をし、誤解を正すための新しい番組を作っていただければと願うものです。同封の拙著を是非ご覧いただき、ボーダーの本当の姿,彼女や彼らの魅力と苦しみを、どうかご理解いただきたいと心からお願い申し上げます。今回のできごとが災い転じて福となり、境界性人格障害が人々に正しく知られるきっかけとなることを願っています。(拙著のドラマ化の企画なども考えております。)

 末筆ながら、貴社と番組のさらなるご発展をお祈り申し上げます。
                                   敬具

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(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/49394438.html
 
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