医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

アンジェリーナ・ジョリーさんの卵巣切除について

2015年03月27日 | 「がん」について

アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的卵巣卵管切除術について、テレビで批判的なコメントも聞かれたようです(実際は見ていないのですが、「私なら卵巣がんの兆候が出るまでほっとく」といったコメントだったらしい)。

そこ、かなり誤解があると思うんですが、まず、「卵巣がん検診がなぜ無いか」をご存じでしょうか。
それは、検診で見つけられるがんじゃないからです。
いきおい、卵巣がんになった方の半分程度がステージⅢ以上で見つかっています。
つまり、早期発見は非常に難しいがんなのです。早期のうちに「兆候」なんて、出ないのです。

特にアンジェリーナさんのようなBRCA遺伝子変異陽性の人(つまり「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」の人)の場合、「漿液性腺がん」というみつかりにくいタイプの卵巣がんが多いので、国際的な診療ガイドラインでも「妊娠の希望がなければ、出産が完了した時点でのリスク低減手術(=卵巣卵管切除)を考慮する」とされています。詳しいことを知りたい方は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の専門学会、HBOCコンソーシアムの一般向け情報のページをごらんください。

もうひとつ、「乳房も切除したのに、今度は卵巣まで?どこまで切除したら気がすむの?」なんて思った方もいるかもしれません。

「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」という病名からもおわかりの通り、BRCA1/2遺伝子は、乳がんと卵巣がん、双方の責任遺伝子なので、この2つはセットなのです。この病気で乳がんにかかった人は、卵巣がんのリスクも高く、逆に卵巣卵管を切除すると乳がんのリスクも減ります。まあ、アンジェリーナさんの場合はすでに乳房を切除しているので、乳がんリスクについてはどうでもよかったはずですが。。

いずれにしても、アンジェリーナさんの選択は、日本ではまだあまり行われていないだけの話で、国際的にはエキセントリックでも何でもなく、診療ガイドラインに載っているまっとうな治療です。本人の意思で決めればよいことであり、他人に批判されることではありません。

テレビの影響は大きいです。この番組には卵巣がんの専門医は出演していたのでしょうか。
こうしたことをわかっていないコメンテーターが乏しい知識だけで発言するべきことではないと思います。

 

 

読んでくださってありがとうございます。よろしければ1クリックの応援をお願いします。

 

★中保の最近の仕事については、有限会社ウエル・ビーのホームページFacebookページをご覧ください。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿