医療ライターのいもづる話 by 中保裕子

マーケティングプランナーから医療ライターへ。地域医療、地域包括ケアシステムの存続にはマーケティングも必要です。

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乳癌学会2016

2016-06-17 18:47:57 | 「がん」について


6/16〜18の3日間、東京ビックサイトで第24回日本乳癌学会学術総会が開催。
わたしも恒例のように聴きに来ています。
といっても今回は他の仕事の都合でフルには参加できず…仕事上気になっているHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)などいくつかセッションのみの聴講です。

さて、昨日のセッションのなかでは、聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子先生のことばが印象的でした。

「ゲノム医療はどんどん進化している。すべての人が遺伝子検査を受け、どこの遺伝子に変異がある人の乳がんはどういうタイプ、どうなりやすく、どんな薬が効くかがわかる。遺伝子によってどういう食事や生活をすればがんの再発を予防できるかがわかる。そういう時代がすぐそこまで来ている。遺伝子情報を個人情報だからといって隠すばかりでなく、積極的に活用することによって、みんなの共通利益にすることが本当のヒューマン・ライツではないか」

と、こんな内容だったと思います。(文責・わたし)
国際的な遺伝子情報データバンクがいくつも動き出していることを受けての話でした。

遺伝子情報を人類共通の資産として活用する。
「わたしの個人情報を?とんでもない!」と思う人もいるかもしれません。

でも、どのみちこのビッグデータの時代、受けた治療の過程はデータとして残ります。
たとえばダ・ヴィンチで手術を受ければ、その経緯はすべてソフトウェアで記録され、米国のメーカーに持って行かれる。
そのデータのおかげで、さらに機器はバージョンアップし、手術の精度も高まるので、患者にとっても医学の進歩にとっても悪い話ではないのですが、いずれにせよ膨大な「日本人のデータ」の海外流出はとっくに始まっているわけです。

一方で、いまや○ahoo!を始めいろいろな企業が、簡単に郵便などで受けられる遺伝子検査サービスを提供しています。
(精度はどうなんだろう?と疑問があるので、個人的にはまったく受けたいとは思いませんし、ひとにも進めようとも思いませんが…)

だからこそ、

「何人たりとも遺伝子情報によって、差別と不利益を受けない」

といったゲノム時代の人権保護の法律を日本でも早く作る必要があるのだろうと思います。
軽い気持ちで受けた遺伝子検査が原因で、保険に入れなかったり、内定を取り消されたりしたら困りますから。

話をがん医療に戻します。

がん医療では「コンパニオン診断」といって、遺伝子検査によって、その人に効果が出やすく、副作用の少ない抗がん剤を選ぶということが始まっています。
今回の乳癌学会のテーマも、遺伝子情報をうまく活用する時代を示唆しているように思いました。
(何しろ会長講演を聞いていないため、憶測のみですみません)









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がん5年相対生存率 64.3%

2015-09-16 11:07:23 | 「がん」について

国立がん研究センターより、最新のがん5年相対生存率が発表されました。

国内のがん診療連携拠点病院177施設のデータをまとめたものです。

全がんの5年相対生存率は64.3%。

「相対生存率」というのは、同じ5年後に日本人が生存している確率に比べてどれくらい低いか、という意味だそうです。
がん治療も実際、だいたい5年がひとつのめどと言われているので、治療成績と考えてよい数字です。

少し前まで50%台でしたが、それでも「半数以上は治癒しているんだから、不治の病とか言わないで。」と言ってきたのです。6割を超えたというのは本当に嬉しい話です。
「がん放置療法」の人ばかりになったら、こうはいかないでしょう。

主要ながん種別の統計では、

胃71.2%、大腸72.1%、肝臓35.9%、肺39.4%、女性乳房92.2%

とのこと。

くわしくは、こちらのサイトをごらんください。
国立がん研究センタープレスリリース「がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率初集計」 

 

乳がんは9割。ほとんど「治る」と言ってよい状況になってきました。
胃がんや大腸がんも含め、生存率の高いがんはわりとわかりやすい自覚症状があったり、検診で早期発見しやすいがんだと言えそうです。

逆に、やはり肝がんや肺がんは依然として厳しい状況ですが、とはいえ、こちらはある程度予防の方法が確立しているがんでもあります。
肝がんは C型肝炎ウイルスへの感染を調べ、感染していたら自覚症状がなくても治療しておくこと。
肺がんは、言わずとしれたことですが「禁煙」につきます。

 

S田さん撮影の福島県の光景。

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がんの「再発」を本人に伝えますか?

2015-09-14 16:02:32 | 「がん」について

長尾和宏医師の著書「抗がん剤10の“やめどき”」から、印象的なメッセージを勝手にご紹介する第2弾です。前回分は→こちら

以下、本文より引用。

 

がん告知を本人に行うことが当たり前になってもう久しいが、再発したことを伝えないでほしいと申し出てくるご家族は意外に多い。

                                     -長尾和宏「「抗がん剤10の『やめどき』」(ブックマン社)→Amazon

 

正直なところ、「へぇ、そうなのか…。」という印象でした。
おそらく、がんの専門病院や大学病院などでは、再発を伝えるのは当たり前に行われていると思うので。
当然、長尾医師も「告知」するというスタンスです。ですが、家族の反対に遭うことが多い、というわけです。

たしかに高齢の親に再発となると伝えるかどうか、家族としてはつらいところですよね。
避けて通れるなら、できれば避けて通りたいと思うと思います。 

ただ、周囲の人が口裏を合わせてすべてウソをついてごまかすのは、どんなに名優ぞろいでもやっぱり会話がかなり不自然なものになるんじゃないかと想像できます。

微妙な空気のなかで本人はうすうす自分の病状をわかっていても、家族の手前本音をいうことができなくなるし、おたがい不幸な関係のように思えます。
がん診療に携わる医療者の取材でも、よかれと思った「隠しごと」から深刻な溝ができることがあるという話をよく耳にします。
長尾医師もそのような観点で、家族に「再発をお父さんに告げた方がいいと思う」と提案しました。ところが、逆上した家族が「もし勝手に本当のことをお父さんに言ったら、私たちは先生を許しません」とか「訴えます!」とか言うわけです。

 

私に暴言を投げかけてくるのは常に患者さんご本人ではなく、ご家族である。それが、愛だと思っている。しかし本人に本当のことを伝えずに、人生の大切な選択肢を隠し通すことが愛と言い切れるのか。(中略)愛とは、本人が知る権利を奪うことなのか。 (-同上)

 

わたしの親だったら、おそらく「知る権利」が奪われるのはとてもつらいことで、後で知ったらむちゃくちゃ怒るだろうと思います。
とはいえ、初発ではなくて「再発」となると、本人も家族も精神的にはきついです。伝えたところで「言いっぱなし」というわけにはいきません。実際のところ、親と同居とか、近くに住んでいて常に精神的サポートができる環境にあるかどうかでも違うと思います。

家族としてどう患者さん(特に親)に向き合えばいいか、改めて考えさせられました。

ところで、長尾医師はこの本のなかで、「再発は抗がん剤のやめどきを考える一つのタイミングかもしれない」と述べておられます。
でも、これは高齢の患者さんに限るならともかく、若年の方も含めてがん患者全体にあてはめるのはちょっと無理があるのではないかと思いました。
がん種にもよるのでしょうが、わたしが取材などでお会いしてきた40~50代の方々には、再発や再再発でもめげずにその都度化学療法をクリアし、職場に復帰して元気に活躍しておられる方がいらっしゃるからです。
「再発」だからといって、すぐにあきらめる必要はないと思います。

 

Photo by 酩酊カメラマン ラクーン関根さん

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抗がん剤の「やめどき」

2015-08-28 14:54:22 | 「がん」について

「腫瘍マーカーが下がらなくても、抗がん剤ができなくなるまで続けましょう」だと?
そんなの、主治医が決めることではないだろう。患者さん本人が決めることだ。
「下がらないけど、できなくなるまで続けましょう」ではなくて、「下がらないけど、どうしますか?」と訊いてこその医療だろう。
抗がん剤ができなくなるまで、とはつまり、できなくなるほど副作用が激しく現れるまで、という意味でもあるのだから。 

-長尾和宏「「抗がん剤10の『やめどき』」(ブックマン社)→Amazon

この本の著者、長尾和宏医師にはお会いしたことはありませんが、地域の開業医として700人の看取りを経験され、これまでも「平穏死」や「胃ろう」についての著書を出し、看取りのありかたに積極的な発言をされてきた方です。がんの専門医ではありませんが、がんセンターなどの外来で抗がん剤治療をしている患者さんを継続的に診察し、心身両面のサポートをされています。たとえば、治療に疲れ果てた患者さんへの精神的ケアから、副作用の緩和まで。

上記の引用は、その長尾医師が患者から腫瘍マーカーの数値を聞き、「Aがんセンターのがん専門医の先生」から「マーカーの数値があまり下がらなくても、抗がん剤治療ができなくなるまで続けましょうと」言われたと聞いたときの、「若干腹立たしい」心のうちです。

痛いところついてる、と思いました。

これまでたびたび書いているように、わたしは現代のがん医療については肯定する立場です。
取材をすればするほど、「むしろこれだけ進んだ医療を否定するなんて、もったいない」としか思えません。何度も言ってますが全がんで治癒率はもう50%以上になっているんですよ。それは医学の進歩のおかげでなくてなんだというのか。

ただ、それでも万能ではありません。
抗がん剤が効きにくいタイプのがんもあり、効いたとしてもいつか耐性ができて、効かなくなる時がくるのも事実です。

たしかに医学、医療技術は格段の進歩を遂げています。ですが、回復がのぞめないときの医療のありかたや、看取りのありかたについては、まだまだ疑問も多いし、満足いくものではないと感じています。どこかの首相がいう「積極的平和」ではありませんが、先制攻撃だけが是ではないのです。やるべきことはもうやり終えたと感じ、「もうあとは自然に任せて、好きなように残りの人生を楽しみたい」という決断をした患者に対しても寄り添うことも必要です。(もちろん、がん専門病院や大学病院には、積極的攻撃を担ってほしいと思いますが)。

長尾医師のこの著書には強烈なメッセージがいくつもありました。
印象に残ったところをこれから紹介していきたいと思います。 

 

【追記】

昨今は副作用が出にくく改良された抗がん剤や、そもそもあまりきつい副作用がない分子標的薬などもあります。
腫瘍マーカーが顕著に下がらなくても、副作用があまりきつくなければ、維持のために化学療法を続けるというのはひとつの選択肢であり、長尾医師もそれを否定しているわけではありません。
きつい副作用が続けば体力を失い、むしろ縮命になることもありますが、そうでなければ続けるのもあり、ということです。
実際、この本にも「やめどき10」として「死ぬときまで」が挙げられています。切ないですが・・・。

 

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アンジェリーナ・ジョリーさんの卵巣切除について

2015-03-27 01:23:04 | 「がん」について

アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的卵巣卵管切除術について、テレビで批判的なコメントも聞かれたようです(実際は見ていないのですが、「私なら卵巣がんの兆候が出るまでほっとく」といったコメントだったらしい)。

そこ、かなり誤解があると思うんですが、まず、「卵巣がん検診がなぜ無いか」をご存じでしょうか。
それは、検診で見つけられるがんじゃないからです。
いきおい、卵巣がんになった方の半分程度がステージⅢ以上で見つかっています。
つまり、早期発見は非常に難しいがんなのです。早期のうちに「兆候」なんて、出ないのです。

特にアンジェリーナさんのようなBRCA遺伝子変異陽性の人(つまり「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」の人)の場合、「漿液性腺がん」というみつかりにくいタイプの卵巣がんが多いので、国際的な診療ガイドラインでも「妊娠の希望がなければ、出産が完了した時点でのリスク低減手術(=卵巣卵管切除)を考慮する」とされています。詳しいことを知りたい方は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の専門学会、HBOCコンソーシアムの一般向け情報のページをごらんください。

もうひとつ、「乳房も切除したのに、今度は卵巣まで?どこまで切除したら気がすむの?」なんて思った方もいるかもしれません。

「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」という病名からもおわかりの通り、BRCA1/2遺伝子は、乳がんと卵巣がん、双方の責任遺伝子なので、この2つはセットなのです。この病気で乳がんにかかった人は、卵巣がんのリスクも高く、逆に卵巣卵管を切除すると乳がんのリスクも減ります。まあ、アンジェリーナさんの場合はすでに乳房を切除しているので、乳がんリスクについてはどうでもよかったはずですが。。

いずれにしても、アンジェリーナさんの選択は、日本ではまだあまり行われていないだけの話で、国際的にはエキセントリックでも何でもなく、診療ガイドラインに載っているまっとうな治療です。本人の意思で決めればよいことであり、他人に批判されることではありません。

テレビの影響は大きいです。この番組には卵巣がんの専門医は出演していたのでしょうか。
こうしたことをわかっていないコメンテーターが乏しい知識だけで発言するべきことではないと思います。

 

 

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めげずに治療を続ける力

2014-07-24 10:10:11 | 「がん」について

実はいま歯の治療で、かなり奥深いところにある歯石を除去しなければならなくなり、麻酔をかけてゴリゴリやられています(涙)。
麻酔がかかっているときはどうってことないのですが、さすがに切れたあとは腫れて痛むのです。

しかも、麻酔を使うためか一度に6分の1ずつしかできず、毎週通わなくてはなりません。しかも、自覚のない虫歯まで見つかってしまいました。
昨日が初回だったのですが、今日の昼過ぎまで痛みは続き、「来週もかー」と思ったらあまりにもウンザリで、さっそく予約を変更して「2週に1度くらいのスローペースでお願いしたい」と頼んだヘタレです。

 

これががん治療だったら、こうはいかないでしょう。

 

たとえば乳がんの乳房温存療法後に受ける放射線治療は、週5回、5週間がスタンダードです。照射自体は1分くらいですが、毎日の通院だけでも術後の体力的にもきついはず。いや、元気なときでさえ、毎日通院するなんて考えただけでも気が滅入ります…。

ましてや、受けているうちに赤み、かゆみなどの皮膚症状や疲労感など、どんどん体調が悪くなっていくわけです。(放射線治療の副作用は重いものはないと言われていますが、あることはあるのです)

受ければ受けるほど体が楽になるなら続けるモチベーションも上がるというものですが、その逆ですから、本当に続けることだけでも大変。
患者さんたちは、それでも見えないがん細胞がすべて消え、きれいになくなっていく、という希望を持って前向きに治療に向かうのですよね。暑いときなど、本当に大変だろうとお察しします。

医療者がそんな患者さんたちに、ひとこと、労をねぎらう言葉をかけてくださると、少なからず、めげずに通い続けるパワーになると思います。
いや、先生方も病院職員さんも、この暑いのに毎日通勤しておられるわけですが、通勤と通院はもうぜんぜん別物。かなり精神的ハードルが違います。
元東大病院接遇向上センター顧問の近藤和子先生は、接遇の基本は「共感」にあり、共感のメッセージを伝えることが大切なのだといつもおっしゃいます。

わたしの歯の治療(しかも歯石除去)は痛むといってもせいぜい翌日まで。
この程度で「もーやだー」などと言っているわたしは、相当なヘタレなのだろうと我ながらあきれます。
でも、週1回頬が腫れるのはやっぱりいやなので、月2にしてもらいます(笑)
予約変更の際に対応してくれた歯科衛生士さんは、「昨日は本当にお疲れ様でした」とねぎらってくださいました。さすがだ。。

 

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がんと闘う人とのつきあい方

2014-05-29 13:29:14 | 「がん」について



以前、このブログで「がんと闘う人への励まし方」「がんと闘う人への励まし方・NG篇」を書き、この細々続けているブログとしては、比較的長い間多くの方に読んでいただきました。というわけで、今回はその続編です。


先日、国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援研究部主催の「公民館カフェ」に参加しました。事前申し込みは必要ですが、がん患者さん、元気な人、医療者、メディア関係者、誰でも参加できます。つまり、がんをテーマにした市民の勉強会なのです。

昨日のテーマは「がんの外見ケア」。国立がん研究センター中央病院 アピアランスセンター長 野澤桂子さんのお話でした。ウィッグの試着タイムがあり、男女ともに大盛り上がりで、いささか収拾不能に(笑)。化学療法中の方は、自分のウィッグをえいっと外して他のを試す方も。おしゃれ好き、変身好きは皆、共通です。病気があろうとなかろうと関係ありません。

このウィッグについて、これまで、どこか一線をひいて、触れてはいけないことだと思っていなかったでしょうか。家族ならとにかく、治療中の友人がウィッグを着けていることに気づいたとき、似合っていても、言わずにだまってあげていた方がよいのではないかと…。私自身、いつもためらいがありました。(休暇のあとに出社したら急に髪の量が増えてるオジサンに対しては、まず声をかけないほうがいい、と確信しているのですが)

でも、野澤さんによれば、むしろ、ちゃんと似合うと言ってあげた方がよいそうです。人からどう見えるかがわかれば、患者さん本人もポジティブな気持ちになり、外出も楽しめるようになるとのこと。野澤さん曰く、「髪型を変えたのに誰にも何にも言われないなんて、そんな悲しいことはない。それと同じ」。患者さんからも、「ウィッグだとわかっていても、『その髪型似合うね』と言われれば安心。触れないのがいちばんイヤ」という意見が出ました。

臨床心理士である野澤さんのお話でもう一つ心に残ったのが、「日本では病気になると必要以上に病人らしくいようとする。精神的な健康のためには、できるだけそれまでと同じ生活をするのがよい。ご家族は、本人ができることを奪わないで」

平たく言えば「むやみに病人扱いするな」ということですよね。

がんであろうとなかろうと、わたしたちは生きて食べて行かなくてはなりません。
ましてやがんは慢性疾患。手術直後ならともかく、通院でがん治療中の方に「治療に専念してください」などとは軽々に言うべきではないのかもしれないな、と思いました。治療に専念するということは、病人らしさMaxにしろ、ということです。もちろん、言う方は善意なのですが、「病人であること」を必要以上に意識させるのは、患者さん本人の精神的健康にマイナスになることもあるんですね。

いろいろ考えさせられる、実りの多い時間でした。

 

 

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近藤誠「医者に殺されないための47の心得」を読んでみた

2013-12-06 17:00:18 | 「がん」について
近藤誠センセイの本は、これまで避けていたんですが、これを読んだ複数の知人から、「ぜひ感想を」と求められたので、リクエストお応えして読んでみました。
 
この本はかなり話題になり、がん患者、ご家族への影響も大きく、知的レベルのかなり高い知人たちからも、「価値観をゆさぶられた」との声が聞かれたので、蛍光ペンをにぎりしめ、自分の意見をポジティブとネガティブに色分けしながら読みました。
 
結論からいえば、この本書かれていることの半分は納得できますが、半分は疑問です。
また、近藤氏が意図していたかどうかは別して、がんをよく知らない人大きな誤解を招きかねない、という点においては、罪深い本だとも思います。
  
私も、自分や自分の身内ががんなった時、あるいは「放置」を決めることがないとは言えません。
「なんだ、やっぱり賛同するのかww」と思われましたか?
ただし、それは条件付きでして、発見の時点で「末期がん」であり、回復の見込みがないと判断される場合や、体力が消耗していて、手術や抗がん剤治療には耐えられないと判断された場合です。体力的に厳しい状態なのに、薬物療法(つまり抗がん剤治療)のような「積極的闘う治療」一縷の望みをかけて強行すれば、最期まで苦しむし、逆命を縮めることなりかねないからです。
(ただし、がんの薬物療法の専門家である「腫瘍内科医」が少ない日本では、その見極めが正しいかどうかに問題がないとはいえませんので、セカンドオピニオンは必要だと思います。)
 
近藤氏には「20年以上にわたって診てきた150人以上のがん放置患者」がいるそうですが、慶應義塾大学病院放射線科を訪れる20年間分の患者数のなかで、150人はどれほどを占めるのでしょうか。
 
もっと大事な情報も欠けています。その方々ががん放置を決めた時、どの程度がんが進行していたのか。実際は末期がんの人ばかりであるなら、そう書かなければ誰もが誤解してしまいます。また、末期がんであっても、人によっては化学療法が可能なケースもある現在、手術で治る、ごくごく初期の胃がんなどを「放置」させたのならそれはもはや犯罪だと思います。(このあたり、他の著書には書かれているのでしょうか。私はこの本しか読んでいないのでわかりません。)
ちなみに、「20年以上にわたって診てきた」は、近藤センセイの勤務年数を伝えているだけであって、この患者さんたちが20年生きている、ということではないのですね。誤解しないように。
 
近藤氏は「手術も抗がん剤もやっても無駄で命を縮めるだけ」と述べていますが、それならがんの生存率が伸びているのはどう説明するのでしょう。現在、日本ではがん患者の5年生存率は男性55.4%、女性62.9%。がんの部位や、病期によって異なりますが、あらゆるがんをひっくるめて、5割以上の人が生きています。乳がんに至っては、9割近くが治癒します。
 
それは、60年代、70年代に行われていた、「放置」あるいは「賭けてみる」式のがん医療ではなく、「手術や抗がん剤」を中心に放射線療法、緩和ケアなどを組み合わせた、スタンダード治療が確定し、確実性の高い標準治療として普及してきたことの成果に他ならないと思います。こうした事実を理解した患者さんが、それでも自分の判断で「放置」を決めるのなら、それはもうその人の人生哲学の問題ですから、他人が口を出すまでもないのですが。
 
9月の癌治療学会で、国立がん研究センター中央病院の田村研治先生が「がんの治療方針の決定には、少なからず医療者の人生観が反映する。医療者は自分の限られた経験だけでそれを判断せず、患者の話をよく聞くべきだ」と指摘されていました。おっしゃるとおり!とわたくし心のなかで拍手喝采でした。医療者には自分の「価値観」より、まず患者が正しい判断をするための「情報」を提供してほしいものです。
 
近藤センセイの実際の診察がどうなのかはわかりません。ご自分が乳がんの乳房温存手術を日本に紹介したとおっしゃっているので、患者によっては手術も勧めているのかもしれません。しかし、少なくともこの本には正しい事実を伝える姿勢が欠けているように思いました。
 
 
 

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がんの治療支援制度についてもっとアピールを!

2012-10-21 14:33:44 | 「がん」について

ファイザー株式会社のがん患者・家族の意識調査によると、セカンドオピニオンを「受けなかった」患者は7割で、「知らなかった」人も1割とのこと。
セカンドオピニオンは、2~4万円の自費でもあり、選択はさまざまでしょう。
(その後の治療費全体を考えれば、2~4万円が高額かどうかは考えどころです。少なくとも、私なら基本的に受けますが。)

 

一方、がんの治療をサポートする制度(高額医療費制度などでしょうか)について、患者・家族とも

約7割の人が「知らない」

と回答しているのには驚きました。

なにしろ、がんの治療は高額です。

公的援助の制度を知らないということは、それが原因で治療をあきらめる・・・ということにもつながりかねない大問題です。

 

病院でこういう制度を説明するのは、本来だれの役割でしょう。
医師でも、看護師さんでもありません。
医事課、医療ソーシャルワーカー、あるいは地域のがん相談支援センター(たいていは大病院内にある)などになります。

キビシイ見方をすれば、「7割が知らない」というこの結果は、「怠慢」あるいは、機能を果たしていないといわれてもしかたがありません。
これからの「相談窓口」には、患者さんや家族が相談にくるのを「待つ」のではなく、患者・家族向けに積極的に伝えていく、「発信窓口」「広報窓口」の役割を任じていただきたいなあ、と切に願います。。

また、「発信」の手段としては、診察室で、「○○に行って訊いてみてください」と、患者にひとこと伝えたり、パンフレットを渡すのも有効だと思うのですが、多忙な看護師さんにそのあたりのフォローをお願いするのは酷。
医療クラーク(医療秘書)の育成が必要ですし、育成しても、医療機関が採用できる経済状況でなければどうしようもありません。その意味でも、医療制度が根本的に改善されて、医療クラークの採用が増えるとよいのですが。

 

意識調査の結果はこちらに出ています。→ファイザー株式会社のホームページ

 

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がんと闘うひとへの励まし方 その2(NG篇)

2012-02-08 23:41:08 | 「がん」について

前回にひきつづき、今回は、大西秀樹先生が講演で「有害なアドバイス」として挙げておられたことを記してみます。
つまり、家族や友人など周囲のひとが、がんの患者さんに対して「すべきではないこと」集です。
今回も、中保の独断的解釈&本意を曲げない程度の脚色を加えていますので、ご了承ください~。

(2月8日追記 3)不遜な態度 の×事例を修正しました。前のでは不遜度が足りませんでした。) 

 

1)回復を鼓舞する

×「来週には退院できるんじゃない?」
×「一日も早く、病気なんかやっつけちゃえ!」
×「来月になったら、もう仕事もできるようになるね」 

といった類でしょうか。

一見、「これのどこが悪いの?」と思うくらい、 お見舞いのことばとしては普通だと思われるかもしれませんが、回復をあおることが、ご本人を追い詰めることがあるので注意したい、ということのようです。下線のように、「期限」を切ることばは、治療のために、先の見通しが立たない生活を強いられている患者さんにとって、特にいけないような気が。

インフルエンザは4日寝てれば治る。骨折は時間はかかるけどギブスをちゃんとしていればいずれ治る。がんは必ずしもそういう病気ではないという現実を、ご本人はいやというほど知っていて、まさにそれと向き合ってるだけに辛いというわけです。 うつ病の人に「がんばれ」という励ましが禁句であることと、かなり近いものかもしれません。

 

2)陽気にふるまう

たぶん、これは「無理に」陽気にふるまおうとすることがNGなのだと思います。
陽気にふるまっている人に対しては、患者さんは、自分のつらい気持ちを伝えにくくなる→結果的に、患者さんのつらさを受けとめることにならない。ということ(だったような気がします)。

 

3)不遜な態度

×「そんな気の弱いこと言ってるから病気になるんだよ。」
×「病院なんかで白い天井みて過ごすより、さっさと家に帰って、好きなもんでも食べてゆっくりしてりゃ自然に良くなるよ」
×「抗がん剤なんて身体に毒だっていうじゃねえか、んなもんオレだったらテコでもやらねえけどな」 

・・・なぜか、例えがべらんめえなオッサン口調に(笑)。
こういうわかりやすい「不遜さ」ならば、ご本人も真に受けることはないと思いますが、こうした文脈で「健康食品」や「代替療法」、「食事療法」「宗教」などが持ち出されるケースは、案外多いのではないかと思います。
「免疫療法」も、高額ではありますが、まだ研究途上の療法にすぎません。 これらを絶対視するあまり、患者さんが受けている現在の医療を否定して不安がらせるのは、百害あって一利なし、です。

 

4) 過小評価

×「がんといっても、まだ初期なんだし、そんなの気にすることないよ」
×「腫瘍マーカーの値が悪くても、元気なんだからだいじょうぶ」
×「痛い?さっき痛み止め打ったばかりなんだからそんなはずはないでしょう」

そう言われても、そうは思えない心境にある患者さんには届かず、疎外感を強めてしまうだけ、ということだと思います。
もちろん、かなり高確率で治る種類のものもありますが、基本的には命がかかっている病気ですから、外野が無責任なことは言えませんね。
ちなみに、がんによる身体の痛みは、腫れたり赤くなったりすることがなく、ご本人が訴えないかぎり、自分以外の他人からはわからないものなのだそうです。  

 

5)「私はあなたがわかる」

ありがちだなあ(笑)
東日本大震災の直後にもこれがありましたね。避難所で、被災者に「つらいですよねえ。お気持ちわかりますよ。でも明日があるんだから~」的なフレーズを連発しているボランティアに対し、「被災していないあなたに何がわかる」と怒っていた女性を、テレビ報道が紹介していたのを見ました。

以前、ある患者さんを取材させていただいたとき、「中保さんはがんになったことがありますか?」と訊かれました。「いえ、まだ」と答えると、「それじゃあ、わからないかもしれないけど」と前置きをされました。
もとより、「わかりますよ」などと言うつもりは毛頭なかったのですが、がんという病気は、経験の有無により人の間に一線がひかれるのだ、と思いました。考えてみれば、病気にかかってしまった辛さも、治療の物理的な辛さも、命と向き合う苦しさも、経験していない我々に「わかる」はずなどないのです。安易に「わかりますよ」などと言えるはずもありません。

 

以上、5つのキーワードでした。
「意訳」のつもりが、「違訳」になっていたら、ゴメンナサイ。 

 


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がんと闘うひとへの励まし方 その1

2012-02-06 23:42:51 | 「がん」について

親しい友人からのリクエストで書くことにしました。

 

がんの患者さんをどう励ましたらよいか。

 

長らく放置していたのですが、昨年10月の「がん治」こと「日本癌治療学会」で、大西秀樹先生が話しておられたことをメモしていました。

大西先生は、埼玉医科大学の精神腫瘍科教授で、精神科医としてがんの家族や遺族への対応に取り組んでいる方。埼玉医科大学に「遺族外来」までつくりました。おそらくサイコオンコロジーでは日本でもっとも有名な先生です。その先生がシンポジウムで挙げておられた、がん患者さんへの「有用なアドバイス」と「有害なアドバイス」を紹介してみます。まあ、自身の親御さんとかだと、そもそもの関係性もあると思うので、一概にあてはまるとは言えませんが、参考にはなるかと。

メモが正確でないところはあるかもしれませんが、お許しを。ちなみに、コメントは中保の自作です。

 

【有用なアドバイス】

1)同じ境遇の人と話す機会を持ってもらう

いわゆる「ピア・カウンセリング」です。同室の患者さんはもちろんですが、病院によっては、患者サロンや患者会を開催しているところもあるので、そういう場所に出かけるのを勧めてみる、ということでしょうか。ピア・カウンセリングの有用性は知られているので、その体制を充実すべく、一部ではピア・カウンセラーの教育なども始まった模様です。その前に、とりあえずがんサロンを持つ病院が増えてほしいなあ、と思うのですが。

2)患者さんが感情を吐き出せる機会をつくる

お互いに相手を気遣って、平気なふりして、涙も見せず、つらいことも隠し通すなんて苦しすぎます。昔、本人には告知しないことが通例だった時代は、どんなにかお互いに苦しかったのだろうかと察せられます。

3)そばにいる

2)と関連するんですが、何もしなくても、何も言わなくても、患者さんはそばにいるだけで気持ちが安らぐようです。健康なとき、人は何かを「する」ことに価値があると思うものですが、病む人の求めるものは、その人の存在そのものだったりします。つまり「いる」ということだけで十分。むしろ、見舞い人が病室でチャキチャキせわしなく動き回ったら、御病人はかえって疎外感をもつかもしれません。ミヒャエル・エンデの小説「モモ」の主人公のように、相手の話にじっと耳を傾けて、患者さんが自分で話したくなるような雰囲気をつくる、というのが理想的なのだろうと思います。

4)関心を示す

患者さんの病状や気持ちに、いつも関心を持っているのだ、ということを周囲が示すことが大事だとのこと。

 

 

自分自身もこんな風にできているとは甚だ申せませんが、心掛けたいとは思っています。

長くなったので、【有害なアドバイス】(アドバイスという表現はちょっと不思議な気がしますが・笑)は、次回に。

 

 

※2/6追記 一部、誤解をまねく箇所があったので修正しました。→2)のタイトルです。


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「40代のマンモグラフィ検診」に決着

2011-10-26 21:32:26 | 「がん」について

 

9月はまるまるブログをさぼっていたのだが(見ればおわかりの通り・・・)、じつは2週続けて、仙台に行った。最初は9月2-4日の日本乳癌学会参加のため。そして翌週は、仙台定禅寺ストリートジャズフェスティバル・通称ジャズフェスに出演するためである。で、今日お伝えしたいのは、前者のほうのお話。乳がん学会からのトピックス。

 

以前、このブログでもマンモグラフィ検診についてとりあげたが、その後、2009年には米国で、40歳台のマンモグラフィ検診は「推奨せず」、という声明が出た。理由はどうやら活発な乳腺組織が白く映ってしまい判断がつきかねるから、ということだったと思う。その後のがん関係の学会では、この話題が出ると、「米国の国情(検診予算の削減)などによるところが大きいのでは」などという話が出て、「日本では当面静観しておくか」というところで一致しており、日米間の協調はなされず、なんとなくうやむやになった感があった。かたや、「余命2ヶ月の花嫁」関連のキャラバンで、急に乳がんが心配になった20代女子がこぞってマンモグラフィ検診を受けるという、国際的には珍奇な現象も起きた。受診する気持ち自体はべつに悪いことではないが、乳がんの発症は40代以降に多く、20代が受けることは、放射線被曝などのデメリットが利益を上回る。おそらくどの国でも推奨されてはいない。

 

さて、問題は40代。
その結論は果たして、と思っていたところ、今回の乳がん学会の複数の講演で、「40代女性もやはりマンモグラフィ検診を受けるべき」という話が聞けた。以下、要点をお伝えする。

 

日本人女性のマンモグラフィ検診受診率は31%であるが、7割の女性が受診するようになれば、計算上、確実に乳がんによる死亡率を下げることができる。一例として、宮城県は乳がん検診に積極的で、50%がマンモグラフィ検診を受診しているが、死亡率は全国平均より低く、しかも2年連続で下がっている

乳がん発症年齢のピークは45~49歳だが、日本ではその年齢での発症が増加傾向。さらに、世界的には乳がん人口は右肩下がりなのに、アジアだけは罹患率が上昇しているのは、40代のマンモグラフィ検診受診率が低いのが要因

スウェーデンでは、国の対策型検診(いわゆる「制度検診」です)にマンモグラフィを導入したところ、乳がん死亡率は44%低下。40代に至っては、48%減少させることができた

 

なるほど、やれば効果があるというのは数値的に検証されたようだ。
しかし、「乳腺が多くて画像が白くて何も映らない」という話はどうなったのだろう。

たしかに、40代の場合画像の「感度は低め」で、70%程度の精度とのこと。でも、統計上、マンモグラフィ検診によるがん死リスク低減効果は、40-69歳を対象にしたデータでも、40-49歳を対象にしたデータでもほとんど変わらないので、「40代にとっても十分に効果がある」そうだ。つまり、画像の精度が上の年代より少し落ちるというデメリットがあっても、受診することにはそれを上回るメリットがある。何しろ、発症しやすい年齢だから、受ける意味は十分にあるというわけだ。

私が注目したのは、マンモグラフィ検診は「2方向検診が前提」というコメントがあったこと。これはですね、片方につきタテ、ヨコ、2回挟んで撮影するということだが、日本では乳癌検診学会のガイドラインを見ても、2方向撮影は、精密検査用のマンモグラフィが備えるべき要素とされている。一般のがん検診で、2方向撮影はどの程度実施されているのだろう(ご存じの方、いらしたらご教示いただきたい)。

実際、「予算的な事情で1方向のみ」なんて自治体もあるかの話を聞くが、1方向でのがん予防効果は担保されていないならば、意味がない検査を受けていることになる。1回とはいえ、痛い思いとそれなりの被曝をして、精度の低い検診を受けさせられるのはなんだかなあ・・・。そういう検診を受けている方は、その検診の主催者(企業や自治体など健康保険の窓口)に、疑問の声を伝えるとよろしいのではないかと。

 

明日からの「がん治療学会」を目前に、なんとか「乳がん学会」の整理が間に合った。ふう。

 

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第1回「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」

2011-06-01 10:56:25 | 「がん」について

先週、「第1回 リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」の授賞式に行ってきました。
がんの患者さん、家族や支援者の手による絵画、写真のコンテストです。
コンテストの広報大使を務められた、写真家の荒多惠子さんにお誘いいただいて、取材陣に加わりました。


がんの人たちの励みになるイベントとして代表的なのは、なんといっても「リレー・フォー・ライフ」ですが、
これは24時間のウォークラリー。
それはそれでいいのだけど、完全文化系なわたしとしては、もう少し文化系寄りのものがあるといいなあ、
と思っていたところ、医薬品メーカーの日本イーライリリー社が今年から始めてくれました。
リレー・フォー・ライフ同様、米国では2004年から始まったものの由。
これもひとつの文化輸入ですね。


さて、場内に展示された作品の数々ですが、あまりのレベルの高さにびっくり。
自分の姿を描いたもの、がんになって改めて感じた日常の美しさを記録したもの、
がん末期の日々を家族で過ごした貴重な時間を写真におさめたもの。
すべての作品に、濃厚な時間がありました。

 

がんという病気には、時間がある。
それが特徴です。

東大の中川恵一准教授は、著書のなかで
「私はがんで死にたいと思っています。突然、寿命がきたら、人生の整理もできませんし…」と述べています。
(小学館「自分を生ききる~日本のがん治療と死生観」)

同書によれば、がんはそもそも慢性病だし、進行は緩やかだし、
万一、再発し、回復の見込みが立たなくなったとしても、数か月から1~2年の猶予がある。
まちがっても、がんにかかることが幸せなどとはいいませんが、
わたしは、時間があるという点だけは悪くないと思っています。
もちろん、十分な緩和ケアが受けられて、痛みがコントロールされていることが前提ですが。


受賞者、主催者、審査員の皆さん。
治療を終えた方、抗がん剤真っ最中の方、末期がんで参加が危ぶまれた方、患者さんのご家族…とさまざま。
スピーチが皆さん立派でした。不覚にも、涙腺が決壊しそうになりました。

 

グランプリ作品、戸倉基さんの絵。
呼吸訓練でうまくトリフローを上げることができるようになった嬉しさに、ご自分の姿を描いたもの。

この方は大腸がん、肺腺がん、12年前には肺がんが再発、3年前に前立腺がん、というがんとの歴戦に加え、
心筋こうそく、脳梗塞もという大変な歴戦の持ち主。
作品もユニークですが、飄々としたスピーチで会場を笑わせました。

「私の肺がんのときは、ジェムザール(=イーライリリーの抗がん剤)はまだありませんでした。
皆さんには、ジェムザールがあるので、どうぞご愛用いただきたいと思います」

ベテラン患者さんになると、余裕が違いますね。さすが。


作品の数々は、
「わたしたちは『患者』である前に、なみの人より秀でた芸術的感性をもって生きてきたひとりの人間なのだ」
と訴えていました。

世間がステレオタイプに「患者さん」は何もできない、というイメージを築いてしまっていないか、
わたしも文章を通じて、それに加担していないかと反省しつつ、会場のニューオータニを後にしました。

 

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抗がん剤を中止するとき

2010-08-12 09:28:06 | 「がん」について

前回(といってももう1カ月ほど経ってしまいましたが)に引き続き、いよいよ病状が進行してきたときに抗がん剤をいつまでやるか、というお話。

アメリカ最大のがん専門病院、M.D.アンダーソンがんセンターの医師、上野直人先生の書かれたコラムがとてもわかりやすいので引用させていただくことにする。

がん治療の原則(1)
■治療が効くか効かないかは身体の調子によって決まります
がん治療が効くか効かないかが何によって決まるかというと、それはパフォーマンス・ステータス(Performance Status:PS)によって決まります。パフォーマンス・ステータスとは、患者さんがどれだけ元気に活動しているかの指標です。全身症状の指標とも言います。これはカルテにちゃんと書いてあるはずです。医師は、これをふし目ふし目でちゃんとカルテに記入しなければいけません。

つまり、元気な患者さんほど、抗がん剤を投与すると効果があります。そして、身体の調子が悪い人ほど、抗がん剤を投与すると良くなるより悪くなる可能性が高くなります
ただし、この原則からはずれる症例もあります。たとえば、がんが重要な臓器(肺など)に明らかに直接的に悪影響を与えていて、身体の調子が悪い場合です。このような場合は抗がん剤を投与すると効果がありますが、多くの場合、身体の調子が悪い人ほど、抗がん剤を投与すると悪くなる可能性が高くなります。

つまり、身体の調子の悪い人に、最期の最期まで抗がん剤を投与することは、生活の質(QOL)を下げることになります。また逆に、調子のいい人は、多くの治療オプションを求めても良いと思います。ただし、進行性がんについての治療は臨床試験で積極的に治療すべきであり、勝手な組み合わせによる治療は行うべきではありません。


詳しくは、こちらをお読みください。
http://www.teamoncology.com/column/column_ueno.php4?f=090420.inc


抗がん剤というのは、毒を以て毒を制するという類のクスリなので、がん細胞の増殖も抑制するけれど、健康な普通の細胞にも同じような作用をしてしまう。副作用が強いのはそのためである。
「分子標的薬」という、がん細胞だけに働くクスリが開発されたとはいえ、まだ完全に副作用がないというものではないし、第一、まだあらゆるがん種に分子標的薬があるわけでもない。
だから、体全体の調子が悪いと、まさに「弱り目に祟り目」的な作用になってしまうということのようだ。

前回紹介した「生きる力がわく がん緩和医療」にも、こう書いてある。
著者の向山先生は、他の主治医のもとで抗がん剤治療を受けている患者の緩和ケアを、外来で受け持っている。

「なかには、抗がん剤の効果が得られていないのに、副作用だけが強く出ている患者さんもいて、その場合は、主治医に対して抗がん剤の減量や中止を検討してはどうかの相談をする場合があります。ただやみくもに投与を続けるのではなく、効果と副作用を注意深く見ながら、効果がほとんどなく、副作用のほうが大きければ早急に抗がん剤は中止すべきです。副作用だけが出ている場合は、毒を飲んでいるのと同じことですから、延命どころかQOLを落とし、さらに命を縮めかねません。」

これは想像にすぎないが、実際に医師がこう判断しても、「抗がん剤を中止しましょう」と言われた患者さんや家族が、「見捨てられた」と誤解してしまうことも結構ありそうに思う。
ホントは形勢の立て直し、一旦退却して軍を立て直すというようなことも含まれているはずだが、医師の伝え方によっては大きいショックを受ける人もいそう。

しかし「あと1度だけでも」という家族の思いを優先させて抗がん剤治療を行うと、却って悪い結果を招くこともあるということは、やはり知っておいた方がいいと思う。
家族の気持ちはすごくわかるのだけど。


当面、2月のパリの写真を大放出します。
→だって、夏休みにどこにも行かないから。絵日記の書けない子供状態です。


※2010.8.12 タイトルと本文の一部を修正しました。

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がんの緩和医療と麻薬の話。

2010-07-19 12:51:45 | 「がん」について

「生きる力がわく『がん緩和医療』」(向山雄人)を読んだ。
苦痛の除去を主とする緩和医療は、「本当に必要になるのは再発・転移してから」だが、痛みや吐き気はがん闘病に向かう体力も気力も奪うので、初期から行うべきだということだ。

2007年にがん対策基本法が施行されてから、緩和医療の充実は国のがん対策の柱のひとつになった。でも、まだまだ「緩和医療=あきらめの医療」というイメージをもつ人が多く(もしかしたら医療従事者にも!)「これから緩和医療を受けてもらいます」と言われた日には、驚いたり、「もはやこれまで」と嘆いたりする人もあると思う。いま、国や学会はキャンペーンを張って、誤解の払拭につとめている(オレンジバルーンプロジェクト)が、この本を読めば、“現在の”緩和医療のコンセプトがとてもよくわかる。

緩和医療の主役は、いうまでもなく医療用麻薬、モルヒネだ。もう題名も忘れてしまったが、麻薬というものが、いかに人間の歴史に必要なものだったか、が書かれた本を読んだことがある。あまりにも昔読んだので、多少の記憶違いはお許しいただくとして、エジプトのピラミッドの建造で、輸送機材もないなか重い石を運ぶ苦痛を和らげるのに、コカの葉をかんで歩いたとか。コカの葉はコカインの原料になる。緩和医療でコカインは使われないだろうが、麻薬の本来の価値とは、こうした肉体の苦痛を軽減することにあるのであり、専門家が適量を使えばまぎれもなく有益な「薬」なのだ。

緩和医療は早くから受けるとして、問題は「抗がん剤をいつまで続けるか」だ。
先週品川で米国のがん患者団体「Annie Appleseed Project」の代表 Anne Fonfaさんの講演会があった。Fonfaさんは、もともと化学物質にアレルギーがあり、手術は受けたものの化学物質は受けられなかった。放射線治療に関しては医師の説明が十分なものではなかったらしく、これは自分の意思で受けなかった。そのためCAM(代替療法)に詳しく、さらに米国の医学界でアドボカシ―活動をしている団体だ。「医師の説明を受ける時も、市民公開講座などでも、患者はもっとどんどん質問すべきだ」ということで、後半1時間はQ&Aコーナー。ある患者の家族が質問した。「81歳の父のがんが再発したのだが、抗がん剤治療を受けようとしない。家族としては受けてもらいたいのだがどう説得したらよいでしょうか」。

Fonfaさんは、こう答えた。
「家族や周囲の意見が、必ずしも本人にとって良いこととは限りません。」

含蓄深い。。抗がん剤治療に要する体力を考えたら、年齢は慎重に考えざるを得ないと思う。また、何より「本人」の意志が尊重されるべきだろう。ただし、本人にしろ家族にしろ、正しい情報を知ったうえで結論を出すことが大事だと思う。何も知らないのにイメージだけで「麻薬は廃人になるから」「抗がん剤はこわいから」ではきっと損をする。では、どう判断したらいいか。長くなったので、そのあたりはまた次回に。



しっかしアヂーですな。。
この3連休はどこにも行かず、ほとんど家から出ていません。来週は大阪、再来週は松山と相変わらず平日は出張が多いので、連休くらい出かけず、のんびりうちにいたいし。(→原稿仕事がたまっていてどこへも出かけられないという裏事情も)。
ともあれこのお天気のおかげで3日連続洗濯ができ、しかもパリパリに乾くシアワセを満喫しています。結構、家事のなかでは好きなんですよ。洗濯が。今日はこれからまた仕事をして、あと出来たらバスクラのパート譜をスキャンしておきたいなあ。そこまでやれるかなあ。
結構重い話が続いたので、ちょっと緩和休題でした。写真も甘めに(笑)


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