医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

がんと闘うひとへの励まし方 その2(NG篇)

2012年02月08日 | 「がん」について

前回にひきつづき、今回は、大西秀樹先生が講演で「有害なアドバイス」として挙げておられたことを記してみます。
つまり、家族や友人など周囲のひとが、がんの患者さんに対して「すべきではないこと」集です。
今回も、中保の独断的解釈&本意を曲げない程度の脚色を加えていますので、ご了承ください~。

(2月8日追記 3)不遜な態度 の×事例を修正しました。前のでは不遜度が足りませんでした。) 

 

1)回復を鼓舞する

×「来週には退院できるんじゃない?」
×「一日も早く、病気なんかやっつけちゃえ!」
×「来月になったら、もう仕事もできるようになるね」 

といった類でしょうか。

一見、「これのどこが悪いの?」と思うくらい、 お見舞いのことばとしては普通だと思われるかもしれませんが、回復をあおることが、ご本人を追い詰めることがあるので注意したい、ということのようです。下線のように、「期限」を切ることばは、治療のために、先の見通しが立たない生活を強いられている患者さんにとって、特にいけないような気が。

インフルエンザは4日寝てれば治る。骨折は時間はかかるけどギブスをちゃんとしていればいずれ治る。がんは必ずしもそういう病気ではないという現実を、ご本人はいやというほど知っていて、まさにそれと向き合ってるだけに辛いというわけです。 うつ病の人に「がんばれ」という励ましが禁句であることと、かなり近いものかもしれません。

 

2)陽気にふるまう

たぶん、これは「無理に」陽気にふるまおうとすることがNGなのだと思います。
陽気にふるまっている人に対しては、患者さんは、自分のつらい気持ちを伝えにくくなる→結果的に、患者さんのつらさを受けとめることにならない。ということ(だったような気がします)。

 

3)不遜な態度

×「そんな気の弱いこと言ってるから病気になるんだよ。」
×「病院なんかで白い天井みて過ごすより、さっさと家に帰って、好きなもんでも食べてゆっくりしてりゃ自然に良くなるよ」
×「抗がん剤なんて身体に毒だっていうじゃねえか、んなもんオレだったらテコでもやらねえけどな」 

・・・なぜか、例えがべらんめえなオッサン口調に(笑)。
こういうわかりやすい「不遜さ」ならば、ご本人も真に受けることはないと思いますが、こうした文脈で「健康食品」や「代替療法」、「食事療法」「宗教」などが持ち出されるケースは、案外多いのではないかと思います。
「免疫療法」も、高額ではありますが、まだ研究途上の療法にすぎません。 これらを絶対視するあまり、患者さんが受けている現在の医療を否定して不安がらせるのは、百害あって一利なし、です。

 

4) 過小評価

×「がんといっても、まだ初期なんだし、そんなの気にすることないよ」
×「腫瘍マーカーの値が悪くても、元気なんだからだいじょうぶ」
×「痛い?さっき痛み止め打ったばかりなんだからそんなはずはないでしょう」

そう言われても、そうは思えない心境にある患者さんには届かず、疎外感を強めてしまうだけ、ということだと思います。
もちろん、かなり高確率で治る種類のものもありますが、基本的には命がかかっている病気ですから、外野が無責任なことは言えませんね。
ちなみに、がんによる身体の痛みは、腫れたり赤くなったりすることがなく、ご本人が訴えないかぎり、自分以外の他人からはわからないものなのだそうです。  

 

5)「私はあなたがわかる」

ありがちだなあ(笑)
東日本大震災の直後にもこれがありましたね。避難所で、被災者に「つらいですよねえ。お気持ちわかりますよ。でも明日があるんだから~」的なフレーズを連発しているボランティアに対し、「被災していないあなたに何がわかる」と怒っていた女性を、テレビ報道が紹介していたのを見ました。

以前、ある患者さんを取材させていただいたとき、「中保さんはがんになったことがありますか?」と訊かれました。「いえ、まだ」と答えると、「それじゃあ、わからないかもしれないけど」と前置きをされました。
もとより、「わかりますよ」などと言うつもりは毛頭なかったのですが、がんという病気は、経験の有無により人の間に一線がひかれるのだ、と思いました。考えてみれば、病気にかかってしまった辛さも、治療の物理的な辛さも、命と向き合う苦しさも、経験していない我々に「わかる」はずなどないのです。安易に「わかりますよ」などと言えるはずもありません。

 

以上、5つのキーワードでした。
「意訳」のつもりが、「違訳」になっていたら、ゴメンナサイ。 

 


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2 コメント

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Unknown (つぶたろう)
2012-02-08 22:55:58
本人には言っていないと思うけれど、うちの母も「気力で治るんじゃないかしらね」って言っていました。

年配の人に多い発言じゃないかな。
「病は気から」というのも本当だけど、気力で治るものなら、みんな治っているよね。

自然に振舞うのが一番だろうなと思います。


>つぶたろうさん (nakaho)
2012-02-08 23:34:33
お母様自身がそう信じたい気持ちでおっしゃったんじゃないでしょうか。
ここでNGと言っているのは本人に対して病気や医療を軽視するようなことですから、これはあてはまらないと思います。

例が悪かったようなのでちょっと直します。

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