趣旨は下記のとおり。引用します。
従来までの医療モデルに捉われず、国ごとに適したケアモデルを考える「タスク・シフティング」の重要性を訴え、その事例と成功の鍵を紹介します。(TEDGlobal2012より)
じつは、私自身の体験でも思うところがあるので、ちょっと聞いてください。
救急車で搬送されたのですが、その搬送中に訊かれました。
せっかくなので、その理由も尋ねると(←搬送されているのにもはや取材モード)、
救急隊員は「精神病薬などを飲んでいると調整が難しいので」と答えてくれました。
本音としては、スタッフ不足のところに、対応に時間のかかる患者は受け入れられないか、
そもそも精神疾患に詳しい医療スタッフがいないか、というところだろうと思います。
(1人のスタッフが1時間かかりきりになるとか)
スタッフ不足で、ぎりぎりのところで回している病院もあるにはあると思うので、
受け入れるかどうかは、それぞれの医療機関の事情です。
違法でもなんでもありません。
しかし、精神疾患の患者が不利益をこうむっているという事実は、実際あるということです。
誰にとっても身近な問題ですし、本気で対策を講じないと、これはまずいだろう、と。
■保健師に委ねるのは、無理ではないか
一方、Vikram Patel医師は、地域での精神障害者のケアにあたるスタッフ増強のために、
メンタルケア専門外の人を教育してスタッフを育てる「タスク・シフティング」を提唱しています。
「パキスタンの地方で行われたランダム化比較試験では、アティフ・ラマン氏とその同僚たちが、
パキスタンの医療システムで働く母体管理担当の女性保健師が、
うつ病である母親に対して認知行動療法を行った結果、回復率が著しく改善することを証明しました。」
専門外の人のマンパワーを流入することにはおおいに賛成したいのですが、
「保健師さんで」という点はちょっと気になるんですね。
昨年、いくつかの自治体の保健師さんたちを取材する機会があったのですが、
どこもマンパワー不足のうえ、貧困、DV、育児放棄、虐待、等の困難なケースへの対応に追われ、皆さん疲弊していました。
行政サービスの一環で訪問すれば罵倒される、ということも結構あって、
保健師さん自身のメンタルヘルスを保つのが大変だ、という話も聞きました。
もっとも、マンパワーの問題で新生児担当の保健師さんが精神保健を兼ねることになったといった話も聞いたので、
これに近いことはすでに始まっているのかもしれません。
でも、キツいはずです、相当。
単純にこれをそのまま日本でも、とトップダウンで保健師さんに認知行動療法をやれ!ということになったら、
保健行政は崩壊しかねないんじゃないかと。
Vikram Patel医師も「各国の事情に応じて」と言っているので、
日本では日本のやり方を模索すること自体はとてもよいことだと思います。
■じゃあ、どうすればいいのか。
素人なりに思うのは、
医療機関においては、まず医療クラークをたくさん導入し、医療職を事務やパソコン仕事から解放するのが最善じゃないかと。
その上で、すべての病院医師と看護師に、メンタルケアの専門知識をもってもらう。
優先順位をつけるなら、今回、奇しくも問題が顕在化していることがわかった救命救急科からでしょうか。
救命救急で医療クラークが役に立つ局面があるかどうかわかりませんが、
施設全体で余力が出たマンパワーを、救命救急に回せばいい。
一方、地域のメンタルケアの方は、休眠看護師さんを活用できないか、と思います。
医療職でないまったくの素人を活用するのは、いまの日本ではなかなかハードルが高いと思うのです。
看護師さんのほうも、病院勤務の離職率は約11%。(日本看護協会調べ)
病院勤務で燃え尽きた看護師が、毎年1割やめていくのです。
そして、看護師資格をもっていながら、仕事についていない看護師さんが70万人もいます(厚労省調べ)。
この人たちの力を活かさないのはじつにもったいないし、
看護師が多様な働き方を選べるように選択肢を広げることも、
将来的な看護職の確保につながると思うのです。
読んでくださってありがとうございました。
よろしければ1クリックの応援をお願いします。
★直近の情報はFacebookページをご覧ください。
★中保の詳しいプロフィールや仕事の実績等は、有限会社ウエル・ビーのホームページをご覧ください。
★お問い合わせは info@well-be.biz までどうぞ。