DIPEx-Japanという非営利団体が運営している「がん患者の語りデータベース」で、まもなく乳がんサバイバーの語りが動画で公開される。
インタビューという仕事柄、患者さんの話を聞く機会も多いので、興味をもって昨年の公開シンポジウムを聞きに行ったら、ご縁ができたか、その後某社の医師向け出版物での取材、先週聴講した某学会でのセミナーと、3度にわたりDIPEx-Japanの方の話を聞くことになった。
セミナーやシンポジウムでは、ネットに載る予定の動画の一部が「こんな感じです」と紹介される。
で、サンプル映像に登場するのが元教員・81歳のおじいさん。
自分が前立腺がんと告知されたときのことを語っていた。
「いやもう、手術もできない、治療法がないということで、あと余命6ヶ月という話でしてね、頭が真っ白になりました。6ヶ月後に棺桶に入っている自分の姿が浮かびましてね、わたし水虫があるんですけど、棺桶に入る前に体を拭いたりするでしょう、その時足が汚くちゃあ恥ずかしいなと思いまして・・・。それで、家内の車に乗って皮ふ科にいきました」
セリフは覚え書きだから多少違っているかもしれないが、なにしろ2度も見たものだから、語り口からお顔まで印象に残っている。
たぶん、街中でばったりお会いしても「あ、前立腺がんの水虫おじさんだ!」とわかるであろう。(そんなこと言われても困るだろうけど)
それにしてもなんともユニークなおじいさんじゃございませんか。
実はこのがん告知がなされたのは7年前なのだが、こういう人だからがんにも負けず、いまなおお元気なのではないかと思わせた。
シンポジウム会場は、この動画に大笑い。そしてシンプルに励まされた。
だが、某学会会場で同じ動画が流れたときの、医師たちの反応は全く違っていた。
まず、だ~れも笑わない。(なんで?)
続いて発言を求めた数名の医師のコメントたるや、それこそ「笑えない」ものだった。
「結局これは誤診ということで、(こういうものがネットに載るのは)医療への信頼を失わせることになるのでは」
「こういうものはだいたいにおいて医者の悪口に終始するもので・・・」
医師たちは、余命宣告の間違い(とは必ずしもいえないと思うが)だけに注目し、それが強調され、自分たちが非難されているように受け取ったのですね。
なんともはや、医師と患者、いや一般市民の間には深~い溝がある(嘆)。
先生方。
日頃モンスターペイシェントに悩まされているせいかもしれないが、それはいくらなんでも被害妄想。もっと素直に患者の話に耳を傾けられませんか?
がんの余命の判断がいかに難しいことかなんて、いまや素人だって知っている。
どんなに精緻な検査を行なっても、お腹を開いて見なければ見つからない異変があるということも、医師がどんなに懸命に治療に当たっても、どうにも止められない病勢があることも、ある程度のヘルス・リテラシーをもっていさえすれば、ちゃんとわかっている話なのだ。
もちろん、その予測しにくい余命を「伝えること」自体の是非は論議を呼ぶかもしれない。
でもね、むしろ余命半年と診断された人がなぜ7年も生きて、元気に過ごすことができたのか、という点にこそ注目する方がよほど有意義ではないかと。
きっと手術や放射線治療や抗がん剤だけでない、他の背景があるだろうと思うから。
わたしが興味があるのは、この「水虫おじさん」(仮名←勝手に命名)がそもそもどのような性格で、
どんな気持ちで過ごし、その後どのような情報を集め、
どのような治療を受け、家族はその間どのように支えたか。
前立腺がんの動画は秋に公開されるようだが、そんな話も聴けることに期待したい。
まだまだ続く、岡山の後楽園。東京は毎日ジトジトですが、せめて気分だけでもカラっとしてください。
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そんなこともあるんだな…と。
余命半年…と言うと基本的にはもう「末期」と言われる患者さんであり、医者であればそんな
患者さんが余命宣告を受けた後7年も生存しているなどと言うことは、決して「喜ぶべき事では無い」と言う事なのでしょうね。
まずは、患者の命より自分たちのメンツなのでしょうか…。
そんなお医者さんばかりでは無いと信じたいですが、まだまだ現実はメンツ重視のお医者さんの方が多数を占めてますよね。
モンスターペイシェントに怯えるお医者さんに、同情もしますが、ドクハラで白衣高血圧になる気弱な患者もいると言う事…忘れないでほしいなぁ~。
ところで多数の医師がメンツ重視かと言われると、何とも・・・。
学会場のドクター達にとっても「7年生きている」ことが問題だったわけではなくて、「誤診が公になる」ことが問題と感じたまで、だったと思います。念のため。
いやぁ~、この水虫おじさん、いいですねぇ。
余命半年と宣告されて、水虫の心配をするなんてオカシスギマス☆
素直に笑えないドクターがカワイソウデス
余命以上生きられたからって、誰も医者を誤診だなんて責めたりしませんよね。
それこそ被害妄想というものです
このおじさんは、ガンも水虫も克服されたのですね。
すばらしい
私は、未だにガン検診にも行けないでいるヘタレでございます。
20歳位の時に胸にしこりを見つけてガンセンターへ行ったのですが、心配ないが気になるようなら半年に一回は検診を受けてるように言われ、
「気にならなければ検診しなくていいんですね」
と答えた私。
「いえ、気にして下さい!!」
と言われるも、それっきりでして
ガンは出たり引っ込んだりするものだと聞いて、
出来ても必ず引っ込むはずだと信じたい・・・トホホホ
がんはかなり多くの遺伝子の異変の集積です。
遺伝子の一部に異変が起こった段階ならナチュラルキラー細胞の働きで修復されることはあっても、それががん化してしまった段階では、だまっていても引っ込んでくれる可能性に期待することはちょっとキケンな気がしますが・・・。
というわけで、わたしは「気にして下さい!」に一票ですねぇ。確かに面倒なのはわかりますけど。
やはり知識や情報のある方の言葉は説得力がありますね。。。
やっぱり検査くらい行かなくっちゃいけないと、ようやく重い腰を上げました。
私の住む札幌市では、偶数年齢の年に市からの助成でがん検診が受けられます。
ちょうど今年ぞろ目(?)年齢なので、恐怖心を克服して行ってこようと思います
マンモグラフィーは二方向で、職場の人にその痛さを聞き、かなりビビッておりますが
二方向やってもらえば確実ですね。
ギュウ、と締め付けられると痛いですが、しっかり乳房をつぶした方が精度もよく、しかも放射線被爆が少ない由。一時ですからがんばってください。
なお、生理前は避けたほうがいいですよ。胸が張っているので余計痛いです。